企画会合(第7回)・調査分析部会(第2回)合同会議 議事録
日時:平成19年4月13日(金)14時00分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室
〇香西会長
ただいまから「税制調査会第7回企画会合・第2回調査分析部会合同会議」を開催したいと思います。お忙しい中を御参集いただき、誠にありがとうございます。
議事に入る前にお知らせがございます。
本日付で、任命の手続が遅れておりました東洋大学の上村准教授が専門委員として任命され、早速、本日から御出席をいただいております。他の専門委員の方々同様、今後調査分析していく領域について専門知識をお持ちの方として、調査分析部会の審議に御参加いただきたいと存じます。
それでは、上村さんから一言お願いします。
〇上村専門委員
本日より、この場に参加させていただくことになりました、東洋大学の上村でございます。よろしくお願いします。
〇香西会長
どうぞ、よろしくお願いいたします。
それでは、本日の議事について一言申し上げます。
まず、本日は先日行われました海外調査の報告を受けたいと思います。
後半は、進行を田近部会長にお願いして、調査分析部会の審議を行いたいと思います。本日は、中里委員からプレゼンテーションをしていただく予定になっております。中里委員からの御説明を受け、その後、皆さんで議論をしていきたいと考えております。
それでは、議事に入りまして、初めに「海外調査報告」でございますけれども、去る3月19日から28日までの間、田近部会長、中里委員にドイツ、オランダ、フランスに行っていただき、最近の税制改正などについて調査をしていただきましたので、その報告をお受けしたいと思います。
それでは、田近部会長、中里委員、よろしくお願いいたします。
〇田近部会長
それでは、我々の海外調査の報告をさせていただきます。お手元に資料で横長の資料「調査2-1」、今日はこれを基にお話ししたいと思っています。あと、少し厚い資料2-2があると思います。
早速、始めさせていただきますけれども、調査自身は3月19日から28日までで、資料「調査2-2」の方なんですけれども、フランスでは経済財政産業省、保健連帯省に行きました。ここは事務局の風早さんと小多さん、そして、中里さんの3人で訪問しています。
続いて、私がドイツでジョインしまして、読み上げませんけれども、連邦財務省、連邦首相府等、また、国会議員の方とかにお目にかかりました。
その後、オランダに行きまして、ここは中里さんが帰られて、3人で調査したということです。
時間が余りありませんので、横長の方で報告させていただきたいと思います。
「1.ドイツ」ですけれども、今回訪問した意図は、非常に日本と同じような環境に置かれていて、どういうふうに税制改革を進めているんだということで訪問してきた。特に、法人税についてどう取組みをしているかというようなところを聞いてきました。
1枚紙ですけれども、ざっと見て、まずマクロ経済、財政状況。
それから、財政再建のために一体どんな改革をしたか。勿論、一部、社会保険料の見直しというのがありますけれども、それを見る。
法人税の改革というのが、一体どういう問題を背景にしてなされたか。その結果、どういう措置をしたか。
最後に、法人税の方は2008年1月1日で動くということですけれども、金融所得の方は決まっていなかったと思います。事実関係は、全部、百科事典みたいに覚えているわけではないので、この金融所得の源泉分離の方は、たしか日付が決まっていなかったかと思います。間違えていたら事務局の方に修正してもらいます。
まず、2ページのマクロの方ですけれども、この図は、真ん中の上の細い線が実質経済成長率、黒い線が一般政府の財政収支対GDP比、棒が債務残高対GDP比です。
ドイツは、2000年初めぐらいまで非常にいい景気だったんですけれども、2000年で同時多発テロ、そして、バブルがはじけた。そこが今回の話につながるんですけれども、当時、シュレーダー政権というのが税制改革をかなりやった。かなり思い切ったことをやって、法人税率も40%から25%に下げた。それから、個人所得の最高税率も最低税率も下げる。非常に思い切ったことをやったんですけれども、それが実体経済には余りはね返らずに、むしろ減収を生んで、財政赤字が深まっていく。これはかなり深刻な話になったということで、2002年から連続2005年まで、一般政府の財政赤字の対GDP比が3%を超えた。いわゆるEUの安定成長協定を破ったということで、今回、税制改革に入った。
2005年11月だと思いますけれども、キリスト教民主同盟と社会民主党が合体してコアリションガバメントができたということで、改革のモメンタムがついたというような感じです。
これを、私もざっと見ていたんですけれども、やはり景気がいいときに財政は改善されるし、その潮どきというのがあるんだという気がしました。そして、足元の景気が、今、ヨーロッパは物すごくよくて、循環的なものだと言っていますけれども、2006年は実測ではないと思いますけれども、これよりも改善して、2007年はプラスの領域をうかがうかというようなことを言っていました。
3ページですけれども、したがって、2000年、2001年に経済活性化ということで大減税をした。それが実体経済に結び付かないということを申し上げましたけれども、彼らとしては、そこでEUのリーダーとして財政再建をしなければいけない。そこでやったことが付加価値税の引上げということで、16%から19%ということをやった。そこでコアリションガバメントでできたというようなことを言っていましたけれども、この16%から19%のうち、2%は財政再建に、1%は社会保険料、失業保険料を、たしか6.5から4.5、税収が上がったので、更にそれより下げるかもしれないと言っていましたけれども、財政再建と社会保険料の引下げ、とりわけ、失業保険料の引下げに使いたい。
それから、所得税の最高税率の引上げです。これは42%から45%に上げましたけれども、適用する所得が25万ユーロとか何かと言っていましたから、円に直すと3,000万円程度とか、ある意味、これ自身がこれで税収がうんと上がるというものではないと思います。
そういうわけで、先ほど言ったように、2000年のときの税制改革、財政赤字、それから、それを立て直すという形でやむなくというか、こういう改革を始めたということです。
そして、付加価値税がなぜ選択されたのかということですけれども、他のEU諸国に比べて低いとはいえ、16%だった。それで、それを19%にしたということです。そのほか、輸出品免税であるとか、それはドイツだけではないメリットですから、それを利用した。それを働かせることができたということです。
それでは、これが需要にどういう影響を与えたかということで、よくわからない話ですけれども、2007年1月1日に上げて、勿論、駆け込み需要というものもその前にありましたけれども、今、とにかく景気がいいので、そういう追い風に乗って、この改革がマイナス影響があるというような議論は余りしていない。そういうわけで、2000年の改革の後に赤字、そして、それを立て直すために付加価値税を上げたということです。
その次ですけれども、法人税の部分が、話せばややこしい話にもなりかねないんですけれども、できるだけわかりやすくというか、私のわかった範囲で話します。
ドイツは、そもそも法人というのは余りない。人的会社、結構大きな規模の会社でも、法人形態を取らないで、人的合名会社、合資会社的な形をして、税は個人所得税を払うというのが多いわけです。ただ、法人というのは大企業から上がる所得で、それ自身は税として重要なわけですけれども、今、その点を踏まえた上で何をやったかということです。
2008年1月から、法人実効税率を39%から30%に下げる。ちょっとややこしいんですけれども、39%の内訳は、連邦の法人所得税が25%です。実は、先ほどの2000年のシュレーダーの改革というのは、むしろもっとすごいことをやって、連邦の40%を25%に落としてきた。今回は、連邦の25%を15%に落とす。
それでは、残りの部分は何なんですか。その残りの部分は、市町村の営業税ということになっています。勿論、私も営業税のことはよく知っているつもりだったんですけれども、ドイツの法人所得税を考えるときに、やはり連邦の法人所得税、法人税と地方の市町村の営業税を同時に考えないと、この国の税はわからない。それから、人的会社と法人会社の関係もわからないと、この国の法人税はわからない。
少しスピードを上げますけれども、いずれにしても、連邦の法人税を下げる。営業税も下げますけれども、これは、今、言います。
ポイントは、なぜ、この改革をしなければいけないのかということですけれども、法人税を下げて景気がよくなるとか、投資が増えるとか、そういう議論は聞きませんでした。
そうではないんだ。一番指摘していたのは、要するにドイツの会社が所得を海外に移転してしまうんだ。何回もそういうことを聞きました。その結果、ドイツの国内の課税所得が小さくなって税が取れない。そのインカムシフティングが問題なんです。
それでは、具体的にどうやっているのか。いろんな仕方があるんでしょうけれども、最も典型的なのは、ドイツにいる会社が子会社を外国につくる。それで、海外の子会社からドイツの会社が借金する。そして、支払った利息が海外に出ていくというような形で、過小資本ですけれども、その過小資本が非常に大きな問題になっています。
それで、下げる下げないよりも下げなければしようがないだろうという形でいます。ただ、どう下げたかというと、ここから見るように、実態的に言うと、税収が余り失われない。予想では50億ユーロのネットの減、8,000億円ぐらいのロスということですけれども、ここでごらんになるように、さまざまな増収の取組みをしています。
減収の方から行きます。減収の方は、今、申し上げた法人税率の引下げ 。
営業税率の課税指数の引下げ。細かなことは申し上げませんけれども、ざくっと言って、地方の営業税の税率も下げた。
所得税における営業税控除率の引下げ。個人が営業税額を控除しますから、それを更に引き上げた。
人的企業に対する所得税の軽減。話すと長いし、面白い話なんですけれども、要するに、これも人的会社に対して余裕を与えてあげた。
一方、何で税金を取ったのだということですけれども、営業税の損金 算入を否認した。これは非常に大きな話です。 国内課税基礎の強化による増収ですけれども、これは皆さん何かと思われるかもしれませんけれども、税率を下げると、ドイツの企業は国内で所得をもっと申告してくれるだろう。それで税収が上がるんだ。余りこういう会議ではあれで、本当かどうかはわかりませんけれども、要するにそういうタッチなんだということを今日は申し上げたかったわけです。
あとは、償却を少し厳しくする。
移転価格も取り締まる。
それから、問題の支払利子費用の損金算入ですけれども、大騒ぎした割に、結局、そんなに思い切ったことはできない。非常に限定した形でやります。しかも、さまざまなエスケープクローズも付けますという形です。やはり難しかったということは確かなんだろう。
御質問があればお答えしますけれども、あとはさまざまなことでやったということで、結局、ドイツで財政再建しなければいけない。その中で法人税を下げたといいますけれども、今、言ったように、やむにやまれずにやったことだ。
あと、営業税ですけれども、これについても御質問に答えた方がいいと思いますけれども、課税ベースをどうするか。所得プラス利子を足し込む形になっているんですけれども、それをどう直すかというような議論もしています。
次に行きます。金融所得の方は一言で、ドイツは長年、キャピタルゲインに税をかけていなかったんですけれども、ある意味で考え方の転換、フィロソフィカルな転換だと思うんですけれども、課税する。その代わり、配当と併せて源泉課税して、我々の言葉で言うと、一元的な課税に近づけるということです。
時間があれなので、次に「2.オランダ」の方に行かせていただきます。
オランダの方は、小さな国で、ドイツと違って、財政運営の我々との比較で必ずしも関心があったわけではなくて、個人所得税をどういう形で改革していったのか。その改革に追い込まれていった理由は何なのか。結果的に分かったことで、あたかも問題意識のようにしゃべっていますけれども、そういう形で行ってきました。
早速、マクロの数字、本当に参考までで、小さな国がどれほどきれいに財政運営をしているかという典型的な例だと思うんですけれども、やはり細い線が実質経済成長率で、御多分に漏れず、ドイツと同じで、循環で2000年ぐらいまでぐっとよくて、下がってきた。それに伴って財政赤字も増えていきますけれども、ごらんになっていただくとわかるように、さっきとけたが違うというか、ドイツとオーダーが非常に違うレベルで運営している。そして、債務残高も、現在に至ってはGDPの6割を切っている。そして、フローも0.2%という形で、更にこれは改善されるでしょうから、マクロにおいて、いわゆる財政の問題が国債管理ということでは発生していない。
8ページですけれども、ここの辺りが今回の調査の我々の関心であったんですけれども、オランダは2001年に個人所得税の非常に大きな改革を行っています。何でやったんだ、それは必要だったんだということですけれども、これは私の考えですけれども、実は、この改革に追い込まれていった理由は、北欧の所得が二元所得に移行していく理由とほとんど同じだったのではないのかと思います。
背景がありますけれども、住宅ローン利子控除等により課税ベースが浸食された。課税ベースが浸食された中で税を上げなければいけないので、最高税率が60%に高くなった。最高税率が高くなると、いろんな工夫をして、課税所得を減らすことがますますメリットが起きますから、ある意味でイタチごっこになった。それに伴って、資本所得が実は赤字に近くなるとか、そういう数字はいただきましたけれども、そういう問題が起きてきた。
あと、富裕税のための国外移住も問題になったかもしれませんけれども、問題の根っこは、やはりこういうローンの利子控除等で課税ベースが浸食されて、最高税率が上がった。それをどう解決しようかというのが、オランダの改革のねらいだったと思います。
どうやったかというと、所得を分けてしまえ。分けて、ボックス1というのは勤労所得、個人の事業所得。あと、ここはみなし家賃を計算していますから、大したことはないんですけれども、多少入れる。
ボックス2は、いわゆる日本で言うと、自営業者というか、会社の株を25%持っている人たちで、大株主たちが入っているわけです。
ボックス3は、日本で言う同族会社の人たちのイメージです。ボックス3は資本収益です。
さらっと言ってしまうと、要するにさっき言った事態の中で、どうやって問題を解決しようとしたかというと、住宅利子のローンの控除をボックス1に閉じ込めてしまえ。ここで閉じてしまうんだといったわけです。閉じて、一方、課税ベースを広げることができたので、最高税率を下げたかった。だから、気持ちとしては、この問題に対処するためにローンの引けるところを閉じ込めて、最高税率を下げたわけです。
そして、資本所得の課税ですけれども、これはたまたまオランダがやったということでしょうけれども、ボックス3で、30%といいますけれども、みなしで資本収益からは資本所得、金融所得は収益率4%だと言うわけです。プリサンプティブにこう言うわけです。その4%に30をかけるから、1.2%。ある意味で富裕税の伝統があったので、そういうこともなじんだのかなと思います。
次に9ページで、もう一つの改革は、先ほど言ったように、オランダの問題というのは課税所得が小さくなった、最高税率が上がってしまった。それをどう解決しようかというのは、先ほど言ったことが一つですけれども、非常に思い切ったことをやったわけです。
課税ベースを増やすならば、所得控除を全部やめて、課税ベースを広げて、それでは負担の調整はどうするんですかといったら、税額控除をすればいいのではないか。そういうことを言ったわけです。
あくまでも、ねらいは2つあって、ねらいは、さっき言ったように、支払利子の控除等をどう閉じ込めるかということと、課税ベースを広げて、最高税率も下げていきたい。効率的にしたい。これがねらいだった。そういうことをやったということで、先駆的というか、すっかり所得控除がなくなった国ということです。
あと、御質問があるかもしれませんけれども、それでは税額控除をどこまでするんだ、どこまで引いてくれるんだ、ネガティブな所得税になるのかという御質問があるかもしれませんけれども、オランダというのは、一番下の税率が30%ぐらい。所得税が2%で、27~28%が社会保険料。社会保険料は賦課方式で徴収していますから、税務当局の人というか、財務省の人としゃべったら、税か社会保険料かというイメージはもうないんです。税だ。それは2%プラス27%か28%になっている。そうすると、所得の低い人たちは2%プラス27%か28%を足した、その範囲の中で還付してあげますということを言うわけです。したがって、ネガティブにはならないけれども、そういう意味で社会保険料が取られる。
それで、私が折り重ねて、それでは、社会保険料の方の収入が減るではないかと言ったら、しばらくぴんとこないような感じがしていて、というのは、税でファイナンスしているというつもりなので、アカウントが別でできているというイメージではなかったと思います。ということは、逆に言うと、高齢者になっても、この社会保険税はくっついてくるというのがポイントだと思います。
オランダの法人税をしゃべったら、これは大変でしょうけれども、限りなく資本が来てくれという極限的なケースだと思います。法人税も、更に25.5%で、聞かされたのは、この0.5は君たち何の意味があるかわかっているのか。これ以下にすると、日本のCFCというか、タックスヘイブン税制にかかるんだ。したがって、君たちのために0.5を付けてあげたんだと真面目に言っていました。
公認会計士の人たちの会議もセットしていただきまして、それも伺ってきました。
あとはテクニカルになりますから、あれですけれども、大体、今、この辺の国が、事実関係は後で確かめるとしても、私の頭だと、法定税率25%ぐらいのところで争っている。みんな懐にEU諸国の法定税率を書いた紙を持っていてしゃべっていたというのが印象でした。
「3.フランス」の方は、趣旨としては少子化の方で調査してきてくださいということがあったので、また、私は行っていないので、補足的なことは必要なら中里さんにやっていただきますけれども、フランスは、私も1回調べたことがあるんですけれども、社会保障の税源として一般社会税という特別なものをやっています。保険料では足りないので、1991年に第2の所得税というか、所得税よりも大きくなってしまった一般社会税というものをつくっています。これは労働ではなくて、資本所得もかけて、比例的な税でかけるから取れてしまったということです。
さて、それをそれ以上やるわけにはいかないので、社会保障をこれから充実するにはどうしたらいいかということで、随分大変ですけれども、社会保障目的のための付加価値税を上げようか。
申し上げたいのは、それでは、上がった税はどういうふうにするのかといったら、それは社会保険料を下げるんだ。さっきのドイツと全く同じロジックです。付加価値税を上げて、社会保険料を下げる。だから、これは私の私的な意見で、法人税の競争が一方であると同時に、社会保険料はこれ以上は上げられないというのがヨーロッパのどこへ行っても共通した論点だと思います。
少子化については、どうしましょうか。私が、このミッションの人たちから何回も聞かされていることは、質問に行ったら、おまえら何しに来たんだ、これは家族の問題であって、国がとやかく言う問題ではないのではないのか。あとは中里さんに必要ならパラフレーズしてもらいますけれども、ここに書いてあるように、家族政策は個人の選択の範囲。そして、その選択肢を増やすことが政府の役割かなというようなところを話してもらったということです。
以上です。
〇香西会長
中里さんの方からは、何かありますか。
〇中里特別委員
特にありません。
〇香西会長
ありがとうございました。
それでは、ただいまの報告について御質問等ございましたら御発言をお願いしたいと思います。手を挙げていただければと思います。
それでは、神野さんからどうぞ。
〇神野会長代理
細かいことですが、ドイツは確定ですか。私が見たものだと、去年の11月2日案というのがあって、まだ案でいいのかと思うぐらいだったんですけれども、これで確定でしょうか。
私の記憶に間違いなければ総合合算を、むしろ源泉分離ではなくて、11月2日案だと総合合算だったような気がするんですが、これは金融所得に対する課税と法人課税両方を含めてですね。
〇田近部会長
法人の方は、たしか国会にかかっているのではないですか。そういう意味でファイナルバージョンです。
金融の方は、我々も今回はこちらに頭があったのであれですけれども、よく聞くと、彼らも結局、源泉分離で終わらせてしまうのか、通算はどうするのかとか、その辺を聞いたら、我々はデュアルインカム・タックスと呼ばれたくない。ヨーロッパの国もいろいろあるんだろうというふうに聞きましたけれども、通算は認めて、税率が低い人には還付をしてあげるとかということを言っていました。
ただ、ここでお伝えしたかったのは、ある意味で経済的なフィロソフィカルなチェンジがあって、キャピタルゲインは課税する。そして、一律に課税する。そして、もう一個言ってしまうと、いわゆる法人の二重課税調整というのは、法人税も下がったし、一律に課税するんだからいいではないかという議論はしていました。
〇香西会長
どうぞ。
〇横山委員
横山です。私、お尋ねしたいのは、ヨーロッパでは環境税制改革というのはかなり大きなイシューなのではないか。EU諸国の税制改革論議の中で、特にドイツとかオランダは、その辺はどういう認識をなさっているのかという気がいたしました。
たまたま、私、3月19日、20日、欧州委員会の招聘で、ブリュッセルでTaxation for Sustainable Developmentというタックスフォーラムに出席する機会を得たんですけれども、御案内のように、EC指令でエネルギー関連の税について、最低税率についてもかなり引き上げようという動きまで出てきている。御案内のように、社会保険料引下げの財源として環境税の税収を当てているのは事実なわけで、この辺についてはドイツ、オランダでヒアリングしたときに何かお話があったんでしょうか。
〇田近部会長
ないというよりも、オランダの2001年のときにグリーン課税したという話は聞きましたけれども、今回、我々の関心が、何といっても、さっき言ったように財政再建と企業課税だったので、グリーン課税とのリンクまでは聞いていません。むしろ、横山先生が調べてこられたので、それをまた付加的に、こちらのものと重ねての議論がこれからできればと思います。
〇香西会長
井堀先生、どうぞ。
〇井堀委員
オランダのボックス・タックスなんですけれども、ボックス3の「資産性資産からのみなし収益(30%)」というときに、金融資産というのは預貯金以外の株とか、投資信託とか、時価評価しているのか。それから、納税者番号制度を入れて捕捉しているのかどうかということ。
それから、金融資産収益率4%というんですけれども、これは多分、金利が変わると実態と乖離するところがあると思うんですが、その場合、これは変えられるんですか。それとも金融状況とは無関係で、とにかく、この30%でとにかく走るということで、そういうリンクは考えていないということですか。
〇田近部会長
納税者番号のところは、この国はある。勿論、なければ管理できないですからね。
それで、どうやって評価するかというと、例えば1月1日と12月31日、両時点の資産の時価を評価して、それを2で割るというような形で平均化して出す。
あと、ここをどう課税するかということで、オランダが、結局、富裕税の伝統があったと思うんです。それで4%かける30で1.2%だという形でやったと思うんですけれども、4%が変わるか変わらないか。ただ、2001年から始めて、2007年まで変えていませんから、だから、オランダまで行くと、その辺の所得にかけようとしても、幾らでも、隣の国でも行ってしまうので、残高にかけるんだということかな。だから、いわゆるデュアルインカム・タックスの議論もしているということです。
〇香西会長
どうぞ。
〇土居専門委員
御説明ありがとうございました。1点感想と、1点御質問させていただきたいと思います。
このEUの3か国を見て、やはり、単にマーストリヒト条約というか、安定成長協定というのは、単にマイナス3%というか、財政赤字対GDP3%以下にするという話なのではなくて、とにかくゼロにできるだけ近づけるということなんだ。そういうことに不断の取組みをしていくということだという姿勢を改めて感じました。
もう一つは、ドイツのビューでは、やはり付加価値税、これは共同税で、連邦も、州も、連邦参議院を通じながら、ともに増税に対して責任を負うということを、連邦だけではなくて州もきちんと説明責任を負うというところの姿勢を感じた。
あと、日本が1997年の呪縛というか、付加価値税を引き上げたら、すぐ景気が悪くなるのではないかというふうな、勿論、議論はドイツでもあったと聞いていますけれども、だからといってヘジテイトするわけではないということは非常に強く印象深く聞かせていただきました。
1点質問は、ドイツの営業税の損金算入の否認というところについて、どういうものについて否認したかというのを教えていただきたいと思います。
〇田近部会長
土居さんの最初の話はまさに同感で、同行した財務省の小多さんが、いろんなところでマーストリヒトの3%と言うわけです。すると、ドイツの人はきょとんとして、その3%というのは下限なんだ、それでいいというルールではないんだということを再三言われていました。それは私も思いました。
あと、消費税を上げたときの話は彼らもさんざんシミュレーションをしていて、やはり彼らはものすごくラッキーだったというか、ここで景気がよくなったから隠れてしまうというのがあって、だから、土居さんの話に同じラインで付け加えさせてもらうとすると、やはり景気のいいときに乗った。あと、コアリションガバメントがあったので、政策的に耐えられたというのがあったのかなと思います。
営業税ですけれども、ほかの方は余りおなじみないかと思いますけれども、ドイツの地方法人課税です。これは中世以来の長い歴史があったんでしょうけれども、まず、これは3本立てでかかっていたわけです。これは、法人も、個人も、人的会社も、賃金部分と営業資本部分と所得とかかっていたわけです。それが1980年に賃金部分はやめた。1998年に資本部分をやめた。
土居さんの御質問ですけれども、今度の改正前は課税ベースがどうなっていたかというと、所得というのは連邦の法人所得税の所得だと思います。その所得に、いろいろありますけれども、長期支払利子の2分の1を割り増すということをやっていたわけです。
あと、ぐちゃぐちゃといろんなことをやっていたのですっきりしないということで、今回の改正は連邦所得税の所得ベースに支払利子やリース代を全部足して、その25%を足し戻すということで、課税ベースがこれで多少広がったのかもしれません。その辺はちょっと自信がないですけれども、シンプルに足したということです。
〇香西会長
どうぞ。
〇國枝専門委員
一橋大学の國枝でございます。
ドイツの税制等でわからないところが多々ありましたので、今回調べてきていただいてありがとうございました。
1点でございますが、金融所得のところで、配当で二重課税の調整が必要なくなったという話があるわけですけれども、もともと法人段階で支払利子と配当の取扱いが違うので二重課税という話があったわけですけれども、今回、ドイツの方で法人段階で過少資本税制、すなわち附帯利子と株式会社の未納所得の取扱いが違っていたものが原因でそういう問題が起きていたものを難しくしようとしている。
残念ながらというか、政治的な理由で非常に制限されたというふうには聞いておりますが、そういう意味では法人段階で両方の課税の所得の流れを同じようにとらえるとともに、一定の限度ではありますけれども、法人段階でも利子、それに配当についても同じような税制上の取扱いをするという動きとも見られるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
〇田近部会長
中里さんもここにいるので、補足してもらえると思います。
答えが外れたら、もう一回聞いていただくとして、非常に面白い議論をしました。いかにもどうしたというのは、さっき時間がなかったからはしょったんですけれども、4ページの数の、増税収ですけれども、法人税を30%に下げたわけです。そうしたら、國枝さん、個人の最高税率が45%になったわけです。そうすると、明らかに人的会社が内部留保をして45%かかったら、これはたまらないわけです。
それで、中里さんが財務省でベリーグッドクエスチョンをしたんですけれども、なら、何で人的会社は法人並みにしないんだ。法人並みにすれば法人税は30%になるではないか。そうしたら、我が方はといろいろ長い御説明があって、人的会社がいかに重要な役割を果たしているか。したがって、ここで人的企業に関する所得税率の軽減というのは、人的会社の内部留保にかかる税率を下げる。理屈でも何でもないことを井上さんの前で余り歯切れよく言ってもあれかもしれませんけれども、理屈でもない易しい取扱いをここでした。そういう意味で、國枝さんのおっしゃっているように、税率をそろえてしまったということだと思います。
ここでそろえたから、あとは勿論、二重課税調整はしていませんけれども、基本的には法人税を30%まで下げて、個人の人的会社の内部留保課税を30%にまでしたんだから、もういいだろうというのが議論です。
〇香西会長
どうぞ。
〇佐藤専門委員
オランダのボックス・タックスについて、もう一つ確認的な質問なんですけれども、まずボックス1の資産性資産なんですけれども、これは具体的に金融資産の場合、例えば固定資産が入るとすれば、固定資産税も兼ねているのかなということ。
それから、みなし収益率が4%ということは、逆に考えれば、それを超過した部分については、当然、課税しないし、逆にその分、キャピタルロスみたいなことが生じた場合、収益率が4%以下だった場合についても、要するにロス・オフセッティブはしないということになるので、例えばノルウェーなどでやっているようなシェア・オールド・インカム・タックスとは全く逆の考え方になっているのかなということ。この辺はオランダの中で議論が出てこないのかなと思いました。
もう一つ、私の聞き間違えかもしれませんけれども、住宅ローン利子控除について、これはボックス1の中で調整してしまうんでしょうか。ただ、そうなると累進構造が残っているので、やはり問題としてはそのまま残っているのではないかということなんです。それがオランダに関する質問です。
それから、さっきの横山先生の質問にかぶせるようなんですけれども、なぜドイツにおいて、配当に関して二重課税の調整をしなくていいのかということについて、例えば、よく北欧などの国では、要するにスモール・オープンエコノミーなので、要するに、しょせん、株主というか、経済学で言うところの限界的投資家というものですね。どうせ、彼らは外国人であったりするというケースがあるので、だとしたら、とりたてて国内の、要するに企業における課税という問題と、要するに個人レベルの課税の問題を切り離せてしまいますので、そういう議論になっているのか。ただ、ドイツはやはり小国ではないので、その辺はEUの中でもやはり影響力は大きいと思うので、この辺はどういう認識だったのかと思ったんです。
〇田近部会長
オランダの方は、専門的になりますけれども、佐藤さんの言われるとおり、ボックス3にしますから、せっかく税がロスを引いて、税引きの収益率の分散をなめらかにするという効果を失っていることは確かです。それより、私の理解は、そういう支払利子控除を、とにかく総合課税ではなくてボックス1で閉じ込めてしまう。
それでは、限界税率が高いではないか。そのとおりで、ここが、このボックス・タックスのアキレス腱になるわけです。なぜかといったら、自営業者をやめて会社をつくって、会社から配当をもらえばボックス3に行ってしまうわけです。その間で、それはだめだというのでうまくできていてボックス2があって、そして、5%もクリアーしてしまって、親兄弟に株を薄めてしまえばボックス3になってしまう。
そこがアキレス腱で、だから、アドホックな改革ですけれども、小多さん、これはどこかに書いてもらっていませんでしたか。
最後ですね。言葉で言います。結局、ボックス1は、それでは課税逃れが起きるので、所得を1割引いてあげましょう。佐藤さんが言っているとおりで、ボックス3が損益通算できないことは確かだ。だけれども、それは私が言ったような理由だろうと思います。あと、北欧よりももっと資本が飛び交う。
それから、限界税率がかかってしまうだろう。それがまさに、二元的所得税もこれのアキレス腱で、ボックス1からボックスジャンピングといったか、ボックスホッピングというのか知らないけれども、それが起きてしまう。
二重課税の方は、中里さんに言ってもらいましょうか。今、付加的な説明は私はこれ以上はできないんですけれども、さっきのものと付加的に加えれば、これも前から出ていますけれども、EU諸国ではインピテーションはできない。自分の国の株主にだけインピテーションで税を戻してあげることはEUの約束でできませんから、制度的にそういう形での二重課税調整は縛られてしまっているということです。
〇香西会長
そろそろ時間がかなり迫ってきているといいますか、もう一つレポートがありますので、もう一人、手を挙げられましたので、そこで終わりにしたいと思います。
どうぞ、神野先生。
〇神野会長代理
私の理解が間違っているかもしれませんが、先ほどの御質問が出た営業税の損金 算入の話で、これは営業税というのは固定資産税と同じように収益税として発展してきたので、損金として認められて、つまり法人税から控除される。それを控除させないというふうに否認したという意味ではないんですか。
〇田近部会長
そうです。否認してあるんです。
〇神野会長代理
ちょっと違ったような説明だと思ったんです。
〇土居専門委員
私はそういうふうに理解しています。
〇田近部会長
彼が聞いたのは、更に所得ベースは、課税ベースは何ですかということです。
〇香西会長
それでは、これで最後にします。どうぞ。
〇加藤専門委員
明治大学の加藤です。いろいろありがとうございました。
フランスの件で1点ほど確認と、伺いたいんですが、最後の13ページで、フランスにおける家族政策。これは税と直接関係ないのかもしれないんですが「家族政策は、個人の選択の自由の保障を目的とする」というふうに書いてあるんですが、いろいろ聞きますと、フランスは背景にはどちらかというともっと積極的な形で人口を増やしたい、あるいは家族を増やしたいというような背景があるんだろうということをよく言われておりまして、こういうような形で、これが表向きの話なのかどうなのかという点で、そのときに、例えば一般社会税の話がありまして、これ以上は上げられない。
田近先生がおっしゃったように、例えばEU全体が付加価値税を上げて社会保険料を減らすという流れの中で、フランスの一般社会税は上げなくて、あるいは逆にそういった財源というのは、やはり付加価値税の方から持っていくような形になっていくのかどうか。その点について教えていただければと思います。
〇中里特別委員
首相府でしたか、内閣府でしたか、そちらの家族政策の担当の方の説明ですと、人口が増えようが減ろうが、そういうことは関知しないというところまで、かなり強くおっしゃっていました。自由の保証が重要だそうです。それをどう外国の人が曲解するかは御自由だという感じでした。
付加価値税ですけれども、これはドイツの成り行きを見ながらということでそれを見ているという段階で、ドイツがうまくいけばフランスも社会保障目的で付加価値税を増税するというふうに踏み出すような言い方でした。
〇香西会長
いろいろ、まだ御意見・御質問もあるかと思いますが、もう一つの議題もございますので、時間の関係もありますので、この場での質問はこれまでということにして、もし、更に御疑問等がありましたら、事務局なり、あるいは直接田近部会長のところへメールか何かで御連絡いただければ、と思います。
それでは、前回の会合でお伝えしておりましたアジアの調査でありますけれども、今回はヨーロッパの調査を聞かせていただいて、大変革新的な情景が皆さんの頭の中にも入ったのではないかと思うんですが、同じような問題がアジアでどうなっているかということも含めて、4月15日から19日までシンガポールと韓国に井堀委員、永瀬委員、水野委員のお三方に出張していただきまして、最近の税制改正などについての調査をお願いしたいと思います。
この海外調査結果については、5月11日の金曜日に、またこの企画会合を開きまして報告していただく予定にしておりますので、よろしくお願いします。
なお、簡単で結構ですけれども、次の御出張に際してどういう点を問題としてこられるかということにつきまして、井堀委員、永瀬委員からお話を聞きたいと思います。水野委員は本日は都合によって御欠席ですので、お二人から簡単に御説明いただきたいと思います。
〇井堀委員
井堀です。
今回、シンガポールと韓国に行くことになったんですが、税調はアジアに調査するということ自体が相当画期的なことで、かつ、今回、初めてシンガポールに行くということで、韓国には平成2年に不動産関係の税で行ったようですけれども、やはり、これからの世界経済の中でアジアというものが一つの大きな成長の軸になりますし、日本の企業はいろいろな経済活動でアジアと関係が深くなっておりますし、税制面でも日本の法人税が高いという、アジアとの比較という話も出ていますので、そういった意味で、今回、いろんなスケジュールの関係で非常にばたばたしておりますが、一応、シンガポールと韓国に行く機会がありますので、法人税等も含めて、いろんな経済活動と税の関係はアジアの視点から見えるかと思います。
特に、シンガポールは、今回、法人税率を下げて消費税率を上げるという、法人税率が20%を18%に下げるとか、日本の消費税に当たるGST、いわゆる付加価値税ですけれども、それを5%から7%にして上げるという、日本でも消費税を上げるというのは一つの選択肢ではありますが、政治的にはかなり厳しい選択肢だと思うんですが、それをやろうとしていますので、それの効率性と公平性に与えるいろんな評価等もお聞きしたいと思います。
それから、先ほどお話ししましたように、進出している日本企業等も結構出ていますので、シンガポールでは税率以外にもいろんな税制面等の優遇措置等がありますので、それから、租税回避等の問題も出ていますので、その面で実態的に法人に対する課税がどういう形で行われてきているのかという点も興味ある点だと思います。
もう一つは、韓国は税制改正に関しては、特に最近、大きな動きはないんですけれども、日本と同じように外国への企業進出等では似たような状況を抱えていますし、それから、韓国とシンガポールの日本との大きな共通点は、どちらも少子化がかなり深刻で、日本は非常に少子化が進行している国ですので、それを、先ほどフランスのテーマがありましたが、税制上、あるいは財政的にどういう形で採用しているのかという点も併せてお聞きしたいと思います。
大体、以上です。
〇香西会長
永瀬さん、何かありますか。
〇永瀬特別委員
このシンガポール、韓国、あるいはそれ以外の東アジアの国々は超低出産国と言われていまして、特に韓国は常々、すごく日本と似ている。大体、学歴にかかわらず、女性の労働力率が低いですとか、急速に少子化が進んでいるですとか、そういう中でどういうようなことを、今、考えているのか。
先ほど、フランスは全く自由だというような話だったんですけれども、家庭に子どもが2人ぐらいいて、子どもが幼いと、いろんな手当を合計すると、大体、月額6万円ぐらい給付するような一つの合意。これもまたしょっちゅう変わるので、どういう理由でちょこちょこ変わったりするのかよくわからないので、そういう一つの考え方があるわけですけれども、非常に日本と、例えば拡大家族が多いとか、女性が比較的、これまで家にいたとか、しかし、日本より変化が非常に早いと言われているような国で、今、どういうことが考えられているのかというのを少し聞いてこられたら、また、シンガポールの方はかなり特異な人口に対する特別な施策なども取っているようでございますので、少し聞いてもらえたらと思っております。
以上でございます。
〇香西会長
どうもありがとうございました。ヨーロッパに続いてアジアの状態も調べるということは、グローバル化が進んでいる中での日本の対応を考える上でも非常に参考になるのではないかと期待しております。
それとも関連いたしまして、各国の税制の在り方について、実はIMF、国際通貨基金から世界的な税制の在り方についての報告といいますか、IMFに属する税制専門家グループがありますので、そこから税制改革の動向等について、IMFではそれをどう見ているかといったようなことを含めて議論をするセッションを設けたいと思っております。
一応、その点については相手方の了解も得ておりまして、5月17日木曜日ですが、午後3時から5時までの間、予定を置いておりますので、具体的なテーマ等についてはまだ調整が終わっておりませんけれども、有意義な会合にできればと思いますので、皆様もできれば御参加いただきたいと考えております。
それでは、次の議事ということですが、調査分析部会の方に移りまして、田近部会長に司会をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
〇田近部会長
それでは、これから調査分析部会に入りたいと思います。
まず、調査分析部会の審議の進め方ですけれども、基本的に、あるテーマに沿って委員の方からプレゼンテーションをしていただき、それを基に皆さんで議論をしていただくという形にしたいと思います。
今日は、吉川さん、井堀さん、中里さんの3グループのうち、中里さんに広い意味のというか、租税原理というものを政策に反映させていくという考え方を話していただくということで「税制改革の背景」ということでお話をいただきたいと思います。
先ほど、いろいろヨーロッパの報告をしましたけれども、それらもこういう考え方を非常に色濃く反映したものなんだろうと思っています。
中里さん、議事が時間的にはうまく進んでいますから、20~25分ぐらいでお願いします。
〇中里特別委員
ありがとうございます。それでは、手短に済ませます。
簡単にメモを用意させていただきましたので、それに従いまして御報告を申し上げます。全体が漢数字で一、二、三、四というふうになっています。
一のところですけれども、ここは経済学の専門家の方が多くいらっしゃいますので、租税の原則というときにアダム・スミスとか、ワーグナーとか、いろいろな経済学の理論で出てくるんですけれども、私どもは法律家ですから、法律でどういう議論がなされているかということで、最高裁等でどんな議論がなされているとか、法律家にとってみると、アダム・スミスよりも最高裁判所の方が偉いということになりますので異論はあろうかと思いますが、御勘弁いただきたいと思います。
税制改革というのは、法律改正によって実現されるもので、その法律改正の際に経済学の議論とか、家族政策の議論とか、会計学の議論とか、さまざまな議論が取り入れられるということですので、法律がどうなっているかという大まかな話をさせていただきます。
租税制度がなぜ存在するかと申しますと、2つの目的ですが、一番大切なのは、そこにある収入の獲得という目的でございます。
これにつきましては、大島訴訟における最高裁の大法廷判決が租税制度というのは、国家の財政収入の獲得を目的とする云々みたいなことを言っていますので、我々はこれを前提にスタートせざるを得ないということです。
この収入目的、場合によっては財政目的と申しますけれども、この追及は租税制度の本源的なものでございまして、これがないと租税ではないと言えるかどうかはわかりませんけれども、一応そういうふうに考えられます。
これはどこに定められているかというと、憲法30条が納税の義務を定めているというところで、国家の主要な収入は租税から得るべきであるという租税国家という理論からスタートするわけです。
ただし、租税をかけますと、一定の経済的な効果があるものですから、そこを逆手に取って、付随的に租税制度を何らかの政策目的実現のための手段として、意図的に用いるということがあるわけです。これはあくまでも付随的な目的でございます。
租税制度が家計や企業の活動に影響を与えるということを逆に利用しまして、一定の租税上の措置を取ることによって、企業なり家計の行動を一定の方向にコントロールするということですが、こちらが主要な目的であるということは、少なくとも法律上はないということです。
その収入目的の追求に当たって、重要な原則が幾つかございます。
1つは、憲法84条、法律に基づいて課税を行うということです。当たり前のようですが、法律よりも下位の規則等によって、例えば会計原則によって課税を行うとか、あるいは通達によって課税を行うということは憲法違反ということになります。
憲法14条で法の下の平等というのがうたわれていますが、納税者の取扱いが公平であることが必要であると考えられるわけです。
これは憲法上の原則かどうかは、論者によって意見が異なるんですけれども、不必要に経済効率を損なわないように課税権を行使するという一定の中立性的な考え方も、場合によっては憲法14条に読んでもいいかもしれませんし、憲法31条で読んでもいいかもしれもせんが、そういう感覚も一定程度はございます。
政策目的の追求に当たっては、これはまたいろいろな租税特別措置をめぐるさまざまな法的な議論があるわけですが、何と言っても重要なのは、有効性の吟味というのが必須でございます。
それをある種の課税上の取扱いを主張なさる方が、そういう措置を採用するとこういう効果があると幾ら主張いたしましても、風が吹けばおけ屋がもうかるというような主張であることは多いわけですね。
税制でできることとできないことを区別しないと、とんでもないことになってしまいます。税制でできないことを税制でできるかのごとく主張して、減税を取ろうとするという動きは常に存在するわけでございまして、それがいいとか悪いとかは政治的に決まる話ですから、学者がコメントをするような話ではないんですけれども、一応、理屈の上では税制でできることを税制で追求するようにいたしましょうということで、税制でできないことを税制で追求するというのは、理論矛盾ということになります。
私たちの法律の立場から言いますと、政策目的の追求に当たって、不平等な取扱いを意図的につくり出すのが租税特別措置ですから、租税特別措置については余りいい感じは持っていないんですが、これも考え方で、効果のある租税特別措置であれば、これはいいことだと言わなければいけませんけれども、効果があるかないかの実証というのは非常に難しいものですから、実際には水かけ論になってしまって、どちらが正しいのか、だれもわからないということになる場合もありますので、こういうところで経済学の実証が生きてくれば、一番よろしいのではないかと思っております。
田近先生と何度もヨーロッパで議論をしまして、ドイツやオランダ、その他の今度のヨーロッパ出張で考えたことが二に入ってまいります。
これは課税上の差異が存在する際に引き起こされる裁定取引ということでございまして、こういう考え方をミクロ経済学的というのでしょうか。市場における経済活動によって、財政制度が潜脱されてしまうということが、これは別に脱税とかそういう犯罪的な話ではなくて、マーケットがマーケットである以上、起こってくるという話でございます。
つまり法律でこういう場合には課税するというふうに定めたからといって、そのとおりの課税が行われるとは限らない。ループホールの存在がございますと、合法的にその課税法規を選択することが可能ですし、執行の限界がございますと、脱税のようなことが行われるということがあります。いずれにせよ、そういうことで差があると、裁定取引が引き起こされる。これは経済学的には当たり前のことですが、そういうことがあるということです。
課税上の差異が存在した場合に、それを利用した裁定取引が行われるということの例で、非常に雑な例ですけれども、課税がなしの場合にAプロジェクトとBプロジェクトがあって、限界的な収益率が税引き前が10%だとすると、そこに課税上の差異を導入して、Aプロジェクトは50%で課税することによって、10%が5%になる。一方、Bの方は非課税というふうにする。そして裁定取引が行われると、例えばの話ですけれども、Aプロジェクトの方はそこに対する投資が減りますので、収益率が上がっていって、税引き前14%、税引き後で7%というようなことになります。
そうすると、Bの方は上と下で均衡が達成されるわけですから、税引き前も税引き後も7%ということになりますので、裁定取引後、要するに市場における経済取引や経済活動における調整によって、両者とも税引後収益率が等しくなって均衡が達成される。
不平等なようですが、Aプロジェクトに投資してもBプロジェクトに投資しても、税引き後の収益率は7%ですから、実は平等になってしまうわけです。法律上はAは課税されて、Bは課税されていないんですが、実際には全く平等になってしまいますので、こういうのをどう扱うかというのが非常に深刻な問題になってきます。
もう一つ言いますと、裁定取引の結果として、非課税プロジェクト。ここではBですが、これにも課税の効果が及ぶ。課税なしの場合に10%の収益率だったのが、つまりAに対する課税が行われ、Bには課税がなされないにもかかわらず、裁定取引によって7%に税引後収益率が低下いたしますので、課税のなされないプロジェクトにも課税の効果が及ぶ。インプリシッドタックス、暗黙の課税ということがある。懐かしいハーバーガーモデルの世界です。
人的に非課税である納税者は、課税プロジェクトAに投資すると収益率が高いことになります。これはなぜかと申しますと、Aに投資して50%で課税される人間は7%の税引後収益率ですが、そもそも人的に非課税の人間は14%の収益率が得られるということですから、ほかの人間が課税され、自分だけが課税されないという状態が一番望ましいということですね。
こういう状況をどうやって人的につくり出すかということがある種、能力ということになるのかもしれません。こういう努力というのか、そういうことを仕事にしている方もいらっしゃるということです。結果として、課税資産は非課税納税者に集中するということが言われております。
ただ課税されるときに、自分だけ非課税となれば、自分だけ収益率が上昇するということを利用して、さまざまな行動が行われるわけでございまして、これらが裁定取引でありますし、それが極端な場合には、タックスシェルターというふうに呼ばれるものです。このテクニックは粉飾決算とほとんど同じテクニックで、目的達成することができると思います。
租税制度が複雑であればあるほど、この裁定の機会は増加いたします。なぜかというと、複雑であるということは、ある場合には課税される、ある場合には課税されない。その要件が込み入っているわけですから、裏をくぐるということも簡単になるということですね。
したがって、簡素な税制は裁定の機会を減少させ、結果的に公平性や中立性にも資するところがある。裁定取引を引き起こしにくい租税制度の確立が重要であるということになります。これは非常に重要なポイントではないか。先ほど、田近先生がおっしゃったドイツの税制改革等は、この方向のものと理解できます。
三でございます。この裁定取引を引き起こしにくい租税制度への移行というのは、いろんな表れ方があるんですが、1つは個人段階で徴収される租税から企業段階で徴収される租税の流れのようなものがあるのではないか。
これは裁定取引だけとは限りませんけれども、執行のコストの問題も大きいんですが、世の中の全世界的な流れを見てみますと、個人段階で徴収される租税よりは、企業段階で徴収される租税というのが、どんどん比重を増しているのではないかという気がいたします。
同じく企業段階で徴収される租税においても、投資コストに直接関連するような租税から、そうでない租税へのシフト。具体的には所得に対する課税から、付加価値等に対する課税へのシフトのようなものがあるような気がいたします。
金融所得が比例税率で課税され、給与所得や事業所得が累進税率で課税されるというのは、先ほどのヨーロッパでもこういう方向がそれぞれの国で見られたと思いますが、日本もある意味この方向ですけれども、これはそういう意味では、裁定取引を起こしやすい所得と起こしにくい所得を分けて、うまくアレンジした結果であると考えることができます。
租税原則ということについて、新聞等で非常にさまざまな議論が行われているわけですが、私たち法律家から見ると、租税原則というのは標語として重要であるが、それ以上のものではない。別に法原則ではないということです。ただ、標語としては政治的に非常に重要ですから、そのことを否定する意図は全くございません。
公平、中立、簡素というのが代表的なものです。公平のところは先ほどの裁定取引を引き起こしにくい。言葉を変えますと、逃れにくい税制ということになると思いますが、そういう逃れにくい税制の確立、すなわち裁定取引を引き起こしにくい租税制度の確立を考えますと、公平よりは公正の方がいいのではないかという考え方は、私ども法律家にとっては非常に自然に入ってくるものです。
中立というか成長というか、これは一定程度は言葉の問題ではございまして、お気持ちが成長と言いたいというお気持ちのこもっていらっしゃる方もいらっしゃると思いますし、中立と言いたいというお気持ちを持っていらっしゃる方もいらっしゃると思いますが、法律家から見るとどちらも似たり寄ったりで、大した差はない。ただ、その気持ちのところが実際の税制改革では重要ですから、気持ちを無視するつもりは全くございません。例えば経済効率のみから言いますと、累進税率よりは累退税率がいいという議論。これはある意味、ミクロ経済学的には当然なんだと。所得が多いほど能力が高い。仮にそういう前提があるとすると、能力の高い人ほど税率の限界税率が低くなれば、能力の高い人はより働くようになる。だから、成長に資するというような議論は、ある意味当たり前なんでしょうけれども、まさか法律家としてこういうことを言うことは、とてもではないですけれども、できません。その方がいいと思っていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれせんが、法律家としては、こういう議論はできない。経済学的にどんなに正しくても、なかなか言いにくいところです。結局、経済活動を害さないというところが最低限の要請でございまして、これについて中立と呼ぶか成長と呼ぶかというのは、その人その人のお立場を明確に示すことはあっても、我々から見ると余り重要ではないと思います。
簡素ということですが、コンプライアンスコストの削減というのは、常に必要でございますし、簡素であれば裁定取引を引き起こしにくいというところから見ても、これは非常に重要な点ではないかと思います。
いずれにせよ、裁定取引を引き起こしにくい租税制度が必要であるという二で述べたことがここでも言えるわけでございまして、金融所得と給与所得や事業所得を別のやり方で課税するというのも、そういう方向を目指していると考えることができるのではないかと思っています。
先ほど、ドイツで法人税率を引き下げて、課税ベースを広げる。その結果、国外に所得がシフトされることを防ぐという議論がありましたけれども、この課税の管轄権の問題について、四で簡単に触れておきました。
これも裁定取引との関係で述べてあるんですけれども、課税には管轄権があるということが非常に重要でございまして、日本が課税できるのは一定のもの、一定の所得に限られる。これは法的にそうでございまして、どんなに頑張っても日本と関係のない人の日本と関係のない所得に対して、日本国が課税をするということは実際にできないということですね。管轄権があるということが非常に重要な問題を引き起こすわけです。
管轄権があるということは、日本の税率をどのようにいたしましても、高くしようが低くしようが、外国と差があれば、その差によって裁定取引が誘発されるということです。
だから、外国と同じような税率、同じような課税方式を取るということが裁定取引の誘発を防ぐ、裁定取引を誘発しないということで、ある意味望ましいということになります。
自国だけ独自のというふうにしますと他国と違う。そうすると他国と自国の差を利用して当然に裁定取引が行われ、課税は逃れられてしまうということが起こるわけです。
管轄権の問題は、国際課税と地方税の両方で出てまいりますが、特に国家の課税管轄権というのは、国際法により厳しく制限されるわけです。例えば日本の課税庁が日本の国外で調査や徴収を行うと、これは国際法に違反するということになりまして、多くの場合には、このような行為は無効とされるでしょうから、意味がないわけですし、相手国から国際法違反ということで、国家責任を追及されるとになります。
日本国憲法によって、日本では国際法が国内法律に優位するとされている。これは憲法の解釈上そうなんですけれども、その結果、日本の課税権が制限される場合は少なくないということです。
この憲法解釈と憲法の規定によりまして、日本の国内法律をどのように整備しても、国際法の方が優位になってしまいますので、その意味で日本は裁定取引を誘発しやすい憲法解釈が取られている。それは批判しているわけではありませんが、そういう傾向があるのではないというような気がいたします。
地方税にも当然、地方団体の課税管轄権というのがあります。地方団体固有の課税権が存在するというのが、今の普通の考え方ですから、この課税自主権がある以上、課税管轄権も当然に生まれるわけです。
この課税管轄権の衝突を調整しているのが、地方税法でございます。この地方税法で調整しているがゆえに、日本では地方団体同士の課税権の衝突というのは、余り目立った形では起こってこないということです。
地方税法の縛りがなくなりますと、複数の地方団体から同時に課税されるという二重課税が日本国内でも起こるということが容易に予想されるわけです。
もう一つは、これは難しいところですけれども、そうすると今のように管轄権という立場から考えますと、地方団体の課税権も管轄権で縛られ、国家の管轄権も課税管轄権で縛られる。つまり地方税の課税の話と国際課税の話というのは、同様の問題だということになります。
といいますと、どういうことになるかというと、例えば国税は応能だけれども、地方税は応益だというような議論というのは、この管轄権の観点から言うと、非常に成立しにくいのではないかという気がいたしております。絶対的に成立しないということではなくて、それは程度の問題なんでしょうけれども、国外と地方団体の課税権の調整の話というのは、似たところがあるというところが、これから詰めていかなければいけないというところではないかと思います。つまり、地方団体の課税権が応益であれば、国際課税の中における日本国の課税権も応益だということになってしまいますので、それは一定の管轄権の範囲内で課税できるということを応益という言葉で呼んでいるということに過ぎないのではないかと思われるわけです。
企業会計との関係でございますけれども、日本においては課税における会計の役割が非常に大きいということです。
よくトライアングルということをおっしゃるわけですが、これは誤解を招く表現であると思われます。正確には三重構造で、企業会計があって、それを取り入れた商法、会社法があり、それを取り入れた租税法があるということで、法律家は普通はこの三重構造という言葉を使っております。別にトライアングルと言ってもいいんですが、一辺が欠けているのが果たして三角形かどうかというのは、非常に深遠な問題ですので、私どもは三重構造と呼んでいます。
ここで裁定取引を会計的な発想が引き起こす場合があるんですが、それは1つは企業会計における時価主義の浸透が一部の場合についてのみ時価主義ということになっておりますので、一部の資産は時価主義で評価され、一部の資産は取得原価主義で評価される。ここに裁定取引が行われる土壌が生まれてきます。
デリバティブ等のオフバランスの取引きですけれども、これは資産と収益の関係が崩れますので、例えば法人税法の22条に資産という言葉があるわけですが、この資産にデリバティブのポジションが入るのか入らないのかといった執行上非常に難しい問題を引き起こすわけですが、それよりも何よりも深刻なのは、オフバランス取引によって利益操作が容易になる。つまり裁定取引が容易になるということです。
過度に企業会計に租税法律が依存しますと、裁定取引を誘発するという効果が起こってくるわけで、どこまで会計に依存し、どこから法律で定めるかというラインの引き方が非常に難しい問題になるということです。
以上、いろいろ申し上げましたけれども、収入目的を追求するためには、裁定取引の行われにくい制度を仕組んでいくことが必要で、そのためにはそこに言った管轄権の話とか会計の話とか、取引きの種類の話とか、そういう問題を考えた上で、裁定取引の余り生じないような租税制度を確立していくことによって、結果的に税収も確保され、中立的で一部のもののみが租税を逃れることのない、望ましい租税制度ができるのではないか。
そのためには課税ベースを動かすことも必要な場合もあるかもしれませんし、いろいろなことを考えていかなければいけないと思います。非常に抽象的な話だけ、今日はさせていただきました。
〇田近部会長
ありがとうございました。憲法30条が出てきたところでどうなるかと思いますしたけれども、最後は非常にわかりやすい話だと思います。
最初に私がしゃべってしまいますけれども、もし、さっきのAとかBという話で、同じ収益率でAが50%課税、Bが非課税、したがって、課税後は50になると、そんなばかばかしい投資できないということで、マーケットが裁定して、Aの方の投資が減って、収益率がここの場合は14、Bの方が投資が増えて収益が下がる。
1つ、中里さんとeメールの中で言っていたのは、この過程で何が起きるかというと、Bの資産を持っている人は、結局、持っているだけで資産価格が上がるわけですね。キャピタリゼーションといいますけれども、ですからある税を優遇してしまうと、その資産を持っているだけで大金持ちになってしまう。それは身近にいっぱいあるのかもしれませんけれども、そうだと思います。
中里さんの示した例にあるように、Aが14%、Bが7%の収容率になったときに、非課税の納税者がいるとすれば、それはいろんなことがますますできますというのが私の理解する限り、中里さんの話のポイントで、そういうのを防ごうといったって、ますます大変になってしまうんだから、それができないような税制に、いい悪いということではなくて、せざるを得ないというのがポイントだったと思います。
僣越ですけれども、夜2人でeメールでやり合った話の続きをさせていただいて、後は今日は4時までですから、あと30分ちょいぐらい御自由に議論をいただきたいと思います。
増渕さん、お願いします。
〇増渕委員
私は、ごく簡単な質問を1つだけですが、最適課税論的な状況という表現が2枚目のところにあるんですが、これはどういう意味合いなのかというのがよくわからなかったので、教えていただきたいと思います。
〇田近部会長
大した意味はないです。裁定取引の生じやすいものと生じにくいもので課税の仕方が単に分かれてくるという、ただそれだけの話です。
どうぞ。
〇吉川委員
2点あります。1点目は、中里先生の一丁目一番地というんでしょうか、先ほどアダムスミスよりも言葉が重いとおっしゃった最高裁の判断は私も尊重したいと思うんですが、それの一丁目一番地というのは、収入を確保することである。私たちの言葉で言えば、公共サービスに必要な収入を確保することである。
それは、わかるんですが、今もちょっと言いましたとおり、必要な収入ということが、これはいわずもがな、当たり前のことですが、必要だと考えられる公共サービスの供給と同時決定されるわけです。
ですから、我々経済学者の言葉でいいますと、ある種のサービスというのは、通常市場では供給できない。例えば外交でありますとか、司法もそうかもしれませんが、いずれにしても、いわゆる公共財、パブリック財、これが純粋な公共財、ピュア・パブリック財、これは市場ではプライベートには供給できない。まさに純粋な公共サービス、こういうものもあるわけです。
しかし、それはどこの国でも比較的小さいわけです。それだけを、もし、公的なセクターが供給したら限りなく小さく政府でいいかもしれません。世界中どこでもそうですが、現代社会では、原理的には市場でも供給できるんだけれども、何らかの理由で公的な部門がそれに関わって供給している。例えば初等中等教育、私立の学校もあるわけですが、公立学校がたくさんある。
この言わばグレーゾーンが非常に広い。医療保険もそうですし、ある意味では年金もそうかもしれない。そうしたグレーゾーンでどこまで公的な部分が関与するかというのは、正解はないわけです。それぞれの国で歴史的、社会的、あるいはそれぞれの国民が持っている倫理感、そうしたものによって決まってくるわけです。
ですから、申し上げたいことは収入の確保ということですが、どういう公共サービスをどれだけ供給するかということの同時決定であって、それは今後の、私は抽象的な言い方をしたかもしれませんが、実は日本の税制をこれから考えていく上でも、当然そこは大きな問題になってくるだろうと思います。社会保障というキーワードを1つ挙げれば、わかっていただけると思いますけれども、これが1点目です。
2点目はマイナーなことですが、部会長がおっしゃっていたので。1枚目のA、Bの数値例ですけれども、田近部会長は、つまるところ、Bの資産価格が上がるということではないかとおっしゃったと思うんですが、私の考えでは必ずしもそうではなくて、正しくはリターンが課税前でAが14%、Bが7%になることであって、ある資産が生み出す収益が与えられていれば、当然資産価格の方が上がりますし、資産価格が変わらなくて、それからその資産が生み出す収益が円ベースで上がる、あるいは逆にA、B資産で下がる。その間に無限の組み合わせがあるわけで、やはりリターンが14%と7%に乖離して、いずれにしてもBに対する資産のところで、それが生み出すフローに対する、いずれにしても需要が増えるということは間違いないですね。要は収益が低減するということであって、資産価格にそれが反映されるか、それが生み出すサービスの価格に反映されるか、それは組み合わせが無限にあるんではないか。問題はリターンで、ここで中里先生がおっしゃっている、まさに14と7、こういう感じではないかと思います。リソース・アロケーションに対して、こういうディストーションが生じるということは、中里先生のおっしゃるとおりだと思います。
〇田近部会長
中里さんに答えていただきたい御質問がいっぱいあるので、次から少しまとめて受けて答えていただきたいと思います。
〇中里特別委員
いかなるものが公共財かどうかというのは、政治プロセスで議会が決定することで、その議会の決定に経済学者の方の意見が反映されるということだと思います。法律家は、それを与件として行動するわけでございまして、法律家にその回答はなかなかできないという、心ではいろいろありますけれども、それはちょっと違うという、それだけの話なんですが、それでは答えになりませんから、税調では、そういうことも含めて議論した方がいいと、私も当然思っております。後の問題はよくわかりません。
〇田近部会長
では、山田さん、その次に八塩さん、幾つか続けて御質問をお願いします。
〇山田委員
私は、2枚目の4-2、企業会計との関係のところで、租税原則とどう絡むかあれなんですけれども、私の問題意識を申し上げて、御意見をお伺いしたいということなんですけれども、現在、私は国際会計基準審議会というところで、国際的に通用する会計基準をつくっていまして、それが国連加盟国192 か国のうち100 か国がそういう会計基準を現在採用する方向にありまして、日本もそういう基準との国際化ということを図ってきますと、ここではデリバティブとか時価主義ということをおっしゃっていましたが、それを含めて、会計基準自体が国際的な基準の統合化の中で、かなり早いペースで合わせていかなければいけない。
そうすると、企業会計を前提に法人税の課税というのがなされていますと、そこでいろんな形でのそごというか軋轢が出てきます。
具体的な例というのは、企業結合で出てくる、のれんというのを、今、日本では営業権の償却という形でしていると思うんですけれども、国際的には、のれんの償却はしない。減損が起こったときに、減損という形で、のれんの価値の減少を認識しているということになりますと、定期的な償却ということは起こらないことになる。
そうすると、現実の話として言えば、企業の方がそういう会計を導入することに、のれんの償却は税法上認められなくなると、抵抗が起こるということがありまして、そういう国際的な会計基準にわが国の会計基準をあわせていくと、今度は税の扱いが、それとどういうテンポで合っていったらいいのか、ないしは国際的な会計基準では資産というのは、こういう定義で動いていくけれども、課税上の資産とか負債とかというのは、それとは別で何か考えていく。
そうなると、現在の企業会計をベースにして課税を考えるということ自体が、ある意味では大きくベースを変えなければいけないような要請というのがあるような気がしまして、そのようなことというのは、ここの問題として、どういうふうに扱っていったらいいのか、ないしは、それを考えないと、国際的な会計基準の統合だけ進んでも課税面で、結局、私の個人的な印象としては、産業界が国際的な会計基準を認めるとすれば、税の扱いが最終的なネックになるというのが現状のように認識しているんですが、そことの関係でどういうふうに考えていったらいいのかというのが質問です。
〇田近部会長
これは、重要な問題なので。
〇中里特別委員
それについては、辻山先生に後日で御報告をしていただきたいというふうにお願いしておりますけれども、国際会計基準というのは、それ自体は公的な、要するに法的に見ると何の価値もないものなんです。ですから、それに基づいて課税を行ってしまうと、憲法違反になってしまいまして、そこが非常に難しいところで、勿論中身を実質的に取り入れるという動きはしていかなければいけないんですが、国際会計基準が動いたから、法人税法を全部変えろという圧力を言われても、憲法84条もございますのでという話ですね。
〇山田委員
1つだけ、その理解はちょっと違うと思います。つまり国際会計基準自体はおっしゃるように全く何の価値もないんですけれども、今、世界で起こっていることは、それを各国が採用して、それぞれの国の会計基準が一つのものになりつつあるわけで、結局日本としては、日本の企業会計基準委員会が、そういう国際的な動向を踏まえて、日本の会計基準を変えていかざるを得ない。変えていかないと、世界とのギャップができてきて、いろんな問題が起こってくるので、ある程度のタイムラグはあるものの、国際的な動きにある程度ついていく。それは日本の会計基準として日本の仕組みの中でそういうものを取り入れていかざるを得ないということが基本的な問題意識です。
ですから、おっしゃるように、国際会計基準自体は、民間がつくっていて何のあれもないんですが、実際には国の仕組みを通じて、その国の基準になるというところが前提です。
〇中里特別委員
そのとおりだと思っております。ありがとうございます。
〇田近部会長
続けて、八塩さん、林さん、辻山さんとお願いします。
〇八塩専門委員
御説明どうもありがとうございました。裁定取引が問題だという話、非常に興味深く聞かせていただきました。所得が高い税率から低い税率の課税ベースに移るということは、これをやめろというのは、ほとんど不可能だと思います。そうすると、例えば税率ですべてそろえるということにすればいいわけですけれども、これも不可能だと思います。
そうすると、低い税率の課税ベースに所得が移ったときに、せめて低い人の税率の課税ベースで、しっかりと広い課税ベースで税をかけるということが重要なんだと思います。
そうすると、日本の1つの問題として、税率の低い課税ベースに所得がいったときに、所得控除が非常に大きくて、課税ベースが半分になってしまうというような問題があるんだろうと思います。
そうすると、結局、低い課税ベースに移ったときに、税率は低い上に課税ベースも半分になるということ。そうすると、せめて低い税率にいったときに、課税ベースを広げるということで、裁定が避けられないとすればいいですね。そういったことが重要なんではないかと思いました。
〇田近部会長
続いて林さん。
〇林委員
1-3の政策目的の追及に当たって、その有効性の吟味というところなんですけれども、これはどういうふうに考えればいいのかなということで、例えば減税はするけれども効果がなかったということで、減税だけ取り込んでしまうという場合と、あるインセンティブを与えるために、減税をしたんだけれども、思ったように効果がなかったという場合は、むしろ結果的に減税にはならないわけですね。例えばIT投資減税をねらって減税したんだけれども、IT投資はほとんど増えなかったということになれば、実質的には減税は必要なかった。
そういう場合に、有効性といったときに、何をもって有効性と考えるのか、つまりこれは費用対効果だと思うんですが、勿論、減税しても効果がなかったという場合は、これは勿論問題です。ところが、減税しても効果がないんだけれども、それは別に減税にならなかったということもあるので、その場合だったら別にあってもいいじゃないかという考え方が、むしろ効果というか、ないよりはいいんじゃないかという考え方の下で、そういう租税特別措置というのが出てくる可能性というのがあるわけです。
ですから、その場合には、恐らく少子化対策なんかの場合だったら、手当がいいのか、減税がいいのかということの、いわゆる政策間の比較ということで費用対効果というのは出てくるんだろうと思うんです。ちょっと、そういうインセンティブ的な、非常に限られているかもしれませんけれども、その辺りはどのように考えれば、これはないよりはいいんじゃないかという話が特に出てくるものですからね。
〇田近部会長
では、時間が心配になってきたので、ひととおり御質問をいただきたいと思います。
辻山さん、お願いします。
〇辻山特別委員
私は、先ほどの山田委員の御質問で、ちょうど名前が出ましたので。2ページ目の四の2なんですけれども、会計上、通常はトライアングル体制と言っておりますのは、通常は企業会計、商法、租税法ではなくて、証取法が改正された金商法、会社法と租税法、この三角関係を言っておりまして、それぞれが企業会計については斟酌する、となっています。これは企業会計をどこまで外延を考えるのかというのは、いろんな解釈がある。先ほど言った国際会計基準もありますし、公正なる会計慣行であるとか、公正なる会計基準をそれぞれ斟酌して置いていまして、会計そのものは法律の中にそういう形で取り込まれている。それそのものは法的な強制力がないわけです。
先ほどの国際会計との絡みですと、諸外国100 か国、取り入れる方は、一般には取り入れつつあると言われていますけれども、なかなか実態を見ると、さまざまです。
あとEUなんかは連結には入れていますけれども、課税と関わりのある単体では独自の企業会計を持っておりますので、その辺については、また改めてということで御説明させていただきます。
〇田近部会長
どうぞ。
〇中里特別委員
八塩先生のおっしゃったことはもっともだと思います。私は理論的に詳しいことはわかりませんが、ありがとうございます。
有効性の吟味のところは、効果のない措置も入れておくと、一定程度のアナウンスメント効果があるということなんでしょうか、それはそうなのかもしれません。政治的に意味がある場合もあるかもしれませんが。
〇田近部会長
最後の部分は辻山さんが、また改めてやっていただくということで、そうすると、井堀さん、上村さん、佐藤さんの順でお願いします。
〇井堀委員
非常に明解な議論で、何か法学者と経済学者のプレゼンを聞いているような感じなんですが、感想なんですけれども、2番のA、Bの話なんですけれども、資産と読むことは読めるんですけれども、私が思い出したのは、クロヨンの話も同じような議論があって、要するにAというのは、サラリーマンです。Bが自営業者、実際そうだというわけではなく仮の話ですけれども、そうしたときに、要するにAの方が税制上税金が高いと、要するにサラリーマンから自営業に流れるわけですから、その分サラリーマンの人の供給が減って、課税前の所得が増える。そして収益率が14に上がるというのは、課税前の賃金に所得がかかるけれども、それも税金が取られるので課税後は同じになる。
そうすると、公平さの観点からは別に、クロヨンがあるからといって自営業者の人が優遇されているわけでも何でもなくて、サラリーマンでたまたま節税できる人が一番もうかるという話と、それから高齢者の観点からいうと、業者間の配分が自営業の方に過度に流れる。これは、昔、小宮先生が言われたことを思い出しました。
質問は、裁定取引がよくないということに関してなんですけれども、裁定取引が国際的なものだと考えて、お互いに協調して裁定取引を起こさないように、租税協調できれば、それはいいと思うんですけれども、法人税の引き下げのような局面だと、ほかの国の税率と勝負すると、ある国だって税率を下げられて、そこに課税ベースがたくさん入ってくるわけです。さっきのクロヨンの話ではないですけれども、それは、その人にとっては得なので、そうすると、裁定取引があることの結果として、その国が協力できないような場合では、どういう意味でいいか悪いか、そうすると、裁定取引がいいのかどうかというのは、若干留保が必要かなと思います。
〇田近部会長
どうぞ。
〇中里特別委員
そこの図は、裁定取引を否定したらミクロ経済学を否定することになりますから、それは、裁定取引こそが市場経済活動ですから、それは大変重要だと思いますが、タックス・ア-ビトラージ、租税裁定取引ということに関して、勿論、それがいいという国もあるでしょうけれども、日本は、そういう立場には立ちにくいし、OECDの加盟国も大体そうなので、この辺は人によって考え方が分かれると思いますが、とりあえず、税制調査会は、タックス・ア-ビトラージはなるべくふさごうという方向じゃないと厳しいかなと、ただ、それだけの話です。
〇田近部会長
では、続いて上村さんと、佐藤さん。
〇上村専門委員
ありがとうございます。東洋大学の上村です。法原則の観点から、税制改革と租税制度について報告をしていただいて、私自身本当に初めて聞いた内容で幾つか疑問があるんですけれども、1つ目は吉川先生が言われたことにかぶせる形になりますけれども、収入目的は本源的だと、財政の目的は収入なんだということですけれども、これは憲法でそう考えているということは、地方でもそうだという解釈でいいのかということを1つ確認したいということです。
つまり、地方税というのは、我々の感覚だと受益に対する負担だと考えるのが普通かなと思っていたわけでして、そういう意味ではこれを地方にまで下ろすことができるのかということが1つ確認です。
もう一つは、2ページ目の、いわゆる公平・中立・簡素というところでございます。1つ公平と公正と言ってもよいと書かれているわけですけれども、1つはそういう利益説のような感じで、公共サービスに対する負担という意味での公平性というものが1つあると思うんですが、リンダール均衡みたいな話ですけれども、そこの話をなくしてしまうという話でいくと、この話が出てくるのかという感じがしますが、それでもまだもう一つ公平、もしくは公正というときに、所得分配の公平とか、公正とか、もしくは垂直的公平とか、水平的公平とか、そういったところは、この話の枠組みではどこに出てくるのかというところをお聞きしたいと思います。
以上です。
〇田近部会長
まだ質問あると思いますから、手短にどうぞ。
〇佐藤専門委員
今の質問に答えてしまう感じなんですけれども、2ページ目の公平・中立・簡素、政治的にトリッキーなところがあるのはわかるんですが、例えば公平という言葉は、これほどいいかげんな言葉はないと学生に言うんですけれども、応益原則の観点で受益者負担が公平であるという観点は当然あります。もう一つは、応能原則、つまり所得格差の問題がありますので、垂直的公平というか、格差を是正するような観点からの税制が公平だという観点もありますので、当然公平というもの自体に含む意味というのは、多面であるということは認識しないと、議論が単に混乱するだけだと思います。
公正という言葉はいい言葉だと思うんですけれども、どちらかというと執行面で差別しないとか、それは確かにそのとおり公正という言葉だと思います。
あと中立性か成長かという話なんですが、言葉の問題以上の違いが多分あって、なぜかというと、結果的に税制が中立であれば、経済活動というのは税によって余り阻害されませんから、その結果として経済成長が促されると、それはそのとおりのロジックだと思うんですが、冒頭に中里先生がいみじくも強調されていましたように、例えば税制の目的を収入目的にするのか、政策目的にするのかというところで、恐らく中立性という観点が重視されるのは、収入目的、つまりある一定の公共サービスを提供する。あるいは社会保障のような形で所得再分配をする。そのための収入確保という観点でいけば、できるだけ経済活動に介入するような税制はしない方がいいということになりますので、多分中立性というのは尊重されるでしょうけれども、ある意味で政策目的を追求するということになると、もう少し税制をアクティブな意味で使う、それが正しいかどうかはともかくとして、有効性の観点がありますので、そうなると今度は成長というものを意図するような政策税制ということになるのかなと。言葉の違いというとそのとおりなんですが、何となく最終的に政策的に持ってくる意味が変わってくるような気がしましたということが1つです。
それから、素朴な質問です。何で応益原則と応能原則が国と地方で分かれてはいけないのかというときに、国際課税の原則と地方税における管轄権の問題が対応しているんだということですけれども、これは何でそうなんだろうと考えているんですけれども、外国企業とか外国投資家を念頭に置いてそういうことをおっしゃっているのか。あるいは何か違う意図があるのか。そこを教えていただければと思います。
あと細かいことなんですけれども、先ほどの公共財については、政治過程で決められるということでしたが、多分それは違いまして、政治過程で決まってくるのは公的供給財でありまして、公共財というのは財の性格の問題ですので、2つは違いますということ、これは単なる指摘です。
〇田近部会長
質問はまだいっぱいあると思いますので、手短に、的確にお願いします。
〇中里特別委員
言葉を、経済と法律とで翻訳が必要な局面があるようで、この議論を積み重ねていく過程で、加わっていただいた専門委員の方々から、今のようなここがおかしいということをどんどん突き付けていただいて、それで少し私のサビついた頭をブラッシュアップというか、油でも差して少し動くようにしたいと思っています。いろいろありがとうございました。
〇田近部会長
最後の部分については、いかがですか。
〇中里特別委員
最後は、国際課税の中で日本国は、日本国の管轄権の及ぶ範囲で課税するという意味で、地方団体と全く同じになるということですね。つまりなぜ日本国が一定の者に課税権を及ぼすかというと、地方税の説明をそのまま使えば応益なんでしょうね。だから、応益とか応能とかを、余り葵の御紋のように使ってしまっていいのかなというところがあるということです。だって日本国がアメリカ国内でのみ活動しているアメリカ企業に課税できないでしょう。日本で活動している日本法人と、日本で活動している外国法人に課税できるのは、ある意味応益的だという言い方ですね。それは課税の根拠として応益ということを言うわけで、ではいかなる範囲で課税するかということは、応能的に決めるということでもいいわけですから、地方税だから応益とか、国税だから応能というのは、局面の違うことを言っているわけで、間違っているわけではないんですけれども、ちょっとそこを意識しなければいけないというだけの話です。
〇田近部会長
少しアカデミックな議論が先行したので、飯塚さんも、高木さんも、田中さんも是非どういう角度からでも御意見をいただければと思います。
どうぞ。
〇飯塚特別委員
御指名ですので、すごくシンプルな質問をしたいと思います。複雑系を扱うときには、理系の世界では一生懸命シンプリファイしてブレークダウンしていくんですが、そんな発想で質問なんですけれども、税制が収入目的で結構なんですけれども、やはり収入がないといろいろなサービスできませんので、収入を目的にするのはそのとおりだと思うんですが、非常にシンプリファイして、単一の項目しか納税項目がない。ある単一の所得があって、それに対してどのぐらいの税制をかけるか、非常にシンプリファイして、よく今まで国民の一人として税率を上げれば税収が増えるのか、そういうふうに考えているのかと思うことがあるんですが、実は最適なところがあるんだろうと思うんです。
上げていけばいろんな形で疲弊し、あるいは国外にどんどん投資が動いていくわけですから、そういう議論はもうちょっとシンプルにあり得るのかなというところを教えていただければいいと思います。
〇中里特別委員
当然にあると思います。ただ、それは法的な議論ではなくて、法律をつくっていくときの政策的な議論で、そういう発想がなければ租税政策とか税制改革は考えられませんね。とても重要な視点だと思いますが、税制が収入目的であるという憲法は変えられないですね。それは別の話ですからね。
〇田近部会長
それでは、井上さん、どうぞ。
〇井上特別委員
2ページ目の2ですけれども、租税原則は重要だと、しかし、それ以上のものではないと書いておられるんですけれども、そうではないと思います。
特に中立というか成長というかは、一定程度は言葉の問題だということですけれども、中立と成長は随分違うんじゃないかと思います。やはり一つの政策目的として、成長というものがなければ、なかなか税収なんて上がってこないということになるわけだし、その標語が非常に重要だと。もう今までのいろんな高度成長期にあるときは中立でもいいですけれども、でももう今の時代はこんなものは通用しないと。むしろ成長であるということに置き換えていくべきではないかと思っておりますが、いかがでしょうか。
〇田近部会長
今、中立・成長の話を答えていただくとして、ちょっとこちらから見にくいんですが、吉村さん、横山さん、あと是非実務の方も含めて御質問をください。
〇吉村専門委員
今の段階で租税原則のことについて、余り具体的にお尋ねしても有益ではないのかもしれませんけれども、ちょっと確認したい点がありましてお尋ねいたします。
租税原則の3点目の簡素として、コンプライアンスコストの削減というのが挙げられているんですが、こうした納税者の手続的負担に関する視点というのは、ほかの原則では考慮されるのか、されないのか。
例えばコンプライアンスコストの公平な配分といったような議論というのは、成り立ち得るのかということを1点御確認できれば幸いです。
〇横山委員
伝統的な租税原則に収入十分性ということを入れていただきたいと私は前から言っていて、それが中里さんの法律上では第一優先順位だということはよくわかったんですけれども、3つの伝統的な公平・中立・簡素では簡素が重要だというのが、中里先生のお考えなのかと思いました。
これに加えて、私が考えておいていただきたいと思うのが、予測可能性、いわゆる制度としての強靱さというんでしょうか。社会が税制を税制として受け入れるような強靱性というのは、何で担保されるのかというと、まさに公平・中立・簡素のような租税原則なんでしょうけれども、もう一つ予測可能性というんでしょうか。ある税制の下で動いたら、こういう結果になるんだ、こういう課税になるんだというようなことが担保されなければいけないんじゃないか。だから、可視性と言ってもいいかもしれません。
それが一つ伝統的な租税原則の中で、予測可能性をどういうふうに取り扱うのかということを御検討いただきたい。
もう一点は、先ほど環境の話をしたんですが、何も環境市場主義ではなくて、持続可能性のようなことを考えると、少子化対策のような社会全体の持続可能性の中で、税制が果たす役割というものを、もう少し慎重に検討していく必要があるのではないか。この2点を、予測可能性と持続可能性というのを租税制度の中でどういうふうに取り扱うのかを検討していただきたいという要望です。そういうふうに思っています。
〇田近部会長
では、関連の質問なので、3つのお答えをお願いします。
〇中里特別委員
成長か中立かというのは、中立でない租税制度で政府が特定の方針を決めて、政府の判断がすべて正しくて経済成長することが果たしてあるのか、長期的にそういうことがそれこそ持続可能かという話で、そんなに官僚が賢かったかと。賢いんですけれども、しかし、難しいですね。マーケットに委ねるということは、そういうことではない。成長というときに、国が介入する成長というのはなかなか、短期的にはあっても難しいと思います。そうすると、中立であって、マーケットの判断を害さないようにすることによって、成長が達成されるので、あとは井上委員と私の間にあるようなギャップを、余り違うこと考えてないと思うので、どう埋めていくかという議論だと思います。
それから、吉村さんの質問ですが、コンプライアンスコストの公平ということは、すごい重要な観点だと思います。そういうことをこれから考えていかなければいけないと思っています。というか、吉村先生の御専門だと思います。
横山先生の予測可能性というのは、憲法84条、法律で詳しく課税要件を定める。それはなぜかというと、予測可能性を確保するためと説明しておりまして、ブレークダウンすることができます。
持続可能性については、なかなか難しいところがあると思いますが、確かにそれは重要な視点ですね。
〇田近部会長
そろそろ締めないといけないんですけれども、猪瀬さん、小西さん、どうぞ。
〇猪瀬委員
意見ではなくて、一言申し上げたいんですが、外国については非常に法律制度の整った国についての話で、今、税制の問題をやっているけれども、実態として中国とかインドという国があるということで、井堀さんがシンガポールや韓国に行かれるわけですが、いつかどなたかにやっていただきたいと思っているのは、BRICsの税制というか、制度の実態なんだろうけれども、現実にいろんな起業家の方々が苦労されていると思うんですが、そういうことも含めて実態を反映した姿を聞きたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
〇田近部会長
もうちょっとはっきり、どんなところがあるんですか。
〇猪瀬委員
インド、中国がメインですが、あとロシアぐらいです。
〇田近部会長
わかりました。それでは、小西さん、お願いします。
〇小西専門委員
私の方は一言だけです。中里先生とはまた部会で議論ができると思いますので、先ほどの国際課税と地方税は課税管轄権の件で、地方は応益課税だという議論はどうかという点なんですけれども、不思議に説得されてしまったんですけれども、やはりそこで問題になるのは、人口移動の容易さが、国内と国際では、まだそれでも差があるということがあって応益・応能の違いがあるんだろうと思うんです。
ただ、それは余りここで議論してもしようがないんですが、ただ、今日先生が指摘されたことで、国内の人口移動と国際的な人口移動の差がなくなってくると、先生おっしゃっているような世界になるので、そこはある種相対的な議論なんだというふうに理解します。
〇田近部会長
まだ質問もあると思いますが、秋山委員、どうぞ。
〇秋山特別委員
すみません。質問というよりは、今回アジアの調査のお話が出ましたので、リクエストをお願いしたいと思ったんですが、先ほどの猪瀬さんのコメントとほぼ同じなんですけれども、ここで税制の議論をやるときには、現状、今、現場で起きていることを踏まえた上で、未来志向で議論する必要があると思うんですけれども、今回、アジアの調査は韓国、シンガポールということなんですが、今、アジアは特に中国を中心にしたフィールドでビジネスで成功されている会社が、一般的に割合に多くおやりになるやり方というのは、ファイナンス部門の子会社をつくって、香港に会社を持って、ファイナンスはそこを通じてやることで、経営の効率化を図ると。ある意味EUとはまた別の意味で、アジア圏の中で非常に国境を越えたような企業経営の実態というのはあるということを踏まえた形での、是非御報告をいただけるとうれしいと思っております。
〇田近部会長
ありがとうございました。高木さん、どうぞ。
〇高木特別委員
何かしゃべれっていうお話ですが、アジアのお願いで、今日のヨーロッパの3か国の御報告をお聞きしていて、細かいことがペーパー2に書いてあるかどうか読めておりませんが、税制の改正等が国民生活なり、国民が毎日いろいろ関わる具体的な医療や何やら、そういうものに具体的にどういう影響を与えているのかという視点を含めて、是非議論してきていただきたい。
今日、ヨーロッパの報告を聞いていて、その辺のにおいが余りしなかったと言ったらお叱りを受けるかもしれませんけれども、財政やらのことも結構ですが、今日の中里さんのお話ではありませんが、何のために、どんな理屈で、能書きでということを考える、大きなスコープの1つは国民生活というか、それでどんな目に遭うかというスコープが大事だと思います。今日は時間が取れないので、またいろいろお聞きします。
〇田近部会長
活発な議論をありがとうございました。また、次回以降もいろんな立場で関わっている方から、いろいろな角度で御自由に議論をしていただきたいと思います。
それでは、ここで香西先生にバトンタッチします。
〇香西会長
本当に活発な御議論をありがとうございました。今度の税調では、こういう形で委員の方からプレゼンテーションをしていただき、それをみんなで議論するという形を増やしていきたいと思っておりますので、今後もこういう形のプレゼンテーションと意見交換があると思います。
ただ、学説の問題を会議で、どちらが正しいか決めることもなかなかできないわけでして、それはそれで政策提言にまとまる段階でもう一度それを基礎にして、頭を整理した上で政策論議をしたいということになるだろうと思います。
〇高木特別委員
それは別のところでやってくださいと。
〇香西会長
いえいえ、ただ、こういうことで頭がそろってきますので、是非この段階から学者でない方も参加して意見を言っていただきたいと思います。
例えば本間先生がお考えになったものでは、部会でもう一つあると。つまり広報広聴部会というのを当分開いてないわけですが、例えばそこで税金の話をするとしたら、やはり税金というのは民主主義の一つの存在であると。つまりアメリカのボストンでお茶箱を蹴飛ばしたというのは、要するにイギリス議会に代表なくして課税なしとか、そういった民主主義というものの中での納税者の意味とか、そういったことにも触れざるを得ないだろうと思いますし、いろんな観点が出てくるので、学者だけが独占するわけにはいかないということを感じました。
中立かどうかというのは、いろいろ問題があって、プロパガンダに非常に使われやすいので、どうしたものかと思いますが、個人的には市場経済を重視しておりますので、中立ということは非常に大事だと思いますが、市場の失敗というのもあるし、現実の市場がうまく機能してないから、構造改革が必要だという面もあることは事実でして、その辺のバランスをどう考えていくかということではないかと感じましたが、これは政策問題ですので、今後こういう議論を積み重ねる中で、だんだん実態ともつなぎ合わせていきたいと思います。
次は事務的なことでありますけれども、4月23日の午後2時から、第4号庁舎、本日と同じ場所で企画会合・調査分析部会合同会議を開催いたします。
次回も本日と同様に、委員からのプレゼンテーション及び自由討議を予定しております。なお、これはまだ決まってないことでありますので、どういうふうに報告していいかわかりませんが、前にも申し上げたかと思いますが、経済財政諮問会議で税調会長、私に対して、審議状況の報告をという話がありました。その後、どういうふうになって、具体的にいつ行われるかということは、私まだ承知しておりませんけれども、そういうことが明らかになりましたら、その内容等について、できればこの会合で御説明した上で、そういうことをしたいと思っております。
日程がまだ確定しておりませんので、今後のことということになると思います。
次に5月の日程でございますけれども、先ほど申しましたように、5月11日はアジア調査の報告、その他がございます。
5月17日には、これも申し上げましたが、IMF、国際通貨基金の税制専門家のプレゼンテーション及び討議が予定されております。
5月22日には、委員からのプレゼンテーション及びそれに対する討議といったことを予定いたしております。
確定次第、改めて御連絡いたしますけれども、よろしくお願いいたします。
最後に、お手元に平成19年度税制改正に関する関係資料をお配りしておりますので、後刻お目通しをいただければと思います。
どうも本当に長い時間、活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
〔閉会〕
(注)
本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。