企画会合(第8回)・調査分析部会(第3回)合同会議終了後の香西会長・田近部会長記者会見録

日時:平成19年4月23日(月)16時25分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室

司会

それでは、記者会見を始めます。

質問

今日、後半の法人の負担のあり方とその議論がいろいろあったわけですけれども、今日、委員の加藤先生のほうからプレゼンテーションがあった中で、最後に「検討課題と議論すべき点」ということで、先生が整理された最後の14ページがあるんですけれども、それについていろんな意見、今日ありましたけれども、基本的に、今後、法人税の引下げというか、法人減税を検討するに当たって、この考え方がベースになるという理解でよろしいのか、それとも、まだこれは一つの考え方をこの時点に提示されたにすぎないということなのか、どういうふうに理解したらよろしいのか、ちょっと教えていただきたいんですが。

田近部会長

我々としては、部会長としては、そこまで議論のコーディネーションはしてないというか、3つの領域に分けて、それぞれのグループで、これは何回かグループ内で議論した結果も、今日、私も部会長として言うのもおかしいですけど、非常にわかりやすい報告をいただいたなと。

今のご質問に対しては、私も14ページが重要だと思って、あそこできちんと整理しましたけれども、いずれも重要な点で、論点は網羅しているなと。もちろんこれ以外も、猪瀬さんが最後におっしゃったことも実際あるわけでありますけれども、我々のこれからの議論を進めていくに当たっては非常にいい説明と論点整理だと思ってます。

質問

ちょっとその関連で、議論の中身を聞いてましたら、何人かの委員の方から、法人への減税をした結果、やがて経済が活性化して、税収が戻ってきて、税収増に中期的につながっていくんだということについて疑問視するような意見があったというふうに私には聞こえたのですけれども、この点についての、お二人どちらでも結構なのですけれども、ご意見というか、お考え方はどのようなものなのか教えていただきたいのですが。

田近部会長

疑問視というのは、聞き方によるし、疑問視というふうに聞いても間違いでは決してないと思うんですけれども、要するに、税制が今日、この1ページの非常にわかりやすいチャートですけど、法人税引下げが最終的にはマクロにどういう影響を与えますかということですけど、今日、結構引用してもらって、昔というか、あの仕事を思い出したんですけど、投資が税制にどういう影響を与えるかというときに、資本コストというのは、最終的に投資する1円の投資のコストが幾らぐらいですかと。それが安くなれば投資しやすいですよねという考え方なのですけど、それをはじくときに、実は、では金利はどう考えるのだと。今の、これまで過去10年の企業の借入金利の平均みたいなものをリスクを考えて計算しますと。それで税制をやると、今、限界的なコスト、資本コストが下がりますよねと。そうすると、今までの研究から、投資はこれだけ増えますよねと。

だけど、実はそれがぐるっと回ると、金利が上がっちゃうかもしれないと。あるいはほかの効果もあるかもしれないということで、やはりマクロ全体で議論を閉じるときにはなかなか答えはわからないというのがこの分野の話で、それを加藤さんが、限られた時間ですけど説明されたわけで、ネガティブだというよりも、そこは読み切れない。

そして重要な点は、マクロで何%、それも重要ですけれども、マクロの成長、それから税収の取り戻しが重要ですけれども、それ以上に、そういうことを通じて、14ページに戻りますけど、R&Dが促進されるのか、あるいは日本に企業が来てくれるのかというような構造的な、やや長期的な問題というのを見ていきたいということで、お話になったこと自身が悲観的だというのではなくて、それは経済全体を閉じたときにはいろんな効果がありますと。そうした中で、そういう企業課税改革で経済が文字どおり構造的な活性化のプロセスに至るのかなというのがポイントだと思います。

質問

香西会長にお伺いしたいのですが、25日の諮問会議でのことを先ほどもちょっと触れられたんですが、時間もそうたくさんないと思うんですけれども、具体的にはどんなお話をされるご予定でしょうか。

香西会長

どうしてもしなければいけないのは、経過の報告はしなければいけませんので、それはまず、当然ですが、お話ししたいと思います。まず第一には諮問ですね。今回の諮問、去年の秋にいただいた諮問は非常にたくさんの課題が列挙されていて、それに答えていくというか、それはやはり一つの大きな仕事のうちであると。それに対してどう答えるかというか、どういうふうに答えようとするかということが問題のスタートですので、まずこういう諮問をいただいていると。

それについて、そのために、スケジュール的に言えば、まず、これは諮問の中にも書いてありますけれども、マクロ、ミクロのしっかりした調査をしろというご命令でもありましたし、それにとりかかって、部会を置いて、そこで分野を分けて、そして専門委員をご任命いただいてやっておりますというのが経過報告ですね。

そのほかにあるのは、ヨーロッパに出張していただきまして、ドイツ、オランダ、フランスについて最近の税制改革のことを、親しく向こうで、担当者等にも会っていただいて、そのことを学んできた。それは大体どういう内容であったかということももちろんあると思います。

そしてあとは、一応経緯としては、私たちとしては、まだ調査分析を中心に動いている段階で、調査分析をやればなかなか問題がさらに難しくなって、前途遼遠だなと今日もつい言ってしまったんですけれども、そういう感じはいたしますけれども、しかし、やはりえいやっと決めるんじゃなくて、そこはかなり議論をした上で決めるというのを今回の税調としては考えていきたいので、今日のような議論は大歓迎だと、こういうつもりで、という感想を現在は持ってます。

あと1日ありますので、今日の議論も、少し頭を冷やして、うまくまとめられるのかどうか考えますが、むしろ今は、いろんな議論が出て、それがそれぞれ、おもしろいと言っては語弊がありますが、重要な議論が出ているので、それに沿って、この形でさらに調査分析を深めていきたいというのが私の希望です。

同時に、私の希望といいますか、これは私だけではなくて、税調で始終議論になりましたのは、税金をとるのはいいけれども、その使い方はどうなんだと。猪瀬委員からは、美術館を建てて、あれはもったいないとか、補正予算が組まれて、せっかく税収が増えたと思ったらすぐ補正予算を使うのは何かといってお叱りがあった。

これは簡単に言えば、税収が増えたものを国債整理特別会計に移すための補正予算というのが大きな意味だったのですが、それはご説明して一応ご納得いただけたのではないかと思ってますが、やはり税調としては、収入の面だけでなくて、歳出と歳入と両面一体の改革が進む中で我々は考えていきたいし、それから、それ以外の改革ですね。労働政策とか、社会保障のあり方とか、それから地域のあり方とか、そういったようないろいろな、例えば地方分権法によって、あと3年ぐらいで国と地方の分業ですね。どこを、どういう役割を果たすかについてもさらに検討されるといったようなことも伝えられてますから、そういうものとうまく歩調をあわす形で、それらと整合的な形で最後の案がまとまるということを希望しているわけで、経済財政諮問会議はある意味で、総理を中心とした幅広い視野でご検討いただく機構だと思っていますので、そういった観点で全体の改革が進むようにしてもらいたいと、こういうことを希望としてぜひ言っておきたいことであるというぐらいの感じでおります。

それから、ちょっとまた戻りますけれども、先ほどお話があった今日の法人税の話についてどういうふうに考えるかということがありましたが、法人税については、今日のご議論がやはり非常に私にも参考になりましたし勉強になりましたが、これは田近部会長が前回部会で報告されたドイツの場合と、これとかなり対比して、これは違う議論になるわけですが、一方ではドイツのような法人税のやり方もある。日本の場合はどうなるだろうかと。そういったことも含めて、今は調査分析を主体にやってますけれども、その調査分析もだんだん時期がたつにつれて、政策といいますか、そういったものに直結した分析、その調査や分析や問題を解くことがだんだん政策に、あるいは税制改正の構想につながっていく、そういうふうに議論を持っていき、次第次第に道を開いていきたいと考えている、そういったような感じでおります。

ただ、明後日はほかの方がどういうことを言われるかは全然承知しておりませんので、臨機応変、適当にさばかせていただくように、何とかそういう形で、明後日、一応お役を務めていきたいと、こういうつもりでおります。

質問

香西会長にお伺いしたいんですけれども、諮問会議なんですが、前回の税調のときにもちょこっとお伺いしましたが、菅総務大臣が今度の骨太の方針において地方税の偏在の見直しについて何かしら方向性を盛り込みたいということをおっしゃってまして、税調としての意見を求められた場合に、会長としてはどういったことをお答えになられるご予定でしょう。

香西会長

まず、そういう問題についても、やはり1回は部会なり何かで議論してからの話になると思いますね。そういうことがもし、そんなに間に合わないというのなら、また間に合わないで何らかの形で、私が独断で話をするということはないと思います。それはやはり気位の非常に高い、伝統のある調査会ですから、審議というのは非常に慎重に考えなければ、私は最も経歴の浅い委員でありますので、そこはきちっと、審議会民主主義は通した上で発言すると、あるいは何とかそのステップを踏んだ上でお答えするということになりますが、基本的には、地方については、1つは、これは尾身大臣も国会で答弁しておられるようですけれども、プライマリーバランスは地方のほうが黒字で、国のほうがまだ赤字が大きいと、そういう現状がまず1つあるわけですね。

そして、一方では地方分権の推進が行われていまして、そこで、先ほどちょっと言いましたけれども、国と地方の仕事の割り振りということが再度議論になる。やはり税源というのは仕事をするための税源ですから、それの方向と税源の分割というのは並行しているというか、整合的なものになるというのが理想ではないかと、これは原則論としてはそういう気持ちを持っております。

今日もいろいろ議論が出ていたのは、社会保障の財源を保険料でとるのか税でとるのかというのも大きな問題でしたけれども、社会保障と同時に、地方の財政のあり方をどう考えて、財政自立といいますか、地方自治といいますか、地方の分権というか、そういうものにふさわしい形での地方税のあり方というのは何かということは当然議論しなければいけないだろうと思っております。

質問

今日議題になっていた社会保障のところなんですけど、これは、今後、また社会保障というか、その先の財源なども当然政府税調で議論の主要論点になってくると思うんですけど、今日の部分の認識としては、ここに出されたペーパーで、財源で、税財源の比重を高めていかざるを得ないかとの意見が提起されたわけですけれども、大体これで今日はもう皆さん、方向性で一致したという理解でよろしいでしょうか。

香西会長

今日はお伺いしたということだと私は思っております。それは、何というか、税源は税源として勝手にどんどん大きな計画立てられても困ってしまうわけであって、それはやはり国民の負担率というのはどれくらいであるかとか、そういう議論から戻って話さないと、イコール・フッティングの話をしないと結論は出ないはずですから。見通しとしてそういう見通しがあるということは事実だと思いますけれども、しかし、やはり税でやるとしたら、保険料なら、払わない人は制限されるわけですよね。そうじゃないということになりますから、それは今の社会保障、今日の話にあったように、保険料中心主義の社会保障というものを大改革するということが含まれているわけですね、その見通しの中には。それが例えば社会保障をやっていこうとしている政策を立てておられる方々のご意見であるかどうかもまだわからないわけですから、それは、何というか、そういう一つの見通しが研究者として尊敬している先生からありましたという段階だとお考えいただければ。

質問

今度の諮問会議では現段階のことしかご報告できないというお話ですけれども、先日、自民党の税調会長の津島会長が、選挙前に与野党の国民合意をまじめに目指す環境ができてないときに下手に税制論議をするとマイナスになるということをおっしゃって、秋以降までは自民党の税調のほうも具体的な議論をしないというふうなお話を講演の中でされました。

自民党としては、そういう議論をしないというのは選挙対策として仕方ない面があるかと思うんですけれども、政府税調の役割としては、安倍首相の諮問の中にも、少子化対策の安定財源を図るためということも書いてありますし、調査分析するとともに、そういうことについて選挙のときに国民に対して政策を、問題点を発信するという意味でも、政府税調の役割として、秋以降というのにこだわる必要はなく、政府税調としてそういう国民に対して発信するという役割も必要なんじゃないかなと思うんですけれども、改めて政府税調のあり方というのは、首相の諮問どおりにすればいいものなのかどうか。国民に対してやはり一番ふさわしい税のあり方を発信する上では、安倍首相の諮問だけをやっているだけで本当にいいのかどうかという部分についてお伺いしたいんですけれども。

香西会長

まず、安倍首相の諮問だけをやっているわけではないということがあります。それはたくさん書いてありますけれども、特にそこで、必ずしもそういう言葉、出てこなかった問題についても議論はしております。私たちが議論して、これでいいと、これが正しい推薦すべき、我々が答申すべき税制であるというアイデアといいますか、構想といいますか、これが固まれば、それはいつであっても、我々はここでこう決めたというところまで意見が一致していれば、そういうふうに国民にその場において明らかにしていくということは一つの考えだと思いますが、現時点においては、まだ税調の中でそういうコンセンサスは成り立っていないと私は思っております。

今日の議論を見てもいろんな議論が出てくるわけで、まだまだ議論を尽くしていかないと出てこないと。そういうことが一方にあって、それで、途中でいろいろ議論が出たことがいろんな誤解を招かないように、こちらの考えがしっかりしてからでないと、それは非常に大きな社会的、政治的混乱を招くことがないとは言えないわけでして、私たちの仕事は、まず今は、こういうふうに税制は改正すべきであるという結論を得なければ、途中経過、いろんな人がいろんなことを言うのはもちろん結構なのですけれども、これが税調案であるというのがまとまらないと、それはやはりなかなか発表できないというのが私の判断です。それは自分たちのつくった案がつぶされないための一つの護衛の術でもあるわけですね。

質問

その関連で、香西先生は、会長就任当時から、もう政府のほうでそういう方針が決まっているからと、それを前提にして、秋までは調査分析を徹底したいという言い方を何度もされているかと思うんですけれども、先ほどの説明とはちょっと、やっぱり秋まではそういう具体的な議論は避けているのではないかという……

香西会長

いや、避けてはいないんです。今日だって、もうばんばん議論をしたはずですね。法人税についてどうかというのは、委員の中で何人かの方がばんばん議論しております。それも公開しているんですから、津島さんにはにらまれているかもしれない。それはそれでいいんであってね。私たちは、税調だから、そういう議論をかなり自由にやらせていただいているということですが、それが混乱を起こすということになると、またいろいろ、かえって、せっかくまとめたいい案がつぶされちゃうというか、世論に葬られるということもある。試験的にいろいろやるということは、いろんな案がまだ出てこないとそれはできないわけであって、私たちはまず、とにかく自分たちが自信を持ってこうしたいと思う案をつくることがまず第一の仕事である。

見通しとして言えば、この3月から始めた仕事ですから、7月、8月ぐらいで、そこまでやったものを一度整理するということぐらいが望み得るのであって、38人の人が集まって、そんなに今すぐ、はい、きれいな案はこうですというふうには私は言えない段階だと考えています。

質問

法人税については、今からも、今日みたいに具体的な議論ができたと思うんですけれども、消費税についてはやはりそういうこともできないのではないかと思うんですけれども、それについてはどうですか。

香西会長

いや、できないかどうかはやってみないとわかりませんので。できないと言っても、してはいけないというふうに考えているわけではないんです。ただ、その議論をするためには調査分析が先にあって、それをみんなで議論していこうということですから、それは必要な場合があれば議論したって構わないと思いますけれども、ただ、大っぴらに議論しないほうがいいというお考えの方がたくさんいる中で、無理やりそういうご意向にそむいて議論をすることによって、せっかく考えてきたいい案が誤解を受けるということは避けたいということですね。

質問

すみません。今のお話の中で、7、8月にやったものを一度整理することが望み得ると言うんですが、これは中間報告なんか出されるということでよろしいですか。

香西会長

まだ何も具体的には考えておりません。ただ、年末までにある種の答申のようなものを考えるとしたら、もうそのころからはそろそろ本気になってやらないと間に合わないという、そっちのほうから迫られてくるわけですよね。一応答申なら答申のような形、あるいは提言なら提言の形にまとめるとしても、あれだけの人数の、あれだけ意見の違う人たちを一本にまとめて、とにかくこれでいこうというふうになるには相当の討論と説得が必要になってくる可能性はあるわけですね。お互いにね。ですから、それまでの間はできるだけ数多くの問題を、あまり政策と関係のないような形というか、ロジカルに議論する機会を与えていただいて私は大変ありがたかったと、こう思っているということです。

質問

すみません。これは香西会長にご意見としてちょっとお伺いしますが、先ほどの方の質問にも関連するんですけれども、先ほどちょっと名前が挙がった自民党税調の津島会長の講演の中では、参議院選前に税制論議を争点化するのは、しないほうがいいんだというふうにおっしゃっていたんですが、これはいろいろ見方があろうかと思うんですけれども、例えば私などは、税という民主主義の基本的な部分について秋以降考えるということは、皆さんおっしゃっているにもかかわらず、具体的な中身について、ある程度の方向性さえ示さずに選挙に入るというのは、これは民主主義のあり方から言ってちょっと問題なのではないかと、国民から見てもそういう疑問があるんじゃないかというふうに私などは思うんですが、こういう考え方について、会長はどのように思っていらっしゃいますか。

香西会長

まず津島先生の、代議士のお話は政治家としての判断であって、これは党利党略かどうかわかりませんが、そういうふうに考えておられるということは1つあるわけで、それに対して私がイエスとかノーとか反対とかいうことはありません。

それから私たちは、私はたまたま政府税調におりますけれども、これは学者であり何かであればどんどん言っていいわけですよね。そうではなくて、私が言うことが政府の立場だというふうに理解されるわけです。そうすると、そういう誤解を避けるための準備としては、もっとしっかりと議論を尽くして、この案でいってほしいということをまとめない限りそれはできないこと。まず、誇り高き税調として、勝手に途中でだれかが意見を言うということはできないわけで、そして意見を言った以上はそれは政府の中の一つの政府税調が言ったのだと、こういうことになるわけですから、そういう立場から言えば、私たちとしては、自信のある案ができる、十分検討して、自信の案であると思えるものが出るまではちょっと難しいのではないかと。えいやっで固めていいというのであれば、それは政治判断でなさるのがいいことであってですね。そうではなくて、いろいろロジカルに考えた上で何とか皆さんに納得いただけるような案としてはこういうものではないかというのができるのは、まず時間的にいっても間に合わないのではないかと、こういうふうに思っているということです。

司会

ほかにございますか。よろしいですか。

それでは、記者会見を終了させていただきます。

香西会長

どうもありがとうございました。(了)

調査分析部会