企画会合(第7回)・調査分析部会(第2回)合同会議終了後の香西会長・田近部会長記者会見録
日時:平成19年4月13日(金)16時27分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室
〇司会
それでは、記者会見を行います。
〇香西会長
本日は、いささか学術討論会のような景色が多かったかと思いますが、調査分析部会で、これからも各専門委員、委員の方々からいろいろなプレゼンテーションを予定しております。少し固い話かもしれませんが、税制というものを基本的な観点から見直すという意味もあって、そういうことをしていますので、ぜひご協力のほどこれからもよろしくお願いしたいと思っております。
ご質問については、田近部会長から主としてお答えいただけるだろうと思っておりますが、何でも遠慮なくご質問ください。
〇司会
それでは、ご質問のある方は挙手をお願いいたします。
〇質問
海外調査報告と今後の調査のことでお尋ねします。
まず、今日のヨーロッパの報告ですが、いろいろなことが書いてあるのですけれども、これを今後の実質的な議論、日本の税制をどうするかという議論にどういうふうに活用していくのかというところのイメージが、今日のところは報告という感じで、よく見えなかったので、今後、どういうふうにこれを活用していきたいとお考えなのか。おふた方、どちらでも結構ですので、お答えいただければと思います。
〇田近部会長
今後どうなるかはわかりませんけれども、なぜ、そもそもこの国を調査してきたか、また、結果はどうだったかということとかかわると思いますが、私も、実はドイツのことは比較的紙で書いたものは知っていたわけです。今回行ってみて、なかなか会えない人、財務省や首相府の人に会って直に聞いて、肌でよく感じられたというのは、ドイツの法人は所得をEUを含めて海外にどんどん移している、そういう中で法人税改革をしなければいけない。ただ、それは素手ではできないのでいろいろなことをしました、というようなことは、今の日本とどう対応するかわかりませんけれども、我々としても考えなければならない問題だと思います。
それから、中里さんとは調査中もずっと一緒で、また、個人的にも長年にわたってよく知っているので、議論しましたけれども、もう一つ答えたいのは、法人税はそういう意味で肌身で感じたということと、所得税改革は、ヨーロッパでは、課税ベースを広げて改革していく必要があるということは感じました。もちろん、あとどう展開するか、その読みはわかりませんけれども、行ってみて、彼らの気持ちというのはよりよくわかったというふうに思いました。
〇質問
その補足ですけれども、特にドイツは、法人税の税率引下げをやり、その前に付加価値税の引上げもやっているわけです。これを仮に日本に置きかえて考えてみますと、個人を重くして法人を軽くするというふうに単純に受けとめられる部分もあると思いますが、こういった点について、日本では、かなり国民の反発を招いて、理解してもらうのは難しいやり方かなという感じが私はします。ドイツは、政府あるいはそれ以外のところでも、国民に対する理解とか、説得、納得してもらうとか、どのようなことをしてきたのか、そんなお話はあったのでしょうか。
〇田近部会長
「何とかでは」というのは「出羽守(でわのかみ)」だと言いますが、これも個人的な話で、その出羽守をやる気は財政学者として全くなくて、そういうことから我々はどう考えるのかというところなのでしょうけれども、ご質問は、付加価値税を上げて法人税を下げた、それが日本でどうかということですが、もうそんな議論ではないわけです。放っていたら資本が出ていって、法人税を下げることで申告所得が増えると。そこは会議で表を示しましたけれども、法人税を下げて申告所得が増えて税が増える。ただ、増える量と減税の部分とはいろいろありますから、それを数合わせするためにいろいろやった。基本的スタンスとして国民に言っているのは、それでもって税収が特に失われるわけではなくて、きちんとドイツにいる企業はドイツで申告してくれる、そういう改革なんですよということだと思います。
もう一つ、付加価値税を上げるということですが、さっきも香西会長と話したのですけれども、ヨーロッパで彼らが共通に言っているのは、社会保険料はもうこれ以上、上げられない。ドイツで今度16%から19%と3%上げて、1%は社会保険料。今、数字を持っていませんけれども、その前に付加価値税とグリーン税を上げて、それとのバーターでおそらく社会保険料を下げていると思います。だから、そこはきちんと理解しないと彼らの課題というのは見えてこないと思います。
そういう意味で、付加価値税を上げて法人税を下げるのはいかがなものかということですけれども、そういうことを言っていられる事情ではない。もちろん、それで税収がなくなるというわけではなくて、手当はしていますと。だけど、その手当の仕方というのは、申告が増えて手当ができるという考えです。それから、付加価値税を上げるということは、我々よりももっと企業が労働者のコストを意識しているということだと思います。
〇司会
ほかにご質問ございますでしょうか。
〇質問
先ほどのお話の中で、諮問会議について、まだちょっとはっきりしないんだけれどということでしたが、今の状況での審議報告ということですと、今、海外調査のことをやっていらっしゃいますけれども、どの程度、どういった中身のものというイメージをお持ちなのでしょうか。
〇香西会長
まだ日程も十分承知していませんし、他のチームというか、おそらく私たちだけではなくて、諮問会議それ自体もいろいろプレゼンテーションがあると思うので、どのレベルまで議論に踏み込むべきかということについては、まだ十分覚悟が決まっていないというのが現状です。最低限言えるのは、こういった調査をしているということの事実報告はいつでもできると思っていますが、それ以上、先ほどいろいろお話のあった点について、日本としてどう考えるかというところまでは、個人的にどう考えているかということでも難しい。まだ決断しておりませんし、いわんや、全体としての議論はまだ行われていないという状態です。予想される問題としては、いろいろあるだろうということは想像できると思いますけれども、それ以上のことは議論をまだ十分固めていないのが現状です。
これは、何月に行われるかによってもまた違ってくるわけですし、準備を、そろそろ考えなければいけないということでやっておりますけれども、もしそういうことになるのであれば、その前に部会等にも説明の必要があると思っていますし、まだ先行きのことはお約束できる状態ではない、こういうことでございます。
〇質問
同じことを伺おうと思っていたのですけれども、そうしますと、これまでの段階で、会として、何かコンセンサスとかそういうものを得ている状況ではなくて、まだインプットしている段階だと思います。それ以上のことを、例えば会長ご自身の意見を交えたりとか、そういう報告をするつもりはないということでよろしいのでしょうか。
〇香西会長
基本的にはそういうことだと思います。ただ、どういう解決があるかということは別として、こういう事態があったときにはどうなるか--例えば欧州の場合は問題がどこにあったかとか、そういうことから、日本にこれを移して考えるとどういうことが問題になるかということは、対応策は違っていても、共通するところもだんだん出てくるだろうということを期待して、今日のような議論をしてきたわけですから、それがある程度言えるかどうかということになると思います。
〇質問
もう1点、IMFの税の専門家の方が来られて話をされると。それは政府税調の一環としてそういった会合を持ちますよ、ということになるのですか。
〇香西会長
IMFから実は対日調査がありまして、私のところにも面会を要求されて少し議論をしましたし、主税局との間でも議論されたと。IMFの中に、日本のことを調べる部局以外に、世界中にわたって税制を調べているとか、あるいは、こういう税制があるということを教えて歩いている部局もありまして、そういうところで見た世界的な税制改革の動向といったようなことが中心の話題になってくるのではないかと。それに対してどういう反応があったかとか、どこで成功したかとか、そういったようなことが議論になって、日本側としては、日本ではこういう事情があるけれども、そういうことがおできになるのではないかとか、そういう反応でもあれば互恵関係になるだろうと。いずれにしても、国際的な潮流についてIMFの財政専門家から見た評価なり予想なりを参考に聞きたい、こういうことになると思います。
〇質問
ドイツで、税を州間調整している部分があるかと思います。それでいろいろ議論がかねてよりあるかと思いますけれども、視察されて、そういった点で何か示唆的なこととかあったら教えていただけますでしょうか。
〇田近部会長
これは、財審とは違うので、さっき言ったようなテーマで調査してきました。要するにおっしゃっているのは、共同税の配った後の州間の水平調整の話で、改革しているのは知っていますけれども、今回は一切テーマにしていません。
〇質問
今日の税調とは話が外れてしまうのですけれども、先日、菅総務大臣が、消費税の地方の取り分の引上げと法人二税の見直しをしたいという発言をされました。その背景には、地方間の格差をどうにかしようという考えがあるかと思いますけれども、これまで消費税というのは、どちらかというと社会保障にというような議論が多かったかと思いますが、格差の解消という考え方を、消費税の見直しに合わせて取り入れることについてどう思われるかということを香西会長に伺いたいのと、田近先生には、世界各国、たぶんどこでも格差の問題というのは多かれ少なかれあるかと思います。今回の視察の中で、格差と税という視点で取り組んでいるところがあったかどうかということを教えていただきたいのですが。
〇香西会長
総務大臣のお話は、地方分権が進んでいく、そのためには地方の財力といいますか、自主財源、原資、これを安定的なものとして受け入れたい、こういうことだったと思います。それは確かにそういう面があるわけでして、法人事業税等は地域偏在がどうしても出てきやすくなるとか、あるいは景気によって非常に振れる。いいときはいいけれども、急激に落ちたりして、日常的なサービスを提供しているところについてはかなり負担になる面もあるということで、総務大臣のお考えとしては、消費税をもう少し地方に分配してもらって、そのかわり法人事業税等については多少譲ってもいい、というようなお話だったのではないかと。私、直接その場にはおりませんが、お伺いした印象はそういうことで、それは一つの考え方であることには間違いないと思います。
ただ、地方分権をやっていくということになりますと、これから問題になる少子化、介護、これから改革が問題になる医療、こういったものについてはいろいろな議論がありますが、地方がもっと主体的に対応したらどうかという議論もある。結局、国と地方の仕事をどういうふうに分けるかということも一つ大きな問題であって、それに応じて税源の配分も変わっていくことになるはずだと思いますので、その辺の議論がうまく進展するかどうかが問題になってくるということではないかと思います。
感想としてはそういうことで、特に東京都とその他の地方との格差というのはかなり目立ってきているわけです。そういう中ではそういうことがこれからも大きな問題になる。そういうことをうまく解決しながら税制が固まっていけばいいなとは思っておりますが、どういう形で落ち着くかということについては、まだまだ紆余曲折があるだろうということだと思います。
〇田近部会長
「格差」ですけれども、それをテーマに調査してきたわけではないのですが、これもヨーロッパに行くと感じることで、たぶん向こうで格差なんて言っている人はあまりいないと思うのは、失業問題です。格差を突き抜けて、特に若い人の失業をどうするかと。ドイツもついこの間までは、2000年で経済がピークになって、その後に失業率は12%ぐらい行った。そういう中で雇用機会を確保することと、もう一つは、今日の話とは全く変わってしまいますけれども、ウェルフェア・ポリシーをどう変えるか。失業給付があって、それが切れると失業手当が出てくる。したがっていつまでも失業をやめない。それをどうやって改革するかというのは、去年あたりまでドイツがやったのは「ハルツ4改革」と言いますけれども、最大イッシューだと。
ですから私の理解は、今回の調査ではないですけれども、格差はとにかく失業問題。失業に対しては経済成長。そしてウェルフェアに対するディペンデンシーを減らしていく。オランダはワーク・シェアリングとかあるのでしょうけれども、そういう問題かなと。そういう意味では社会保障が発達した国なので、日本のような形で格差が騒がれているわけではない。もっと深刻なのかもしれないと思いました。
〇司会
ほかにございますか。
〇質問
海外調査、今度のアジアのことでお尋ねします。韓国とシンガポール、なぜそこなのかという話は、先ほどの会合でも幾つか意見はあったと思いますが、その中で井堀先生が、シンガポールは付加価値税を上げて法人税を引き下げるということで、日本では政治的に結構難しいことをやろうとしているみたいなことをおっしゃっていたと思います。そこを見に行くというのは、税制改革の方向性が、日本が直面している解決すべき課題と共通するものがあると税調としては考えているということで、こちらを選んだということなのでしょうか。
〇香西会長
税調がそう考えているということではないのですが、とにかくシンガポールという国があって、非常に国際的に開かれた国ですね。グローバリゼーションの渦中にあって、鎖国していないわけですから、非常にオープンな経済である。そういう中で法人税をどう考えているかということは、参考になるだろうと思っております。
ヨーロッパなどを見ていると、法人税については、ある意味でタックス・ダンピングが流行っているというようなところがあるわけですね。これがどこで収れんするかというのはなかなかわからないわけですけれども、その前提は、非常な海外進出というか、海外引越しというか、空洞化というか、そういうことがかなりの勢いで展開しているということです。日本の場合、今のところはEU圏内ほどではないけれども、将来それはどうなるかとか、そういうこともやはりこれからいろいろ考えていかなければいけない問題で、そういう予測もないとなかなか結論は出てこない。その辺の見通しと、実行しようとしている決意は一体どの程度で考えているかとか、そういう議論も我々が理解する上で必要なことではないかと思っています。
〇司会
ほかにございますか。
それでは、これで会見を終了させていただきます。
〇香西会長
どうもありがとうございました。(了)