企画会合(第6回)・調査分析部会(第1回)議事録

日時:平成19年3月9日(金)14時00分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室

香西会長

時間になりましたので、ただ今から第6回企画会合を開催いたしたいと思います。

お忙しい中をご参集いただきまして、まことにありがとうございました。

議事に入ります前に、ご報告であります。以前にご了承いただいておりましたけれども、税調委員による海外調査についてご報告させていただきます。

具体的には、3月19日から28日までの間、ドイツ、オランダ、フランスに田近委員と中里委員に出張していただくということで、最近の税制改正等について調査をお願いしたいと思っております。

なお、この海外調査結果については、次回(次回は4月13日を予定しております)の会合で報告することを考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

それでは、田近委員、中里委員から、今回の出張についての調査の対象や問題について、簡単にご説明をお願いしたいと思います。

田近委員

では、私から説明させていただきます。

今、会長からご説明があったように、計画としては、3月中にドイツとオランダ、そしてフランスの調査に行かせていただくということで考えています。私はドイツとオランダに行きたいと前から思っていました。ドイツは実はこの数年、毎年のように幾つかの視点で訪問しているのですけれども、ドイツに対して興味があるのは、やはり大きな国である。ヨーロッパの中で人口8,000万人くらいの大きな国だと。近隣に囲まれて、グローバリゼーションの中で資本が外国に行ったりして日本と同じような悩みを抱えている。ひと言で言うと重たい国で、近隣に投資を受け入れる国がある。そういうことで関心があって眺めています。

具体的には、大連立内閣が2005年の秋にできて、来年から付加価値税が16%から19%に上がる。それから、具体的な数字はちょっと忘れましたけれども、個人の最高税率を少し引き上げる。法人税の課税ベースを広げて税率を下げるとか、金融所得に関しても源泉分離課税を導入するとか、大きな国としては--というとおかしいですけれども、非常に改革を迫られている。それをぜひ見てきたいということです。

あと、個人的には、雇用保険の改革とか、医療・介護の改革という視点からも見てきたので、そういう支出絡みの観点からのバランスも見てみたいということで、実現できればと思っています。

それからオランダは、前の税調のときにすごい迷惑をかけて、オランダの税制について調べてくれと言った手前、自分で調べに行かなければいけないなというのがあるのですが、今度は非常に小さな国です。資本が自由に飛び交うところで、いつも税制改革の先端を切るところですけれども、ボックス・タックスというのがあって、労働所得と自営業の所得と資本所得と、あたかも所得をボックスのようにかけていく。その狙いと、なぜそこまでやらなければいけなかったのかということ。

もう1点は、個人所得税で、所得控除に代わって優遇とか何とかではなくて、制度として負担調整として税額控除をしている。タックス・クレジットをやっている。ボックス・タックスとタックス・クレジットについて知りたいということで、この機会を与えていただきましたら、この2つ、前から紙の上で追いかけていたことを、担当者の方からお話を伺えればと思って計画させていただいています。

以上です。

中里特別委員

私は香西会長のご指示でフランスとドイツに出張いたします。ドイツについては先ほど田近先生からお話がございましたので、フランスでどんな調査をしてまいりたいかということについて、簡単に述べさせていただきます。主に興味を持っているというか、考えなければいけないのは、少子化対策と租税体系のあり方、その2つの点ではないかと思います。

フランスでは、去年、2006年の統計で出生率が2.0を超えています。ドイツ、イタリア、日本と比べるとえらい差で、これには、婚外子が社会的に認知されているとか、そういう社会的な背景があるのだろうと思いますけれども、出生率がそういうふうに2.0を超えているという状況は一体何が原因になっているかということについて、本当に短い期間の調査でありますが、できる限り調べてみたいと思います。

日本と比べてフランスというのは高福祉・高負担の国でございまして、家族関係の給付についてもずいぶん手厚くされていると聞いています。出生率が2.0を越えたという出生率の回復に、財政面、歳出面と税制面が果たして寄与したのかどうかということについて、そう簡単に調べられるかどうかわかりませんけれども、そういう点に留意しながらインタビュー等をしてみたいと思っております。

それから、租税体系ですけれども、フランスはフランス革命の後、4つの古い税という直接税中心主義でスタートしたのが、いつの間にか間接税中心の国になって、日本と比べて間接税の比率の高い国になっています。一体どういう経緯でそうなったのかという背後関係について調べるのと、それから、1991年に社会保障財源として一般社会税というのが導入されまして、多少直接税のほうにハンドルが切られたというのもありますから、その背後にある租税原則、租税体系のあり方、考え方について、注目して見てきたいというふうに思います。ドイツについては田近先生とご一緒させていただくということです。

香西会長

どうもありがとうございました。お話によると、大変期待の持てる出張になるということですので、大いに期待しております。よろしくお願いしたいと思います。

なお、まだ人選も確定しておりませんし、具体的になっておりませんけれども、次の海外調査としては、4月中旬に、できればアジアの諸国を調査していただくことをお願いしたいと考えております。ただし、これは未確定のことですので、詳細は確定次第ご連絡を取るようにいたしたいと思います。

それでは、本日の議事の進め方ですけれども、これについてご説明させていただきます。

本日は、前回の企画会合でご了承いただきました調査分析部会を立ち上げることを、ぜひお願いしたいと思っております。調査分析部会を立ち上げて、その第1回の会合を今日ぜひ開かせていただきたいというのがお願いであります。

立ち上げるためには、まず、調査分析部会に所属していただく委員が必要であるわけですけれども、これにつきましては、税制調査会令第5条の規定によりますと、会長が指名することになっております。本来なら、皆様にも広くご相談の上すべきなのかもしれませんが、お許しをいただいたということで、前回のメモにも書いてありますように、この部会のメンバーとしては、学者、研究者の方を指名させていただきたいということで、その点をご了解いただきたいと思います。

お手元に、調査分析部会委員名簿というのが配られておりますので、この方々をメンバーとしたいと思います。そこに書いてある委員の方々は、特別委員あるいは正委員、両方から、学者及び研究者の方を中心に並べております。

その最後に専門委員というのがございますけれども、本日付で10名の有識者の方々が専門委員として任命されましたので、早速本日からこの席にもご参加いただくことにいたしました。

部会メンバーの方々には、大変ご苦労ですけれども、税調の調査を汗をかいて実際にやっていただきたいというのが私の希望であります。そのために、専門知識をお持ちの方々を中心にして、税調のある意味で独自の、もちろん事務局からの協力を得ながら進めていただいて、それを税調の中で議論していくスタイルを取りたいというのが私の希望ですので、そういう形でお願いしたいと思っております。

ただし、これも前回以来ずっと申し上げておりますけれども、調査分析部会につきましては、部会に所属しない委員の方々についても、会合はすべてご案内いたします。つまり、調査分析部会が行われる場合も全委員にご連絡をいたしますし、ぜひご出席いただいて調査分析部会の議論に参加していただきたい、こういうふうに思います。

まずは部会を立ち上げるということでありますので、あまりよく相談しないままに指名をした形になってしまった点もございますが、なるべく早く税調自身の調査の手足を固めたいという希望がありましたので、その点についてよろしくご了解をお願いしたいと思っております。

次に、この会合の公開についてでありますけれども、調査分析部会の公開は企画会合と全く同様に行いたい。つまり、原則として公開します。記者の傍聴やインターネット発信に基づいて中身は公開する。部会の議事録は、発言者の名前入りで、内閣府等のホームページなどを通じて公表するということでやってまいりたいと思いますので、これもご了解いただきたいと思います。

なお、部会終了後は、ご質問があればということにもなりますが、原則としては、私と部会長とで記者会見を行って議論についてのご紹介をさせていただきたい、あるいは質問にお答えさせていただきたい、こういうふうに思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

以上のように進ませていただきますが、特に何か、今すぐというご意見はありますでしょうか。

よろしければ、大変せかして申し訳ないのですが、私としては、早くこの調査分析部会を立ち上げたいという気持ちが強いものですから、早速でありますけれども、第1回の調査分析部会を開催したい。今からそれに切りかえたいと考えておりますが、よろしゅうございますでしょうか。

〔「はい」という声あり〕

香西会長

それでは、ただいま、部会をつくりまして委員を指名しましたが、部会長の選出を行うことが必要であります。税制調査会令第5条の規定によりますと、部会長の選出は部会に属する委員の互選によるということになっております。

したがって、部会長についてのご意見があれば、ご発言をお願いしたいと思っております。ご意見ございますか。

どうぞ、神野委員。

神野会長代理

私、会長を補佐する立場もございますので、調査分析部会を円滑に運営していく上でどなたが部会長に適任かというふうにつらつら考えてみますと、幅広くテーマを取り上げて検討していくことになりますから、税制に関して深い知識と幅広い知識を兼ね備えていなければならないと思います。そうした点を考えてみると、これまでの税制調査会における経験なども考慮して、田近委員にご就任していただくのが最適なのではないかと思いますので、田近委員を部会長にご推薦申し上げたいと思います。

香西会長

ただ今、田近委員を部会長にという発言がございました。何かご意見等ございませんでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。

それでは、皆様の互選によりまして、田近委員に部会長にご就任いただくことに決定させていただきたいと思います。

それでは、田近部会長には部会長席に移っていただきたいと思います。どうぞ。

〔田近委員、部会長席に着席〕

香西会長

それではここで、田近部会長からご挨拶をいただきまして、その後の議事進行は部会長に進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

田近部会長

今、神野先生からご推薦いただき、皆さんの互選でこの部会長の任を拝命することになりました田近です。よろしくお願いします。

税調の審議に、この中ではでしょうけれども、比較的長くかかわって様子も見てきましたけれども、特に税調の使命として、年度末の税制改正の答申をとりまとめるまで調査研究が重要だということは、かねがね思ってきました。また、税調というのは我々任期3年ですけれども、それを区切りに中期答申--なぜいつまでも永遠に中期答申なのかというのはよくわからない、謎ではありますけれども、中期答申というのを出しています。そういうわけで、年度末の毎年恒例の答申だけでなくて、税調としてのそのときどきの考え方を議論してまとめて社会に発信していくべきだと。そういうわけで、調査分析部会が開かれるならばぜひ積極的に参加したいと思っておりましたので、この仕事もやらせていただきたいと思っています。

もう一つは、部会の運営です。先ほど香西会長からも説明がありましたけれども、部会のメンバーというのは基本的には研究者サイドの人が多いわけですが、会議自身はそういうわけでなくて、どなたにも積極的に加わっていただきたい。この点はきちんと貫いていきたいと思っています。

そういうわけで、税調における調査分析をきちんとやっていきたいということと、会議を開く以上、一応そのメンバーは決めましたけれども、税調のあらゆるメンバーが加わって議論していきたい、その2点が私の今の考えであります。

以上、申し上げたところで、早速これから議事進行をさせていただきます。

その進め方ですけれども、お手元に、前回、会長から配付された、「今後の審議の進め方について(会長メモ)」というのがあると思います。そのメモの下から2つ目に「部会で取り上げる領域を以下の通り整理する」と。全体に企画会合というのがあって、そしてここが調査分析部会で、その中に3つの領域を考える、そういう整理です。

その3つの領域について、これからテーマを絞ってやっていきたいということですけれども、その責任者を私から指名させていただいて、その方をいわば主査として、今後、部会を運営していきたいと思っています。

早速、各3つの領域の主査ですけれども、第1の「経済社会の構造変化とそれが税制に与える影響の検証」、いわば経済全体が税制にどういう影響を与えるのかということで、それについては吉川委員にお願いしたいと思います。

第2の「税制が経済及び社会構造・経済主体の諸行動に与える影響の検証」については、井堀委員にお願いしたいと思っています。

そして第3の「今日的意味における租税原則」については、中里委員に運営をお願いしたいと思っています。

お三方それぞれ、それらの分野のご見識と蓄積もあって、大変お忙しいところだとは思っていますけれども、ぜひお願いしたいと思います。

なお、3つ目のテーマ、「今日的意味における租税原則」については、中里主査と協力しながら私も多少かかわらせていただければと思っています。

そういうわけで、企画会合、そして我々は調査分析部会、その中で今申し上げた3つの領域。そして、その領域をリードしていただく委員の方をお願いしたわけですけれども、そこで3主査の方に、どのような形で調査分析を進めていかれるのか、お考えなり抱負なりをお話しいただきたいと思います。

吉川さんから。

吉川委員

それでは、部会長からのご指名ですので。

私は、この会長メモの[1]のテーマについて専門的な調査を進めさせていただく、そのグループのまとめ役のようなことをさせていただくということでございます。会長メモにありますとおり、私が責任を持つテーマは「経済社会の構造変化とそれが税制に与える影響の検証」。ひと言で言いますと、[1]が、キーワードとしてはマクロということだと思います。[2]の井堀さんがやられるところがミクロ、そういう仕切りになっているかと思います。

具体的なテーマとしましては、会長メモにありますが、少子高齢化、デモグラフィーの変化が経済社会にどういう影響を与えるのか。したがって税制にもどのような意味合いを持つのか、こうしたことを考える。デモグラフィーそのものにつきましては、ご承知のとおり、国の外郭の研究所で、将来の人口推計等、直近では去年の12月、2055年までのものが出ています。そうした将来人口推計等を踏まえて、どのような意味合いを持つのか、こうしたことを考える。

そのほかのテーマとしては、グローバル化の進展、いわゆる格差論争にかかわるわけですが、所得ないし資産の分配の問題。この3つ目のテーマ、所得ないし資産の分配、また、それと関係するいわゆる格差の問題につきましては、何人かの専門家の方に専門委員として入っていただくわけであります。私としましては、以前のこの税調の会議でも発言させていただいたのですが、何より事実をしっかりつかむというのがすべてのことの出発点だと考えております。憶測とか印象論というのはいろいろあるわけですけれども、こうした問題を例えば統計を通して見るというと、最後には限界もあるわけです。しかし限界があるにしても、安易な印象論あるいは憶測を越えてどこまで事実をつかむことができるのか、この分配の問題について我々としてはそこに挑戦してみたい、こういうことでございます。

一つだけ、今、少し調査を始めていることとしては、ご承知のように日本のジニ係数の上昇、全体として見ますと高齢化の影響が大きい。若年世代、現役世代に比べて高齢者間のジニ係数というのが高い。つまり不平等度が高いということで、全体の年齢構成が高齢化が進めば、マクロでは、ある種の不平等度の尺度であるジニ係数が上昇する。こういうことが日本では一つの大きな事実だと。

これは皆様方ご承知のことだと思いますが、私も少し前まで、高齢者間のジニ係数が現役世代よりも高いというのは理の当然だというふうに考えていたのですが、先進国間で比較すると、現役世代に比べて高齢者の間でのジニ係数が高いというのは日本特有の事実。ほかの国でも少しは高いけれども、日本ほどは現役世代と高齢者間で格差がない、こういう指摘もあるのです。その点を今確認中なのですが、こういう指摘もあって、その辺になってきますと、先進国間での高齢者の有業率とか、そういうようなことも関係してくる問題かもしれません。

やや細かいことまで申し上げているのは、とにかく初めに申し上げたとおり、事実の確認ということが大切だと思っていますし、また、日本の将来の社会のあり方について税制は大きな影響を与えるわけですが、その将来のあり方というものを考えるときに、例えば他の国との比較ということも含めて、事実の確認をどこまでも初めのうちは進めたい、このような考えを持っております。よろしくお願い申し上げます。

田近部会長

どうもありがとうございました。

井堀さんは、少し遅れて来られますので、中里さん。

中里特別委員

田近部会長から、先ほどの3つのテーマのうち、第3番目の「今日的意味における租税原則」について主査のご指名をいただきましたので、よろしくお願いいたします。

もちろん、具体的な調査項目についてはこれから詳しく検討して考えていかなければいけないのですけれども、たった一つ言えるのは、私は法律家ですが、法的分析だけで足りるわけではなくて、経済的な分析と法的な分析と両者を組み合わせてやっていく必要があります。先ほど田近部会長がおっしゃったように、田近部会長と一緒にこの3つ目のグループをやっていけたら、一番効率的に行くのではないかというふうに考えております。

このテーマに取り組む際の一つの視点として、経済学とか財政学において提唱される租税原則について、それが具体的な税制改革の中で法的な観点から見てどのように位置づけられるのか、どのように表現されるのか、そういう視点が必要なのではないかといつも思っています。経済学者の方、財政学者の方が高邁なる税制改革の理想を示したとしても、税制改革というのは100%法改正によって実現されるわけですから、法律を無視するわけにいかない。嫌でもしようがないんですね、そうなってしまいます。したがって法的制約というのはその場合には効いてきますので、経済的に望ましいことが100%法的に実現できるとは限らない。憲法等の制約がございますので、そういう点を多少見ていかなければいけないということです。

もう一つは、そのような法的な制約をくぐり抜けて理想的な租税制度が法律改正の形で実現されたとしても、制度をつくるのは簡単なのですが、それがそのとおり執行されるとは限らないということです。これは上月先生とか、税理士、税務の現場に立っている方であれば、税法どおり執行がそのまま簡単に行われるのだったら誰も苦労しないということは当然おわかりだと思います。コンプライアンスとか租税回避の話が、非常に重要な問題になってくるのではないかと思います。ここ10年ばかり喧しい話でありますけれども、さまざまな租税回避行動等について、経済学と法律の両方の手法を合わせて、どこまでできるかわかりませんが、一定程度の実証的な事実把握、吉川先生のおっしゃった事実把握のようなものができたら、それも一つのテーマとして面白いのではないかと思っています。

そして、今度の外国出張もございますので、諸外国の税制改革が最近どのようなアイデアのもとでなされているかということに関して、これも一定程度、短い時間でどのくらいできるかわかりませんけれども、まとめられるならまとめていきたいということです。

さらに、第1グループの吉川先生のところと第2グループの井堀先生のところ、こちらでマクロ的、ミクロ的なテーマをご担当なさるわけで、もちろん経済学の理念でいろいろな分析をなさるのでしょうけれども、法的、制度的な側面からのサポートが必要な場合もあるでしょうから、そういう場合には、ご協力いたしたいというふうに思っています。要するに、みんなで連携してやっていく形が取れれば一番いいなというふうに思います。

まだ具体的ことについては詳しく申し上げられる段階ではありませんけれども、田近先生とご相談しながら、詳しいことをこれから詰めてまいります。今日メンバーになられた専門委員の方々も含めて、プレゼンテーションをお願いする場合がたぶんあるのではないかと思いますので、その場合にはぜひご協力のほどよろしくお願いいたします。

以上です。

田近部会長

どうもありがとうございました。

井堀さんは来られてからまたお話を伺うということで、続きまして、冒頭で会長からお話がございましたとおり、各分野で研究蓄積等をお持ちの方を専門委員として出席いただくことになりました。これから折に触れて、ご報告等をお願いしていくことになりますけれども、今日は恐縮ですが、私から出席の方のお名前を呼ばせていただきますので、ご起立していただきたいと思います。メンバーは、このリストの「企画6」に大きなゴシックで出ていると思います。

お呼びの仕方ですけれども、教授とか委員とか言うのも少し堅苦しい感じがしますので、「さん」ということですべて共通して呼ばせていただきたいと思います。

ご出席の方で、まず、明治大学の加藤久和さん、関西学院大学の小西砂千夫さん、一橋大学の佐藤主光さん、慶應義塾大学の土居丈朗さん、日本大学の沼尾波子さん、財務総合政策研究所の八塩裕之さん。

今日はご都合でご出席いただいていませんけれども、このほかに、大阪大学の大竹文雄さん、一橋大学の國枝繁樹さん、北海道大学の藤谷武史さん、横浜国立大学の吉村政穂さんが既に任命されて、議論に加わっていただくことになっています。

以上、専門委員は10名で議論を進めていきたいと思います。

それでは、早速、今日の調査分析部会の中身に入ります。今、吉川さん、中里さんから、それぞれのテーマの中でどんなことを検討されるかというお話がありましたけれども、その関連、より具体的に言えば、広い意味で租税原則にかかわる話だと思います。

それで、事務局より補足的な説明をお願いしますけれども、資料にあるとおり、「これまでの税制改革(日本)の流れ」、「主要国の税制改革の動向」、「最近の補正予算」についてお話しいただこうと思っています。報告いただくのは、主税局の星野調査課長、自治税務局の滝本企画課長、主税局の永長総務課長にお願いしたいと思います。議論の時間をできるだけとりたいと思いますので、20分程度でお願いします。

よろしくお願いします。

星野調査課長

それではまず私から、お手元にございます「調査1-1 これまでの税制改革の流れ」、これに基づきましてまずご説明させていただきたいと思います。「調査1-2」は、基本的な資料プラスご説明する中身に関して、例えば税制調査会でどういった答申が出されているかということについてのデータをまとめさせていただいているものでございます。

それでは、「調査1-1 これまでの税制改革の流れ」の資料の1枚目をまず簡単にざっと説明させていただきます。適宜、ご参照いただければと思います。

皆様方よくご承知のとおり、戦後の税制、シャウプ税制に始まるわけでございまして、シャウプ勧告の理念は、恒久的・安定的な税制を確立して、直接税を中心に据えた近代的な税制を構築することにあったわけでございます。具体的には、所得税を基幹税として位置づけるとともに、公平な税負担の配分の観点から、課税ベースをなるべく広くとる、原則としてすべての所得を課税の対象とするという包括的所得概念をとっておりました。分離課税を極力排除して、税率については一本の累進税率表を適用する、総合的累進所得税と呼ばれておりますけれども、こういった考え方でシャウプ税制がつくられたわけでございます。

ただ、その後すぐに、戦後復興期の社会経済の実情に適合していない部分ですとか、執行上の困難性ということもございまして、我が国の税制はシャウプ勧告で示された税制の姿から離れていくことになります。高度成長期の税制の特徴といいますと、物価上昇に伴いまして所得税の負担が累進税率で過重になっていったということを受けて、これを軽減するために、税収の自然増収を国民に減税の形で繰り返し還元していく、これが最大の特徴だったわけでございます。また、経済の復興を図る見地から、資本蓄積ですとか、産業助成金などの経済政策的な要請に基づく各種特別措置が講じられたわけでございます。

昭和50年代に入りますと、オイルショックを経て高度成長期が終わり安定成長期に入るわけでございますけれども、財政面を見ますと、オイルショック後のデフレによって税収減を経験することになって、この時期を境に公債発行額が急速に増加することになりまして、財政収支不均衡の是正が課題になるわけです。いわゆる一般消費税を導入するかどうかといったことが検討されるわけですけれども、結局、財政再建は既存の税制の中での歳入の充実、行政改革、歳出の節減・合理化などによって進めることになりまして、その増収策の一環として、法人税率の引上げですとか、例えば酒税などの間接税の増税措置といったことが行われるわけでございます。また、社会保険診療報酬課税制度の見直しをはじめとした租税特別措置の整理・合理化といった対応が図られたということでございます。

1枚めくっていただきまして、それではシャウプ以降、一番大きな抜本的な税制改革というのが、この一番左側に書いてあります、昭和62年、63年で行われることになるわけでございます。税制改革が必要だと考えられたその理由は、大きく4点挙げられようかと思います。

1点目は、サラリーマンの重税感・不公平感への対応でございます。それ以前の税制のもとでは、所得税の強い累進度、これを背景にして重税感が募っていった。また、所得課税のさまざまな特別措置があった。また、課税所得の捕捉といった問題でアンバランスがあるのではないかといったことが指摘されていたということで、総じて言えば、サラリーマンの重税感・不公平感が高まっていたということがまず1点挙げられます。

2点目として、消費の多様化・サービス化に伴いまして、当時の個別間接税では、課税品目や税負担水準にアンバランスが生じていたということが挙げられます。

3点目として、経済取引の国際化に伴いまして、法人税率が国際的に見て高水準であることがなかなか無視し得なくなっている状態だった。

最後4点目として、今後の高齢化社会への対応を考える必要があったということでございます。

この改正の基本的な視点、考え方が何かということを申しますと、税調の答申などで指摘されておりますけれども、税体系については、所得、消費、資産などに対する課税を適切に組み合わせる必要があることが指摘されております。所得課税において負担の公平を図ることとともに、税体系全体として実質的な負担の公平に資する見地から、所得課税を軽減し、消費にも応分の負担を求め、また、資産に対する負担を適正化することによって、国民が公平感を持って納税し得る税体系を構築することが必要であるということが指摘されております。

さらに、公平・中立及び簡素の基本原則に従うとともに、社会共通の費用を広く薄く分かち合う視点が重要であるといったことが指摘されているわけでございます。

具体的な改正内容はここに書いてあるとおりでございますけれども、中低所得者層の負担の軽減を狙いとして、水平的公平を確保する観点から、個人所得税の負担軽減、合理化が図られました。また、株式などの譲渡益課税の原則課税化とか、利子所得の一律源泉分離課税化など、資産に対する負担を適正化したということが挙げられます。また、消費税制度の創設ですとか、相続税につきまして最高税率の引下げですとか、基礎控除の引上げといった改正が行われたわけでございます。

62年、63年の税制改革の全体としての増減収を見ますと、消費税の創設、課税の適正化による増収はあるものの、直接税の減税による減収ですとか、既存の間接税の廃止などを行った減収額が大きく、ネットとしては全体減税になっているということでございます。

62年、63年後の大きな改正といたしましては、その次の欄、平成6年の税制改革が挙げられるわけでございます。人口構成の高齢化が加速・進展していく中で、所得水準の上昇とともに、中堅所得者層を中心に税負担の累増感が強まっていたということが背景として挙げられると思います。

この平成6年の税制改革の基本的な視点、考え方でございますけれども、62年、63年の税制改正の考え方、これは基本的に支持し得るとした上で、税制について幾つかの視点が示されております。高齢化社会を強く意識した内容になっていると言えようかと思いますけれども、第1点目として、高齢化社会を支える勤労世代に過度に負担が偏らないように世代を通じた税負担の平準化。個々人にとってみると、ライフサイクルを通じた税負担の平準化を図って、社会全体の構成員が広く負担を分かち合う税制を目指す、といったようなことが指摘されております。

また、高齢化社会においても安定的な経済成長を持続させるために、国民一人ひとりがその活力を十分発揮することのできる税制を目指す。もう一つ、安心して暮らせる高齢社会を構築するために、社会保障などの公共サービスを適切に提供し得る安定的な税収構造を目指す、といった視点が示されているわけでございます。

主な改正点でございますけれども、所得税と個人住民税の税率構造の累進緩和などによる負担軽減が実施されたわけでございます。また消費税につきましては、税率の引上げ、地方消費税の創設などが行われまして、あわせて中小事業者に対する特例措置の見直しなどが行われております。

税収について申し上げますと、景気に対する配慮から平成6年から8年に特別減税が実施されておりまして、この特別減税を含めると、平成6年の税制改革全体の改正増減収額はネットとして減収になっているということでございます。そのあと平成10年から、経済構造改革や金融システム改革などへの対応、企業経営環境の変化への対応といった観点から法人税制の改革が行われました。また、平成11年度の改正では、当時、著しく経済活動が停滞していることに対する緊急的対応ということで、いわゆる恒久的な減税が行われたわけでございます。

これらの基本的な視点、考え方でございますけれども、経済構造改革を進めていく中で、法人課税についても経済活動に対する税の中立性を高めよう、それによって企業活力と国際競争力を維持するといった観点が、税調において示されております。また金融システム改革につきましては、税制として、「フリー、フェア、グローバル」の三原則、こういったことに対応していく必要があるということが記述されております。

また、恒久的な減税につきましては、全体として景気に最大限配慮したものと位置づけられるわけでございますけれども、その中で、個人所得課税の最高税率、法人課税の実効税率、それぞれの引下げは、将来の税制の抜本的改革を一部先取りしたものであるという位置づけがされているわけでございます。

主な改正ですけれども、これは一番下の欄に書いてあるとおりでございまして、一連の改正が行われたということでございます。

最後、一番右側の「あるべき税制の構築」という欄でございます。これは平成14年6月の政府税調の答申で、少子高齢化などの経済社会の構造変化に対応して、持続的な経済社会の活性化を実現するために「あるべき税制」を構築していく必要があるといった認識が答申で示されております。ある意味、高齢化に加えて少子化の視点が加わってきているということですけれども、この答申の基本方針の中で、「公平・中立・簡素」を基本理念としながら、特に重要な視点として4つ挙げられております。1点目が、自由な経済活動を妨げない税制。2点目として、課税の適正化・簡素化。3点目として、安定的な歳入構造の構築。4点目として、地方分権と地方税の充実確保といったことが指摘されているわけでございます。

改革の方向性として指摘されていることといたしましては、1点目に、個人所得課税の基幹税としての機能を回復する必要があるということ。2点目として、法人課税につきましては、企業活動を妨げない中立的な税制の構築を基本とすべきであること。3点目として、消費課税については、世代間の公平の確保、経済社会の活力の発揮などの観点から今後その役割を高めていく必要がある、といった方向性が示されております。

主な内容につきましては一番右下に書いてあるとおりでございまして、あるべき税制の構築に向けて、今申し上げた基本的な考え方に沿って各種の改正がなされてきているということでございます。

地方の関連につきましては、滝本課長から補足させていただきます。

滝本企画課長

補足的に地方税制改革の流れについて、1ページ、2ページに基づきましてご説明申し上げます。

ご承知のように、現行地方税制の原型は昭和24年のシャウプ勧告に基づきまして形づくられたものでございます。戦後直後の経済混乱の中で地方財政も極度に疲弊しておりました。そうした中でシャウプ勧告が24年9月に出されているわけでありますが、国税の改革とあわせまして、財政面から地方自治を確立することを一つの重要な目標としております。税制改革の勧告であると同時に、地方自治強化の勧告でもあったということでございます。

地方税制の勧告では、地方税総額の確保、それから、国、都道府県、市町村の税源の分離が強調されまして、都道府県税では付加価値税、市町村では個人住民税、固定資産税を基幹税として位置づけることが勧告されたわけでございます。

しかし、20年代後半、戦後復興期の世界経済の変化に伴いまして、すぐにシャウプ税制の修正が始まりまして、付加価値税につきましては一度も実施されずに廃止がなされる。それから、市町村民税の法人税割というものが創設されましたが、シャウプ勧告は法人擬制説に立っておりましたので、この考え方と対立する税制が仕組まれていったということでございます。それから道府県民税の創設などもなされています。

昭和30年代から40年代、高度経済成長時代に入りまして、地方財政の再建を図りながら地方税源の充実、地方税負担の軽減、合理化、均衡化を推進した時代でございます。累次の減税がなされたわけでありますが、あわせまして、市町村民税の所得割、5種類ぐらい課税方式があったのですけれども、この課税方式の統一ですとか、あるいは所得税の一部を道府県民税、所得割へ移譲されるといったような改正がなされております。

昭和50年代、第1次オイルショック以降の財政状況悪化の中で、昭和50年度には、事業所税の創設といった都市税源の充実が図られております。その後、増税なき財政再建の時代に入ったわけでございますが、昭和63年の抜本的税制改革では、個人住民税の負担の軽減とあわせまして、消費税の創設に伴いまして、地方の貴重な財源でございました個別間接税が廃止・縮小されております。電気税、ガス税の廃止とか、娯楽施設利用税、料理飲食等消費税の縮小といった改正が行われまして、代わって消費譲与税というものが創設されたわけですが、平成6年の税制改革では、消費税の拡充とあわせまして地方消費税が創設されたところでございます。

その後、法人税改革あるいは恒久的な減税を経まして、最近では、あるべき税制の構築の一環といたしまして、長年の地方税制の重大な課題でございました法人事業税の外形標準課税の導入でありますとか、所得税から個人住民税への3兆円の税源移譲がなされて今日に至っている、こういった経過をたどっております。

以上でございます。

星野調査課長

続きまして、資料「調査1-3 主要国の税制改革の動向」につきまして、最近の主要4カ国の税制改革の動向につきまして、簡単にご説明させていただきたいと思います。

資料は、それぞれの国の順番に、最初に総括のグラフが載っていまして、そのあと内容が載っているという形になっております。

まず、アメリカでございます。1ページをご覧になりながら聞いていただければと思います。1981年、レーガン政権下で行われました最初の租税政策でございますけれども、当時、アメリカは非常にインフレ率が高くて、それによりまして所得税、法人税負担が増大していった。こういうことに対応するために、労働・貯蓄・投資、それぞれのインセンティブを回復するために大幅な減税が行われたというのがレーガンの第1期の租税政策でございました。ただ、この租税改革は財政的に見ますと、減税による税収の落ち込みが非常に大きくて、赤字が大幅に拡大したということでございます。これに対応するために、1986年から行われましたレーガンの第2期の税制改革におきましては、歳入中立を前提として租税特別措置や諸控除の縮減などを通じまして、税制を簡素・公平、かつ経済成長を促すものとする抜本的改革が実施されたわけでございます。

レーガン政権下で積み上がった財政赤字を縮減するために、その後のブッシュ政権、クリントン政権下において、所得税、法人税などの各税目にわたる増税措置が実施されました。一連の財政再建努力に加えまして、クリントン政権のもとに起きました景気拡大が進展したこともありまして、アメリカの財政は着実に改善を続け財政収支は黒字化したわけでございます。

今のブッシュ政権、2001年に発足した後、前の政権で蓄積されました連邦財政黒字を国民に還元するということと、当時、減速していたアメリカ経済に適切に対応するという観点から、2001年及び2003年において各税目にわたり大規模な減税措置が実施されました。

また、2005年よりスタートしたブッシュ政権の第2期目におきましては、経済政策課題として「簡素、公平、経済成長の促進」という3本柱による税制改革が掲げられて、歳入中立を前提とした税制改革案を検討するために超党派の税制改革諮問委員会が設置されました。この諮問委員会は、2005年11月に財務長官に対して最終報告書を提出しているところでございます。この報告書の中では、今の税制におきまして、代替ミニマム税ですとか、多種多様な控除制度などが税制の複雑さを助長していて、それが納税者に実際の税額以上の負担を与えることになるということを指摘しておりまして、特に税制の簡素化を強く指摘する内容になっているわけでございます。

次に6ページ、イギリスでございます。イギリスはいわゆるサッチャー改革の中で、税制につきましては、所得税、法人税の税率引下げですとか、税率構造の簡素化が行われる一方、その財源として付加価値税の税率が引き上げられまして、負担構造を所得課税から消費課税へとシフトいたしました。こういった一連の改革によりまして物価が安定し、財政の健全化に一たんは成功し、経済も好調に推移したわけでございます。

ただ、税に関しまして地方税としてのコミュニティ・チャージ、いわゆる人頭税が90年に導入されましたけれども、これに対して国内で非常に強い批判が起こって、結局、これによってサッチャーは退陣を余儀なくされることになるわけでございます。

続くメージャー政権では、90年代に入ってから財政が急速に悪化していったことを背景といたしまして、所得税の諸控除の整理・縮減、それから個別間接税の大幅な税率引上げなどによる増税を行ったわけでございます。このほか、幾つかの新税、例えば保険税、航空旅客税、埋立税といった新税が導入されたということでございます。

今のブレア政権、97年に発足しておりますけれども、いわゆる第三の道と言われる中道路線のもとで、前政権から引き続き財政健全化を重んじたマクロ経済運営を維持するとともに、例えば雇用機会の向上とか子供の貧困対策といった、種々の政策目標に基づく税制改革に取り組んでおります。例えば、税額控除制度の導入といったことが打ち出されてきているわけでございます。

それからドイツ、8ページでございます。ドイツは、1990年の東西ドイツ統一の影響、これが何といっても大きいわけでございまして、旧ドイツに対する財政支援が増大することによって財政収支が大幅に悪化する。これに対応するために当時のコール政権は、91年に連帯付加税を導入いたします。実質的に所得税、法人税の増税を行うわけでございます。また93年には、EU域内の税制調和を目的といたしまして、付加価値税率の引上げが行われるわけでございます。

こういった政策の結果、90年代半ば以降は、歳出の抑制と相まって、また経済の回復に伴って、財政収支は緩やかに改善していくわけでございます。こういった中で98年にシュレーダー政権が発足するわけでございますけれども、シュレーダー政権は、失業問題の解決を目的とした産業競争力の強化、税制の簡素化、租税の公平の達成といった3つを標榜いたしまして、例えば社会保障財源の確保を目的として、鉱油税の引上げ、電気税の創設、こういった増税を行うとともに、景気浮揚を図るために、「税制改正2000」と呼ばれる、所得税、法人税の大幅な減税プログラムを実施したということでございます。

ただ、景気浮揚を意図したこれらの施策は予想した結果をもたらすことができず、財政収支は急速に悪化いたしまして、2002年以降、マーストリヒト条約の財政基準に連続して違反する状態が続くことになります。こういった財政悪化状況を受けて、2005年以降登場いたしますメルケル大連立政権のもとで、先ほど田近部会長からもご紹介がありましたとおり、付加価値税の引上げですとか、個人所得税の最高税率の引上げが実施されてきているということでございます。

最後、フランスでございます。11ページ以降でございますが、フランスにつきましては、一般社会税の導入、95年の時限的な増税措置、大統領選の公約とされた所得税の引上げという3つのポイントがございます。

簡単にご説明させていただきますと、まず一般社会税の導入につきましては、90年代、急速な少子高齢化に伴って増大する社会保障支出への対応と、欧州市場の統合を控えた国内企業の競争力の確保が課題とされた中で、91年に、企業に負担を課す社会保険料を引き下げる一方で、所得税よりも課税ベースが大きく、広く薄く課される新たな個人所得課税として一般社会税が導入されたわけでございます。導入当時は1.1%であった税率が7.5%にまで引き上げられてきておりまして、現在、一般社会税の税収は所得税収を上回る規模になってきているということでございます。

それから、時限的増税措置でございますが、当時、99年に欧州通貨統合を控えて、シラク政権は、マーストリヒト基準を満たすための財政赤字の削減を最優先課題として位置づけるとともに、失業率が10%前後となるなど雇用問題が深刻化してきていたということで、雇用対策の財源確保も急務であったわけです。これらの目的を達成するための時限的な増税措置として、95年に法人税付加税が導入されたほか、付加価値税が引き上げられたということでございます。

あと、95年と2002年の大統領選挙におきまして、シラク大統領が公約として、国民負担を軽減する観点から所得税の減税を掲げて、所得税率の段階的引下げが実施されたほか、税率構造の簡素化が行われたということでございます。

以上、簡単でございますけれども、諸外国の税制改革の動向でございました。

永長総務課長

続きまして、「調査1-4」という3枚紙の資料でございます。これは、これまでのこの会議でのご論議の中で、補正予算を含めて歳出のあり方を議論しなければいけないというご指摘がございまして、香西会長からのご指示で作成した資料でございます。

1枚目の、一般歳出(決算)の推移でございます。歳出トータルから国債費と地方交付税を除いたものを我々は一般歳出と呼んでおります。それの決算、すなわち当初があり補正があり、最後のおしりの数字、それの推移でございます。黒いところが公共事業関係費、過去10年のいわゆるおしりの数字の推移。それからドットで表示しておりますのが、その他の一般歳出。この両者はこの10年間減り続けている。片方で、横しまになっておりますが、社会保障関係費、これも決算の数字でございますが、これは着実に伸びている。補正後の姿、すなわち一番最後の数字の推移をご覧いただきました。

次のページ、補正予算の主な歳出内訳の推移です。これは「主な」となっておりますが、基本的には先ほど申し上げた一般歳出の世界での補正増でございます。長め、昭和61年以降でとっておりますが、この表の一番濃い部分が経済対策関係でございます。これはその時々の経済情勢に対する経済対策に対応する補正予算でございまして、例えば平成7年は、阪神・淡路大震災後の対策等が入っておりますし、平成10年、この辺はまさに日本の金融不安等に発した資産デフレに対応、こういうものが入っているわけでございます。

ここ数年間、15、16、17、18年度をご覧いただきますと、結局やっておりますのは義務的経費等のプラス、それから災害対策のプラスだけでございまして、補正規模という意味では小さくなってきている。

次のページ、直近の3カ年間の補正予算のフレームを表にしたものでございます。お時間ございませんので、18年度、一番右のところをご覧いただきたいと思います。これは、歳出・歳入、追加したもの、減らしたものということで4象限に分かれております。目立ちますのは、やはり歳入の増。18年度補正におきましては、租税及印紙収入、4兆6,000億円の補正増をしております。

このお金でございますが、まず地方交付税--先ほど申しました一般歳出から外れるものでございますが、地方交付税に、これは計算上出てまいりますものが回ります。その上ででございますが、歳出追加をご覧いただきたいと思います。災害対策費、義務的経費等の追加ということで、それぞれおよそ8,700億円、9,800億円、このような歳出の増加が行われているわけでございます。

災害対策というのは、その年に生じた台風であるとか地震であるとかそういったもので、道路がつぶれる等々、公共事業でつくったものが壊れてしまう、それを直さなければと。こういったもののほか、例えば18年度におきましては、学校など、耐震基準に足りていないものに対する対応はすぐやらなければいけない、こういったものが3,000億円ぐらい入っている、こういう数字でございます。

義務的経費等の追加でございますが、これは、ある意味では法律で定められている、例えば老人保健法とか国民保健法、これでその年度に生じている、いわゆる国庫で負担しなければいけない分が足りない、これを継ぎ足すものでありますとか、例えば18年度に関して申し上げれば、障害者自立支援制度運営の円滑化対策、新しく17年度にできた法律の施行のためということで、960億円の補正増。それから、市町村合併補助金、これが思いのほかたくさん合併があって、これも足さなければいけないということで、これも980億円の補正増、こういったことをしております。

それから、国債整理基金特別会計への繰入れ、これを9,000億円ほどしておりますが、これは前年度剰余金、1兆5,000億円が17年度の剰余金として残るわけですが、それを地方に回して、残りを全額、国債整理基金特会に繰り入れる。いわゆる償還財源の充実ということでございます。

ざっと申しますと、基本的にはたくさん税収増が出たわけでございますが、地方に渡す--これは計算上渡すもののほか、災害、義務的経費等、この2つの分野に現在は補正増は限られている、こういうことでございます。

以上でございます。

田近部会長

どうもありがとうございました。

それではこれより、今報告いただきましたけれども、それも含めて、本日の部会の発足により体制が整いましたから、部会で扱うテーマ、その進め方も含めて自由にご発言いただきたいと思います。

あと、お手元に資料として今日ご欠席の高木さんから意見書が出ています。それも併せご参照いただきたいと思います。

そういうことで、調査分析部会を今日から発足するということで、我々は3つの領域を括って議論していくということは申しましたけれども、まだ完全に中身が詰まっているわけではありませんし、どこからでもご自由に議論していただきたいと思います。お手を挙げて、ご遠慮なく発言いただきたいと思います。事務局から、日本のシャウプ勧告以来の税制改革の話、各国の改正の話、あと、税調の企画会合で何回か出てきた補正予算の話がありましたけれども、どこからでもご質問があれば。

山田委員

私、前回の企画会合に出ていなかったのでちょっとわからないのですが、吉川先生がご担当される「経済社会の構造変化とそれが税制に与える影響の検証」という中に「グローバル化の進展」というのが一つ挙がっています。さっきのご説明の中にあまり明確にこれがなかったように思うのですが、追加でご説明いただけますか。

吉川委員

この部会全体がそうだろうと思うのですが、我々としてはそもそもこういうテーマを掲げて、最近もちらっとご紹介したようなことを調査したいということですけれども、我々が調査したものはしかるべきタイミングで皆様方にお伝えするわけです。逆に言えば、この会議で皆様方から、こういうことを調査したらいい、こういうことも調査しろということを言っていただければ、いくらでも我々のほうでそれに対応していくということですけれども、グローバル化については[2]とも関係してくるかと思います。例えば法人税の問題、法人課税の問題や何かも一つのイッシューだろうと思います。井堀先生のほうとどういうふうにそこのところをすみ分けるかというようなことは、今後、全体の連携を考えますか。

田近部会長

おっしゃることがあればご遠慮なく。

吉川委員

はい。グローバル化のところでこういうことも考えたらどうか、ということをもし言っていただければ、それも対応しますが。

山田委員

私が一番気にしているのは、移転価格税制等の問題。企業行動といいますか、現在の日本が国際的に貿易を進めていく中で最大の障害になっているものの一つとして、移転価格税制の対応というのがあると思います。そのあたりを当局がどういうふうにネゴしていくか、当局間のネゴの問題だとは思うのですけれども、その辺、他国がお互いにどういうふうにやっているのかも含めて大きな論点ではないかなと思っていまして、そこがちょっと気になっています。

吉川委員

田近先生の全体のコーディネーションのあれだと思いますが、そういうことになってくると中里先生のところとも関係してくるんですね。ですから、その辺は問題意識として出していただければ、田近先生のもとで部会の中でどこであれするか……。

田近部会長

今日、まさにそういう趣旨で会議をしているわけで、山田さんから、グローバル化した経済の中での税制、特に移転価格。移転価格のAPA(事前確認制度)の問題とか、まさに超ホットなテーマでやっているわけですけれども、その辺、井堀さんがこれからいらっしゃると思うので、井堀さんのほうで法人課税全体のこと、今ご指摘の点は中里さんたちがいらっしゃいますから、移転価格のAPA等も含めて検討していただくつもりです。いいですか。

中里特別委員

はい。

田近部会長

そういうわけで、ぜひ取り上げてもらいたい、あるいはご自身も意見を言いたいということは、遠慮なくおっしゃってください。

では、林さん。

林委員

今後の部会で、経済社会の構造変化が税制に影響を与えるというのと、税制が経済社会に影響を与える、これは非常に重要だと思います。ただ、今日のご説明の中で、法人税はシャウプ勧告のところで法人擬制説として確立したということがあって、その後、例えば法人間の配当をどうするかといった中で、法人税に対する考え方というのはかなり変わってきているのではないかという気もするんですね。あるいは、前の固定資産税の償却資産にかかる固定資産税をどうするかといったときの議論で、経済効果もさることながら、固定資産税というのは一体どういう税金なのだろうということがやはり非常に重要な課題になっていた。法人税の場合は、擬制説を取ろうが実在説を取ろうが、経済効果としては一緒なのです、同じ税制であれば。

ところが、税制を考えるときにそこは一体どう考えるのだろうということが、これは中里委員の「今日的意味における租税原則」のところで考えろということなのか、あるいは、それは少し置いといて、今の経済社会の変化に合った税制を考えていくということに割り切って考えていくのか。そのあたりはどうすればいいのだろうというのが一点。

もう一つは、これも中里委員がおっしゃった、要するに税制の設計図ができてもそれを実現しなければ意味がない。そのときに税制改正のプロセスのようなものをどうするのか。これは政府税調の位置づけみたいなものもかかわってくるかもしれませんが、そのあたり、例えばアメリカとかイギリスの税制改革のプロセスと日本の税制改革のプロセスはだいぶ違うと思います。こういうものが実際に税制として構築されなければ意味がないし、国民も企業も税制のとおりにそれを受け入れていかなければいけないといったときには、税制改正をどうやっていくのか。これは広報部会との関係もあるだろうと思いますけれども、そのあたりも「今日的意味における租税原則」という[3]のところで入ってくるのか、そのあたりをどのように考えていけばいいのか、私もちょっとわからないものですから。

田近部会長

中里さん。

中里特別委員

移転価格であれ、法人税の本質であれ、税制改革のプロセスであれ、今、私たちが直面しております具体的な課税上の問題、税制改革の問題、山積みされていると思いますけれども、この部会がつくられた意味は、基本的なことをとりあえず洗い出してみようと。固定資産税の本質とか法人税の本質ももちろん頭に入れておきたいとは思いますが、今まであまり時間がなくてできなかったような本当に基本的なことをとりあえずやって、必要な範囲でそういうものを頭に入れながら取り入れられていけたらと思っているのですけれども。

田近部会長

林さん、少し具体的なイメージで、最初のほうの問題--あとのほうのプロセスについては、まさにおっしゃったように広報の問題もあるし、隣の会長に引き受けていただきたいなという気がしたのですけれども、前のほうの話でもうちょっと問題意識というイメージがあったと思いますが。

林委員

個別税制の課税の根拠というところまで入り込む必要はないだろうと思いますけれども、ただ、公平な税制ということを考えるときに、税の根拠をベースにした公平性だとか、例えば所得税にしても、住民税といわゆる国税の所得税というのは公平性の考え方が違うかもしれない。そのときに再分配効果ということを考えたときに、地方税も再分配効果がなければいけないのだろうかといったようなことは基本的にあるわけです。ですから、そのあたりのことをどう踏まえて分析するのか。つまり、住民税の分配効果はこうなっていますということで終わっていくのか。これは例えばの話ですけれども、税の創設の歴史的な背景といったことも踏まえた分析は必要ないのか、そのあたりです。

田近部会長

ここでこれ以上突き詰める必要もないかと思いますけれども、おっしゃった点は、特に個人所得税、国税の所得税と住民税の関係とか、重要な問題だと思います。その辺は一つのテーマで考えるべきだと。あと、我々にとって擬制説というのはなつかしい名前ですけれども、その辺は中里さんのほうで超現代的な観点から扱えるかなと思います。

ほかに、どんどん手を挙げていただいて。

猪瀬委員

最後のほうの事務局からの報告にあった補正予算の件です。この委員会でしばしば出たのですが、ここは歳入をどうやって決めるかという場所であるわけですけれども、歳出がどこかで一定であれば--というか、歳出をピン止めされていないと、税がいくら追いかけても、逃げ水のように歳出が増えて逃げていくという関係であれば、国民が、今後いずれ予想される消費税とかそういう増税があった場合に、なかなか理解してもらえないだろうというふうに思うわけです。

そういう中で、毎年、補正予算がどのように組まれているのか、私にはよくわからないのですが、今回、補正予算の主な内訳という10年ぐらいの幅で見せていただいて、ご説明いただきました。災害対策費と義務的経費等を追加ということが言われて、それはそれで幾つか理由があることもわかりますが、税収増と補正の大きさの関係は何か関数があるのかどうかということです。例えば国債整理基金特別会計に繰り入れて借金を返すとか、いろいろなことがあるかもしれませんが、そうであれば、税収が増えたときの補正と税収が増えていないときの補正というのはどういう関係にあるのか。そういうものが見えてくると、今回、税収が5兆とか6兆増えたと。増えたのだったら、その増えた分を、どういうふうに補正に使っていくのかということをどの時点で予想してやるのか、ということがちょっとよくわからないというふうに思いました。

予算というのは初めから決めておけばいいわけで、ある程度予想される災害対策費とか義務的経費というのは予算で決めてあるわけですから、そこに多少追加があるのはわかりますけれども、税収増というのはいつ頃から予想されていて、補正はそれを予想してどういうふうに組んでいるのかというのがよくわからないんですね。

田近部会長

このテーマは、今日初めて来られた方はなぜとお思いかもしれませんけれども、何回か歳出・歳入一体改革の中でここで取り上げたテーマで、そういう経緯で説明があったわけです。猪瀬さんのおっしゃるのをもう少しパラフレーズすれば、補正というけど、歳出というのは年度の初めにピン止めされていたはずではないか。したがって税収が増えれば、その部分はできるだけ補正で国債整理基金への繰入れとかあってしかるべきではないか。もう一つは、税収が増えていく中でどういうプロセスで補正が決まるのか。質問はそういうことですね。

猪瀬委員

そのとおりです。整理していただいてありがとうございます。今年の1月の閣議決定で「日本経済の進路と戦略」というのがあって、その中に予算編成の原則として、原則の[2]というのがあって、「税の自然増収は安易な歳出等に振り向けず、将来の国民負担の軽減に向ける」、こういうふうに書いてあるわけです。それをあわせて、今、整理していただいたようなことですけれども。

田近部会長

永長さん、お願いします。重要な点は、歳出・歳入一体改革で税収が増えていったプロセスで補正をどう組むか、その辺ですけれども。

永長総務課長

18年度のケース、先ほど見ていただきましたが、消費税等が減になったのですが、租税及印紙収入、4兆6,000億円増えたと申し上げました。そこから地方交付税、これは税収の一定割合が交付税でいく。これで2兆1,000億円。これはちょうど間尺が合うのですが、右下、先ほど申しませんでしたが、公債金。これは、新規発行債を減らすということを2兆5,000億円やっております。目の子で申しますと、4兆6,000億円税収増がありまして、地方に2兆1,000億円、これはある種自動的に交付税特会に回る。その残りの2兆5,000億円は新発債の縮減に充てるということでございます。国債整理基金特別会計の繰入れはいわゆる剰余金の処理の数字でございまして、我々、基本的に仮に税収が余った場合にはやはり新発債を抑制する。これは今日の午前中の本会議でも、財務大臣からも答弁をしたところでございます。

片や歳出のほうですが、これは実は歳入の動向とは直接は関係ございませんで、当然、災害、義務的経費云々。それから16年度、17年度をちょっとご覧いただきたいと思います。その左側のほうですが、例えば改革推進公共投資事業償還時補助等と、何か難しいことが並んでおりますが、これは経済対策の一環で13年度補正のときにそれぞれ公共投資等々やったわけですが、そのときにかかったお金、これの前倒し償還をするための補助を出すと。これは、お金が余りまして、まさに借金の前倒しをしなければいけないということで、こっちにお金を回すというようなことをしております。現在は、ご覧いただきますように、災害と法律で決まっている義務的経費、こういったものが補正要因になっておりまして、税収に応じて歳出を考えるという要素はこの点にはございません。

タイミングは、補正予算は実は当初予算とほぼ軌を一にして、そのちょっと前につくる、こういうことでございます。当初予算の税収の見積もりをする際に、これもここで一度ご説明いたしましたが、進行年度、いわゆる補正予算をつくる。例えば去年で言うと、18年度の補正予算ベースの税収を見積もる。それを発射台にして19年度を見積もる、こういうことをやっております。我々はこの税収の見積もり作業自体は、実は18年度と19年度は同タイムでやっておりまして、予算編成も、もちろん先に補正予算を決めるわけでございますが、12月に入ってから決める、こういうタイミングになっております。

神野会長代理

永長課長、補正予算を作成するときの条件、仕組み、それを説明していただいたほうがたぶん誤解を招かないのだと思います。つまり、自然増収があったからといって自動的に補正を組めるわけではないですね。つまり補正予算というのは財政法上で規定されていて、当初予算を作成した後、特別な事情が生じたりしたときに歳出予算を組めるわけです。もともとは追加しか認められていなかったわけで、かつ、高度成長期に、次年度の景気の動向がよくわからないので景気調整的な基金を積み立てようとしたときに、これは財政法違反ではないかという問題になった。つまり、本当に必要なものしかできないのに、ちょっと余裕ができたから基金みたいに積み立てるということは、補正で組めないのではないかということが問題になって、私の理解であれば、財政法の修正が行われたというふうに理解しておりますので、自然増収があったからといって通常の場合では補正を組むわけではなくて、最後に剰余が出たときの決算上の処理というのはルールが決まっているわけです。その上で説明したほうがわかりがいいのではないかと思います、ちょっと混乱しかねないので。私の理解が間違っていれば、間違っているというふうに言っていただければと思います。

田近部会長

では、手短に。議題が詰まっておりますから。

永長総務課長

財政法29条という条文がございまして、当初予算編成時点で予見し得なかったもの、さらに特に緊要な対応が必要なもの、これについては補正をすると。これは実は歳出を念頭に置いた、いわゆる歳出権限のプラスをしないと歳出が出せないわけでございます。そういう意味では補正予算というのは歳出の増の権限を新たに国会から頂戴する、こういうものでございます。その際に、せっかくバスが来るわけですから、直近の数字に歳入の見積もりもし直す、こういうことでございまして、歳入がどのようになるのかというのが補正予算編成の引き金になるわけではないということでございます。

田近部会長

いろいろあると思いますけれども、この部会で取り上げるテーマについて、もう少し幅広く意見をいただきたいと思います。

では、大橋さん。

大橋特別委員

調査分析部会の委員の皆様、どうもご苦労様でございます。今伺った限りにおいて、こういう3つのテーマをそれぞれの主査の方に進めていただいて、私どもはその結果だけを教えていただいて、それをベースにして議論をするわけですから、大変ありがたいと思っております。

一つだけお願いしたいのは、せっかく今回、3つの国においでいただくので--これはあるいは私だけが知らなくて、メンバーの方は皆様全部お知りになっているならば、あとでお教えいただければそれで結構なのですが、それぞれの国で政府の原案なら原案として、それぞれの国会、議会に提出されて、それで審議をされて決める。その最終的な政府の原案に至るまでのプロセスが、一体どこでどういう議論をされてそういう案になっていくのか。これはたぶん非常に面白い、それぞれの国によって違うかもしれないプロセスだろうと思うのです。日本の場合には独特なのか、あるいは一般的なのかわかりませんが、こういう政府の税調があり、一方で与党自民党の税調がある。そういう議論があって最終的にどこかで力関係で決まっていって、政府の原案が決まる。これは一つの日本の形にはなっているのですが、この政府の税調のメンバーとして考えると、これが必ずしも正常な状態であるかどうかについてはやや疑問がありますので、その辺も含めて、せっかくおいでになるならば、3国でのプロセスについて教えていただければと思います。

田近部会長

先ほどの林さんの議論の、ちょうど続きみたいなものですね。

松田さん。

松田委員

今日は最近の諸外国の税制改革の様子を伺って、勉強になったなと思っています。特にフランスの一般社会税、これは比例税率なんですね。これの税収が所得税より多くなったということは、所得再分配効果がずいぶん下がっている気がします。その辺、わりとそういうことにうるさそうなフランス国民が受け入れたというのが、ちょっと不思議な気がします。その辺、中里先生はフランスへ行かれるようですから、ぜひその辺も探っていただければと思います。

もう一点、イギリスで税額控除をかなりここのところやってきて、課税最低限になるかならないか、課税最低限以下から以上に切りかわる段階で、税額控除というのはリニアにその辺の手取額をならすために面白い手法だと思いますけれども、日本でやる場合、やはり問題になるのは捕捉です。捕捉がきちんとできていれば、こういうことをやるのがいいと思うのですけれども、現段階でやると、喜ぶのは暴力団と、それから……、これ以上言うと語弊があるから言いませんけれども、要するに真面目に働いている人はこういうのを入れると損することになると思います。イギリスでやっているのは、たしかあそこは日本よりも捕捉が進んでいるからだと思いますけれども、イギリスへ行かれる方は、うまいことをやっているやつがいないかどうかというのを調べていただけるとありがたい。

以上です。

田近部会長

今日は深堀りしないということで、フランスの一般社会税、それが逆進的ではないのかと。イギリスの税額控除、捕捉の問題。今回、イギリスは残念ながら訪問しませんけれども、税額控除についてはここで一家言ある人がいっぱいいると思いますから、十分議論できるだろうと思います。

では、井上さん。

井上特別委員

海外調査ということは非常に大事なことだと思いますけれども、先進国の税制とか、フランスということも大事ですが、やはりアジア。我々が今、日本で非常に問題にするのはこれからはアジアなわけです。そういう点ではアジアの税制をもっとしっかり研究していく必要があるのではないか。シンガポールにしてもそうですけれども、企業をどんどん迎え入れている。そういう仕組みがどういうふうになっているのかということを、もうちょっと研究していただく必要があるのではないかと思います。

それから、経済財政諮問会議で税制改正基本方針として、「公平・中立・簡素」から「公平・活力・簡素」というふうに基本的な理念を打ち出されているわけですけれども、「活力」というのは非常に大事なことです。それによって税収を増やそうということであるわけでして、その活力についても少し踏み込んで研究をしていくべきではないのかというふうに思いますので、その点、よろしくお願いします。

田近部会長

アジアについてはもちろん訪問することで、税調の海外出張でヨーロッパとアジア、アメリカはないというのも初めてかもしれませんけれども、そういう意味では、まさに井上さんのおっしゃる活性化がポイントの一つになっていると思います。

それから、「公平・中立・簡素」か「公平・活力・簡素」か、これもだいぶ議論しましたけれども、それもその一環で議論したい。

井堀さんがいらっしゃったので、先ほど吉川さんと中里さんにはそれぞれのテーマで何をするか話していただきましたから、井堀さんから一言だけお願いします。今、グローバリゼーションの中で企業の移転価格問題もきちんと取り上げてもらいたいという要請が、山田さんからあったのですけれども。

井堀委員

遅くなり申し訳ありません。

私が理解しているところでは、[2]の「税制が経済及び社会構造・経済主体の諸行動に与える影響の検証」の主査をやれということだと思います。ここの分野はある意味ではアカデミックにも関心の多いところで、専門委員の方に加わっていただいて、税制が特に経済主体、企業や家計に与える効果について分析したいと思うのですが、問題は、これはちゃんとやればやるほど結論が出にくいところで、例えば税をこれだけ変えるとどう動くかというのは、一本でこうだという形で、しかも定量的にこれだけの効果がありましたと、数字で一本にまとめるのは非常に難しい分野です。その意味で曖昧とした、わけのわからない結果が挙がってくる可能性もありますけれども、要するに分析対象が複雑であるがゆえに、アカデミックなレベルでちゃんとやろうとすればするほど難しいというところを最初にご了解していただければと思います。経済活性化といっても、減税すればこれだけ増えるとか、そう単純に必ず出てくるものではなくて、税以外の要因をコントロールしなければいけませんし、それがいろいろな形で影響します。それをきちんと区別するのは非常に難しいし、データ面の制約とかいろいろな面もありますので、その意味であまり決め打ちするような形の結果はたぶん出ないだろうと思いますので、ある程度わけのわからない結果にならざるを得ないということを、あらかじめご了解いただきたいと思います。

その上で差し当たって想定しているのは、去年のこの税調の答申で出てきました設備投資の減価償却の税がありましたように、企業関係の税を変えるときに企業行動、あるいはマクロ経済がどういう影響を与えるのかということ。あとは、金融所得課税一体化のところの株式市場、家計の資産選択、あるいは金融等に税制がどういう影響を与えるのかということ、差し当たって2つのテーマから出発して、要するに第1、第3のグループの動きとかなりオーバーラップするところがありますので、それぞれどういった形の進捗状況かも含めまして、必要に応じて手分けして、税制が経済及び社会構造に与える影響についてできるだけ定量的に分析したいと思います。

以上です。

田近部会長

結果が曖昧だと、最初にそうおっしゃったけれども、逆に言えば、曖昧かどうか分析するというふうに聞けるのかなとも思いました。結果を大いに期待させていただきたいと思います。

では、佐藤さん。

佐藤専門委員

「今日的意味における租税原則」に関して、1つ確認と、1つ質問です。

この租税原則というのは、国税の原則に限らず、私の理解するには、地方税の原則、それから国と地方の税源配分の原則、これも含むものであると考えてよろしいのかということが一つ。

それから、「今日的意味」であってシャウプ勧告の時代ではないということですから、今日的な状況というのは、少子高齢化でありグローバル化であり、そして地方分権であるというふうに考えるならば、これはたぶんほかの2つのテーマとかかわってくると思うのですが、少子高齢化はともかく、グローバル化は当然法人課税とか資本所得課税に対して大きな制約になるわけです。たしかに先ほど林先生がご指摘されましたように、法人擬制説か実存説かありますけれども、応益原則に基づいて、例えば固定資産税とか法人事業税をかけたとして、それは原則論としてそれであったとしても、実際それが経済的な帰結として企業の海外への流出を招くということになって、これはグローバル化の大きな制約になるわけです。

そことの関係で質問は、租税原則のこの3番目のテーマと1・2番の間のキャッチボールといいますか、例えば1番と2番はあくまでもファクトファインディングだと思うのですが、これをどういう形で今日的な意味における租税原則の中に織り込んでいくのか。そのあたりは何か共同作業みたいなものは考えられるのでしょうか。

田近部会長

小西さん。

小西専門委員

では、手短に申し上げます。部会としてマクロとミクロと租税原則で行くというのは非常によく理解できるところですが、そこから外れてはいるけれども、重要な問題として2点ほどあるかなと思います。

1つは、林先生が先ほど言われた、税制改革のプロセスということとも関係があるのですが、国民負担に関するコンセンサスの取り方というふうに解釈すると、一番気になっているのは、日本では「重税感がある」というふうに言います。特に国民負担率が高いわけではないのに重税感がありますが、実際負担しているということと、負担感があるということとは同じではないんですね。そうすると、日本の重税感というのは一体どこから来ているのかということを、アプローチは非常にしにくいですが、議論しないと、国民負担に関するコンセンサスを今後どう取っていくかというところで、パンチのある議論にならないのではないかという気が、これは前からずっとしていたことです。

もう一つは、17年6月、前の税調のときの個人所得課税に関する論点整理のところにもありますけれども、特に立証責任、挙証責任とか、そういう税務行政のあり方そのものと執行というのは非常に関係があると思いますので、税務行政のあり方というのはどこかで議論しておかなければいけない点ではないかと思います。

田近部会長

では、中里さん。地方税の原則、そして、国と地方の税源配分も扱うのか。あと、1・2班との関係。

中里特別委員

地方分権は当然扱わざるを得ないと思います。だから佐藤先生にご協力をお願いしたいということですね。逃げないようにしてくださいね。ただ、「今日的意味における租税原則」が、シャウプの提示した原則と全く違うか同じかは、やってみないとわかりませんから、あまり最初から決めつけないで考えてみたいと思います。

それから、第1グループ、第2グループと第3グループの関係というのは、先ほど法的な視点でどうのこうのと申し上げたのは、相互連関はどこかでつけなければいけないなということですが、動き出してみないとわからないところもありますので、それは3人の主査と、田近部会長がそれをどう使ってという、その関係になるのではないかというふうに思います。

田近部会長

それで思うのですけれども、もちろん中里さんが今答えられたとおりですが、これから具体的に走り出して、自分はこの3つの領域のここに入っているから他は知らないということもないし、おまえは他のグループにいて俺のところに来るのか、ということもない。具体的な格差の問題にしても視点は一つではないでしょうから、そこは仮置きというか、どこで仕事をするかというのは、主たる所在地ということで考えてもらいたいと思います。

あと、重税感についても、どこでということはわかりませんけれども、これも重要な問題です。その意味では小西さんにぜひ、先ほど言ったようにどの領域ということは限定していませんから、発言というか、加わっていただきたいと思います。

ほかに。では、辻山さん。

辻山特別委員

先ほど租税原則で、今日、高木委員から出されているペーパーにもありますけれども、「公平・中立・簡素」というのがあって、これは変わるのではないかと。中立に対して活性化、そういう議論が出ましたが、もう一つのキーワードとして「公平」というのがあります。今日のこの3つの分類の[3]の中に「公平・公正」とありまして、私の理解ではこの「公平・公正」というのは英語で言うとequityのことだったのかなと。これが公平と訳されたり、公正と訳されたりしていたという理解ですけれども、最近は、公平に対する公正と、何か別のような新聞報道等もありますけれども、これは中里委員はどのようにとらえられているのか。従来言われているエクイティに対して、公平というのがフェアという別の概念で出てきたのか、あるいは、その辺はまだ現段階では漠としているのか、この辺を教えていただきたいと思います。

田近部会長

お答えいただきたいと思います。

中里特別委員

公平という場合と公正という場合と両方あるわけですが、それについてみんなで意見を戦わせてみて、どんな基本的な考え方があるかというのをまず探すことが今回の目的だと思いますが、一つ、公正といったときに考えていたのは、先ほど小西先生が「税務行政のあり方」とおっしゃいました。

例えば、ある法人税なら法人税の制度が置かれているときに、あまり極端な課税の抜け穴がそこにあったら、ルールの適用という点ではそれは公平なのかもしれませんが、結果的にはあまり公正ではない。そうすると重税感にもつながるかもしれませんし、租税回避とか節税行動も含めて、そういうものをいけないと言い切ってしまうこともできないかもしれませんが、普通の納税者から見ればあまり望ましいことではありませんので、そういう点を含めて公正という概念もあり得るかなと。これは個人的な感想ですけれども、今、思っています。ただ、それはみんなで議論してみて、別にここで決める経緯があるわけではありませんので、いろいろぶつけてみるということで、辻山先生にもぜひよろしくお願いします。

田近部会長

言葉としては、中里さんは、公正のほうは執行上、取扱上、A所得、B所得、同じように扱うとか、あるいは、コンプライアンスも含めてということをお答えになったんですよね。よろしいですか。

では、横山さん。

横山委員

租税原則の中に、収入十分性の原則というのを考えておくべきだろう。抜本的税制改革のお話のときにも、消費税の創設というのは経済社会構造の変化と高齢化の進展に備えたものだったのだろうと。そのときに、今の政府規模について私たちはどういうふうに理解したらいいのか。これは猪瀬委員がおっしゃったことに関連するのですが、歳出規模を抑えておいて、それに見合う税、財源調達機能としての税制のあり方みたいなことを議論するときにかなり重要になってくるだろうと。これは小西委員が言われた国民負担率の話にも関連するのですが、公債発行による財源調達を将来課税として見たにしても、やはり異常な事態はずっと続いているのだという認識を持てるのかどうかということだと思います。だから、歳出規模をどういうふうに考えてこれから税制改革をしていくのかということは、やはりどこかで押さえておいていただきたい。これは希望です。

それからもう1点は、議会制民主主義における税制改革を振り返ったときに、ネットで増税になるような、そして歳出がそれに伴っている場合はいいのですが、そうでなくて、増税だけの税制改革というのは本当にあり得るのかどうかということです。そうしたときに税制改革の進め方として、少なくともレベニュー・ニュートラルで、先ほどどなたかがおっしゃられたように、自然増収を期待できるような税制を構築していく、活力ある税制にしていくのが議論のベースなのかどうか。純粋な意味でネット増税もあるような税制改革を考える場合と議論が違ってくるのではないか。この辺もやはり整理しておく必要があるのではないかと思います。

以上です。

田近部会長

では、吉川さん。

吉川委員

小西さんと今の横山先生のお話に関連してですが、重税感のお話、国民負担率の問題もありましたが、要するに自分が払っているものが重いと思うかどうか、これは絶対的な基準はないわけです。当然、受け取るサービスとの相対。物を買ったときの値段が高いと思うか低いと思うか、それは自分が受け取るものとの相対で決まるということですから、その意味では歳出との関係は当然あるというのはそのとおりで、今日、猪瀬委員から補正予算についていろいろご質問もあったわけで、それはそれでいいのですが、おそらくここにいらっしゃる方すべてが、私も含めて、歳出を効率化しなくてはいけないと。その点は正しいと思うのです。

しかしながら私が危惧するのは、歳出は効率化しなくてはいけない、それはそのとおりだと思うのですが、歳出を効率化する、あるいはこれは国有財産の売却などにも関係するわけですが、それだけやっていけば日本の財政再建の問題が片づくんだと。あるいは、そこからいくらでも出てくるというようなイメージですね、一種の。税なんて上げなくてもいくらでも歳出を効率化すればお金は出てくる、あるいは、国有財産だって売れば幾らでもお金は出てくるんだというようなイメージを持っているとしたら、それは大間違いであって、そういうイメージを国民の皆さんに発信するのは間違ったことだと思います。

ですから2つあるわけで、歳出は効率化しなくてはいけないというのはそのとおりですし、それは1つあるのですが、それが無尽蔵の財源であるかのようなある種のイメージというのは、これは無責任であって、政府税調としては、そこのところの仕切りはしっかりして税の議論を進めていく必要があるというのが私の考えです。

田近部会長

では、田中さん。

田中特別委員

ちょっと次元の低い発言かもしれません。この3つの調査分析部会の運営のやり方について注文したいと思うのですけれども、やられる作業の性格からして、先生方が中心になってやられるのは当然だと思いますし、全くその点については異存ないのですけれども、その結果あるいは結論があまりにも学問的、学究的なものに寄り過ぎて、私のような立場の者はなかなか理解できないとか、議論に入っていけないということになると困りますし、やはり最終的に税調でまとめる意見、見解というのは、国民的な理解を得て納得できるものという視点だと思います。その視点をぜひ忘れずに、かみ砕いて我々にも理解できる、そういう議論をぜひしていただきたい、そういうお願いでございます。

田近部会長

その点はもちろんで、そういう政策次元の議論はできると思う方々にお願いしていると思います。少なくとも私がわかる範囲で進めさせていただきますから。

ほかに、特に今日加わった専門委員の方もご遠慮なく。では、山田さん、土居さんと続けてお願いします。

山田委員

調査分析部会では税制のあり方を審議するということですけれども、具体的に、例えば納税者番号制度といったことは1、2、3のところで検討される問題なのか、ないしは対象に入っているのかどうかということと、もう一つは、多くのサラリーマンが年末調整という形で、自分が払っている税に関して申告する機会は比較的少ないのではないかと私は思っています。少なくとも私がサラリーマンであったときに、自分が払っている税金についてあまり意識がなかったのですけれども、確定申告の問題とか、年末調整で終わってしまうということの問題というのは、ここで取り上げるような問題に入っているのかどうか。私は、そういう問題を考えなければ、ある意味では税制のあり方の根本的なところには届かないような気がするのですが、その辺はどうなのかということ。質問なんですけれども。

田近部会長

それぞれ仕事をお願いしているので、私が先取りして言ってしまうのもあとでご負担をかけるかもしれませんけれども、山田さんのおっしゃっていた納税者番号、あるいは年末調整の、いわゆるコンプライアンスというか、法律に従うこと、それから執行の問題、これは何らかの形で--納税者番号制度自身の報告があるかどうかわかりませんけれども、コンプライアンスと執行の問題は具体的には中里さんのところで触れることになると思います。よろしいですか。

土居さん、お願いします。

土居専門委員

今回から加わらせていただきまして、ありがとうございます。私として、1点、質問といいますか問題提起と、もう1点、コメントさせていただきたいと思います。

まず、今日の議論の中で、あえて避けておられるのか、表立って出てきてなかったように思うのは消費税の問題であります。消費税を、マクロ、ミクロそれぞれの観点から、どのような性質を持っていて、それがどのように位置づけられるものなのか。増税するとか何だかという話は、分析部会で判断するべきかどうかということについては必ずしも自明ではないにしても、少なくとも学術的な蓄積としてはいろいろあるわけです。そういう観点からも、今後の議論に備える意味でも、ある程度議論の整理をしておくことは重要なのではないかというふうに思っているのですが、その点、部会長のご見解をお聞かせいただければと思います。

もう1点はコメントですけれども、法人税の議論、先ほど来いろいろな委員の方々から話が出ていました。私が一つ思うのは、国民の間に、法人税というのは法人だけが負担していて消費者は負担していない。消費税というのは消費者だけが負担していて、法人はあたかも負担していないかのような、そういう転嫁と帰着にまつわる経済学から見る誤解が国民に広くあるのではないか。私としては、できればそういう誤解に対してある程度定量的なものを見せながら、法人税も製品の価格転嫁を通じて消費者に負担をお願いしている部分があるかもしれないよとか、消費税といえども中小企業の方が価格転嫁できないことによって中小企業のステイクホルダーにその負担が及んでいるかもしれないとか、そういうことがあり得るんだということについては--それを言ったから何がどうなんだということは、その先は後で議論があるとしても、少なくとも虚心坦懐にそういうところを議論することは必要なのではないかというふうに思います。

田近部会長

2つ指摘されて、具体的に消費税はどうするのかということと、企業課税の負担、最終的に誰が払うのかと。それは重要だと思うし、私もかねがね思っていて学生とも議論しているのは、消費へ課税するといっても皆さんのレシートに課税するのは難しいわけで、結局、企業というのを通じて、企業を道具に消費へ課税する。結局は消費にかかるけど、付加価値税というのは企業の売上げにかけて仕入れの税金を引いてあげる、それが最終的には消費税になるんですよという形で、おっしゃるとおり、同じように企業所得税も企業にかけた税金ですが、一体誰が払うのかという問題がある。それは重要だと思います。

消費税については、先ほど佐藤さんから、少子高齢化の中の問題もどうするのかということがありましたし、あるいは横山さんの税収十分性でしたか、財政再建のところで議論があると思いますけれども、この調査分析部会というのを私も引き受けたのは、いろいろな議論を吸収したいなと。そして、特に若い人に入ってもらっていまして、ご覧のように忌憚のない意見をいっぱい言ってくれる人だと思いますから、それを我々は受けとめて、税調としては秋からに備えていくということで、どのような形でも部会のそれぞれの主査の方と相談なさって参加していただきたいと思います。ただ、あくまでも基本的にこれは秋以降の議論につなげていきたいということで、できるだけフレッシュなアイデアを募っているということだと思います。

時間がちょっとあれですけれども、沼尾さん、八塩さん、あと、加藤さん、ひと言でも。

はい、どうぞ。

沼尾専門委員

ご指名ですので、1点だけ申し上げたいと思います。

これは税制調査会ということで税制が検討のメインになると思うのですけれども、今日、国民の負担感ということで非常に大きな関心があるのは、片方で社会保険料などの社会保障関係の負担の問題だと思います。これまでの税調の議論を資料で拝見する限りでは、例えば法人税の実効税率の議論はあるわけですけれども、社会保険料の法人負担分ということがなかなか議論に加えてられてきていない。あるいは国民負担率の議論でも、他方で今、保険料の負担というのが定額とか何かになっている中で、それとのかかわりで所得再分配効果を税のほうにどこまで期待するのかとか、そういう社会保険料の制度の設計との兼ね合いでもう一方で税を考えていくことが必要だと思うのですが、そういったことは今回の検討の中でどの程度反映されるのかというところがちょっと疑問に思ったところです。

以上です。

加藤専門委員

実は先に手を挙げればよかったのですが、沼尾さんと全く同じことです。やはり負担感の中には保険料の問題がありますし、保険と税との役割分担、そういったものについてもきちんと考えていく必要があるのではないかと思います。

以上です。

八塩専門委員

先ほど税額控除の話があって、私はちょうどこの点に関心を持っていまして、私も、勉強というか、一緒にやっていきたいと思います。日本は特に所得控除が非常に大きいというのがあって、所得控除が大きいということと、税額控除をどう考えるかということを考えてみたいというふうに思います。

以上です。

田近部会長

まだ議論はもちろん続くと思いますけれども、できるだけ時間は守っていきたいと思います。既に遅れていますけれども。

本日は、いろいろ議論をいただきましたけれども、皆さんおわかりのように、非常に活発な人に入っていただきましたから、どこからでも、それぞれの主査の方と専門委員の方は相談して議論していただきたいと思います。

今後ですけれども、次回は、前回たしか会長からアナウンスされたと思いますが、4月13日(金曜日)午後2時から4時まで、企画会合・調査分析部会の合同会議を開催します。開催場所は未定ということで、これは決まり次第事務局からお知らせすると思います。

それから、繰り返しになりますけれども、大切なことなのでもう一回申し上げます。会長からもお話がありましたけれども、この調査分析部会会合につきましても、部会の皆さん以外の皆さんにもちろんご案内いたします。そして、このような今日の雰囲気で活発に議論していきたいと思いますので、ぜひご参加いただき、ご議論に加わっていただきたいと思います。今日は初めての調査分析部会ですけれども、夏ぐらいまで活発に議論をして、秋以降の本格的な議論につなげていければなと思います。今後ともよろしくお願いします。

また、皆さん、今日もお忙しいところをどうもありがとうございました。

香西会長

今日は、会長は部会長がいると非常に楽だということを発見したのは最大の収穫でしたけれども、この部会は、自前で税調として調査をちゃんとやっていくことをここで確立したいと思っています。したがってここは自前の調査をやるところだということで、事務局、各省等にご協力いただくのは当然ですが、基礎のところから自分たちの意見を積み上げていくことに是非していただきたい。

先ほどから3つの分野についていろいろお話がありましたが、あれは分野をつくったからといって、分科会をつくってさらにどうしてというようなヒエラルキーをつくることはあまり考えておりませんで、とりあえず国境線は引いたようなものですけれども、どんどん相互に乗り合ってやっていただきたい。むしろ問題中心にどんどん意見を集約していただきたいというふうに思っております。

それから、今日、補正予算の話もありました、プロセスの話もありました、それから負担感の話もありました。実はそういう問題は、もう1つ部会を置く予定としていた広報・広聴部会というもので、むしろそういうことをきちんとやったほうがいい、あるいは、それに対する答えを求めたほうがいいのではないかというふうに思っておりました。広報・広聴部会というと何か上意下達みたいで、また役人が宣伝に来るのかと言われてもしようがない気がしますので、今日のご発言の中から、1つのそういう部会を組織するようなきっかけが生まれればいいなというふうに思いました。いずれにしても新メンバーにも加わっていただきまして、わが税調の将来の発展に希望が持てるのではないかというふうに思っております。どうぞよろしくこれからもお願いします。

〔閉会〕

(注)

本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。

調査分析部会