その他の主な意見

今回の答申の審議過程において、以下のような主な意見が出た。

総論

  • 今後の課題である総合的な税制改革においては、法人課税のみならず、個人所得課税、消費課税などについても、議論が必要である。
  • 総人口の変化だけでなく、団塊の世代の退職など人口構成の変化が消費や企業経営に与える影響も考慮することが必要。
  • 労働分配率や付加価値配分の状況に加え、パートや派遣の拡大などの影響も分析することが必要。
  • 所得税のあり方についても年度答申で言及すべき。
  • 所得税についてはほとんど議論できておらず、年度答申で書くことはできない。
  • 格差の行き過ぎに歯止めをかけるため、税制の果たす役割は大きい。また、景気回復期に確実に税収の自然増につながる構造も確立しておく必要。短期の金融取引については本則税率を引き上げ、所得税の最高税率や相続税制を強化すべき。
  • 子育て支援として、税と児童手当では効果が違う。少子化対策として、税を含め総合的に検討する必要。
  • 国民に景気回復の実感がない中で、法人税に優遇措置を行う一方で、選挙後に消費税を上げるとすると、国民の納得が得られるのか。
  • 法人税を欧州並みにするのであれば、消費税も欧州並みにという議論も行うべきではないか。
  • 法人税率の更なる引下げを盛り込むべきではない。現在の税収増は法人減税より財政再建や子育て支援、格差是正に資する政策に充当すべき。
  • 税法と企業会計との関係に関し、税法上の確定決算主義の是非を含め検討を深める必要がある。
  • 中長期的に財政健全化を達成した後には、あらゆる税において税率が主要国の中で最も低い国となるよう目指すべき。
  • これまで答申があって、実行されていない不公平税制の是正については、早急に実現すべき。
  • 国税と地方税のバランスを議論する際には、歳出ができるだけ国民に近いところで決定されるとの観点が重要。
  • 地方分権を強化するためには、地方への税源配分を増やす必要がある。また、その際、税収の偏在性に留意すべき。

経済活性化に向けた速やかな対応

(減価償却制度)

  • 法人税の改革を地方税の法人課税に反映させるのは、地方財源充実の観点から問題。
  • 法人税の減価償却と固定資産税の評価方法の取扱いを別にする場合、執行上の問題にも留意すべき。
  • 現在でも、法人税の減価償却と固定資産税の評価は異なっており、実務上問題はない。

(外形標準課税)

  • 企業にとって、外形標準課税は人頭税的な側面があり、配慮が必要ではないか。
  • 外形標準課税は人頭税ではない。公平性の観点から導入された経緯があるので、こうした経緯や導入趣旨を尊重すべき。

(政策税制の集中・重点化)

  • 国家として戦略的に重要な分野には、税制上の措置を活用すべきではないか。
  • 政府が税制を用いて特定の分野に産業を誘導すべきではない。
  • 政策減税を行う際には、地方団体が自主性を発揮できるような仕組みについて検討すべき。

新しい制度改革に対する税制上の対応

(三角合併の解禁への対応)

  • 日本の経済を支えている上場中堅企業が海外資本に支配されてしまう懸念があることから、三角合併については慎重に考える必要。
  • 三角合併は、実業を行うよりM&Aによって株式の時価総額を上げていくといった流れを助長する可能性があり、税制において何らかの警鐘を鳴らす必要。

国民生活に関連する税制

(金融所得課税)

  • 金融所得課税については、勤労性所得と分けた二元的所得税的な考え方も検討すべき。
  • 総合課税ではなく分離課税されているという点も合わせると優遇税率は二重に優遇されている。
  • 金融資産は高齢者層に偏りがあり、ライフサイクルに応じた課税の観点からも、優遇税率の継続は疑問。
  • 将来的に環境が整備された段階で20%に戻すべき。現在は、まだ本当の株式投資が根付いておらず、20%への復帰は時期尚早。
  • 金融庁の要望は、特定口座に配当を受け入れるようにして、特定口座内で損益通算の拡大を図るものであるが、利子まで念頭に置いた広い損益通算を考えたときに疑問。

(円滑・適正な納税のための環境整備)

  • 給与所得者である納税者の負担感を緩和するため、個人住民税の特別徴収については、ボーナスからも徴収できるよう検討すべき。

(個人住民税)

  • 各種控除の縮小・廃止によって、個人住民税の応益性を高めることを実現しようとするのであれば問題。

(道路特定財源)

  • 道路特定財源諸税の税率を維持し、暫定税率を本則化すべき。
  • 道路特定財源の一般財源化は納税者の理解が前提とされているが、少なくとも、現在、国民の理解が得られているとは考えにくい。国の道路特定財源に余剰が生じているのであれば、まずは暫定税率を本則税率に戻すことが先決ではないか。
  • 地方をはじめ道路が足りないとの主張があるが、道路建設の費用対効果を分析すべき。
  • 地方の道路特定財源については、道路事業に占める特定財源の割合が低く、オーバーフローが生じていないことなどを踏まえ、検討すべき。
  • 地方における道路整備については、高齢化対策や医療対策といった側面もあり、非常にニーズが高いことを考慮するべき。

(地球温暖化問題への対応)

  • 日本人は環境意識が高いが、行動に移せない。この意識を後押しする観点や外部不経済の内部化といったことを踏まえ、環境税を創設すべき。
  • 石油価格が高騰しても石油消費が減らないように、環境税には消費削減効果はなく、環境税導入には反対であり、他の手法を検討すべき。
  • 産業界は二酸化炭素削減に必死に取り組んでいる一方、家庭部門ではむしろ二酸化炭素排出量が増加してきている。税金の問題というよりは、国民全体の意識の問題ではないか。