答申に盛り込まれていない主な意見

「平成17年度の税制改正に関する答申」に至る審議過程において、以下のような主な意見が出た。

基本的考え方

(経済及び財政の現状)

イ 1990年代以降の国債の高水準での発行にもかかわらず、長期金利が低下を続けてきたのは、金融の量的緩和による資金供給の増加を、国債が吸収する形となっていたことによるもの。国債の大量発行の背景には、バブル崩壊による資産価格の下落によって企業に債務が過剰に発生し、それが不良債権として、最終的に政府部門に付け替えられていくという調整プロセスがあったと考えられる。

ロ 今後、金融の量的緩和政策の出口も問題になってくる中で、これまでのような大量の資金供給や低金利がいつまでも続くことは、期待できない。

ハ 不良資産の処理が最終段階に入り、民間経済活動にも回復が見えてきている。民間部門の債務を肩代わりする形で、いわば「身代わり地蔵」として累増してきた国債の償還については、生産性の改善等により民間部門の収益力をあげ処理原資を確保することとあわせて、国民の負担により対応していくことも必要。

ニ 高齢化に伴う家計貯蓄率の低下や金利上昇という展望を踏まえると、国債管理が課題。徹底した歳出削減や増税、海外からの投資を呼び込むことも考える必要。

ホ 巨額の国債残高は、金利の上昇により歳出増につながる恐れがある。国債残高の水準については、絶対額を減らすのはなかなか難しいので、GDP比でどの程度の水準を目指すのかということになるのではないか。

ヘ 郵政事業の改革が議論されているが、この改革は財政改革と密接に関連している。市場に混乱を招かずに郵政改革を進めていくためにも、財政規律に対する信認を確保することが一段と必要になってくる。

(歳出・歳入両面からの財政構造改革)

イ 増税を行うことは、景気が安定的な回復局面に入ったという認識を政府としてマーケットに示すことになるため、財政・金融両面の政策に関係することに留意すべき。

ロ 歳入・歳出両面の取組みについては、税制改革、社会保障制度改革、三位一体改革等の政策全体を総合的に捉えて、複数の選択肢を示しながら、景気への影響などについて議論していくことが必要。

ハ これまでの公共事業縮減と同様に、今後増税を行っても、景気を抑制する効果はそれほど大きくないのではないか。

ニ 現時点での増税は、巨額の財政赤字による将来の増税を見込んでいる家計にとっては、将来の増税要因の減少に過ぎず、消費の減少には必ずしもつながらない。90年代に比して、現在の経済状況は回復してきており、景気への影響を考慮するあまり、必要な税制上の対応を怠るのは不適当。

ホ 景気の先行きに対する懸念のために必要な増税の議論を進めないことは適当ではなく、議論は進めておき、実施する際に景気に対する影響を改めて判断することが重要。

ヘ 財政健全化が持続的な経済成長につながるということには、必ずしもならないのではないか。

ト 財政健全化を進める際には、税負担水準の引上げを検討する前に、不要な公共投資など無駄な歳出の見直しを行うべき。

(地方交付税)

イ 地方の行う仕事に対する国の義務付けが残る以上、財源不足は国が補填すべきであって、地方交付税の財源保障機能は必要。

ロ 地方交付税の財源保障機能については、縮小だけでなく廃止も含めるべきではないか。

ハ 財源保障機能の縮小だけをめぐり地方交付税の改革を行おうとしているのではない。財源保障機能の縮小に言及する必要はない。

ニ 地方交付税について実質的な審議をしていないにもかかわらず、財源保障機能の縮小に言及すべきではない。

ホ 地方交付税の財源保障機能の縮小に触れるのであれば、国の関与の廃止・縮減や税源移譲に伴い、結果的に機能が縮小するという点に留意しなければ、財源保障機能について誤解が生じるのではないか。

ヘ 補助金改革、税源移譲をすれば、国の関与が縮小し、また地方間の財源格差が拡大することから、財源保障機能が縮小し、財政調整機能が大きくなる。

ト 地方交付税の本来の役割は財政調整機能であり、不足する部分は自己責任により住民が負担すべき。

チ 今後、財政再建を進めていく中で、地方交付税の削減は不可欠ではないか。

リ 本来、地方交付税法第6条の3第2項に基づき地方交付税率を上げるべきところ、国の税収不足で実現できない状況にあり、所要の地方交付税額は確保すべき。

(社会保障と財政)

イ 国庫負担は「負担」ではなく保険料負担を下げる「収入」だという考え方が根底にあり、国庫負担割合の増加とともに負担感がなくなり、過大な給付がなされるようになっている。この結果、社会保障財政は悪化しており、人々が真に求めている保障の提供も困難になっている。

ロ 「国が負担する」という感覚的な表現が用いられることが多いが、国は負担の再配分をしているだけであり、最終的には、国民が負担することになるという点を認識すべき。

ハ 国がなすべきことは、保険料を払えない人に対して、代理で負担するということだが、「社会保険」の枠外で手当てすべきであって、最初から給付の一定額を国が負担するということではない。

ニ 経済の低成長、少子化という構造変化により、現在の社会保障制度の前提が崩れてきている。持続可能性の観点から、国が最低限保障する部分以外は全て自己負担にすべき。

ホ 国庫負担は税で賄われるという意味で負担に変わりはないが、社会保険料のみを負担ととらえることが、安易に国庫負担を増やせという議論につながっている。

ヘ 国庫負担のみならず、地方負担も含めた公費負担ベースで議論すべきではないか。

(税・社会保障負担のあり方)

イ 今後、公的部門とそれを支える負担のあり方について議論をする際には、政府に対する国民の信頼と社会連帯の意識が重要。

ロ 今後の社会保障や税制のあり方を考える上では、受益と負担の対応関係を明確にする必要。受益が目に見える形であれば、対応する負担についても、国民は納得するのではないか。

ハ 社会保障制度の見直しを進める際には、誰がどの程度の負担をすることになるのか示しながら、国民が広く負担する必要性を訴えていくべき。

ニ 税・社会保障負担のあり方を見直す際には、社会保障負担よりも税負担をより重視すべきではないか。

ホ 土光臨調以来22年間が経過したが、依然として国民負担率は35%程度にとどまっている。これまでの税制改革に際しては、所得税等の減税によりネット増税は行われておらず、また、近年、財政規律に目をつむって大幅な減税を行ってきた。今後は、財政規律の回復という観点も踏まえ、税負担水準の引上げに取り組むべき。

個人所得課税

(総論)

イ 同じ所得でも資産所得の方が勤労所得より担税力がある。応能的な税制にするには、所得税だけでなくそれを補完する税も含めて考えるべき。

ロ 負の所得税について、社会保障との関係も併せて検討する必要。

ハ 所得税も個人住民税も互いに余裕がない中で、所得税から個人住民税へ税源移譲することは、生産的でない。財政再建を目的とするならば、それぞれで増収策を講じるべき。

(課税ベース)

イ 生活保護は、資産状況を調べて給付を決めるが、そうでない他の現金給付については、一旦課税ベースに入れて控除で対応するのが望ましい。

(給与所得控除、退職所得控除)

イ 給与所得者と事業所得者との間の所得捕捉の格差の問題を抜きにして、所得控除の見直しはできないのではないか。

ロ 給与所得控除の見直しに際しては、自営業者の家事関連費が適正に必要経費から除かれていることの検証が必要。

ハ 給与所得控除で現実に利益を得ているのは法人成りしている自営業者である。その観点からも給与所得控除は見直す必要。

ニ 給与所得控除の見直しにあたっては、申告により必要経費を実額で控除する制度を整備すべき。

ホ 退職金は後払いの賃金であり、老後の生活はこれを前提に設計されているので、退職金課税の見直しにあたってはそうした点を考慮すべき。

ヘ 給与収入800万円以上の者は、納税者の割合では12%程度にすぎないが、税収のシェアでは50%以上となっている。これは課税ベースが浸食されて中低所得者が負担をしていないことを意味しており、ここを議論する必要。

(人的控除)

イ 個人所得課税は個人単位課税であるにも関わらず控除が多い。基礎控除は引き上げて、それ以外の控除は歳出に振り替えるべき。

ロ 所得税は基幹税であるとともに、税の中で最も所得再分配機能に優れている税であるが、今の財政状況を考えると、必要なところにミニマムに、かつ集中的にその機能を発揮させる必要。そのためには、税率を比例税率とし、人的控除を税額控除とすることも考えられる。

ハ 課税ベースを広げて、税額控除を導入するというのも一つのあり方。

ニ 高齢者優遇から子供の扶養優遇への思い切った転換を図ってはどうか。控除の見直しにより生じた財源を子供の扶養に振り向けるのであれば、国民の理解も得られるのではないか。

ホ 子供が小さい親は所得も少ないことが多く、税金もそれほど納めていないことから、少子化対策を税制で行うことには限界がある。

(税率構造)

イ 個人所得課税は軽減しすぎであり、もっと強化すべき。50%の最高税率では、所得再分配機能を発揮することはできない。

ロ 10%の税率のブラケットに8割がいるというのは問題であり、所得税の抜本的見直しの際に改善することが必要。

ハ 会社経営者等のやる気を喚起するためにも、税率構造のフラット化を更に進めるべき。

(定率減税)

イ 増税による短期的な景気への影響をあまり気にしすぎることは適当でなく、国家・国民にとって必要なことであれば定率減税の見直しは行うべき。

ロ 定率減税の見直しといっても、2兆円程度の負担増である。これは15年度決算における税収の対当初予算比1.5兆円増と同規模であり、景気に与える影響は限定的。

ハ もともと景気のいい企業に勤めている人は収入も多いため、定率減税を廃止してもそれほど影響はなく、景気の悪い企業に勤めている人は税負担も低いため、定率減税を廃止しても、それほど税負担が増えるわけではない。

ニ 景気が回復しているといっても、その効果はすべての者に及んでいる訳ではないので、定率減税の見直しは慎重に行うべき。

ホ 所得税の定率減税は縮減・廃止はすべきではない。

ヘ 大企業の景況は良くなっているが、中小企業は依然として芳しくないため、定率減税の見直しをする場合には、そのタイミングを見極めることが重要。

ト 累進構造の緩和により恩恵を受けていたのは高所得者層のみである。定率減税は中堅所得者層も恩恵を受けていたが、これが廃止されれば消費に悪影響を及ぼしかねず、景気の腰折れにつながるのではないか。

チ 給与所得者は年末調整があるので、定率減税が実施されているという実感がないが、定率減税が廃止されると増税されたとしか受け止めないことから、2年ではなく3~5年程度かけて縮減・廃止していくべき。

リ 現在のような財政赤字がある中では、基礎的財政収支の回復のために国民が果たすべき義務について説いていかなければならず、税金を払わないことを是とするような論調には疑問がある。

ヌ 定率減税を廃止した財源を基礎年金の国庫負担率の引上げに充てるということは、若い世代が納付した税金を高齢者層に分配するということになるため、相続時精算課税制度で高齢者から若年層への贈与を促進していることとの整合性が採れない。

(個人住民税)

イ 所得発生時点と税負担時点を近付けるため、個人住民税の現年課税化を検討すべきではないか。

ロ 個人住民税均等割を市町村税に一本化すべきではないか。

ハ 都道府県にも均等割は引き続き必要。

(金融所得課税)

イ 金融所得課税の一体化については、投資家及び実務家双方の視点に立って、その仕組みをなるべく簡素なものとすることが重要。

ロ 金融所得課税の一体化に向けての具体的なスケジュールを明示することが必要ではないか。

ハ 金融所得課税の一体化は、税調が今まで目指してきた全ての所得の総合課税化という方向に反するのではないか。

ニ 金融所得課税の一体化は、現在区々となっている課税を一本化しようとするものであり、総合課税に向かっての一歩と見ることもできるが、金融所得については、資本の海外逃避という問題もあり、総合課税を行うことは難しい。

ホ 金融所得まで含めた包括所得は、年によって大きく変動すること、また、支出税的な観点からは、そもそも利子などの金融収益に課税すると一生の間では二重課税になっていることから、金融所得は非課税にすべきと考えられることを踏まえると、総合課税が望ましいとは言えない。

ヘ いわゆる金融番号制度については、付番時の本人確認や住所等異動の把握を簡便・確実に実施することが可能な住民基本台帳ネットワークシステムとの連携を図るなど、効率的な制度設計を検討すべき。

ト いわゆる金融番号のために税務当局が新しい番号を付番することは無駄であり、住民基本台帳の住民票コードを利用すべき。

チ 金融番号に住民票コードを採用することを提案した場合には、金融所得課税の一体化自体が実現困難となりかねない。したがって、金融番号に住民票コードを採用すべきではない。

リ すべての所得を総合課税とするためにも納税者番号制度は必要であり、住民票コードを利用すべき。

消費税

(総論)

イ 消費税を社会保険料を抑制する代替財源として捉える考え方があるが、財政再建といった考え方の議論が行われていない面がある。

ロ 中期答申の「歳出全体の大胆な改革を踏まえつつ」というのは歳出面で伸びている社会保障の改革しかない。抽象的な歳出改革ではなく、社会保障の水準とリンクさせて議論する必要があるのではないか。

ハ 基礎的財政収支の改善のためには税率の引上げが必要だが、企業の活力や予算の使い方といった問題についても議論すべき。

ニ 軽減税率の議論は消費税率引上げを前提にした議論であるが、消費税率の引上げは相当大変なことであり、消費税率引上げに関する国民への説明はしっかり行う必要がある。

(税率水準)

イ 税率引上げのタイミングや引上げ幅については、きちんとした議論が必要だが、デフレ期待からの脱却や経済への影響を考慮すれば、一般論としては徐々に引き上げていくのが良いのではないか。

ロ 消費税を導入して16年が経過した現在でも、まだ5%という税率水準であることが不思議。

(税率構造)

イ 低所得者への影響を考慮すれば、食料品に対する軽減税率の採用を考えるべき。

ロ 税率引上げの際には国民の理解を得るために、米などの食料品だけには軽減税率を採用すべき。

ハ 食料品の軽減税率は逆進性緩和を目的としているにもかかわらず、高額所得者も恩恵を受けてしまうものであり、その採用は慎重に考えるべき。

ニ 軽減税率の採用には、例えば、食料品と言ってもその対象範囲が拡大して大混乱になり得るといった問題があり、過去の売上税法案の非課税品目の選定に対して批判があったことを念頭に置くべき。

ホ 複数税率の採用は、技術革新に対応できていないことへの批判があった物品税の時代に戻るようなもの。制度に特例を設ければ不公平感につながるため、税率構造は簡素が望ましい。

(低所得者層に対する配慮)

イ 低所得者層への配慮を行う際には、全体として効率的に、かつ、必要な人々に的確に行う必要がある。

ロ 軽減税率には、執行面のコストや経済活動への中立性を欠く等の問題がある一方、消費税率を相当引き上げて社会保障給付で逆進性の問題に対応する場合には、大きな政府や負担率の上昇といった問題があり、潜在的国民負担率を50%以内に抑える目標は外さないと難しいのではないか。

ハ 所得税を地方に移譲していく中で、個人所得課税の側からどの程度消費税の所得に対する逆進性を緩和できるかについては、今後の個人所得課税をめぐる検討状況を見極める必要がある。

ニ 高齢化社会や財政赤字を考えたとき、広く国民が負担を分かち合って安定的に支えていく必要がある。分配の不平等の要因は、高齢者間での分配の不平等と高齢者のウエイトの高まりにあり、消費税だけではなく個人所得課税や資産課税も含めた議論も重要になってくる。

ホ 消費税には累進性はないが比例税である。消費に着目した税負担は、ライフサイクルで見ると公平な負担を求めることができ、消費税について逆進性のみを強調すべきではない。

(仕入税額控除)

イ インボイス方式の採用は、免税事業者が課税事業者を選択するよう促す効果があり、それにより消費税の信頼性や透明性を高めることになるのではないか。

ロ 軽減税率が採用される際にはインボイス制度は必要となるが、事務負担の軽減についても併せて考えるべきではないか。

(税収の使途)

イ 消費税の目的税化に関しては、基幹税を目的税化することの財政政策上の是非が議論されてきているが、今後、消費税収のうちの地方交付税分の取扱いや特会に直入して給付と連動させるのか否かといった前提を明らかにして、議論を行う必要があるのではないか。

ロ 目的税化には問題があるが、仮に消費税を福祉目的税化するのであれば、一般会計からの補填はせずに、消費税収だけで福祉を賄うということも一つの方法ではないか。

ハ 消費税の使途に関しては、「社会保障の在り方に関する懇談会」等における年金、医療、介護などの議論と整合性を図っていくべきではないか。

資産課税

(相続税)

イ 相続税・贈与税は所得税の補完税であるため、負担水準の検討や諸外国との比較は所得税と合わせて行うべき。

ロ 年金課税において保険料拠出時と年金給付時の両段階での税負担軽減はおかしいとの議論があるほか、高額所得者への年金給付に制限を加えようとしている。その一方で、老後扶養の社会化に伴い相続の段階で負担を求めるべきとの議論があるが、これでは豊かな人には二重の負担となる。

ハ 少子高齢化が進む中、高齢者にもう少し負担してもらおうとの発想から言えば、結果的にストックとフローの両段階での二重の負担が生じざるを得ない。

ニ 何故富の再分配が必要なのか。特に中小企業の場合、融資の担保となり得る個人資産は大切だが、これは既に税を負担した上で蓄積されたもの。その意味で日本の相続税は累進度も最高税率50%もまだ高い。

ホ 相続税の課税ベース拡大に当たっては、事業承継用資産について配慮することが必要である。

ヘ 文化財散逸の原因を相続税等に求める議論が多いが、ヨーロッパと比較して日本の相続税が別に厳しいわけでもない。ただし、ソフト・パワーも重要になってくるので、NPOとの関係なども含め、税制にも文化的視点が重要。

(贈与税)

イ 相続時精算課税制度は死亡時までに価額が変動するリスクがあり、経済活動に歪みを与えることから、生前に贈与した財産は相続開始時の時価に評価替えを行うべき。

ロ 相続時精算課税制度は経済活動に歪みを与えるとの指摘については、まずは同制度の活用状況等を数年間は注視することが必要。

ハ 贈与税は、資産の把握体制や徴収体制が整備されていないと実効性のある税として機能しないことが懸念される。

(固定資産税)

イ 固定資産の評価や課税標準は全国的に均衡のとれたものにする必要があり、地方の努力は税率によってなされるべき。

ロ 税率による調整が原則だが、それ以外にも各地方団体の判断に委ねる部分があってもいいのではないか。

ハ 固定資産税については、負担水準の均衡化に随分時間がかかっており、負担調整のかけ方について見直しが必要ではないか。

ニ 固定資産税の税負担に関しては、所得の如何に関わらず支払わなければならない納税者の感覚にも配意しつつ、負担調整措置を講じていくことが必要。

ホ 固定資産税の土地の評価について、将来的には収益還元的な要素を重視していくべきではないか。

ヘ 固定資産税は市町村の基幹税であり、資産の評価については、制度の安定的な運営が重要。

法人課税

(法人税)

イ 法人所得課税に係る実効税率の国際比較に当たっては、グローバルな観点からの比較としては法人税(国税)のみに絞るのが適当。

ロ 企業部門が全体として資金余剰を抱え込むという異常な状況が生じており、こうした中で法人税率を引き下げても有効性に乏しい。

ハ 研究開発減税等については、かなりの効果が見られるとの声が多く聞かれる。事実、企業の税負担が相当軽減され、実質的な税率引下げのメリットが企業に及んでいる。

ニ IT投資促進税制等は景気対策の一環として導入されたが、平成18年3月末の期限到来時には縮減の方向で対応すべき。

ホ 恒久的減税の廃止・縮減は、まず法人税から行うべき。

ヘ 設立間もないNPO法人の財政状況や認定の実態等を踏まえ、NPO法人を育てていく観点から、認定NPO法人の認定要件を見直し、活用しやすいものにする工夫が必要。

ト 公益法人制度改革については、平成15年6月の「閣議決定」のスケジュールに沿って、年内に制度の基本的枠組みが具体化されることとなっており、今後はその結果を受けて、税調において公益法人等課税のあり方について一から議論する必要。

チ 今後、税調において公益法人等課税のあり方について議論を行うに当たっては、従来のような「原則課税」か「原則非課税」かというような議論ではなく、むしろ、課税の公平・適正化や民間非営利活動の円滑化などの多角的な観点から、法人の実態等を踏まえたバランスのとれた議論を行っていくべきではないか。

(法人事業税)

イ 地方が企業誘致等のために法人事業税の不均一課税等を行う場合に、減額分を交付税で補填する仕組みは改善するべき。

国際課税

イ 国際的な投資促進のために国境を越えるM&Aを可能にする法制改革が行われているが、これを踏まえて課税繰延などの税制改正が必要。

酒税

イ 高級酒には高い負担、それ以外には相応の負担という考え方もあるのではないか。

ロ 景気が悪くなり、国民の収入が減っているのだから、低価格の酒が売れるのはやむを得ない。

ハ 発泡酒は主に家庭で飲まれていることに留意すべき。

ニ 発泡酒やビール風酒類は、酒に対する味覚を衰えさせるのではないか。

地球温暖化問題への対応

イ 環境税以外の政策により京都議定書の目標を達成できる可能性もあり、本格的に議論するのはまだ早い。

ロ 消費税や所得税の問題がある中、環境税も導入ということでは理解が得られない。

ハ 京都議定書の発効が見込まれる中、税制調査会としても、税を導入するとすれば、どういう税の構造がいいのか議論すべき。

ニ 環境税を導入する際には、直接税とするのか間接税とするのかといった基本的な仕組みを検討すべき。

ホ 環境税を導入する際には、汚染者負担の原則(PPP)に立って検討すべき。

ヘ 公平、簡素、中立の原則を崩すような新税を創設するならば、他の税への影響等を考慮すべき。

ト 環境税は化石燃料の使用を抑えようとする政策税制である。

チ 環境税を導入すれば、地球温暖化問題は切羽詰っているという意識を持ってもらえるのではないか。

リ 環境税は立派な税であるべきで、現在検討しているものは環境税の名に値せず、「京都議定書対策税」とすべき。

ヌ 民生・運輸部門には規制よりも税による価格コントロールが効果的である。

ル 原油高によりガソリンの価格が上がっても消費は減っておらず、環境税の価格インセンティブ効果は疑問。

ヲ 企業の省エネ努力を促進するような制度を検討すべき。

ワ 製品の原料に使用される化石燃料については課税対象から除外すべき。

カ 環境税は炭素ベースで検討すべき。併せて既存エネルギー諸税の課税ベースも見直すべき。

ヨ 環境税の税収は一般財源とすべき。

タ 人間は地球温暖化問題の被害者であり加害者であるから、皆が負担する消費税の税率を上げて、その一部を温暖化対策に充てるべき。

レ 将来の税のあり方を考える中で、「環境」という視点をどのように取り入れていくかが重要。

ソ 地球規模の温暖化対策を促進するため、輸出入品に対する国境税調整を検討すべき。

(環境省案)

イ 既存予算の温室効果ガス削減効果をもっと検証すべき。

ロ 税の構造が複雑であり、輸入段階や製造場移出段階での課税とすべき。

ハ 税率が低く、削減効果が期待できない。

ニ 電気やガスの一律課税は、炭素比例の環境税とはいえない。

ホ 恣意的な減免策が多いのは問題。

ヘ 税収の使途について一般財源なのか目的税なのか明確ではない。

ト 環境税の検討に当たっては、地方公共団体の担う役割の重要性を考慮し、その意見をよく聴くべき。

チ 電気及びガスに対する課税については、かつて「電気税」「ガス税」が市町村税として存在していた経緯を考えると、地方税とする考え方もあるのではないか。

その他

イ 我が国の企業年金制度は退職金制度から移行した経緯があるため、支給形態についても一時金が認められることや受給年齢の問題などがある。年金税制の見直しに当たっては、まずはこのような企業年金の実態を議論すべき。

ロ 長い目で見れば、組合を利用した租税回避行為の事例は、高い所得税の限界税率と損益通算の範囲に問題があることを示しており、この意味では二元的所得課税論の合理性を示しているのではないか。