答申に盛り込まれていない主な意見

今回の答申の審議過程において、以下のような主な意見が出た。

総論

イ デフレへの対応は今日の重要な問題であり、最近のデフレ対策との関連で、短期面での先行減税措置を「あるべき税制」とは別に強調すべき。

個人所得課税

イ 個人所得課税の見直しに当たっては、給与所得者と事業・農業等の所得者の所得捕捉率の格差など、根強い「不公平」問題の是正に取り組むべきではないか。

ロ 医療費の本人負担引上げ等の最近の社会保障をめぐる状況を踏まえると、人的控除の見直しを行うことは適当ではないのではないか。

ハ 日本の個人所得課税は、個人単位の課税であるが、家族や世帯に過大な配慮がなされており、今後は、諸控除を統廃合して、一人一つの人的控除にすることも考えられるのではないか。

ニ 課税最低限の水準等を単に比較するだけでは、個人所得課税の現状を理解するのに不十分であり、見直すべき税負担構造の課題を多角的に検討すべきではないか。

ホ 個人所得課税の「空洞化」と言われるが、課税最低限は、夫婦子二人以外の世帯形態も視野に入れて議論する必要があるほか、課税最低限の水準が引き上げられてきたことだけが、就業者総数に占める非納税者の割合が高まってきた理由とは言えず、これらを踏まえた慎重な議論・説明が必要ではないか。

ヘ ライフスタイルに対する中立性という観点からは、配偶者特別控除だけでなく、配偶者控除も廃止すべきではないか。

ト 配偶者控除については、配偶者を特別視することなく、配偶者も扶養親族の一人として「扶養控除」に統合すべきではないか。

チ 特定扶養控除は、教育費や住宅ローン負担などに配慮したもので、創設には相応の政策的理由・効果があり、廃止には反対である。

リ 夫婦合算均等分割制度(二分二乗制度)を創設すべきではないか。

ヌ 配偶者控除等を廃止・縮減するに当たっては、例えば、育児対策の歳出措置を講じるなど、歳入面以外の仕組みも併せて検討すべきではないか。

ル 人的控除の基本構造を見直すに当たっては、基礎控除の拡充も考慮して見直しを行うべきではないか。

ヲ 定率減税は、あるべき税制を構築する観点からみて、何らのビジョンも有さない措置と言わざるを得ず、早急に元に戻すべきではないか。

法人課税

イ 研究開発税制については、欧米にも対抗しうる措置とすべきであるが、一方で税制上のインセンティブを与えることによって、税制そのものを歪めることにも留意すべきではないか。

ロ 適格試験研究費の範囲について、運用面も含めたわかりやすい仕組みとすることを念頭において検討すべきである。

ハ IT投資減税については、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアも対象に含めるべきではないか。

ニ エンジェル税制等、ベンチャー企業に関連した税制を創業支援の観点からも、もっと使いやすくすべきではないか。

ホ 多様な事業体に対する課税について、見直しを検討していくべきではないか。

ヘ 無税償却をもっと実施しやすくすべきではないか。

ト ほとんどの金融機関が赤字の中で、不良債権処理に係る税制上の対応は効果がないのではないか。

チ 連結納税の申請が少なかったのは、連結付加税が理由であり、連結付加税を廃止すべきではないか。

リ 連結納税の利用を促進し、その導入目的を達成するため、連結付加税を廃止すべきではないか。

ヌ 連結納税は施行されたばかりであることから、申請が少ないのは、企業が検討中であることも考慮すべきであり、付加税だけが原因ではないので維持すべきである。

ル 連結付加税は、厳しい財政事情の下で連結納税制度の導入に伴う税収減への対応や連結納税を選択しない企業とのバランスから創設されたものであり、維持すべきである。

ヲ 税制の安定性の観点から、2年間の措置として創設された連結付加税を1年目で廃止すべきではない。

ワ 認定NPO法人の要件の見直しに当たっては、より多くのNPO法人が認定を受けられるよう、基準の緩和を図るべきではないか。

(外形標準課税)

イ 総務省案は外形基準を2分の1とし、また、段階的に導入するなど、企業の負担に配慮がなされている。対話集会のアンケートでも多くの国民が支持しているものであるから、15年度から導入を図るべきである。

ロ 経済情勢にかかわらず、中長期的な観点から、安定税源の確保としての外形標準課税の導入は粛々と進めていくべきである。

ハ 外形標準課税の導入により黒字法人でも負担増となるものが多いのではないか、との指摘も踏まえる必要がある。

ニ 一部の黒字法人が多額の税負担を行っているというような状況は是正しなければならない。また、外形標準課税の導入は、「努力した企業が報われる税制」として経済活性化につながるものであることを強調すべきである。

ホ 外形標準課税の導入については、景気が厳しい状況の中では、慎重に対処すべきである。

消費税

イ 免税点制度については、法人は完全に廃止してもいいが、個人事業者はその事務処理能力を考えると1,000万円くらいの水準が適当ではないか。

ロ 中小特例措置の廃止・縮減は企業取引に影響を与えることから、直ちに実施するのではなく、十分な準備期間を置く、あるいは段階的に実施するといった考慮が必要ではないか。

ハ 中小特例措置の廃止・縮減は増税のためではなく不公平是正という観点から行うべきものであり、できるだけ早急に実施すべきではないか。

ニ 将来、消費税の役割を高めていく際には、消費税の持つ所得に対する逆進性についても配慮すべきではないか。

ホ 消費税の所得に対する逆進性については、資産課税なども含めた税制全体で判断することが必要。また、消費税は消費に対して比例的に負担を求め、世代間の公平の確保に資する税である。逆進性という観点を殊更に意識する必要はないのではないか。

資産課税等

(相続税・贈与税)

イ 相続税の最高税率を個人所得課税と同水準まで引き下げる必要はないのではないか。

ロ 今回の相続時精算課税制度においては、相続財産と合算する贈与財産の価額を、資産移転に着目する税としての性格や、実務上の制約、諸外国の例を踏まえて、贈与時の時価としているが、この点については、65歳以上という条件の下でも、相続時までは相当長期にわたる場合もあり、この間の事情変化について、将来的には何らかの調整を検討すべき。

ハ 今回の相続時精算課税制度は、現行のいわゆる併用方式を採用するわが国相続税制度を前提としているが、将来的には、現行の相続税制度に拘らず、相続税・贈与税のあり方を再検討する必要があるのではないか。

(固定資産税)

イ 市町村が住民生活に必要なサービスを着実に進めていくためには、固定資産税の安定的な確保が必要である。来年度は、地価の下落や建設物価の下落等により、大幅な税収減が見込まれる大変厳しい状況にある中、課税標準の上限(評価額の70%)をさらに引き下げることは是非避ける必要がある。

ロ 負担調整措置については、長い年月をかけて慎重に対処するあまり、現実の地価の動向と傾向が逆になっている事例が残っている。なるべく早く調整を行うため、その促進策を検討すべきである。

ハ 思い切って、商業地における課税標準の上限の引下げを行うべきではないか。また、操業停止している工場、営業していない店舗等、市場価値と固定資産税の評価額が乖離していると思われる家屋については、評価方法の検討が必要ではないか。

(土地税制)

イ 土地流通課税について、その意義が不明確ではないか。

ロ 土地流通課税について、貴重な税収源としての側面や資産課税としての税体系上の役割を評価すべき。

(金融・証券税制)

イ 現下の経済情勢を踏まえれば、緊急措置として、株式譲渡益課税について大幅な非課税措置を導入すべきではないか。

ロ 特定口座制度について、例えば、現在、投資家が抱えている株式を「言い値」で持ち込めるといった見直しも検討すべき。

ハ 利子、配当についての分離課税制度は、勤労者に不公平となる問題があり、早急に総合課税化すべきではないか。

その他の税目

(酒税)

イ 税制の中立性という観点から、ビールと発泡酒の税率は、早急に同一にすべきではないか。

ロ 発泡酒とビールの税率調整は、これ以上必要がないのではないか。

ハ 発泡酒の税率引上げは、消費マインドを低下させるとともに、企業努力を無視することになるのではないか。

(たばこ税)

イ 負担水準の低下がないこと、家計や消費マインドに与える影響を考えれば、酒税やたばこ税の税率引上げを議論する環境にないのではないか。

ロ たばこ税については、景気との兼ね合いや消費の減少に拍車をかける可能性についても考える必要。国・地方の財政の中でたばこの税収は貴重なもの、過度の税率の引上げにより、かえって税収が減少する可能性も考慮する必要。

(特定財源とエネルギー関係諸税等)

イ 揮発油税等の暫定税率による上乗せ部分を「環境税」に振り替えるべきではないか。

納税環境整備

(公示制度)

イ 従来通り、公示制度を存続させるべき。