主な意見

平成13年12月
税制調査会

答申とりまとめの審議の参考とするため、委員各位から出された意見について項目ごとに整理したものであり、税制調査会としての意見集約を行ったものではない。

検討に当たっての視点

【これまでの税制改革の点検】

イ ここ数年、景気への配慮を最優先した結果、わが国の租税負担率は極めて低く、租税の果たすべき公的サービスの財源調達機能が極めて不十分になっている。今後は、政策減税ではなく、将来の抜本改革に向けた議論を行う必要がある。

ロ 恒久的な減税などにより現在の国民負担率が極めて低くなっていることについて、国民が十分に認識する必要があるのではないか。

ハ 社会保障負担を含めた国民負担のあり方について検討を行った上で、将来の税制改革論議を行う必要がある。

ニ 将来的には、恒久的な減税の見直しや、諸控除の簡素化・合理化など課税ベースの見直しを含む個人・法人の所得課税のあり方、消費税のあり方、特定財源のあり方などについて検討する必要がある。

【最近の経済・財政状況等】

イ わが国経済は、輸出、生産、設備投資が減少し、雇用情勢も悪化するなど厳しい状況にある。先行きについても、世界経済が同時的に減速するなど、懸念が強まっている。こうした中、わが国経済の基本的な成長力を高めるよう構造改革を積極的に推進していく必要がある。

ロ わが国財政は、巨額の赤字を抱えている。平成14年度予算は、財政構造改革の第一歩として、国債発行額を30兆円以下とするとの目標の下、歳出の思い切った見直しと重点的な配分に取り組むこととしている。

ハ 地方財政は、特に、この3年間は10兆円前後の収支不足になるなど、数年にわたり大幅な財源不足を生じており、来年も非常に厳しい状況が続くものと考えられる。平成13年度末の借入金残高は約189兆円に達する見込みであり、個別の団体の財政状況も、いろいろな資料を取っても、いずれも非常に悪化してきている。

ニ 自主財源である地方税を拡充し、国からの補助金、地方交付税などの依存財源への依存度を縮減する方向を目指すべきであり、その際には、偏在度の少ない税収の安定性を備えた地方税体系の確立が必要である。

ホ そう遠くない将来に税制全般についての見直し改革が必要になることとの関連にも留意しながら国から地方への税源移譲も含めた、国・地方の税財源配分の見直しといったことにも取り組むべきである。

平成14年度税制改正

【基本的考え方】

イ 「国債発行額30兆円以下」との目標の下、平成14年度税制改正全体では減収にならないようにする必要がある。

ロ 経済社会の構造変化に適切に対応するとともに、近い将来、税制全般にわたる見直しが必要なことを踏まえ、今後のあるべき税制の姿を見据えた改正を行う必要がある。

【法人課税】

(連結納税制度)

イ 「連結納税制度の基本的考え方」に基づき、実務的な作業を進めるべきである。

ロ 連結納税制度は企業減税を目的とするものではないことや、現下の厳しい財政状況を考慮すれば、制度創設に伴う税収の減少は補填する必要がある。

ハ 税収減への対応は、連結付加税や欠損金の繰越制限等の措置を講ずることが考えられるとともに、租税特別措置の見直しや課税ベースの拡大といった法人税制全般の見直しを行う必要がある。

ニ 制度創設に伴う税収減は、企業の組織再編成や国際競争力の維持・強化という観点から、あくまで、法人課税全体の中で、課税ベースの見直しなどにより対応すべきであり、連結付加税は導入すべきではない。

ホ 平成14年度当初からの円滑な適用が可能となるように対応する必要がある。

ヘ 将来的には、外国子会社への適用も検討すべきではないか。

(課税ベースの適正化)

イ 課税ベースの適正化は、わが国法人税における重要な課題であり、そもそも、連結納税制度の創設とは別に議論されるべき課題である。連結納税制度の導入に伴い、法人税制全般の見直しを行う際には、その一層の適正化に取り組む必要がある。

(外形標準課税)

イ 外形標準課税は、非常に合理的であり構造改革に資するもので、その導入は当然の正しい方向であり、議論を待たない。赤字法人に課税するのは当然である。要はそのタイミングが問題である。

ロ ごく一部の企業に税負担を課している現状から、受益との関係からもっと薄く広く負担する外形標準課税化は、活力ある成長力のある企業の税負担を軽減する一つの方策であり、外形標準課税によって事業展開を積極的にして、牽引力のある企業や産業を支援する潜在力を引き出すような税制を実現すべきである。

ハ 外形標準課税は応益課税であって、地方税にふさわしいものであり、また、昭和39年以来の課題であり、抜本的な改革前に極力早い時期に整備されることが望ましい。構造改革を進める観点から導入を図るのであれば、平成20年に本格導入というのは、ペースが遅すぎるのではないか。

ニ 資本割については、資本等の金額よりも売上高を課税標準とすることも考えられる。また、資本等の金額の部分と法人住民税均等割部分の整理がうまくできていないように思われ、資本等の金額を用いるのであれば、分割基準についても再検討するべきである。

ホ 資本等の金額は中期答申の4類型の1つとして、所得基準や他の外形基準と組み合わせて用いるよう検討すべきであるとされており、課税標準として適当なものである。

ヘ 理論的には、加算法の付加価値が優れていると思うが、今回の案は、賃金課税であるという意見に対し、法人の事業活動の規模をある程度示すとともに、担税力を示す面も有すると考えられる資本等の金額を課税標準として補完的に併用することで給与部分の割合が大幅に引き下げられており、理解を得やすい。

ト 理論的には、去年の案の方が優れているが、今回の案を理論的に説明すると、去年の案のままでは、現行の業種別の税負担の構造から変化しすぎることから、資本等の金額を入れてそれを緩和したものと理解できる。

チ 昨年よりも景気はずいぶん悪い。また、資本等の金額に課税する仕組みは、企業再編・統合という流れに逆行するのものである。この問題は、税制抜本改革時に解決すべきである。

(その他)

イ 同族会社の留保金課税制度は、間接的に配当支出の誘引としての機能を果たしつつ、法人形態と個人形態における税負担の差を調整しようとするものであり、現行の法人税と個人所得課税の基本的仕組みを前提とする以上、今後とも必要な制度である。

ロ 同族会社の留保金課税制度については、金融機関の慎重な貸出し態度など、現在の中小企業を取り巻く厳しい経営環境を踏まえて、検討する必要がある。

ハ 交際費課税制度の緩和については、不要不急の支出を促進し、公正・透明な取引を阻害するなど構造改革の点からも問題が多く、現行の制度を維持すべきである。

ニ 大学が受ける寄附金、大学の受託研究については、現行制度上優遇措置が設けられており、他の公益法人等とのバランス、寄附金の支出状況などを踏まえて検討する必要がある。

ホ 私立大学等に関する税制上の措置については、大学教育が日本の将来を担う大切な投資であるという側面も考慮する必要があるのではないか。

ヘ 特殊法人、公益法人等の見直しの論議を踏まえ、非営利法人課税について検討すべきではないか。

ト 認定NPO法人制度が施行されたところであり、その実施状況も踏まえて、NPO法人を含めた非営利法人課税全体のあり方を検討すべきである。

チ 諸外国の例なども参考にしながら、特殊法人等の整理・合理化やカジノ・ゲーミング法の制定などを通じて納税者層の拡大を図るといった幅広い観点も重要ではないか。

【租税特別措置等の整理・合理化】

イ 租税特別措置等は、「公平・中立・簡素」という租税原則に反するものであり、常に見直していく必要がある。

ロ 租税特別措置等の見直しは、個人・企業の経済活動に中立的な税制とし、経済構造改革の一環として効率的な資源配分に資するという点にその意義がある。また、増収効果や課税ベースの拡大に資するという観点から見直すべきである。

ハ 歳出の思い切った見直しに取り組んでいる中、実質的には隠れた補助金である租税特別措置等についても、聖域なく見直すべきである。

ニ 政策目的・効果の検証、他の政策手段との比較、利用実態、特定業界・企業等の保護になっていないか等の観点を基準に見直しを行うのが適当である。

ホ 見直しに当たっては、企業の国際競争力の維持・強化といった個々の租税特別措置等の目的、必要性を十分に検討する必要がある。

ヘ 中小企業に係る政策税制については、既存の措置を徹底的に見直した上で、真に有効な措置について検討する必要がある。その場合、法人の約7割が赤字であり、政策減税の効果が限定的であることに留意する必要がある。

ト 租税特別措置等の整理・合理化については、国税と共通の問題も多いが、社会保険診療報酬の問題など、地方独自の問題もある。それぞれ、長い色々な経緯があるが、「聖域なき見直し」という小泉内閣の方針にも基づき、しっかり取り組む必要がある。

チ 事業税における社会保険診療報酬の見直しについては、いろいろな利害関係が絡んで難しい面はあるが、声を上げ続けていくというのが大事であり、あきらめず政府税調で努力を積み重ね、強いトーンで撤廃を主張すべきであり、基本的な改正の前に整理しておく必要がある。

リ すぐに撤廃することが困難なものについては、段階的に見直すことも考えられる。

【金融・証券関係税制】

(株式譲渡益課税)

イ 今回の株式譲渡益課税に係る改正のうち、100万円特別控除の適用期限の延長、暫定税率の設定、緊急投資優遇措置については、本来、期限を区切った特別の政策税制であり、これを延長されては意味がなく、適用期限経過後は規定どおり廃止すべきではないか。

ロ 個人の株式投資を優遇するという観点からは、過渡的な経過措置として、思い切って税率を引き下げることも考えられるのではないか。

ハ 税の公平性の原則に反する安易な投資優遇は行うべきではなく、株式譲渡益や預貯金利子など、資産性所得を含めた所得課税の総合課税化を先行させるべきである。

ニ 申告分離課税への一本化の際には、投資家が簡便に申告を行えるよう工夫が必要である。

ホ 今回の株式譲渡益課税に係る改正のうち、取得価格の不明な場合の取得費の特例の創設は、申告の簡便化に向けて大きな意義がある。

(貯蓄優遇税制)

イ 貯蓄優遇税制は、「貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切り替え」の方針に加え、「租税特別措置の聖域なき見直し」の観点から、根本的に再検討する必要がある。

ロ 少額貯蓄非課税制度等及び生命保険料控除制度・損害保険料控除制度については、従来から見直しの必要性を指摘しているにもかかわらず、実際の見直しが行われていない。その意味では、具体的措置を講じることが重要であり、時限を付して「サンセット措置」へ移行することは、終期を明らかにする意味でも有効ではないか。

ハ 少額貯蓄非課税制度等は、高齢者の貯蓄水準が高いことや、所得に占める利子所得の割合が限られていることからみて、高齢者相互間のみならず世代間の税負担の公平を確保する観点から、見直す必要がある。

ニ 高齢者の所得分布は二極化しており、また、貯蓄が生活資金の備えとなっている側面を勘案すれば、少額貯蓄非課税制度等の廃止については、高齢者の生活実態をよく見て、慎重に検討する必要がある。また、高齢者の実態に対応する観点から、利子所得については総合課税を検討する余地もあるのではないか。

ホ 金融のあり方の切り替えとの観点だけではなく、歳入確保の観点から、少額貯蓄非課税制度等の見直しの必要性を説明すべきである。

ヘ 財形住宅貯蓄・年金貯蓄については、一般の勤労者への配慮が必要であり、見直しは適当でない。

ト 現行の保険料控除制度については、保険加入率が相当の水準に達していることなどから、これ以上の誘因効果は期待できないこと、様々な貯蓄手段のうち、特に保険に限って優遇することは、金融商品間の税負担の公平性及び中立性等に照らし問題があることなどから、廃止に向けて検討を進める必要がある。

チ 保険料控除制度の見直しは、老後の生活において自助努力の支援や相互扶助の観点が存在することとの関係等を含めて、慎重な検討が必要であり、適当でない。

(株式投資信託に対する税制)

イ 投資信託は専門の仲介機関を通じて資産運用等を図る仕組みであり、一般の個人投資家にとっては、株式へ直接投資するよりは本来はなじみやすい側面を有すると考えられる。

ロ 株式投資信託の運用状況は、一般の個人投資家の期待に沿っておらず、一般の個人投資家にとってなじみやすい商品とは言えないのではないか。

ハ 株式投資信託に対する課税のあり方について、収益を「利子並み」に扱いつつ、譲渡時には譲渡益課税を行うなど、税体系上の整合性を考慮しない取扱いは適当とは言えず、採るべきでない。

ニ 「貯蓄優遇」から「投資優遇」に方向が転換していることや、投資信託はその時々の時価により評価され得る商品であることを勘案すると、株式投資信託に対する「利子並み」課税を変更し、収益に配当課税を行い、譲渡時には譲渡益課税を行うといった課税の仕方が適当ではないか。

ホ 株式投資信託の株式の組入比率はゼロから100%まで様々であり、株式と同一視することは必ずしも適当ではないのではないか。

ヘ 株式投資信託は、資産運用を職業とする専門家が金融サービスを提供する商品であるなど株式と商品性が異なることや、これまで「貯蓄類似商品」として広く普及してきた経緯等、一般の個人投資家の間に「リスク商品」という認識があまり無いと考えられることから、現行制度(収益に対する「利子並み」課税)が合理的なのではないか。

ト 集団投資スキーム全体を通じて課税の整合性を図る観点から、証券投資信託に対してファンド段階での課税を行った上で、損金算入の手当てを講ずるなどの措置を検討すべきではないか。

チ 証券投資信託に関する税制一般を検討していく上では、金融税制のみならず所得税制全体のあり方にも関連するものであり、更に検討が進められる必要がある。

(その他)

イ 配当課税については、少額配当の特例か配当控除の選択ができることから、大半の個人株主が利子と同様あるいは利子以下の税負担水準となっている。したがって、まずは株主重視の経営姿勢の確立など、株式保有の魅力を高める発行会社等の努力が重要ではないか。

ロ 証券市場の裾野を拡大し、広く一般の国民の市場参加を促進する観点から、配当課税のあり方について検討する必要があるのではないか。

ハ 少額配当については個人住民税が非課税となっているが、課税の公平・適正化の観点から、問題である。

ニ 金庫株の処分については、商法上及び企業会計上も資本取引とする方向であることから、税制上も資本取引として非課税とすべきではないか。

【資産課税等】

(相続税)

イ 今後、各種の特例措置の見直しを含めて、税率構造や課税ベースなどについて幅広く検討する必要があり、新たな特例措置については、慎重に検討すべきである。

ロ 死亡保険金の非課税制度は、適用を制限するなど、そのあり方を見直すべきである。

ハ 相続税は、すべての財産を平等に扱うことが課税の公平上強く求められること、課税時期が人の死亡(相続の開始)という偶発的な事象により決定されること、一生涯において課税される機会がごく限られていること等から、時々の政策手段として用いることにはなじまない。

ニ 中小企業の事業承継については、既に、事業用の土地に係る相続税の課税価格の特例や取引相場のない株式の評価など、十分な配慮がなされていること、相続税自体、課税対象が限られていることなどを踏まえ、本当に税制が承継を阻害しているのか実態をよく把握した上で、特例措置について吟味する必要がある。

ホ 相続税の負担が円滑な事業承継を阻害しているかについては、調査結果が区々であり、どちらとも言い難い。

ヘ 農地の納税猶予の特例と同様の措置を中小企業の事業承継に適用することについては、納税猶予制度自体が様々な問題を抱えていることに加え、企業は農業と異なり、「承継」についての客観的な判断が困難で、税制として仕組みにくいこと、事業の承継が要件となることにより時代の変化に対応した事業の転換を妨げること、などの問題があることから、慎重な検討が必要である。

(贈与税)

イ 贈与税については、相続税のあり方との関連で検討する必要がある。

ロ これまで社会の中で平等の重要性が強調されてきたことの反動もあり、贈与税等の軽減を求める意見が出ていると考えられるが、これらは、機会の平等の確保の観点などから問題ではないか。

ハ 高齢者の保有資産の若年世代への移転という点については、100万円未満の貯蓄しかない高齢者世帯が3割に達するという統計もあるなど、高齢者間の資産保有の格差が大きい実態に留意する必要があるのではないか。

ニ 個人金融資産を消費に向かわせるという観点からは、例えば富裕税のような形で、資産所得に対する課税の強化を行うことが効果的なのではないか。

ホ 家計の資産選択を預貯金中心の貯蓄から証券投資に促すという観点から、一般の上場株式に係る贈与税の特例措置について検討すべきである。

(固定資産税)

イ 市町村の基幹税目である固定資産税の安定的な確保が重要である。平成6年度の評価替え時からの地価公示価格の7割評価については定着してきたところであり、次回平成15年度評価替え以降の税負担についてはこれを維持し、引き続き宅地に係る税負担の均衡化・適正化を推進する必要がある。

ロ 固定資産税に対する納税者の関心が高くなっており、これまでは自己の資産に関する部分に限定されていた固定資産課税台帳縦覧制度について、市町村内の土地・家屋の縦覧帳簿を新たに整備して納税者に開示するなど、情報開示を一層進めていく必要がある。

ハ 相続税、贈与税、固定資産税等については、総体的、全体的に、じっくりと検討していく方向を出すべきものである。あまり目先の諸々の政策的要請で、手を加えるのはいかがなものか。

(その他)

イ 土地基本法の理念は現在も意義を有していることから、この理念に沿って、土地保有に対する課税を重視した現行の土地税制の基本は堅持すべきであり、近年、課税ベースが狭められてきている土地の譲渡、保有への課税については、今後、適正化を図っていく必要がある。

ロ 地価の下落は、時価会計の導入など税制以外の要因によるものであり、地価の1%程度の負担である登録免許税が土地取引を阻害しているとは考えられないことから、土地流動化を促進するために登録免許税を軽減することは適当でない。

ハ 登録免許税は、高額の土地取引の背後にある経済取引に担税力を見出し課税するものであり、手数料とは性質が異なるのではないか。

ニ 不動産取得税は一般市民にあまり関係なく、不動産取引を行うような税負担能力がある者に対して課税されており、また様々な軽減措置も講じられているので土地取引を妨げる問題とはなっていない。

ホ 国も地方公共団体も厳しい財政状況の中で、登録免許税、不動産取得税のような今ある制度をわざわざ変える必要はないのではないか。

ヘ 流通税は土地取引の阻害要因となっており、登録免許税は手数料化し、不動産取得税は廃止するなど、そのあり方を見直す必要があるのではないか。

ト 不動産取得税や事業所税など不動産関連税制のあり方については、厳しい地方財政の下で、都市再生など地方団体が取り組むべきさまざまな課題があり、また一方で地方税の充実確保が緊要な課題であることを踏まえて議論するべきである。

【酒税】

イ 発泡酒や果実酒などの醸造酒を中心に生産・消費の動向にかなりの変化が見られることから、同種・同等のものには同様の負担を求めるという消費課税の基本原則に照らし、その課税のあり方について検討する必要がある。

ロ 発泡酒は、品質・性状において、ビールと同様であることに加え、製品化されてから相当期間経過しており、企業の製品開発努力を理由に税負担格差の是正を先送りすべきではない。また、近年の発泡酒は技術開発により生まれた新たな商品であり、こうした新商品については、技術開発の進展とともに課税のあり方を見直すのは当然である。

ハ ビールから発泡酒へ急激に需要がシフトしており、現下の厳しい財政事情の下、財政収入に与える影響を考えれば、同一の税率とすべきではないか。

ニ 発泡酒は、消費者ニーズに沿った商品開発という企業努力により生み出されたものであり、そうした商品開発努力には一定の配慮が必要ではないか。また、商品開発後に、税制を変更することは不適当ではないか。

ホ 発泡酒などの増税は、国民のささやかな楽しみを奪い、現下の経済情勢の下、家計に負担を及ぼし消費に悪影響を与えるのではないか。また、発泡酒は現在消費量が伸びている数少ない商品であり、税負担増を求めることは適当でない。

ヘ ビールの税率を引き下げることで、発泡酒との間の税負担格差を是正するということも考えられるのではないか。

【その他】

(納税者番号制度)

イ 適正・公平な課税の実現や納税者の税制への信頼の向上に資するものであり、導入に向けた検討を進めるべきである。

ロ 金融証券税制の構築に際し、納税者番号制度が存在しないことが一定の制約要因となっていることは否定できず、制度の導入に向けて具体的な検討を促進することが必要である。

ハ 導入に伴うコストや効果、諸外国の例などを具体的に示すことで、国民の理解を得ることが重要である。また、プライバシー保護の問題に対する国民の受け止め方を考慮しながら、検討すべきである。

(電子申告等)

イ 電子申告等を進めるに当たっては、納税者の信頼を得られるような個人情報の保護にも留意する必要がある。

(エネルギー関係諸税と環境問題への対応)

イ 道路特定財源等については、現在の厳しい財政状況等に鑑み、基本的には一般財源化の方向で検討すべきである。

ロ 地方の道路整備は立ち遅れており、依然として特定財源等による道路整備の必要性は認められることから、これを維持する必要がある。

ハ 京都議定書の発効に向けて、地球温暖化問題をはじめとする環境問題への関心が高まっているところであるが、環境問題に対する税制面での対応が必要とされる場合には、税調として前向きに対応する必要がある。

ニ 環境問題に対する税制面での対応については、汚染者負担の原則(PPP)に立って、検討を行うべきである。また、理論的な検討は相当進んでいることから、今後は、道路特定財源との関係などを含めて、実践的な検討を行う必要がある。

ホ 環境問題について、税制面での対応を行う場合には地方団体が地球温暖化対策等を含め幅広く環境保全対策を行っており、あるいはPPP原則に沿ったマイナスの応益課税という面もあるので、地方の環境関連税制としても取り組むという面がある。

(国際課税)

イ 国際化の進展に伴い、外国企業のわが国への進出形態は多様化する傾向にあり、事業体の活動や構成員たる企業・個人に関する情報を把握することが重要になるなど、今後、企業活動の実態の変化に対応する形で、外国の事業体に対する課税のあり方を検討していく必要がある。

ロ 金融やサービスなどのいわゆる「足の速い」経済活動を外国から誘致するために税制上の優遇措置を設ける「有害な税の競争」への対応については、OECD等における国際的な取組みに積極的に参加していくことが重要である。

(その他)

イ 個人住民税については、低所得者層の税負担に配慮するため、生活保護基準の引上げに対応して、均等割及び所得割の非課税限度額を見直すことが適当である。