中期答申コメント

中央大学教授 貝塚 啓明

  1. 全体的な印象
    財政学のテキストを読んでいる感じで、税制改革の具体的方向について、細部の提案があるとしても、イメージが浮かばない。
  2. 税制改革の方向として、依然として、消費税と所得税の両建てのままで(あるいは、法人税との三本建のままで)、消費税導入時の立論と同じとみうけられる。
    包括的所得税を目指した提案(85頁)と消費税傾斜の方向とは、どうしても、相反するところがあり、租税理論としても、もう一度整理が必要と思われる。
    すでに、アメリカでも、包括的所得税論者は、極めて少数であり、一つの有力な提案は、フラット・タックスにして、課税ベースは、徐々に支出税に移し、結果的には、消費税化するという提案があり、参考となろう。※1いずれにしても将来志向型の租税理論を構築すべきである。
  3. 細かい論点
    1)社会保障との関連で、所得税の諸控除の整理を検討すべきではなかったか?
    2)分類所得税的思考がかなりあるが、租税理論的にも整理すべきではないか?
    3)小規模企業のcomplianceについて、もう少し分析すべきではないか?
    4)累進課税とその非中立牲について、もう少し踏み込むべきではないか?

※1 Joel Slemrod, "Deconstructing the Income Tax" American Economic Review (May, 1997)

(以上)