課税問題ワーキンググループ中間とりまとめ

平成10年10月27日
税制調査会・基本問題小委員会
基本枠組ワーキング・グループ

検討の経緯

税制調査会は、本年5月に基本問題小委員会を設置し、基幹税たる所得税・個人住民税の問題を中心に、我が国税制を巡る諸問題について、幅広い観点から検討を開始した。

基本問題小委員会においては、個人所得課税についての広範多岐にわたる検討項目を税率構造、課税ベース、課税方式及び納税者番号制度といった4つの問題群に整理し、これらについて、理論的・専門的な見地から検討を行うため、次の二つのワーキンググループを設置した。

  • 課税問題ワーキング・グループ(税率構造、課税ベース等)
  • 基本枠組ワーキング・グループ(課税方式、納税者番号制度等)

課税問題ワーキンググループにおいては、7月から10月にかけて、海外調査をはさんで5回の会合を開催し、個人所得課税の基本的あり方、税率構造、課税ベース等について、租税理論を踏まえた専門的検討を行い、今後の検討に資するため、制度等の現状と論点について、中間的なとりまとめを行った。

個人所得課税の基本的なあり方と負担水準

項目

(個人所得課税の負担額の決定要因)

税負担水準を決定する最も基礎的な要素は税率と課税ベースである。

所得税、個人住民税の課税ベース(課税所得)は、所得の種類ごとに定められた算定方式に従い、収入から必要経費や所得計算上の諸控除(給与所得控除、公的年金等控除等)を差し引いて求めた所得金額の合計から、各種の人的控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除等)やその他の控除(社会保険料控除等)を差し引いて求められる。また、非課税所得や税額控除等も課税ベースに影響を及ぼす要因である。

課税所得に超過累進税率を適用して算出した税額から、税額控除を差し引いたものが、所得税・個人住民税の負担額となる。

(個人所得課税の負担水準)

マクロベースでの個人所得課税の負担水準を主要諸外国と比較するために、個人所得課税の税収の国民所得比を見ると、我が国は7.1%(10年度補正予算ベース)と、アメリカ(12.5%)、イギリス(12.8%)、ドイツ(14.0%)及びフランス(8.2%)よりも低い水準となっている。(諸外国はいずれも1995年の計数)。

標準世帯(夫婦子2人の世帯)についてみると、中低所得者層の個人所得課税負担は主要国中フランスに次いで低い水準にある一方、高所得者層においてはドイツ以外の主要諸外国と同程度又は高い負担水準となっている。

論点・意見

  • 税体系全体の中での個人所得課税の位置付けについてどう考えるか。
  • 個人所得課税の負担水準について、次のような観点からどのように考えるか。
    • マクロで見た租税負担率の水準と国民の重税感との関係
    • 収入階層、世帯類型、所得の稼得形態に応じた税負担の状況
  • 社会保険料負担を合わせた負担水準についてどのように評価するか。
  • 現在及び今後の公共サービスの水準についてどう考えるか。また、その水準から見て、国民負担の水準はどのようにあるべきか。
  • 財政赤字が将来の負担水準に及ぼす影響を、現在の負担水準を評価する上でどのように考慮すべきか。
  • 所得再分配機能の観点から見て、個人所得課税はどの程度の累進性を有するものであるべきか。
  • 個人所得課税の累進構造が次の諸点にどのような影響を及ぼしているか。
    • 個人の勤労意欲や事業意欲
    • 人的資本への投資
    • 国境を超えた人的資本の移動
  • 個人所得課税の課税ベースについて、次のような視点からどのように評価するか。
    • 課税ベースのイロージョン(浸食)はどの程度生じており、それが、税負担の公正に対する信頼感にどのような影響を与えているか。
    • ライフスタイルや経済行動の選択に対して、できる限り歪みを与えないようなものとなっているか。
    • 簡明さと透明性が保たれ、誰が見ても分かりやすく、納得できる制度になっているか。
    • 公共サービスの提供のコストを広く分かち合うことができる仕組みとなっているか。
  • アメリカ、イギリス等の諸外国では、70年代終わりから80年代後半にかけて税率構造の大胆なフラット化や制度の大幅な見直しが進められ、その後、アメリカでは最高税率の引上げの動きも見られた。このような税制改革の流れをどのように評価するか。

税率構造

項目

(所得税)

現行の所得税の税率構造は、10%から50%まで10%刻みの5段階となっている。

これは、昭和63年12月の抜本改革により、それまでの最高税率60%、12段階という税率構造が緩和されたもの。更に、平成6年11月の税制改革により、20%の税率を中心として、限界税率の適用区分(ブラケット)が拡大された。

(個人住民税)

現行の個人住民税の税率構造は、5%から15%まで5%刻みの3段階となっている。

これは、昭和62年9月及び昭和63年12月の抜本改革により、それまでの最高税率18%、14段階という税率構造が緩和されたもの。更に、平成3年度改正及び平成6年11月の税制改革により、限界税率の適用区分が拡大された。

(税率構造の役割)

累進的な税率構造は、課税最低限を構成する諸控除等との組合せにより、税負担を所得水準の上昇に応じて逓増させる役割を果している。

論点・意見

  • 税率の構造的なあり方を検討する場合には、課税ベースや課税方式のあり方との総合的な判断が必要であるが、所得課税体系全体の中で税率構造のあり方をどう考えるか。
  • 所得再分配機能(垂直的公平)と限界税率の累進性の関係をどう考えるか。
  • 限界税率の水準、累進度と勤労意欲、事業意欲との関係をどう考えるか。
  • 機会の均等が保障され、所得が平準化している中で、リスクをとり、あるいは、希少な能力を発揮して得た所得に対する課税の水準はどうあるべきか。
  • 限界税率の水準や累進度が、租税回避の誘因となったり、会社におけるフリンジベネフィットへの依存など、経済行動に影響を与えていないかどうか。
  • 最高税率の水準が諸外国に比して高いことが、人的資本の海外への漏出に繋がっていないかどうか。
  • 税率構造は、公平・中立・簡素といった税の基本原則に関わり、個人所得課税のあり方を規定する最も重要な要素の一つであることから、単に景気調整の観点からではなく、長期的な視点から検討していくべきではないか。
  • 国税、地方税のそれぞれの性格に鑑み、所得税と個人住民税の税率構造のあり方についてどう考えるか。
  • 個人所得課税の税率構造と法人所得課税の表面税率(調整後)の関係についてどう考えるか。

給与所得課税

項目

(現行制度の概要)

給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から、収入金額に応じた給与所得控除額を控除した残額である。

給与所得控除は、給与収入に応じて、40%から5%までの5段階で控除率が逓減する仕組みとなっているが、頭打ち(最高限度額)はない。最低保障額は65万円である。

(趣旨・沿革)

給与所得控除は、大正2年に、勤労所得は資産性所得、事業所得と比べて担税力が弱く、何らかの調整が必要であるとの考え方から設けられた勤労所得控除に由来するものである。

戦後、シャウプ勧告は、給与所得控除率の縮小を勧告した。

なお、現行の給与所得控除制度は、昭和49年の税制改正で、現在の仕組みに改められ、従来の定額控除と定率控除が統合され、収入金額による控除の「頭打ち」の撤廃などの改正が行われた。

(給与所得控除の性格づけ)

給与所得控除の性格づけについては、昭和62年及び63年の抜本的税制改革に際して検討が行われ、勤務に伴って支出する費用を概算的に控除することのほか、給与所得と他の所得との負担の調整を図ることを主眼として設けられているものとして理解することが妥当であると指摘されてきた。

<特定支出控除>

(現行制度の概要)

給与所得者が特定の支出([1]通勤費、[2]転任に伴う引越費用、[3]研修費、[4]資格取得費、[5]単身赴任者の帰宅旅費の5種類)をした場合において、その年中の特定支出の額の合計額が給与所得控除額を超えるときは、給与所得の金額は給与等の収入金額からその給与所得控除額及びその超える部分の金額を控除した残額とすることができる。

(趣旨・沿革)

特定支出控除制度は、給与所得者の不均衡感の一因が、勤務に伴う費用の実額控除が認められず、源泉徴収を通ずる年末調整によって所得税の課税関係が終了し、納税義務の確定手続に参画する途がないことにあるとの指摘等を踏まえて、税制の抜本的見直し(昭和62年9月改正)において導入されたものである。

ただし、給与所得者に実額控除制度を導入することについては、実額控除の対象とする勤務費用といっても、その費用は一般的に収入金額との関連が薄いことから、家事上の費用やこれに関連する費用との区分が困難であることが多く、どういう費用が含まれるのかはっきりせず、その範囲を巡って税務当局との間でトラブルが多発するおそれがあるといった問題があり、昭和62年9月の改正で、控除の対象となる特定支出の額が給与所得控除を上回る場合には、その上回る部分について確定申告を通じて控除することができることとする特定支出控除制度が創設された。

<源泉徴収と年末調整>

(現行制度の概要)

源泉徴収制度は、給与や利子・配当などの特定の所得の支払いを行う者(源泉徴収義務者)が、その所得を支払う際に、所定の方法により源泉徴収すべき所得税額を計算し、その所得税額を所得の支払い額から控除して国に納付する制度である。その対象となる所得には、給与所得や退職所得をはじめとして、利子所得、配当所得、上場株式の譲渡等に係る所得、原稿料、弁護士等の報酬などが含まれる。

所得税における年末調整とは、給与等の支払者が、その年最後に給与等を支払う際、給与所得者の各人別に月ごと又は日ごとに徴収した税額の合計額とその年中に支給する給与等の総額に対する年税額とを比較して過不足額の精算を行うことをいう。

この年末調整は、大部分の給与所得者にとって、確定申告に代わる年間の税額の精算確定手続ということができる。

(沿革)

昭和15年に総合所得税と併用する分類所得税が創設された際に「勤労所得」の分類が設けられ、それ以降、勤労所得の一部について6%の比例税率による源泉徴収が行われていたが、昭和22年の改正において、分類所得税が廃止されて総合所得税に一本化された際に、年末調整の制度が創設された。

(主要諸外国の制度)

主要先進国においては、フランスを除く各国で給与所得に対する源泉徴収が行われている。日本では、年末調整で行っている源泉徴収税額と年税額との間の過不足額の精算は、イギリスでは給与の支払の都度行われ、ドイツでは年末に行われている。

他方、アメリカでは年末調整に該当する仕組みはなく、納税者番号制度の下で、申告納税により精算が行われる。

論点・意見

  • 勤務費用の概算控除、他の所得との負担調整など、従来から給与所得控除の性格付けとして論じられてきた点についてどう考えるか。
  • 給与所得控除は、マクロ的に見ると給与収入金額の約3割の水準に達しているが、勤務費用の概算控除として位置付ける場合、この水準をどう考えるか。
  • 最高税率の水準と給与所得控除に頭打ちが設けられていないこととの関係をどう考えるか。
  • 給与所得控除の最低保障額制度をどう考えるか。
  • 社会・経済情勢の変化等を踏まえ、従来、給与所得控除の性格付けの一つとして指摘されてきた他の所得との負担調整の観点についてどう考えるか。
  • 勤務形態や給与の支給形態が多様化していることに対し、税制面でどのように対応すべきか。
  • 給与所得控除に関し、いわゆるサラリーマンに対する給与と、同族会社の役員に対する報酬や青色専従者給与の相違についてどう考えるか。
  • 特定支出控除の適用件数は僅少となっているが、
    • 職業上多額の必要経費の支出を余儀なくされる場合に、申告による控除の道を開く制度としての意義は認められるのではないか。
    • 他方、給与所得控除の水準が高い(マクロ的に見ると給与収入金額の約3割の水準に達している)こととの関係をどう考えるか。
  • 雇用形態の変化や所得の発生形態の多様化を踏まえ、現在の源泉徴収の範囲についてどう考えるか。
  • 年末調整の意義について
    • 申告によって税額の確定を納税者自らが行うことは、税負担を通じて政治参加意識を高める観点から重要であるとの見方についてどう考えるか。
    • 消費税創設後、税負担を通じた政治参加の意識は消費税を通じて相当程度高まっているとの指摘についてどう考えるか。
    • 年末調整は、納税者の手続きを簡便化し、社会的なコストをできる限り最小化する仕組みとして評価できるのではないか。

事業所得者の経費、控除

項目

(概要)

事業所得の金額は、その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除して計算する。

個人は所得稼得(生産)の主体であると同時に所得処分(消費等)の主体であることから、所得税法は家事費用・家事関連費用を必要経費に算入しない旨の規定を設けている。

事業所得については、法人の場合と基本的には同様に減価償却費、引当金、準備金、特別償却等の適用がある。

(所得税法上の必要経費と法人税法上の損金)

所得税法上の必要経費と法人税法上の損金との間には、例えば、次のような違いがある。

交際費:法人税においては、租税特別措置法によって、資本金額に応じて交際費の一部又は全部の損金算入が否認される仕組みとなっているが、所得税法上、個人の交際費についてはこのような特別の制度がなく、個別にその必要経費への算入の可否を判断することとされている。

寄付金:法人税法では、一定の要件を満たす公益的寄付金については全額損金算入されるが、一般の寄付金については資本等及び所得の金額を基準として一定限度までしか損金算入が認められない。これに対し、所得税法では、一定の公益的寄付金について所得控除を行う寄付金控除の制度があるが、寄付金が必要経費になるかどうかについては、個別に判断するほかない。

<専従者給与>

事業に専従する配偶者等の親族がいる場合には、青色申告書を提出している事業所得者はその専従者の給与の全額を必要経費とすることができ(完全給与制)、白色申告をしている事業所得者は配偶者控除、扶養控除に代えて、配偶者については86万円その他の親族については50万円を白色専従者控除として控除できる。

<青色申告特別控除>

青色申告特別控除制度は、

[1] 事業所得又は不動産所得を生ずべき事業を営む青色申告者で、これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則に従い記録している者については、45万円を事業所得等の金額から控除し、

[2] 上記[1]以外の青色申告者については、10万円を事業所得等の金額から控除するというものである。

この特例制度は、平成4年度改正において、それまでの「みなし法人課税」制度及び青色申告控除(10万円)制度の廃止とあわせて、青色申告の一層の普及・奨励を図り、適正な記帳慣行を確立し、申告納税制度の実を上げるとともに事業経営の健全化を推進する観点から、創設されたものである。

論点・意見

  • 必要経費の範囲について
    • 家事費用・家事関連費用と事業の必要経費との判別がケースによっては困難であるが、制度上、執行上これにどのように対応していくべきか。
    • 法人の場合と異なり、交際費や公益的寄付金以外の一般の寄付金について必要経費算入を制限する制度がなく、必要経費性については個別判断に委ねられていることをどう考えるか。
  • 事業における個人形態と法人形態の選択に対してできるだけ歪みを与えないために、それぞれの課税のあり方についてどう考えるか。
  • 青色事業者については、専従者給与の支払いによる配偶者等への所得分与が可能となっているが、専従の実態等から見て過度の支払いが行われている場合には公平を失することになるのではないか。
  • 事業所得の申告水準の向上のために一層の納税環境整備が必要との指摘についてどう考えるか。

公的年金等課税

項目

(沿革と概要)

公的年金等に係る所得は昭和62年分までは給与所得として扱われていたが、年金所得に給与所得控除を適用することは必ずしも合理的でないこと等の理由から、昭和62年9月の税制改正において、公的年金等に対する従来の課税を抜本的に見直すこととし、

[1] 公的年金等の所得区分を給与所得から公的年金等に係る雑所得に変更したうえ、

[2] 公的年金に適用される控除として老年者年金特別控除及び給与所得控除に代えて公的年金等特別控除(最低保障額140万円)を創設し、

[3] あわせて老年者控除を2倍に引き上げる(50万円)改正が行われた。

このような給与所得から雑所得への所得区分の変更を含む公的年金課税方式の整備合理化は、税制調査会の「税制の抜本的見直しについての答申」で述べられている以下のような考え方から行われたものである。

[1] 給与所得控除は、勤務関係を前提とし勤務に伴う経費を概算的に控除するとともに給与所得と他の所得との負担の調整を図る趣旨から設けられたものであり、必ずしもこのような事情が認められない公的年金について、給与所得控除を適用することは合理的ではない。

[2] 従来、65歳以上の年金受給者に対し一律に老年者年金特別控除が認められていたが、これは公的年金と他の所得との負担調整を行うとともに、老年者に対して税制上の配慮を加えるという趣旨によるものであるが、

  • 公的年金の受給者間でかなりの差があること、
  • 公的年金の受給者の中には、他の所得が相当の水準にある者もいると認められること、などに照らせば、公的年金であるが故に一律に多額の定額控除を設けることは負担の公平の観点からみて問題なしとしない。

現在、公的年金等受給者の課税最低限は、夫婦世帯の場合所得税334.6万円(配偶者が老人配偶者に該当しない場合)、個人住民税319.5万円(同)と非常に高い水準であり、他に所得を有する場合を除けば、ほとんどの人に所得税及び個人住民税がかからないことになっている。

論点・意見

  • 少子高齢化が進展する中で、世代間における税負担の公平についてどのように考えるか。また、その考え方を年金課税にどのように反映させるか。
  • 年金課税については、拠出(入口)、運用、給付(出口)の各段階の課税のあり方を含めた総合的な視点から検討する必要があるのではないか。
  • 公的年金等控除の性格についてどう考えるか。
  • 公的年金等については、入口は社会保険料控除により非課税、出口は公的年金等控除等によりほとんどの受給者にとって実質非課税となっているが、年金受給者数の増加、年金所得の増大等、年金制度が成熟化していくことを踏まえ、適切な課税のあり方を検討していくべきではないか。
  • 高齢者間の所得・資産の分布状況は他の年齢層と比べて分散が大きいことを踏まえ、公的年金等に対する課税のあり方をどのように考えるか。
  • 企業年金及び個人年金については、公的年金の上乗せとなる自助努力のための制度としての性格を踏まえ、年金制度全体の中での位置付けや他の金融商品とのバランスとの関係で、その課税のあり方についてどう考えるか。

退職所得課税

項目

(概要)

退職所得の発生の基因となる退職手当等は、一般に、過去長期間にわたる勤労の対価の後払いという性格をもつとともに、退職後の生活の原資に充てられるという特性を有し、その担税力は他の所得に比較して低い。したがって、退職所得の計算に当たっては、収入金額から退職手当等の支給の基因となった勤務期間の長短に応じて計算される一定の退職所得控除額を控除し、さらにこれの2分の1をもって所得金額とされ、他の所得と分離して課税することとされている。

退職所得控除額は、勤続年数20年までは1年につき40万円、勤続年数20年超の部分については1年につき70万円となっている。

この結果、モデル退職金について計算すると、勤続年数20年未満の中途退職者は所得税額ゼロ、それ以上の勤続年数の者についても相当低い負担率となっている。

(趣旨・沿革)

退職所得に対する所得税の課税は、昭和13年の所得税法の一部改正により、一時恩給又はこれに類する退職給与を第二種所得税の丙として課税することとされたことに始まる。それまでは、退職所得は営利の事業に属さない一時の所得として非課税とされていた。

昭和15年の改正においては、退職所得は分類所得税を課税される所得の一項目とされ、昭和22年の改正では、従来の分類所得税と綜合所得税とによる課税方式を改め、原則としてすべての所得を総合し、超過累進税率によって課税する、いわゆる総合課税の方式を採ることとされた。

この改正に伴い、退職所得については、その年中の収入金額の2分の1に相当する金額を課税標準とし、所定の源泉徴収税額表によりその所得税を源泉徴収するとともに、他に所得がある場合には、これと総合して課税することとされた。

昭和25年のいわゆるシャウプ勧告に基づく改正においては、退職所得については、その年中の収入金額からその15%に相当する金額を控除した退職所得の金額を課税標準とし、特定の場合には、5年間の平均課税の適用を選択することができることとされた。

昭和27年の改正において、退職所得について、他の所得と分離して課税し、その収入金額から一定額を控除した後の金額の半額を課税標準とし、これに税率を適用した税額によることとされた。

論点・意見

  • 現行の退職所得課税の仕組みは、勤続年数に応じて厚く支給される退職金支給のあり方を反映したものとなっているが、雇用形態が多様化・流動化してきていることを踏まえ、どのように検討していくべきか。
  • 退職金の支給形態が一時金方式から年金方式に徐々にシフトしていること等を踏まえ、退職所得課税と年金課税との関係をどのように考えるか。
  • 退職所得は、給与所得の後払いとしての性格を有することについて、どのような配慮を払うべきか。
  • 来日後、本邦で短期間のみ在職する従業員等に対し、本邦での給与支給に代えて、本国帰国後に退職金を支給するといったことが行われうることについてどのように考えるか。

譲渡所得課税

項目

土地等の譲渡に対する課税については、土地等に係る事業所得等の分離課税、長期譲渡所得の分離課税、短期譲渡所得の分離課税が行われている。

また、土地等の譲渡所得には、

  • 収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除
  • 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円特別控除
  • 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除
  • 農地保有合理化等のために農地等を譲渡した場合の800万円特別控除
  • 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除・特定の事業用資産の買換え等の場合の特例
  • 相続等により取得した居住用財産の買換え等の場合の特例
  • 特定の居住用財産の買換え等の場合の特例
  • 固定資産の交換の場合の特例

等が認められている。

論点・意見

  • 土地税制については、土地をめぐる社会経済情勢の変遷に応じて改正が行われてきているが、政策的見地から設けられている各種の特別控除等により、土地譲渡益のかなりの部分が課税ベースから脱落していることについてどう考えるか。

非課税所得

項目

(概要)

税法上、所得税及び個人住民税の課税対象から除かれ、通常は申告を必要とせずに課税されない所得を非課税所得という。

非課税所得を分類すると、次のようなものがある。

[1] 所得税法の規定によるもの(生活用動産の譲渡所得等、給与所得者の通勤費、職務の性質上欠くことのできない現物給付等)

[2] 租税特別措置法の規定によるもの(財形住宅(年金)貯蓄の利子所得等)

[3] その他の法令の規定によるもの(失業給付等)

<フリンジベネフィット>

所得税法においては、金銭による収入のみならず、「物又は権利その他の経済的利益」による収入も各種所得との収入金額として捉えることとしているが、一定の条件を満たす現物給与等(社宅の貸与、食事の支給、従業員割引等)については非課税とされている(個人住民税についても同じ)。

例えば、社宅の貸与について我が国と主要諸外国の制度を比較すると、我が国では会社が従業員から一定の算式に基づいて計算された家賃相当額を徴収している場合に非課税としているが、アメリカ、イギリスでは居住することが雇用の条件となっている場合や業務の遂行に必要がある場合等に限定されており、ドイツ、フランスではそもそも社宅の貸与は原則として非課税とされていない。

<老人マル優等>

老人等を対象として、一定の預入限度額の範囲内で、利子所得等の非課税制度が認められている。この非課税の適用を受けるためには、預入等に際して一定の公的書類によって本人確認を受ける必要がある。

<社会保障給付>

社会保障給付については、公的年金等控除や老年者控除により、ほとんどの者が課税最低限以下となり、所得税がかからない形となっている。

<非永住者制度>

居住者のうち、来日5年以内で我が国に永住の意思を持たない者(非永住者)については、他の(一般の)居住者が全世界所得に課税されるのに対し、国外源泉所得に関しては国内に送金されない限り非課税とされている。

この制度は、戦後、我が国が居住外国人に対する課税を禁止され、その後、徐々に課税権を回復する過程で昭和32年に創設されたものであり、当時の高累進税率等を背景としたもの。

論点・意見

  • 非課税とされている趣旨を踏まえつつ、個別の項目毎にどう考えるか。
  • 従業員又は役員に対する現在の現物給与等の非課税範囲についてどう考えるか。
  • 雇用形態が多様化し、従業員と会社との関係が変化(いわゆる「会社人間」から脱する気運等)している中で、個人の会社への帰属を前提とした福利厚生と、その課税のあり方についてどう考えるか。
  • 世代間の公平の観点からどう考えるか。
  • 高齢者間でも所得、資産の状況に多様性がある中で、高齢者であれば一様に非課税の恩典が及ぶことについてどう考えるか。
  • 社会保障給付の増加や国民の生活水準の向上、所得・資産の状況の多様性等を踏まえ、社会保障給付に係る所得税の取扱いについてどう考えるか。
  • 居住者のうち来日5年以内の外国籍の者の課税ベースが縮小されているが、課税の公平の観点から問題があるのではないか。

所得控除(概要)

項目

所得税の課税所得は、収入から必要経費や所得計算上の諸控除を差し引いて求めた所得金額の合計から各種の「所得控除」を差し引いたものである。現在、「所得控除」としては、以下の15種類の控除と8種類の加算がある。

基礎的な人的控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除及び配偶者特別控除)

特別な人的控除(障害者控除、老年者控除、寡婦(寡夫)控除及び勤労学生控除)

その他の各種控除(雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模事業共済等掛金控除、生命保険料控除、損害保険料控除、寄付金控除)

加算(特定扶養親族、老人扶養親族、同居老親等、同居特別障害者 等)

論点・意見

  • 所得控除のあり方については、社会・経済情勢の変化を踏まえながら、それぞれの控除が設けられている目的・背景や、公平・中立・簡素といった租税の原則に照らして検討を行う必要があるのではないか。
  • 納税者の置かれた社会的条件の差異等に着目して新規控除を創設することについては、制度がいたずらに複雑になるとともに、そもそも稼得された「所得」に負担を求める税である以上、様々な国民の生活態様の中から特定の条件や家計支出(「所得」の処分)を抜き出して斟酌するには自ずから限界があり、適当ではないのではないか。

基礎的な人的控除と課税最低限

項目

(基礎的な人的控除)

基礎控除、配偶者控除、扶養控除及び配偶者特別控除は、納税者自身ないしその扶養家族について一人当たり定額を控除する最も基礎的な人的控除であって、課税最低限の主要な構成要素となるものである。

また、配偶者控除、扶養控除及び配偶者特別控除は、納税者の家族構成に応じた税負担を調整するという機能を有するものであり、課税単位や世帯構成に応じた税負担と合わせて議論する必要がある。

(課税最低限の構成)

我が国では、課税最低限を算定するにあたり、基礎控除、配偶者控除、扶養控除の基礎的な3控除のほか、社会保険の普及により納税者に普遍的に適用される社会保険料控除を考慮し、さらに、納税者の大宗をなすのが給与所得者であることから、給与収入ベースでの税負担がわかるよう給与所得控除も加え、給与収入ベースでの課税最低限を算定している。なお、いわゆる夫婦子二人の標準世帯の場合には、配偶者特別控除、特定扶養控除を考慮している。

これらの控除の合計額は、世帯の構成(配偶者の有無、扶養親族の人員)等により左右されるものであることに留意する必要がある。世帯構成には、単身、夫婦共稼ぎ、若年夫婦世帯、年金生活の夫婦世帯等もあり、それぞれの世帯に応じた課税最低限があることに留意が必要である。

(課税最低限の水準)

課税最低限は、長年一環して引上げが行われてきており、主要諸外国と比較して、また、平均的な給与水準から考えても相当高い水準となってきている。

論点・意見

  • 課税最低限は、どの程度の所得階層から所得税の負担を求めるかという限界を画するものであるが、そのあり方に関し、総合的に勘案される次のような要素についてどう考えるか。
    • 国の公共サービスの財源を納税者が負担する視点
    • 国民の生計費などの生活状況
    • 税率構造と課税最低限の組み合わせによる個人所得課税の累進構造のあり方・家族構成に応じた負担の調整
    • 税務執行上対応可能な納税者数
  • 国民の生活水準の向上、社会保障制度の充実等を踏まえ、いわゆる最低生活費への税制上の配慮についてどのように考えるか。
  • 税負担を通じて政治参加の意識が高まるのではないかとの指摘についてどう考えるか。また、このような考え方から、課税最低限の水準はどのようにあるべきか。
  • 我が国所得税の課税最低限は、累次にわたる引上げにより主要諸外国に比して既に高い水準となっており、所得税制全体としての累進度を強めていることについて、所得再分配機能の観点からどう考えるか。
  • 21世紀の少子高齢社会において、活力を損なわないためには、所得税負担はどのような範囲の人にどの程度求めるべきか。

特別な人的控除

項目

基礎控除、配偶者控除及び扶養控除といった基礎的な人的控除に加えて、特別な事情に基づく追加的費用の斟酌という見地から、障害者控除、老年者控除、寡婦(寡夫)控除及び勤労学生控除といった特別な人的控除が設けられている。

論点・意見

特別な人的控除は、特別な事情による追加的費用を斟酌し、担税力に応じた負担を求める見地から設けられているものであるが、次のような観点から、その意義について十分吟味・検討していく必要があるのではないか。

  • 制度創設時と比べ事情が異なってきているものはないか
  • 基礎的な人的控除の水準との関係
  • 社会保障制度等の歳出面の措置との関連・制度の簡明性、透明性

課税単位と配偶者特別控除等

項目

(制度の沿革)

我が国においては、明治20年に所得税が創設されて以来、明治民法の家族制度と連動して、同居家族の所得を全て合算して累進税率を適用する世帯合算非分割課税制が採られていた。

戦後、シャウプ勧告は家族制度の改正を背景として合算課税方式の廃止を勧告し、所得税の課税単位は昭和25年から基本的に個人単位課税に移行した。その際、納税者の恣意による所得の分割を防ぐ等の趣旨から、

[1] 扶養親族の所得の合算課税

[2] 資産所得の合算課税

[3] 家族専従者の労働報酬の事業主の所得への合算課税の3つの例外が設けられたが、昭和26年度の改正では、[1]及び[2]が主として税制の簡素化の観点から廃止され、また、昭和27年度の改正では、[3]の例外措置として青色事業専従者控除制度が設けられた。その後、昭和32年度の改正では、多額の所得を得ている世帯について資産所得の合算課税が復活されたが、これは昭和63年の抜本改革時に廃止された。また、昭和42年度の改正で青色事業専従者控除について、いわゆる完全給与制が導入されている。

現行法では、[3]の例外だけが基本的には維持されているが、これが実際に適用されるのは給与以外の対価(地代、家賃等)に限られ、給与に関しては、青色申告者の事業専従者については限度額なしの完全給与制が、白色申告者の事業専従者については事業専従者控除が認められている。

このように、シャウプ勧告以降の我が国所得税制は、個人単位課税の方向を徹底してきていると言える。

(主要諸外国の制度)

アメリカ

所得税採用とともに個人単位主義がとられたが、州によって財産制度が異なり、夫婦別産制の州と共同財産制の州とが存在していたことを背景として、1948年に(単一税率表の下で)個別申告と共同申告(二分二乗方式)の選択適用が認められるに至った。

その後、夫婦世帯については二分二乗方式による負担軽減効果があるのに対し、夫婦世帯と同様に扶養親族を有する独身者(寡婦等)にはこのような効果がないことが問題となり、寡婦等に対する負担の調整を行うため、独身世帯主用の税率表が設けられた(1951年)。

しかし、その後も、独身世帯主以外の独身者が既婚者よりも不利に扱われているという批判があったことや、夫婦には共同生活による規模の利益が生まれることを考慮すべきとの考え方から、1969年には、従来の基本税率表を夫婦個別申告用とし、それよりも低い水準に税率を設定した独身者用税率表が新設された。

これと同時に、夫婦個別申告用の2倍のブラケットを持つ夫婦共同申告用の税率表が作成され、二分二乗の利益を保存したまま税額計算の簡便化が図られた。

これらの改正の結果、現在、税額表は4種類となっている。

イギリス

所得税創設以来、夫婦合算非分割課税がとられたが、既婚女性の税務におけるプライバシーと独立性、結婚に対するペナルティの問題等を考慮し、1990年から個人単位課税に移行した。

ドイツ

二分二乗方式と個人単位課税との選択的採用となっている。

フランス

家族除数方式(N分N乗方式)を採用している。

<配偶者特別控除>

所得金額が 1,000万円以下の納税者が、生計を一にする配偶者で所得金額が76万円未満(給与収入では 141万円未満)である者を有する場合には、配偶者特別控除として、その配偶者の所得金額に応じた一定額を所得控除することができることとされている。

配偶者特別控除は、配偶者の所得金額の増加に応じて逓減していく消失控除の仕組みがとられている。

このように、消失控除の仕組みをとる配偶者特別控除が創設されたことにより、パートで働く配偶者の収入が一定額を超えると、夫婦合わせた税引後手取り収入がかえって減少するという「手取りの逆転現象」(いわゆる「パート問題」)は、税制上解消された。

論点・意見

  • 累進税率の下で世帯単位での合算課税の仕組みを採ることについては、以下のような側面があることについてどう考えるか。
    • 合算非分割制とする場合には婚姻に対するぺナルティ的な効果を持ち、二分二乗制のような合算分割制とする場合には、同一の所得を有する単身者と既婚者を比べた場合、一般的には既婚者に有利となるというように、婚姻の有無により税負担の程度に変動が生じる。
    • 同一の所得を有する世帯間(共働き・片働き)ではの税負担は同じとなる。
    • 専業主婦が新たに就労した場合などの追加的所得に対して配偶者の所得に応じた限界税率が適用される。
  • 一方、累進税率の下で個人単位課税の仕組みを採る場合には、以下のような側面があることについてどう考えるか。
    • 同一の所得の単身者と既婚者を比べた場合、配偶者に係る控除がなければ、一般的には、同一の税負担となる。
    • 片働きと共働きを比較した場合、同一の所得を有する世帯では、配偶者に係る控除がなければ、一般的には共働きの方が有利となる。
  • 世帯に対する税負担のあり方は、課税単位の採り方のみでなく、人的控除のあり方、税率構造、さらに給与所得控除のあり方とも関わる問題であり、総合的な観点から議論していく必要があるのではないか。
  • 配偶者控除と基礎控除、扶養控除といった人的控除の組み合わせのあり方についてどう考えるか。
  • 課税単位や配偶者に係る控除のあり方は、各国毎に区々であり、関連する社会制度や歴史的背景の影響を色濃く受けていることについてどう考えるか。
  • イギリスをはじめとするいくつかの先進諸国で、近年、世帯単位課税から個人単位課税に移行する動きが見られたことについてどう考えるか。
  • 配偶者控除・配偶者特別控除は、所得がない、あるいは所得の少ない配偶者がある者に対して税制上相応の配慮を払うものであると考えられるが、これらが女性の就労インセンティブに影響を及ぼしているのではないかとの指摘についてどう考えるか。
  • パート収入については、給与所得控除の最低保障制度等により一定額まで非課税となるとともに、さらに配偶者控除、配偶者特別控除により、世帯主の税負担も軽減される扱いとなっていることについてどう考えるか。

その他の各種控除

項目

(概要)

特別な支出の態様に応じ、政策的配慮に基づき設けられている個別の所得控除として、生命保険料控除、損害保険料控除、雑損控除、医療費控除、寄付金控除等がある。

<生命保険料・損害保険料控除>

一般の生命保険・損害保険に対する保険料控除は、戦後復興の資本蓄積、国民生活の安定を目指し、保険加入のインセンティブを与えるために創設された制度である。

この生命保険・損害保険料控除については、税制調査会の累次の答申において、

  • 制度創設の目的は既に達成されており制度の縮小・合理化を図る必要がある、
  • 個人の商品選択の裁量性を重視しつつ業態別・商品別の現行控除制度を改組・一本化すべきである、

等の指摘がなされている。

この制度による減収額は所得税の場合3,590億円であり、租税特別措置中2番目。また、住民税の場合1,250億円であり、非課税等特別措置中最大。

<社会保険料控除>

納税者が、本人又は本人と生計を一にする配偶者その他の親族が負担することになっている社会保険料を支払った場合又は給与等から差し引かれる場合には、その納税者の総所得金額等から、その支払った金額又は差し引かれる金額の全額を所得控除することができる。

論点・意見

  • 政策的配慮に基づく税制上の控除について、税制の簡素化、課税の公平・中立の観点から、今後、どのように考えていくべきか。
  • 金融システム改革が進み、金融商品間、業態間の課税の公平・中立性が求められている中で、生命保険料・損害保険料控除については見直しを検討していくべきではないか。
  • 社会保険料控除については、運用・給付段階における課税のあり方との関連を踏まえ、どのように考えるか。
  • 社会保険料控除については、社会保険等の制度が多様化していることを踏まえ、個々の制度毎に、その制度の趣旨等に照らして考えていくべきではないか。

租税特別措置等

項目

所得税関係の租税特別措置は、現在53項目(増収効果を持つものを除く。)である。これらによる減収額の合計は1兆3,120億円であり、租税特別措置による減収額全体の約7割にあたる。

最大の減収項目は、住宅取得促進税制(6,190億円)であり、次いで生命保険料控除・損害保険料控除(3,590億円)、老人マル優等(850億円)、青色申告特別控除(770億円)等となっている。

住民税関係の非課税等特別措置による減収額は、国の租税特別措置による影響額を含め 2,530億円であり、非課税等特別措置による減収額の約4割にあたる。

最大の減収項目は、生命保険料控除・損害保険料控除(1,250億円)であり、次いで青色申告特別控除(380億円)、老人マル優等(290億円)等となっている。

<住宅取得促進税制>

所得税における住宅取得促進税制は、住宅の取得等に伴う初期負担を軽減することにより、住宅の取得等を促進することにより内需の拡大を図ることを目的とするものである。

具体的には、居住者が、新築若しくは既存の居住用家屋の取得又は自己の居住の用に供している家屋の増改築等をして、その住宅の取得等の日以後6月以内に自己の居住の用に供した場合には、その住宅の取得等のための一定の借入金の年末残高を対象として、一定額を6年間にわたって所得税額から控除するものである。

論点・意見

  • 租税特別措置等については、それらが特定の政策目的を実現するための政策手段であり、税制の基本原則の例外措置であることから、今後とも、その徹底した整理・合理化の方向で検討を行っていくことが必要ではないか。
  • 住宅政策との関連で、この制度の位置づけをどう考えるか。
  • 持ち家を対象とした制度であるが、借家住まいの者との負担の公平についてどう考えるか。
  • 減収額が租税特別措置の中でも最大の6千億円余となり、夫婦子二人の給与所得者の場合、年収約800万円まで所得税額がゼロとなっていることについてどう考えるか。