地方移転・拡充の取組事例集を公開しました!

2025年12月24日

 我が国では総人口が減少を続ける一方、地方から都市圏、特に東京圏への転入超過が続いています。東京圏への一極集中は、地域コミュニティや地域経済の持続可能性への悪影響や、東京圏における大規模災害リスク等の可能性が指摘されており、国全体の持続的な発展のため、東京一極集中の是正に向けた、人や企業の地方分散を図ることが重要です。

 そこで、私たち内閣府は、「地方拠点強化税制」をはじめ、国や地方自治体の支援策と連携しながら、企業の地方移転・拡充を後押しし、地方での雇用創出を通じた新たな人の流れを生み出すことに取り組んでいます。

 その一環として、今般、「企業の地方移転・拡充と自治体支援の取組事例集」及び「動画」 (地方創生)別ウィンドウで開きますを作成しました。各企業の地方移転・拡充の目的や経緯、得られた効果、また、地方自治体による独自の補助金や企業へのきめ細かなサポート等、具体的な成果にも繋がっている特色ある取組をご紹介しています。地方での新たな挑戦を検討する企業の皆様や、地方自治体・関係機関等の皆様にとって、今後の取組のヒントとなれば幸いです。

事例集の概要

企業事例 ~本社機能の地方移転・拡充に取り組まれた企業8社を紹介しています。~

移転型 (東京23区からの移転)
株式会社シャフト
(静岡県静岡市)
 アニメ制作会社のシャフトは、地方拠点強化税制や自治体の補助制度を活用し、静岡市でサテライトスタジオ「静岡スタジオAOI」を開設し、本社機能の一部を移転しました。地域での採用と人材育成を進めています。
株式会社エクレクト
(広島県広島市)
 ITベンチャーのエクレクトは、自治体の支援も活用し、広島県へ本社機能の一部を移転しました。企業成長と社員の健やかな働き方の実現とともに、産官学の連携による地域DXの推進などにも取り組んでいます。
株式会社サザンクロスシステムズ
(宮崎県宮崎市)
 ITコンサルティングやソフトウェア開発を手掛けるサザンクロスシステムズは、地方拠点強化税制を活用し、東京都から宮崎県に本社機能の一部を移し、2本社体制としました。宮崎本社では地元人材を積極的に採用し、開発体制の強化・拡充を進めています。
 
拡充型 (地方における拠点拡充)
株式会社ナカノアパレル
(山形県南陽市)
 アパレルメーカーであるナカノアパレルは、工場買収を機に本社を移転しました。移転に併せて、社宅・シェアハウス・事業所内保育所を備えた「NAKANO VILLAGE」を整備することで、働きやすい環境を実現しています。
タカラバイオ株式会社
(滋賀県草津市)
 再生・細胞医療や遺伝子治療製品等の開発・製造等を行うタカラバイオは、地方拠点強化税制をはじめとした国の制度や県・市の補助金を活用し、研究開発拠点を拡充しています。また、Uターン人材を含む地元で働きたい学生の就職先として、安定した人材確保を実現しています。
株式会社モルテン
(広島県広島市)
 スポーツ用品や自動車部品等を手掛けるモルテンは、広島市内に分散していた研究開発拠点を集約し、エンジニアのクロスオーバーを加速させてシナジーを創出することを目的に、テクニカルセンター「molten[the Box]」を整備しました。新しい整備拠点には様々な方が来社するようになり、若者を中心に採用への好影響が見られています。
株式会社オーイーシー
(大分県大分市)
 ソフトウェア開発やネットワーク構築を手掛けるオーイーシーは、社員の交流を活発化し、共創を促すため、分散していた事業所を統合するため、拠点を整備しました。新しい拠点では産官学金連携イベントを開催するほか、地元学生向けの説明会を行うなど、地域貢献にも取り組んでいます。
株式会社BBSアウトソーシング熊本
(熊本県熊本市)
 BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業を展開するBBSアウトソーシング熊本は、地方都市の人財が持つ高いポテンシャルとBCPの観点から、熊本市に拠点を整備しました。地域の人財育成のための教育体制を構築し、優秀な人財の獲得・育成に取り組んでいます。

※1
 本社機能とは、事務所(調査・企画部門、情報処理部門、研究開発部門、総務・人事部門、情報サービス事業部門、商業事業部門の一部(オンライン営業)、サービス事業部門の一部(調査、企画、人事業務等の受託事業)の業務のために使用される事務所)、研究所、研修所が対象。

※2
 移転型・拡充型の別は、地方拠点強化税制の活用の前提となる、「地方活力向上地域等特定業務施設整備計画」の認定に基づいて分類。

※3
 括弧内は、拠点の整備場所。

地方自治体の支援策 ~企業誘致の取組好事例5件を紹介しています。~

富山県  富山県は、令和4年度から企業立地支援を一層強化し、本年7月には「富山県企業誘致戦略」を策定して、成長分野に的を絞った企業誘致等を進めています。3大都市圏へのアクセスの良さといった地理的な優位性や各種支援策を、企業誘致セミナーで経営幹部に直接訴求するとともに、県や市町村がそれぞれのチャネルを活かした地道な活動を行っています。
広島県  広島県は、「イノベーション立県」の実現に向け、AIやデジタル企業など先端産業の誘致を積極的に進めています。異動する社員の家族も対象にした最大1億円の助成や賃料補助等の充実した助成制度に加え、県内企業とのネットワークや交流イベントの開催といった移転後のサポートにも注力し、進出企業のビジネス展開も強力に後押ししています。
奈良市
(奈良県)
 奈良市は、大阪・京都へのアクセスの良さや災害リスクの低さを強みに、IT・クリエイティブ企業の誘致を進めています。「企業立地コンシェルジュ」が物件探しから従業員や家族の転居、操業後の支援までワンストップで対応し、企業の円滑な進出を支援しています。
熊本市
(熊本県)
 熊本市は、製造業や物流業に加え、IT・BPO、アニメ・ゲームなどの成長産業の誘致を積極的に進めています。新規雇用1名あたり最大120万円の補助に加え、オフィスや土地の賃料の半額を3年間支援する制度を設けているほか、視察ツアーを実施するなど立地促進に向けた取組を実施しています。
日置市
(鹿児島県)
 日置市は、若い世代が希望する事務系職種の雇用を確保するため、本社機能の誘致に取り組んでいます。補助金などの金銭面の支援は他の自治体との差別化が難しいことから、人と人のつながりをサポートするソフト面での支援に積極的に取り組んでいます。例えば、市長自ら企業誘致の先頭に立ち、研修講師や困りごと相談等で企業をサポートするなど、トップセールスが肝となり立地を決める企業が増えています。

動画の概要

 事例集の中から、「株式会社ナカノアパレル(山形県南陽市)」と「株式会社オーイーシー(大分県大分市)」の2事例について、移転等の目的と効果を、経営者・社員の実際の声とともに紹介しています(約7分)。

企業の地方移転・拡充事例 (地方創生)別ウィンドウで開きます

地方移転・拡充の支援策は?

 本社機能の地方移転・拡充を行った際に、建物等の取得価額に応じた税額控除等を受けられる「地方拠点強化税制」があります。
 制度の詳しい内容、要件及び活用状況等については、「地方拠点強化税制及び関連する自治体支援施策 (地方創生)別ウィンドウで開きます」をご覧ください。都道府県の企業立地(本社機能)に関する補助金なども一覧にして公表していますので、併せてご活用いただければと思います。

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