「原子力利用に関する基本的考え方」の改定について
2023年3月8日

2023年2月20日に原子力委員会において、「原子力利用に関する基本的考え方」(以下「基本的考え方」という。)が改定されました。また2月28日には、「基本的考え方」を尊重する旨が閣議で決定されました。
「基本的考え方」は、2017年7月に初めて策定されましたが、原子力を取り巻く環境変化などを踏まえて、5年を目途に見直し・改定されることとなっており、今後の原子力政策について政府としての長期的な方向性を示す羅針盤となるものです。例えば、内閣官房が取りまとめた「GX (グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」(2023年2月10日閣議決定)で示された、原発の再稼働や長期利用などの論点について、「基本的考え方」では長期的な方向性を示しています。
「基本的考え方」では、今後の基本目標や重点的取組を定めており、その中でも重要なポイントは以下の2つになります。
- 「安全神話」から決別し、安全性の確保が大前提という方針の下、安定的な原子力エネルギー利用を図る。その際、次の取組が必要である。
- 円滑な事業を進めるための環境整備
- 放射性廃棄物処理・処分に係る課題や、革新炉の開発・利用の検討等に伴って出てくる新たな課題等に目を背けない
- 国民と丁寧にコミュニケーションを図りつつ、国・業界それぞれの役割を果たす
- 原子力エネルギー利用のみならず、非エネルギー利用含め、原子力利用の基盤たるサプライチェーン・人材の維持強化を国・業界が一体となって取り組む必要がある。
こうした基本目標や重点的取組は、次に挙げる理念や原子力を取り巻く環境変化を踏まえて、定められたものです。
【理念】
原子力利用におけるプラス面・マイナス面を以下のように正しく認識した上で、安全面での最大限の注意を払いつつ、原子力を賢く利用することが重要。
- <プラス面>
- 工業、医療、農業など幅広い分野で人類の発展に貢献する可能性
- エネルギー安全保障やカーボンニュートラルの達成に向けた、エネルギーとしての活用
- <マイナス面>
- 使い方を誤ると、核兵器への転用や甚大な原子力災害をもたらす恐れ
【原子力を取り巻く環境変化】
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- 電力需給のひっ迫や、電気料金の値上げ
- ロシアのウクライナ侵略による地政学リスクの高まり
- 国際的に、革新炉の開発・建設や既設原発の運転期間の延長が進んでいること
- デジタル化の普及といった、その他社会全般の変化 など
今後は、今回の「基本的考え方」の改正の趣旨をよく踏まえて、関係省庁などが原子力利用の取組を進めることが重要です。また、原子力委員会では、毎年作成・発刊している「原子力白書」を通して、「基本的考え方」で示した我が国の今後の原子力政策の方向性や重点的取組に関する状況などについて、広く社会に発信していくほか、主要な懸案事項に関しては、俯瞰的立場から適時適切に見解を示していきます。