野口英世アフリカ賞ニュースレター 第3号平成21年 9月

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野口英世アフリカ賞1周年記念行事の開催(於:ケニア)

5月28日~29日、ケニアにおいて、野口英世アフリカ賞第1回授賞式から1年が経過したことを記念し、1周年記念行事が開催されました。この行事は、第1回の受賞者であるミリアム・ウェレ博士によって提案され、ウェレ博士が創設者の一人であるウジマ財団、AMREF(African Medical Research Foundation)、在ケニア日本大使館、JICA、日本学術振興会、ケニア公衆衛生省、コミュニティ保健連合(Community Health Association)が共催者となって実施されました。 
式典には、ウェタングラ外務大臣、オケロWHOケニア事務所長など、政府、国際機関から多数の来賓が出席しました。また、日本側からは、岩谷駐ケニア大使が出席し、小泉元総理大臣からの祝賀メッセージを代読しました。

 
開会式の様子

小泉元総理大臣祝賀メッセージ

野口英世アフリカ賞 1周年記念イベントの開催に際し、一言お祝いを申し上げます。

ウェレ博士が、野口英世アフリカ賞創設1周年を記念して、この賞と野口英世博士の功績を広く普及させるためのイベントを開催されると伺い、大変嬉しく思うとともに、この賞の創設者として、心から感謝申し上げます。

私は、医学の向上のために人生を捧げ、黄熱病のためガーナで亡くなった野口英世博士を深く尊敬しています。私は、2006年にガーナを訪問した際、道中の飛行機の中で、野口英世博士の志を継承するため、アフリカの医学研究や医療活動に貢献した人に、野口博士の名を冠した賞を授与するというアイディアを思いつきました。このアイディアが実を結び、昨年5月、TICADⅣ開催に併せて第一回授賞式を行うことが出来ました。この記念すべき第一回の賞を、ケニア及びアフリカ全体の保健衛生の改善に長年多大な貢献をしてこられたウェレ博士が受賞されたことは、私にとっても大きな喜びでした。改めて、お祝いを申し上げます。 

野口英世アフリカ賞はまだ創設されたばかりですが、アフリカの保健・医療に取り組んでいる方々の励みになるよう、今後とも日本全体としてこの賞を支え、継続していきます。

最後に、ウェレ博士のご活動に改めて敬意を表するとともに、今後の益々のご活躍をお祈りして、祝辞とさせていただきます。

小泉純一郎

 
ウェレ博士(右から2人目)、
オケロWHO事務所長(同3人目)、
ウェタングラ外相(同4人目)、
岩谷駐ケニア大使(同5人目)

式典では、野口英世博士の生涯を描いた映画「遠き落日」が上映されたほか、野口英世アフリカ賞及び野口英世博士の業績の紹介、日本の対ケニア支援の紹介、ウジマ財団の活動紹介、ケニア・近隣国の地域保健セクター関係者による発表会、保健関係者と参加者との意見交換、パネルディスカッションなどが行われました。
野口英世アフリカ賞、野口英世博士の功績について、アフリカに広く浸透させるため、活発な活動をしてくださっているウェレ博士に、改めて感謝を申し上げたいと思います。

第1回受賞者の行動

ブライアン・グリーウッド博士

ブライアン・グリーンウッド博士は、アフリカの若い研究者に海外での研究の機会を与えるため、野口英世アフリカ賞の賞金1億円すべてを提供し、奨学金を設立する準備を進めておられます。
この奨学金は、博士が教授を務めるロンドン大学衛生熱帯医学校と、日本の長崎大学熱帯医学研究所の協力を得て、主に感染症について研究しているアフリカの学生・研究者に対して、両校いずれかの修士課程での研究の機会を提供するものです。
この奨学金については、近日中にも、同奨学金の専用ウェブサイトが設置され、同サイト内で詳細が公表される見込みです。
グリーンウッド博士は、アフリカの医療においては、感染症対策と同時に、研究部門にもより多くの資金が必要であることを訴え続けています。
この奨学金の設立により、グリーンウッド博士の理念にもとづき、野口英世アフリカ賞が、より多くのアフリカ人研究者に対してチャンスを提供するための一助となることに、日本政府としても大きな喜びを感じます。

 
ブライアン・グリーンウッド博士

ミリアム・ウェレ博士

7月上旬、ミリアム・ウェレ博士が来日されました。ウェレ博士は、7月7日、日本学術会議九州・沖縄地区会議と長崎大学が主催する「現代アフリカ健康発展への挑戦」をテーマとする学術講演会(於:長崎大学)に出席し、講演を行いました。
また、ウェレ博士は、7月13日、大阪大学と長崎大学が主催する国際シンポジウム(於:大阪大学)に出席しました。これは、「健康なアフリカ社会を目指して」をテーマとしたシンポジウムで、ウェレ博士は「健康なアフリカ社会を目指して(Towards healthy society in Africa)」をテーマとした基調講演を行いました。
この後、ウェレ博士は東京を訪問し、内閣府や外務省など、日本政府関係者と懇談の機会を持ちました。
小田部外務審議官との懇談で、ウェレ博士は、野口英世アフリカ賞の賞金の一部を使い、アフリカのコミュニティ保健に関する雑誌「African Journal for Community Health & Development」を創刊したことを説明し、同外務審議官に創刊号を進呈しました。
また、ウェレ博士と小田部外務審議官は、保健システムの強化の重要性について議論しました。ウェレ博士は、より多くの資金がコミュニティ・レベルの保健システム改善のために振り向けられるべきであると述べました。更に、野口英世博士の精神を世界に広めていくため、努力を続けていくことが重要だと発言し、同外務審議官からも、日本政府として努力を続けていきたいと述べました。


ミリアム・ウェレ博士

「African Journal for Community Health & Development」 創刊号

野口英世アフリカ賞広報活動

野口英世アフリカ賞1周年記念写真パネル展

4月28日~5月3日、JICA地球ひろばで、野口英世アフリカ賞1周年を記念して、写真パネル展を開催しました。
同パネル展では、天皇皇后両陛下のご臨席の下で開催された第1回授賞式展の模様を中心に写真を展示し、また、改めて受賞者の両博士の功績を紹介しました。更に、野口英世アフリカ賞を紹介するDVDや、日本の対アフリカ支援を紹介するDVDも上映しました。
JICA地球ひろばは、日頃よりアフリカなど途上国支援に関心のある方が多く訪れる場所ですが、入り口正面のホールに展示した写真は、多くの来館者の興味を引き、改めて野口英世アフリカ賞を印象づけることになりました。


パネル展示

DVD上映

今後の予定

2010年2月に、本賞の第一回記念シンポジウムをガーナで開催することを計画しています。シンポジウムには、ウェレ博士、グリーンウッド博士にもご出席いただく予定です。野口英世博士が亡くなり、小泉元総理が本賞の設立を決意したガーナでシンポジウムを開催することにより、改めて本賞の理念、医学研究と医療活動の意義などについて、多くの方、特にアフリカの人々に知っていただきたいと考えております。

6月22日、野口英世アフリカ賞に多額の寄付をされた
植田勝典氏(日本エンタープライズ株式会社代表取締役
社長)に対する紺綬褒章の授与式が、
日本国際協力機構(JICA)で行われました。

受賞に際し、下記の通り、植田氏より、本ニュースレターのために寄稿をいただきました。

※紺綬褒章:
褒章条例(明治14年、太政官布告)に基づき、公益のため私財を寄付し功績顕著なる者に 天皇陛下より授与される。現在、公的機関や公益法人などへの500万円以上の寄付者が主な対象となっている。

 
紺綬褒章を受章された植田勝典氏(左)

この度は紺綬褒章の栄に浴し、身に余る光栄と感謝しております。今般は野口英世アフリカ賞にご寄付させていただいたことにより紺綬褒章をいただきましたが、実は私は紺綬褒章を受章させていただきますのは、これで三度目でございます。改めて、この度の身に余る受章に感謝申し上げたいと思います。
私は今で商売を始めてからちょうど十二年になります。この間、会社は三年半で新興市場に上場し、一昨年、東京証券取引所第二部に上場するなど、よく周りから順風満帆のように言われます。日々社長として、会社をどう切り盛りしていくか東奔西走、悩みながら経営しているのですが、多くの方から「会社は順調でいいですね。」などと声をかけられます。
私は商売を始めた十二年前、経営の経験もまるでない上に、お金もほとんど持ち合わせておりませんでした。ただ当時ありましたのは、自分一個はどうなったっていい。お金を稼いで儲けて、自分の生活は最低限にして本当に可能な限り、多くの施設や団体にお金を寄付しようという強い信念は持っておりました。
幸いにして今のところ、何かと会社は年々成長を続け、私はお給料をいただいております。私にとってご寄付させていただいていることは、今私が生活させていただいている感謝の気持ちを世の中すべてに対して素直に表現したいのと、私にとってご寄付をさせていただくことが生きる証しのように感じているからだと思います。また商売することの本当の意義は、世の中にお金をお返しすることだとも思っております。
人生で三度も紺綬褒章を受章するのは、本当に心から身に余る光栄ですし、逆に恐縮してしまう思いであります。ただ私は、これからも野口英世アフリカ賞基金をはじめ多くの団体に、私の可能な限りの私財をご寄付し続けて参りたいと存じております。
最後になりましたが、私や私が経営させていただいております会社を支えていただいております多くの方々に心から感謝申し上げ、受章の喜びとさせていただきたいと思います。
皆様、本当にありがとうございます。

植田 勝典 

 

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