第4回野口英世アフリカ賞授賞式 野口英世アフリカ賞委員会 黒川委員長による受賞者紹介

第4回野口英世アフリカ賞委員会 黒川委員長 報告

黒川委員長

TICAD御出席の各国首脳及び国際機関の長の皆様、御列席の皆様、
第四回野口英世アフリカ賞委員会を代表して、選考の概要と受賞者の業績についてご報告します。

昨年、全世界から寄せられた多数の推薦に基づき、まず、医学研究分野及び医療活動分野のそれぞれの推薦委員会が、候補を絞り込みました。
この結果を受け、本年3月、野口英世アフリカ賞委員会において、医学研究分野では、南アフリカ共和国に所在する南アフリカ・エイズ研究プログラム・センター(CAPRISA)所長のサリム・S・アブドゥル・カリム博士及び同研究所次長のカライシャ・アブドゥル・カリム博士のご夫妻が、また、医療活動分野では、カーターセンター主導の下でのアフリカ関係者とのパートナーシップによる国際的なキャンペーンであるギニア虫症撲滅プログラムが、それぞれ受賞者に最もふさわしいとの結論を得、総理に推挙し、本年6月、総理により受賞者が決定されました。今回の授賞は、医学研究分野では夫妻での共同受賞、医療活動分野では団体主導のプログラムの受賞となり、共同受賞や団体での受賞は今回が初めてとなります。

まず、カリム博士夫妻ですが、HIV/エイズの予防と治療開発研究に極めて重要な貢献をして来られた疫学研究者です。特に、アフリカで多く見られるHIV/結核の重複感染者への抗ウイルス療法(ART)の早期導入が有効であることを証明したこと、若年アフリカ女性のHIV感染の実態を見出し、HIV伝播リスクを低減させる予防アプローチを開発したことは、世界的に見ても大きな成果となりました。また、2002年に彼らが国際的な協力パートナーたちと設立したエイズ専門の研究機関はアフリカのエイズ研究の重要な拠点となっているほか、過去20年以上にわたり研究者の育成も行ってきました。
更に最近では、新型コロナウイルス感染症対策でも、南アフリカ政府保健省の大臣諮問委員会の中心メンバーとして重要な役割を果たされました。

つぎに、ギニア虫症撲滅プログラムの業績をご紹介します。
ギニア虫症は安全な飲料水がないことに起因する寄生虫感染症で、長い間、特に最も貧しい地域住民を苦しめてきた典型的な「顧みられない熱帯病(NTD)」です。その撲滅に特効薬はなく、汚染されていない飲料水の利用促進という、人々への啓蒙と行動変容を促す地域への介入が唯一の解決策です。その撲滅プログラムをアメリカ合衆国に本部を置くカーターセンターが1986年に主導して開始し、数多くの協力パートナーと共に長期にわたってアフリカのコミュニティーに関与してきました。これにより、ギニア虫症の症例件数は、2021年までに、年間推定350万件からわずか15件へと減少し、8千万人以上の人々の発症を回避することができました。このような素晴らしい成果により、ギニア虫症が、寄生虫感染症では歴史上初めて、またヒト疾患では天然痘に次いで二番目に地球上から根絶される可能性が出てきました。同プログラムは現在もアフリカ5か国で活動を継続しています。

最後に、野口英世アフリカ賞の選考に関わった全ての者を代表して、この二組の受賞者に対し、心よりお祝いを申し上げます。