アレックス・G・コウティーノ博士からの近況報告(第2回野口英世アフリカ賞医療活動分野受賞者)2019年

2015年時点での近況報告はこちら:野口英世アフリカ賞ニュースレター第11号

近況報告

アレックス・G・コウティーノ博士野口英世アフリカ賞受賞(2013年)以降2014年10月まで、ウガンダ・マケレレ大学感染症研究所(IDI)所長の任務を継続しました。IDIは10万人以上のHIV陽性者に対し、治療を受けることを支援するとともに、15万人以上の男性への包皮切除の実施を含む、包括的なHIV予防サービスを行いました。私が創始し、IDI所長を務める間指揮した特別プログラム「セイビング・マザーズ・ギビング・ライフ」(SMGL)では、実証済みの治療の拡充を人口70万人の県で支援し、妊産婦死亡率及び罹病率を下げました。2013年から2018年の5年間に、このプログラムによって妊産婦死亡率を60%下げることができました。


2014年から2015年にかけては、3つの任務を遂行しました。
  • a) Accordia Global Healthを通じ、ナイジェリアの12の大学を対象に、同国のエボラ出血熱流行のファースト・レスポンダー養成と再流行予防のための能力開発プログラムを実施しました。このプログラムでは、最良のエボラ対応の理論的・実践的スキルについて複数の幹部の研修も実施しました。
  • b) Accordia Global Healthを通じ、マラウィ大学との協力により、幼児期の発育における治療介入について研究を行うマラウィ・チャイルド・ウェルネス・センターの早期設立を指揮しました。
  • c) カリフォルニア大学サンフランシスコ校グローバルヘルス学科との協力により早産の予防・適切な管理に取り組むイニシアチブ(PTBi)がケ ニア、ウガンダ、ルワンダで実施され、私も携わりました。現在も、同イニシアチブの諮問委員会メンバーを務めています。
2015年から2018年の約3年間、現代医学の恩恵を最も必要とする人々に広めることを目指す非営利組織パートナーズ・イン・ヘルスのルワンダ事務所長を務めました。ルワンダ政府との円滑な連携の下、ルワンダ国内3県の100万人に対し、より良い医療を提供し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成するための取り組みを行いました。この一環で、ルワンダ政府を支援し、WHOの解析的フレームワークであるビルディング・ブロック(building blocks)や安定したプライマリー・ヘルスケア・システム、UHCに基づく必須のサービスを提供するための県レベルの病院への紹介システムが導入されました。また、以下をはじめとする先駆的な専門サービスを提供し、ルワンダ政府による専門サービスの計画およびスケールアップを継続して支援しました。
  • a) ルワンダにおける唯一のがん科専門サービス。
  • b) 早産児、未熟児のための3つの新生児集中治療室のネットワーク。施設は新生児医療の訓練にも利用されています。
  • c) 糖尿病、高血圧症、心臓病、喘息に特化した、全国規模の非感染性疾患管理ネットワーク。
  • d) コミュニティに根差したメンタルヘルス・プログラム。3県100万人をカバーするまでにスケールアップされ、軽度~重度の精神疾患の治療を分散化しました。
このほかにも、2014年から2018年の間、私は引き続き複数のグローバルヘルスの指導的役割を担い、取り組みを推進してきました。
  • a) 2013年にアフリカ人として初めて国際エイズワクチン推進構想(IAVI)の委員長として選出され、2016年までその任務を遂行しました。
  • b) かつてアフリカ人として初の委員長を務めた抗微生物薬国際パートナーシップ(IPM)の委員に再び加わりました。現在、女性用HIV予防策の導入前の最終段階にあります。
  • c) 引き続き、WHOマラリア撲滅戦略諮問委員会 の委員として活動しています。
  • d) ルワンダのグローバル・ヘルス・エクイティ大学(University of Global Health Equity)の評議委員と上級講師を務めています。
  • e)  民間非営利団体あしなが育英会賢人達人会(諮問機関)の委員を務め、あしなが育英会に対してアフリカの遺児への継続的な支援についてアドバイスを提供しています。
  • f) 最近では、米国国際開発庁(USAID)の資金で運営されているグローバル・ヘルス・フェローシップ・プログラムの技術諮問グループ に加わりました。世界中の将来のグローバル・ヘルス・リーダーのメンターとなっています。
野口英世アフリカ賞受賞後の受賞は次のとおりです:
  • ウガンダ国家英雄独立勲章(2013年)
  • チューリッヒ大学名誉博士号(2015年)

若い人たちに向けて、生産的なキャリアについてのメッセージ

子どもの頃、私は部屋が2つのみでトイレは屋外にあるような小さな家に住んでおり、慎ましい生活を送っていました。しかし、私の母は可能な限り最高の教育を私たちに受けさせてくれました。また、独学でも一生学んでいけるよう、常に好奇心をもって学ぶことの重要性を教えてくれました。そのおかげで、私は裕福でなかった過去とは異なる未来を築き、国際社会に貢献し、世界を大きく動かす人たちと肩を並べるようになりました。ですから、過去に縛られるのではなく、より良い未来を築くために知識と経験を使いましょう。

私はいつも医師になることを夢見ていました。私はウガンダにあるジンジャ病院の敷地内で育ったのですが、そこで働く医師や看護師たちに憧れたものです。私は、医師になるのに必要となる科目は特にしっかりと勉強するようにし、医学校に入り、そして医師になりました。ですから皆さんも夢を持ち、それを追いかけましょう。自分が夢中になり、大好きになれるものが、最も得意とし、なおかつ幸せになれる職業なのです。

キャリアを積むにつれ、私の仕事は患者個人を直接治療することから、医師と看護師からなる大きなチームを率いて指導し、最終的には100万人を超える人々に治療を届けることへと変わっていきました。これには、リーダーシップ、マネジメント、資金調達等、新たなスキルが求められました。つまり学びには終わりがありません。様々な方法で人に貢献できるよう、新しい異なるスキルを学んでいく姿勢を持ちましょう。

私自身の出自から、また、貧しい患者を治療する際に彼らの痛みや苦しみを見てきたことから、私は常に誰もが無料で受診できる場所で働いてきました。これを現在ではユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)と呼んでいます。私が最も満足感を覚えるのは、患者を癒すことができたときであり金銭を得たときではありませんが、自分の哲学と情熱を貫くことで大きな成功を達成することができました。自らの哲学に従って生きるようにしましょう。そうすれば、最後には必ず報われます。

私の35年間のキャリアの中で達成してきたことを成し遂げるには、情熱的で勤勉な人々からなるチームを築いて指揮し、彼らが団結して同じビジョンとミッションを成し遂げ、そして世界を人々にとってより良いものにしていくことが必要でした。そのため、医師としてスタートした私でしたが、このようなチームを築いて率いていくために高度な管理能力が必要となりました。このような管理能力、指導力は若いうちからでも学べるものですから、若い人たちには、スポーツ、社会活動、コミュニティでのボランティア活動等を通じて、これらのスキルを培うようにして欲しいと思います。自分に投資すれば、後でそれが報われます。

私は医療とヘルスケアの分野でキャリアを築いてきましたが、これらの原則は皆さんがどの分野を選んだとしても当てはまるものです。


患者を訪ね診療するコウティーノ博士


ルワンダでの癌治療プログラム


2014年HIV予防研究会議(HIVR4P)での基調講演


あしなが育英会奨学生とウガンダの自宅で