アフリカの保健状態を変える機会・ミリアム・ウェレ博士

アフリカの保健状態を変える機会
ミリアム・ウェレ博士
2008年野口英世アフリカ賞受賞者:医療活動部門
受賞記念講演会
国連大学(東京)にて
2008年5月28日


アフリカの保健状態を変える機会

はじめに
 今こうして、夫ハンフリーズをはじめ、ケニアからの仲間たちとともにこの場に立って、日立本国政府からいただいた2008年野口英世アフリカ賞医療活動部門の受賞者として、受賞記念講演をさせていただけることを、大変光栄に思います。また、もう一人の受賞者であるブライアン・グリーンウッドさん、そして奥様のアリスさんとこの場にいられることを、本当に嬉しく思っております。医療部門で何十年もの間一緒に取り組んできた仲間とともに、アフリカと私たちの取組みにこのような栄誉をくださった日本に感謝します。2007年、アフリカ首脳会議において、アフリカ各国の保健相が承認したアフリカ保健戦略が採択されました。2008年アフリカ開発会議(TICAD)と第1回野口英世アフリカ賞の表彰式を関連付け、日本は、アフリカ開発における保健部門の重要性を強調しました。アフリカでは、大きな疾病負担が、生産性の低下やすでに深刻な不足に陥っている資源の消費につながっています。保健がアフリカ開発の指針であり、開発の取組みの中で優先すべき部門であることから、このように保健部門に注目していただけて感謝いたします。TICADを通じた日本とアフリカの特別な関係を歓迎いたします。日本は、開発の協議のために、アフリカ首脳会議を招いてくださった初めての国です。この関係が一層強まり、両者にとっての利益となることを願っています。

1. 主要な保健問題とその影響
1.1.
保健研究による証拠と政策/慣行を関連付ける必要性
 アフリカの保健状態を変える機会となるかは、証拠を応用し、野口英世博士のように粘り強く取り組めるかに大きく依存しています。1990年代、私たちは、東アフリカにおいて、何年も前から認識されていた問題に対し体系的な取組みを開始しました。その問題とは、保健研究によって得られた証拠が、保健政策や慣行に活かされることがほとんどないという事実です。また、政策決定者が研究者に質問する機会がないため、研究者がその疑問点に対処することもできないという問題も認識されていました。そのため、下表に示すように、保健研究者と政策決定者/専門家の間のコミュニケーションは皆無でした。

ウェレ博士講演使用画像

 東アフリカの保健研究者と政策決定者は、カナダの国際開発研究センター(IDRC)による経済的支援を受け、1995年より、このギャップを埋める方法について、国・地域レベルの協議を開始しました。これらの協議の結果、研究結果が国民の保健の質にほとんど影響を与えていないという問題が浮き彫りになりました。さらに、証拠の利用を試みたとしても、その実施と資金調達において粘り強さが足りないことがわかりました。このような現実が、現在のアフリカにはびこる大きな疾病負担の原因となっていたのです。協議の結果、アルーシャにある東アフリカ共同体本部を本拠地とする機関として、東アフリカ共同体地域保健政策イニシアチブ(REACH-政策イニシアチブ)が設立されました。各国の研究機関、例えばケニアのKEMRIなどには、REACH-政策イニシアチブ機関の運営に、国のインプットが生かされるよう調整する責任があります。私たちは、次の図に示すように、この2つの流れの間に橋がかけられ、ポジティブな成果がもたらされることを期待しています。

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1.2.アフリカにおける様々な生態地帯/気候帯
 南北に広がるアフリカでは、その地理が保健に影響を及ぼしています。チュニジアの最北端は北緯37度21分に位置し、南アフリカの最南端は南緯34度51分15秒に位置します。そのためアフリカには、熱帯や温帯を含む多様な気候条件が存在し、これが保健に影響を及ぼしています。北側は地中海に面しており欧州に近いため、一部の気候条件は欧州と共通しています。この北部は、地理的には中東にも近いです。そのため北アフリカ諸国は、世界の中東地域として一緒にグループ分けされることもあります。 

1.3アフリカでは貧困病による高い疾病負担が優勢
 サハラ以南のアフリカには、世界人口の約10%が暮らしています。しかし、世界の疾病負担の25%以上が、この地域に存在しています。

アフリカの疾病負担の大半は、貧困病に分類される疾病に起因するものです。貧困病には、結核、マラリアやHIV/エイズのほか、ポリオ、はしか、百日咳、下痢性疾患、寄生虫性疾患、栄養不良など、予防や治療が可能な小児疾患も含まれます。これらはすべて貧困に関連する疾病で、低所得国における高い死亡率の原因となっています。これらの伝染性の貧困病は、一般的に次の5つのカテゴリーに分類されます。

  • 寄生虫性感染症
  • 呼吸器感染症
  • 周産期・母体状態
  • 栄養障害
  • 熱帯病

(出典: Sievens, Philip Diseases of poverty and the 10/90 Gap. International Policy Network; 2004 pg.5)

 貧困病の最大の犠牲者は、5歳未満の子どもと妊婦です。その結果、これらのグループの死亡率が高くなっています。これについては後で述べたいと思います。アフリカにおけるマラリア(貧困病の一つ)の優勢は、図からも読み取ることができます。私の同僚が、この問題に取り組んでいます。

 欧州や中東との近接性を示すアフリカ地図

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 サハラ以南のアフリカ

 北アフリカの南には「ベルト」があります。これが、サハラ砂漠です。サハラ砂漠は非常に乾燥していて埃っぽいため、生命を支えるものはほとんどありません。それでも、そこに住んでいる人はいます。そのサハラ砂漠以南のアフリカ大陸のことを、サハラ以南のアフリカと呼んでいます。そこには、アフリカの大多数である黒人が住んでいます。今日の講演では、このサハラ以南のアフリカにおける保健・衛生状態について取り上げたいと思います。

 

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 a) マラリア感染リスクの世界分布(2003年)

 
出展 WHO/UNICEF World Malaria Report 2005 - http://www.rbm.who.int/wmr2005/index.html

 

b) 以下のグラフや地図から分かるように、HIV/エイズも優勢です。

ウェレ博士講演使用画像 

 

 WHO, The Millenium Development Goals Report 2006.

  15歳から49歳の全人口に対するHIV患者の割合を国土の大きさとして示した世界地図の中のアフリカ地図

 

 出展: World Mapper http://www.worldmapper.org/display.php?selected=227

 膨れあがったアフリカ地図の様子から、アフリカにかかるHIV/エイズの負担の大きさを知ることができます。

c) 人糞管理不足に起因する疾病

 1970年に私が医学部で学んでいたころに、国立委託病院であるケニヤッタ国立病院への入院の主な理由となっている疾病を突き止めるため、調査を行いました。その結果、驚いたことに、入院の70%超が、人糞の適切な処理が行われていないことに起因するものだということが分かりました。これらの疾病のほとんどが、貧困病の中でも寄生虫性感染症に分類されるものだったのです。

 1973年に医師の資格を取得し、ナイロビのケニヤッタ国立病院で働いた後も、入院における糞口感染の重要な役割について調査を続けました。1974年にはナイロビ大学医学部(地域保健学科)の教員となり、トイレやトイレが保健・衛生状態において果たす重要な役割について話す機会を得ました。多くの先輩医師が、このことを、医学部で取り上げるには「世俗的なテーマ」と考えていました。彼らは、「重要な学術的問題」の議論に集中したかったのです。そのため彼らは、私のことを揶揄して、便所教授というあだ名をつけました。私が実際に教授の立場を手にするずいぶん前の話です。私を侮辱するためのあだ名だったようですが、それを侮辱と感じたことはありませんでした。人糞管理を適切に行うことが、我が国の健康開発に重要な役割を果たすことを考慮すれば、そのような呼び名は、専門家としてこの上ない名誉だと思っていましたし、今でもそう思っています。「学術的」か「世俗的」かは、どうでもいいことなのです。

 適切な人糞管理を確立した上で、他の保健推進・疾病予防活動に関与させる。これにより、保健推進を図る上で住民の参加が重要であることは、最初から分かりきっていました。それでも、多くの開発事業で地域住民は置き去りにされていたので、彼らを巻き込む方法が分かりませんでした。そこで、1976年から1982年にかけて、地域社会という観点から、住民自身の健康管理への参加についての研究を実施しました。この研究が終わるまでの間に、人糞管理が改善され、有病率は下がっていきました。1982年にはUNICEFから拙著『ORGANISATION AND MANAGEMENT OF COMMUITY-BASED HEALTH CARE』が出版され、以降増刷され続けています。

1.4サハラ以南のアフリカにおける高い疾病負担がもたらしたもの
a) アフリカの母親は世界のどこよりも死亡率が高いです
 サハラ以南のアフリカでは、女性の16人に1人が、母体死亡で死亡するリスクにさらされています。これに対し、世界の先進国では2800人に1人です。社会経済的境遇が、この差の要因となっています。次の表に、世界の地域別母体死亡リスクの比較を示しました。


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 特にアフリカでは、母親の死は、家族にとっても地域社会にとっても非常に大きな悲劇です。母親を亡くした子どもたちは、ほとんど生きていくことができません。生きていけたとしても、学校での成績や人生は危ういものになりがちです。妻が死ねば、夫も「脱線」しがちになります。そのため、母体死亡率の高さは、アフリカの開発努力を妨げています。.

b) 1980年以降、アフリカの児童死亡率の減少は、他地域の児童死亡率の減少に追いついていません。

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 サハラ以南のアフリカには、世界人口の10%が暮らしているに過ぎませんが、児童死亡の30%超が同地域に存在しています。児童死亡率の高さが家族計画の拒絶を招き、これがさらに、母体の健康を危うくしています。

c) HIV/エイズに起因する課題がアフリカの寿命を縮めています。

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皮肉なことに、先進国の寿命は80歳に向けて少しずつ延びているのに、アフリカの寿命は30歳に向けて縮んでいます。

2. アフリカの保健状態改善の障害物
2.1社会政治的不安定
 アフリカ人が世界の他地域の人からよく聞かれるのが、政治的独立から50年近く経つのに、なぜいまだに政情不安があったり発展の実績が思わしくなかったりするのかという質問です。この質問は、これから挙げる点を考慮していません。
a.1400年代前半から1800年代後半にかけて(500年間)、大西洋を挟んだ残忍で大規模な奴隷貿易が続いたこと。これにより大陸がいまだにまとまらず、落ち着かない状態が続いています。アフリカは働き盛りの住民数百万人を失いました。さらに、奴隷を捕まえる方法も残忍極まりなかったのです。例えば、

  • 村を焼き払い、発生した混乱の中で奴隷を捕まえました。
  • 結婚式やその他の喜ばしい出来事を奇襲し、奴隷を捕まえました。
  • 一部を奴隷狩りに仕立て、隣人同士を敵対させました。
  • 人々の尊厳を支配下に置き、民族の誇りを抹消するための手段として、家族の目の前で女性をレイプしました。

 何十年という単位ではなく、何百年もこれが続いたことを忘れてはなりません。深刻な蛮行、不安感、疑念が、関係の中に定着していきました。

b.1884年から1994年の植民地支配と人種隔離政策。蛮行、搾取、無秩序が、さらに100年間続きました。欧州の入植者達は世界の他の地域にも植民地を持っていましたが、アフリカでの暴虐的な植民地化が最も残忍であったという証拠が残っています。これは恐らく、黒人を人間以下とする差別的視点から生じたものだと考えられます。そのような差別的視点は、奴隷貿易中に、入植者の「クリスチャン」としての良心を鎮めるために定着していったものです。

 歴史には、長い影があります。600年以上も続いたこのような期間によって、アフリカ人の無力化は社会的に継承され、今でもアフリカに影響を及ぼしています。

c.アフリカ諸国が独立を手にした頃と時を同じくして発生した冷戦の力学。これが、冷戦の各陣営にとって、アフリカ人に対する独裁者を定着させる期間となりました。これらの独裁者は、かつての支配者と同じく、アフリカ人に対する抑圧と破壊行為、不適切な国家資源管理を続けました。むしろ、かつてよりも残忍さが勝るということもあったのです。

 私は恨みを晴らすためにこのような話をしているのではありません。ただ、アフリカの現在に注目するときに、これらの残酷な現実を心に留めておく必要があることを指摘したいのです。忘れてはならないこと。それは、アフリカにとって独立とは、開発を前進させるための平坦な競技場ではなかったということです。それはむしろ、600年という深さの穴から這い上がるという問題でしたし、そのことは今でも変わっていません。慈悲の心を持ってポジティブにアフリカを見るとき、この考えが役に立つでしょう。TICAD IVのパンフレットに、VIBRANT CONTINENT(活気ある大陸)というタイトルが付けられ、かわいいアフリカの子どもが載っていたことには、とても勇気づけられました。数年前、有名な国際雑誌のトップ記事で「THE HOPELESS CONTINENT」(望みなき大陸)と書かれたこととは大違いです。歴史が教えてくれるように、ずっと続く社会の大混乱と不安定からアフリカが脱却する必要があることは、疑いようもない事実です。それを、アフリカの真の友人とともに、実現できることを願っています。

2.2 絶対的な貧困の中で暮らすアフリカ
 絶対的な貧困の中で暮らすことは、人々を圧迫し、憂鬱にさせ、無関心をもたらし、生きる気力を失わせます。さらに、先ほども指摘したように、高い貧困レベルは、貧困病を守ることにつながります。前述した歴史と現在の世界の力学(WTOドーハラウンド交渉など)を考慮すれば、絶対的な貧困から脱却する方法を見つけることは今でも難しいでしょう。

それでも、人道的な精神が世界に広まることを私は信じています。少なくとも、国際関係における陰の実力者の中には、人道的な人が何人かはいるはずだと信じたいのです。さもなければ、大人数のグループに健康に生きるという基本的人権さえも与えられないような状況で、人権の会議など開いても何の意味があるのでしょう。

 次の図には、3つのレベルの人間開発指数を色別に示しました。アフリカ諸国の大半が低所得指数グループに属しており、貧困レベルが高いことを意味しています。

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2.3 圧倒される医療従事者たち
 忘れられがちですが、アフリカの医療従事者自身も、絶対的な貧困の中にあり、絶対的な貧困による抑圧の影響を受けています。その稼ぎは自身や近親だけのためのものではありません。なぜなら、他にも多くの人を養っているからです。さらに、低所得国のほとんどにおいて、医療機器も医薬品も不足していることは多々あります。医療を求めてやって来る患者の数が多いほど、このことが辛く感じられます。

 アフリカ以外で働く機会を得たアフリカの医療従事者の多くがアフリカを離れることは、驚くべきことではないでしょう。アフリカが医療従事者不足による深刻な危機に瀕していることは、まぎれもない事実です。医療従事者不足による危機にあると分類されている世界57カ国のうち、36カ国はアフリカの国です(Global Health Workforce Alliance & WHO)。

 幸いなことに、アフリカに残る者もいます。しかし、これらの課題に直面して、創造的で楽天的になることは、多くの場合、難しいでしょう。しかも、創造的な見方ができなければ、解決策を見つけることは実質的に不可能なのです。

3. アフリカの保健状態の転換に参加できる機会
3.1成果を目の当たりにすることができます

  • 家をきれいにした!
  • 川/保護された泉をきれいにした!
  • トイレを建てて使用したら有病率が下がった!
  • HIV感染率が下がった!
  • エイズ患者を大切にした!
  • はつらつとした健康な子どもたち!
  • 老人が緩和ケアを受けている! など

 保健の課題を挙げて対処してください。すると、すぐに成果が目にすることができます。このことが、常に私を突き動かしています。家庭のトイレだけでなく、学校、礼拝所、市場における公衆トイレの建設や使用に再び注目を集めるためのパートナーを私は探しています。アフリカの保健状態を良い方向に変えるという興奮に参加する。私たちは、このことに関心を持っている人達を求めています。

3.2効率や効果を高めることに参加することもできます
 アフリカに住む多くの人が、生きるための計画すら持たないような環境で育っています。計画する手段もなければ計画対象とするような資源もないときに、どうすれば計画性を身に付けることができるのでしょう。ただその日を生きて、幸運や神を待つだけ。だから私たちは、一緒に働いてくれる人道的な保健管理者を必死になって探しています。抑圧された過去を持たず、人道的な方法で創造的に考えられる人材を。

 私は、日本人の専門家と交流する中で、日本の皆さんが綿密な計画者であると同時に、非常に優しいことに気が付きました。ぜひ、一緒に働いていただきたい。なぜなら、そうすることで、私たちの若い専門家に希望を与えることができるのです。

3.3研究もアウトドアも楽しめます。
 医学部にいたころ、解剖学も生物化学も楽しく学びました。それでも、どちらのキャリアにも進むことはありませんでした。なぜなら、どちらも屋内にこもって仕事をする必要があるからです。選ぶことができるなら、太陽の下で働きたいのです!屋外での研究を含むオペレーションズリサーチという分野を発見できたことも嬉しかったです。米国のジョンホプキンス大学で行った公衆衛生の研究では、フィールドワークがれっきとした研究になり得ることを知ることができました。ぜひ、フィールドワークやオペレーションズリサーチを通じて児童死亡率および母体死亡率を下げる有効かつ効率的な方法を確立する手助けをしてください。

3.4研究所で研究することもできます!
 アフリカ全域の研究所で、多くの若手専門家らが素晴らしい研究を行っていることを知っています。ケニアのKEMRIやガーナのNOGUCHIなどの研究所で、そのような研究が行われています。研究所で働く機会は豊富にあります。

3.5若者達と働いてください
 ぜひ、若者達と一緒に働いて、彼らの生活とその地域社会の生活に変化をもたらす手助けをしてください。1995年、私と夫は、保健や関連事項に若者達と取り組むスポンサー、UZIMA基金を支援しました。少ない投資で、多くを得ることができます。ぜひ、一緒に働いてください。



3.6アフリカの展望を変えるために力を貸してください!
 たとえ人からそう言われようと、アフリカの黒人は「絶望状態」ではありません。国際的な力学を舞台に増えている、アフリカを貧困に縛り付けている罠を解く方法に、私たちと一緒に取り組みませんか。アフリカには、アフリカ以外の賛同者も必要なのです。

3.7世界を誰にとってもより良い場所にするために力を貸してください!

これが国連大学でよかった! もし国連大学が日本になかったら。

 国連は、人間性を保護するために設立されました。戦争を忘れ、世界を平和に向けて進めるために。国連のコミュニティ精神を弱体化させてはなりません。私たちは、ますます国連を必要としているのですから。私たちは、国連を利用して、もっと公平な世界を確立しなければなりません。そこには、取引やその他の分野における公平な競技場があり、弱き者はくじかれるのでなく、日本の桜の木のように、花を咲かせるための支援が受けられます。京都の精神で、環境を保護する必要があります。子どもたち、そしてその子どもたちが、元気に育つ。そんな世界を創る必要があります。さあ! 一丸となりましょう。

誰かを笑顔にできたなら、それは、素晴らしいことだと思いませんか。

マラリアで瀕死の子どもが、治療のあとで目を開けて、食べものを欲してくれたなら。

閉塞性分娩から母親を救い、子どもたちが孤児にならずに済んだなら。両親が、HIV/エイズにならずに済んだなら。

HIV/エイズで希望を失っていた目に、あなたが手を差し伸べることで、希望の光が戻るなら。

人種、民族、性別などの位置付けで隅に追いやられていた人々が、世界は自分の物だという自信を持って、立ち上がることができたなら。

手を差し伸べた数百万の若者を、救うことができたなら。

• ポリオによる身体障害から

• はしかによる知的障害から

この世界の仲間の魂のために、明るい未来への扉を開けることができたなら

 開発業務に足りないもの。それは慈悲の心です。これは特に、保健部門において必要なものです。綿密な計画と、仕事への綿密な姿勢。この日本の伝統を、慈悲深い関係の中で発揮すれば、間違った方向に進むことはありません。世界を抑圧するものなどないのです。

 慈悲深く行動すれば、有効的かつ効率的になれる。私はそう信じています。そう、私たちにはできるのです!

 アフリカをはじめ、必要とされる全ての場所で、保健を発展の指針としましょう。

 こう言われることがあります。アフリカ人がよく祈るのは、何もないからだと。でも、これだけは約束します。野口英世アフリカ賞の賞金をいただいた後でも、私は祈ることをやめません。だから、私の大好きな祈りの言葉の、冒頭の一説を引用して、このプレゼンテーションの終わりとさせてください。


ああ、主よ、
我をして御身の平和の道具とならしめ給え

我をして憎しみあるところに、
愛をもたらしめ給え

争いあるところに
許しを

疑いあるところに
信仰を

絶望あるところに
希望を

闇あるところに
光をもたらしめ給え

悲しみあるところに
喜びを!
(聖フランチェスコの祈りから引用)

 ご清聴、まことにありがとうございました。皆さんが、私と手を取り合って、アフリカ大陸を慈悲の心で包み、一緒に、希望の未来へと歩みを進めてくれる。今日は、そんな実感を得ることができました。アフリカの私たちからも、慈悲の心と友情を持って、皆さんに手を差し伸べたいと思います。

 国連大学という素晴らしい機関に、今日こうして集まってくれたすべての人たちに、神のご加護があらんことを。ありがとうございました。

ママ・ミリアム