第一回野口英世アフリカ賞授賞式 受賞者挨拶 ミリアム・ウェレ博士第1回野口英世アフリカ賞授賞式及び記念晩餐会

 天皇、皇后両陛下、福田総理閣下、アフリカ諸国の元首・首脳閣下、野口英世博士の関係者の方々、日本国民の皆様、そして私の夫ハンフリーズ・ウエレ、ご列席の賓客の皆様、最初に、私の祖国ケニアの元首であるムワイ・キバキ大統領から既にご列席の皆様にご挨拶を申し上げたものと思いますが、この場をお借りし、私からもケニアとアフリカの女性を代表しまして、皆様にご挨拶申し上げます。ジャンボ!

次に、私どもはアフリカにおいて、日本が野口英世アフリカ賞を創設したことに喜びで心が浮き立ちました。特にこの賞が大きな賞金を伴っていることは、ありがたいことです。貧しい人々の中で仕事をしていると、賞の資金的要素は、仕事を継続する上で大きな助けとなります。さらに賞金に対し、日本国政府の貢献に加え、財界、さらに日本の学校の子供からも寄附が寄せられていることを知り、感激しました。これは、この賞を一層価値のあるものにしており、私は野口英世アフリカ賞医療活動部門の受賞者となったことを大きな名誉と感じております。日本の政府そして国民の皆様に厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございます。

また私は、野口英世アフリカ賞が、アフリカの医療保健サービスを万人がアクセス可能な健康管理サービスに拡大する必要性を強く認識していることを喜ばしく思います。

病気になり家族を扶養できない、あるいは基礎医療ケアへのアクセスを持たないため仕事ができないことほど気の滅入ることはありません。保健サービスへのアクセスを持たないため自分の子供が死ぬのをどうすることもできずに見ることほど辛いことはありません。しかし、こうしたことが、アフリカのどこかで毎日起きているのです。

したがって、アフリカの全てのコミュニティに保健サービスをもたらすことは限りない重要性を持つのです。この点の重要性を認め、アフリカにおける医療保健サービスの拡大という課題を授賞対象に含めた日本に対し、感謝申し上げます。

さらに、アフリカにおける保健の改善を、アフリカとのパートナーシップを進める際の優先課題に位置づけた日本に対し、感謝申し上げます。アフリカの人々の病の苦しみを減らし、保健を改善することは、アフリカが富を創造し、経済社会状況を全体として改善するために非常に重要です。貧困の中で生きる人、繰り返し病気になる人はこうした状況を改善するために十分な生産性が上げられません。大量の大西洋奴隷貿易はアフリカ大陸を500年近くにわたり破壊し、その後さらに100年(1884~1994)にわたり現地の無能力化をもたらす植民地主義と、残忍なアパルトヘイトが続きました。こうしたアフリカの歴史が、貧困と現在から将来に向けて長い影を投げかけるアフリカの無能力化の基底を形作りました。健康な人間、富の創造、そして社会の安定が、我々アフリカ人の殆どが味わっている尊厳の欠如から脱出する必要条件です。この種のものでは最初の、アフリカ元首とのフォーラムを創設した日本に感謝します。我々アフリカ人は、このフォーフムを通じて、アフリカ、日本そして世界にとって好ましい成果が生まれるものと信じます。

最後に、野口英世博士、彼の家族、彼を育てたコミュニティ、そして彼の祖国日本に対し、敬意を表します。私が読んだ野口博士の伝記によれば、彼は家族、コミュニティ、そして祖国を愛しました。これらが、彼が後に国際社会で活躍する際の踏み台となりました。野口博士は自分の一族、種族、人種のみの仕事をするために生き、死んだ訳ではありませんでした。80年前、野口博士は、恵まれぬ人々に新たな知識の果実をどうもたらすか苦闘する中、アフリカで亡くなりました。
野口英世アフリカ賞を通じ、我々は、日本の政府及び国民が野口博士の生き方と仕事の精神を継承していきたいとの心意気を感じます。

野口英世アフリカ賞を通じ、我々アフリカ人は、野口博士の犠牲的人生の挑戦を受けています。特権的地位を有するあらゆる社会層のアフリカの職業人と指導者が、アフリカの多くのコミュニティが病と死に苛まれている中で度外れて賛沢な人生を送ることは恥ずべきことだと感じるようになって欲しいものです。

野口博士の精神が、世界の人々を一層近づけ、人々が共通の善のため仕事をするようになることを祈ります。この精神が、TICAD2008の小冊子に提示されている「元気なアフリカを目指して」という理念で、我々の心を満たして欲しいものです。我々受賞者は野口精神に恥じないよう努力します。

両陛下、ご列席の皆様、私は、この賞を、アフリカと世界の全てのコミュニティに保健サービスを拡大することに献身している人々の名において、野口英世博士が示した献身の精神と喜びの念を以て、謹んでお受けします。

ご静聴ありがとうございました。

 


診察中のウェレ博士
(1977年)


ウジマ財団事務所の開設
(1996年)


南アフリカにて、伝統的な治療者と
(2006年)


Amref(アフリカ医療研究財団)の
ストリートチルドレンを支援する活動
(2007年)