鹿野消費者委員会委員長 記者会見

2025年9月19日
消費者委員会

日時

2025年9月19日(金)18:00~18:27

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

○鹿野委員長 9月1日に第9次消費者委員会が発足し、本日、第9次としての初回の本会議が開催されました。

本会議において、委員の皆様の互選により、私、鹿野菜穂子が委員長を拝命することになりました。第8次消費者委員会に引き続き、委員長を務めることになりましたので、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

高齢化やデジタル化の進展など、消費者を取り巻く環境は急速に変化し、消費者問題は、一層複雑化、多様化しております。

このような中で、政府の消費者行政全般の監視役である消費者委員会の委員長としての重責を担うことに、改めて身の引き締まる思いでおります。

私自身の自己紹介は、先ほどの本会議でも行いましたけれども、もともと民法を研究しておりまして、民法と消費者法について長年大学で教育、研究に取り組んでまいりました。

第9次における課題としては、かなり多様なものがございますが、これについては、ちょうど先日、8月27日に、「次期消費者委員会への移行に当たっての留意事項」という形で取りまとめたものに、基本的には記載されているところでございます。

つまり、第1にデジタル化・AIへの対応、第2に地方消費者行政の充実・強化、第3に消費者法制度の在り方、第4に食品表示の在り方、そして第5に、第5期消費者基本計画の検証・評価・監視ということなどが、主要な当面の課題として引き継がれているところでございます。私としても、これらの課題にしっかりと取り組んでまいりたいと思っておるところです。

それから、先ほど、第9次の委員の皆様に自己紹介をいただきました。御承知のとおり、第9次の委員の多くは、第8次からの継続ということでございまして、第8次の委員になったときにも、各方面の専門性を備えた委員が揃っていらっしゃるという印象を受けたのですが、その後、第8次の2年間において、その各専門の立場から非常に有益な御意見等をいただいてきたと思っているところです。

残念ながら、第8次の委員の中から星野委員は、第8次が2期目でしたので、交代となられましたが、今回新たに善如委員に御就任をいただきました。

善如委員は、私は初対面ということになりますけれども、先ほど、自己紹介をしていただきまして、経済学そして特にプラットフォームに関する専門家でいらっしゃるということであります。今までの消費者委員会においても、デジタルプラットフォームの位置付けや、消費者の利益との関わりにおいて、デジタルプラットフォームがどのような役割を果たすべきかということについても、いろいろな局面において議論をしてきたところでございます。

そのような中で、デジタルプラットフォームについて専門性を有するところの善如委員を、今回新たに委員としてお迎えできたということは、とてもありがたいことだと思っているところでございます。

消費者委員会がその機能を十分に発揮できるよう、委員の皆様とともに努めてまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

冒頭発言は以上とさせていただきます。

質疑応答

(問) 新たに委員をメンバーに迎えられて、期待されることというのは何かありますか。

(答) ありがとうございます。

先ほども申しましたが、善如委員には非常に期待しております。私自身も一人の研究者として、科研費の補助などを受けながら、デジタルプラットフォームについての研究をしてきたところもございますが、善如委員は、法律という観点ではなく、別の角度からデジタルプラットフォームについて御研究をしてこられたということでございます。やはり消費者政策を考える上では、特に新しい問題については、法律論だけで済むものではございませんで、より幅広い視野を持って問題に取り組む必要があると認識しております。そういう意味で、プラットフォームについて専門家である善如委員に、法律とはまた別の観点から、そして、もっと広い観点から、御助言、御意見をいただけるものと思って期待しているところでございます。

(問) 話が重なる部分もありますが、そのデジタルプラットフォーム上の問題というのは、たくさん深刻なものが出てきています。

そうした中で、今回、9次の中で新たに取り組もうとしていることなど、具体的に考えがありましたら、お聞かせください。

(答) どれを第9次の消費者委員会において、特に具体的な課題として掲げるかということは、第9次が始まったばかりですので、未だ決まっておらず、この後、委員の間で意見交換をして決めていくことになるかと思います。

御存じのとおり、デジタルプラットフォームをめぐる問題は多様です。デジタルプラットフォームを介して、様々な取引が行われていたり、あるいはコミュニケーションが行われていたり、あるいは広告が発信されていたりということがあるわけですが、それを悪用する事業者がいるときに、消費者被害が生じてくるということがあります。また、デジタルプラットフォームにも大小いろいろなものがありますが、場合によっては、プラットフォーム自体が、悪質商法に何らかの形で加担するとまで言っていいかどうか分かりませんけれども、悪質商法を助長する行動を取るようなプラットフォームもあって、実際裁判でも、その責任が問われて、責任が認められたケースもあるところです。

私は法律家でありますし、特に民事法を中心に研究とかをしてきた者でございますから、被害が生じたときの被害救済の一環として、プラットフォームにも一定の条件のもとで、何らかの責任を負ってもらうというところに関心が行きがちです。もちろんそれは重要だと考えているのですが、さらに、より広く、そういうトラブルが起きないように、未然に予防する手段としても、プラットフォームに何らかの役割を果たしてもらえないのかということとか、あるいは何らかの連携がいろいろな組織との間でできないのかということも含めて、プラットフォームの問題については、真剣に取り組みたいと思っているところです。

レスキュー商法との関係でも、プラットフォームについても意見書に言及していたところです。あれは1つの重要な問題だとは思っておりますが、どこから、どういう順番で手をつけていくのかということについては、委員間打合せで意見交換をした後に、また、公表させていただきたいと思っております。

(問) 最後に1点伺いたいのですが、そうしたプラットフォームを通じて、海外との越境取引などのトラブルも非常に深刻になっていて、消費者からすると、なかなかもとになっている海外の事業者にたどりつかないような仕組みになっているかと思います。

そうした中で、消費者庁本体としても、なかなか海外のものに着手するみたいなところは非常に難しくなっていて、それは、消費者庁に限らず、ほかの省庁さんもそうだと思うのですけれども、そうした中で、何か消費者委員会として、越境取引のところで、何か解決に向けてやっていくお考えなどがありましたら、教えてください。

(答) ありがとうございます。

プラットフォームビジネスが展開されて、それが要因になって、一般の消費者が直接海外との取引をする機会が増えてきたということがございます。

そして、場合によっては、消費者が、海外の事業者だということをあまり認識せずに注文をしたら、実は自分の取引先は海外の事業者だったということも増えてきました。海外の事業者でも、約束どおりに履行してくれると、それはいいのですが、そうでない場合について、被害の救済、広い意味での解決が困難になっていることが指摘されておりますし、消費者委員会としても認識しているところです。

個別法においては、そのような場合を念頭に置いて、越境取引の紛争を解決しやすくするように、国内に何らかの事務所ないし代理を置くような仕組みを取るということも、既に一部には導入されているようですが、ただ、全体として、十分な対応が取れているのかというと、そうでもないようにも思われるところでございます。

その点も含めて、プラットフォームの役割ないし責任ということも問題になるでしょうし、それから、そのような被害にもいろいろあり、届いた製品が壊れていて使い物にならないという場合もあるかもしれませんけれども、もっと深刻になりがちなのは、いわゆる欠陥製品です。それが大きな事故につながるということが実際にもありましたし、そのような場面において深刻になってくるのではないかと思われるところです。

例えば、EUにおいては、製造物責任法についても、このデジタル化の進展を背景にして、近年、製造物責任指令が改正されました。指令は、加盟国が導入する義務を履行する期限がありますので、まだ全部の国がそれを立法化したわけではないと思いますけれども、各国で立法作業が進められているものと認識しているところでございます。

この改正の中に、やはり今のような問題に対する手当てというものも含まれておりまして、そのような点も含めて、考えていかなければならないと個人的には思っているところでございます。

ただ、先ほども言いましたように、検討すべき課題は非常に多くありますので、何をどういう順番で検討するのかということについては、また、委員の間で意見交換をして決めたいと思っております。

(問) 昨日、消費者庁と消費者団体の意見交換会がありまして、パラダイムシフトについて、どうこれから具現化していくかということで意見交換が行われたのですが、消費者団体からは、どういうロードマップが描かれているのか分からないとか、パラダイムシフト自体がどういうものなのかというのが分かりにくいという話もいろいろと出ていまして、具体的に特商法の改正にどうつなげるかとか、消費者契約法をどうするかとか、そういったものがまだまだ全然見えてこないという話がありまして、消費者委員会として、そういった議論にどう関わっていくかとか、消費者庁の動きとか、そういったものをどう見ていくのかと、そういった具体的な取組とか、考え方とかがありましたらお聞かせください。

(答) ありがとうございます。

先ほどの本会議でも申し上げたところなのですけれども、私は、このパラダイムシフト専門調査会の報告書は非常に重要な課題を検討していただき、取りまとめていただいたと思っております。それを受けて、消費者委員会として答申を出したということでございます。

ただ、今、御指摘がありましたように、やはり抽象度が高いというところがございまして、これを具体的な法制にどのように落とし込むか、要するにどのように具体化していくのかというところが、大きな関心事だろうと思っております。私も、まずは基本的な枠組みを固めることがとても重要であるということで、あのパラダイムシフトの専門調査会での議論と取りまとめは、非常に意味はあるとは思っているわけですが、同時に、その次のステップがとても重要であると思っているところです。

パラダイムシフトの専門調査会の報告書で取り上げられているところは、単に私法だけの問題でもなく公法も含め、いろいろな事柄にまたがっております。したがって、例えば、消費者契約法とか、あるいは特定商取引法だけで、それが十分に対応できるというものではないかもしれません。

しかしながら、消費者契約全般に関わる現在の法律という意味では、消費者契約法が一番広い対象を持っておりますので、恐らくは消費者契約法辺りから具体化の作業が進められるのではないかと思っております。具体的には存じませんけれども、消費者庁のほうで、現在、その具体化作業に向けて、どうやっていくのかを検討されているのではないかと推測しているところでございます。

消費者委員会としてどう対応するのかということなのですが、今、消費者庁がそれを検討されているということであれば、それを少し待ってみて、それで、それがあまりにも遅いということがあれば、また、消費者委員会として意見を申し上げるということになるかもしれませんけれども、その検討作業がどのように進められるのかということを、まずは注視して、必要に応じて消費者委員会としての意見を申し上げるということになろうかと思います。

それから、特定商取引法というのは、御存じのとおり、消費者トラブルの多い取引類型を取り上げて、公法的な規制と民事法的な規律を盛り込んでいる法律でございます。

そして、この特定商取引法は、消費者契約法がきれいに片付いた後にしか見直しができないということではありませんで、喫緊の深刻な課題があるとすると、特定商取引法を手当てすることで、何らかより速やかに対応できるものもあるのではないかと、私個人としては考えているところであります。

パラダイムシフトとの関係では、大きくは消費者契約法における具体化が、まずは検討されるのではないかと申しましたけれども、特定商取引法については、もっと急いで速やかに対応する必要があるような事柄があり、特に通信販売絡みとか、あるいは特定継続的役務提供などに関しては、非常にトラブルが多く見られるところですので、それについての検討は、必要なのではないかと思っております。消費者庁でも、この間、メンバーが変わっているようです。消費者庁において、特に特定商取引法については、取対課が担当されるということだと思いますけれども、そちらの動きを見ながら、消費者委員会として意見等を、これも必要に応じてタイミングを見ながら出していこうと考えているところです。

一部私の推測が入ったということでもありますが、私から見ると、そうなのではないかなということで申し上げました。

御質問が出なかったのですが、一言、付け加えさせてください。支払手段の多様化に関する専門調査会は、一旦中間整理ということで取りまとめをしていただいたのですが、そのときも、やはり、ここから先の後半戦がとても重要だということを、第8次のときに申し上げていたのですが、第9次においても、そちらについては、また、改めて専門調査会を立ち上げて検討していただきたいと思っているところです。

組織をつくることに、手続上一定の時間がかかるかもしれませんけれども、これも非常に重要な問題と認識しておりますので、ぜひとも応援していただければと思っております。

それから、ついでに言いますと、この間、レスキュー商法について、御存じのとおり、第8次の後半のところで検討をしてまいりました。

これについては、被害がかなり深刻であるということもあって、マスコミの方々にもいろいろな形で取り上げていただきました。そうすると、消費者庁とか消費者委員会のホームページなどは、わざわざ見に行かないという方々も、ああいう形で報道等をしていただくと、それを見て、あるいは読んで、こういうことなのかと気付かされるということもあり、非常に多くの反響をいただいているところでもございます。

そういう意味で、報道関係の皆様と、手を組んでと言ったら語弊があるかも知れませんけれども、やはり、多くの消費者に伝えるということがとても大切ですので、そういう意味で、皆様の御協力を今後ともいただきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

(以上)