鹿野消費者委員会委員長 記者会見

2025年8月27日
消費者委員会

日時

2025年8月27日(水)16:30~17:26

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

○鹿野委員長 御案内のとおり、第8次消費者委員会の委員の任期は今月末までとなっており、先ほど第8次委員会として最後になる本会議を開催いたしました。

第8次委員会におきましては、活発な調査審議を通じて一定の成果を得ることができたものと考えております。

調査審議に御参加いただいた委員各位、審議に御協力いただいた関係者の皆様、そして、報道関係の皆様方にも厚くお礼を申し上げます。

冒頭、私から5件報告をさせていただきます。

まず、1件目は、「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」の報告書と報告書を踏まえた答申についてでございます。

当委員会は、令和5年11月に設置した「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」において、内閣総理大臣より諮問のあった消費者法制度のパラダイムシフトについて調査審議を行ってまいりました。

このたび、本年6月13日の専門調査会において報告書が座長一任となり、7月4日に報告書が公表されました。そして、この報告書を踏まえ、7月9日の本会議において答申を取りまとめました。

答申では、報告書の内容を踏まえ、消費者ならば誰しもが多様な脆弱性を有するという認識を消費者法制度の基礎に置き、既存の枠組みにとらわれない抜本的かつ網羅的なルールの設定に向けて、種々の規律・手法を目的に応じ有効かつ適切に組み合わせて実効性の高い消費者法制度を整備すべく更なる具体的な検討を行うなど、必要な取組を進めることが適当であるとしております。

詳細については、お手元の資料もしくは消費者委員会ホームページを御参照ください。

2件目は、「レスキューサービスに関する消費者問題についての意見」についてでございます。

トイレの故障、水漏れ、鍵の紛失等、日々の生活の中で困った出来事が突然発生し、自分では対処できないというときに、それらを解決するサービス、いわゆるレスキューサービスに関する消費者トラブルが増加傾向にあります。

当委員会では、この問題について、行政、業界団体、事業者、被害対策弁護団及び有識者からのヒアリングを実施し、調査審議や意見交換を行い、本年8月4日の本会議において、「レスキューサービスに関する消費者問題についての意見」を取りまとめました。

意見では、第1に、政府に対し、検索連動型広告を掲載するデジタルプラットフォーム事業者において、特別な事情下では、広告内容の調査確認の取組を高度化するよう要請することを検討すること。

そして、第2に、警察庁及び消費者庁に対し、悪質なレスキューサービス違反に対する執行を強化すること。

そして、第3に、消費者庁に対し、関係行政機関と連携し、消費者への啓発を強化するとともに、事業者団体等との連携を図ることを求めております。

詳細については、こちらもお手元の資料もしくは消費者委員会ホームページを御参照ください。

これにつきまして、関係行政機関において、本意見の趣旨を踏まえ、積極的に御検討いただき、今後の取組に反映していただきたいと考えております。

3点目は、「クライミング施設における消費者安全に関する意見」についてでございます。

近年、スポーツクライミングは、オリンピックを契機として人気が高まり、国内では、クライミング施設が増加しております。競技者が利用する専門施設だけではなく、小規模なジムあるいは子供が利用できる施設、公園等も増加しております。

クライミングは、高い壁を生身で登るため、安全でない体勢で落下すると、重大な事故につながる可能性があり、実際に骨折等の事故が発生しているという状況です。

そのため、事故情報を適切に収集し、事故の発生状況等実態を踏まえて、安全面での対応策を実施することが重要と考えられます。

当委員会では、この問題に関して、本会議においてスポーツクライミングの競技団体、関係事業者及び有識者からのヒアリングを実施し、調査審議や意見交換を行い、本年8月4日の本会議において、クライミング施設における消費者安全に関する意見を取りまとめました。

意見では、概略3点のことを述べております。

1点目は、スポーツ庁に対し、関係省庁等と連携し、クライミングジムで発生した事故情報等を把握する方策を検討すること。

2点目は、スポーツ庁、こども家庭庁、文部科学省、経済産業省及び国土交通省に対し、それぞれ適切に事故情報を収集した上で、関係事業者が実施すべき安全面に関する対策等について、連携して安全対策の策定等に向けた措置を講じ、関係事業者に対して、それを是正させるための措置を講ずるということ。

そして、3点目としましては、消費者庁に対し、クライミング施設に係る消費者事故の防止のため、今後策定される安全面に関する対策等について、消費者に適宜適切に周知すること、これらを求めているところでございます。

こちらも、詳細については、お手元の資料もしくは消費者委員会ホームページを御参照ください。

これについても、関係行政機関において、本意見の趣旨を踏まえ、積極的に御検討いただき、今後の取組に反映していただきたいと考えているところでございます。

4点目は、「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」の中間整理についてでございます。

当委員会は、令和6年12月に設置した「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」において、支払手段の多様化と、それがもたらす消費者への影響や消費者問題について調査審議を行ってまいりました。

このたび、同専門調査会の中間整理が取りまとめられ、8月6日に公表されました。こちらについても詳細については、消費者委員会ホームページを御覧ください。

なお、第8次消費者委員会における調査審議は、本中間整理をもって一応このテーマについては一区切りとなりますが、引き続き第9次消費者委員会において、具体的な検討を進めていただきたいと考えております。

これが最後になりますが、5件目は、次期消費者委員会への移行に当たっての留意事項についてでございます。

来月1日に発足する第9次消費者委員会に向けて、委員会の運営に関して留意いただきたい事項や、当面の主要課題等について、本日、次期消費者委員会への移行に当たっての留意事項という文書として取りまとめました。これも詳細については、お手元の資料を御覧ください。

私からは以上でございます。

質疑応答

(問) 建議が1件もなかったことについて、少し見解というか、お聞かせ願いたいのですけれども。

(答) 建議については、第8次の消費者委員会においては、1件もございませんでした。御指摘のとおりでございます。

ただ、先ほども申しましたが、この第8次委員会が怠けていたのかというと、そうではございませんで、私たちとしては、できる限りのことを全力で行ってきたと認識しているところでございます。

もちろん、消費者委員会として、建議がより強い関係行政機関に対する発出手段ということになりますし、機会があれば、そして適切なテーマがあれば、それを発出していくことが重要であるということは、私たちも承知しているところでございます。

ただ、建議が何本かという数字だけで評価してほしくないというところが正直な思いでございます。先ほど本会議でも触れましたが、この2年間の前半においては、次期消費者基本計画の策定に向けた委員会意見というものを取りまとめて発出するため、多様な問題について、かなりの密度を持って調査審議を行ってきたというつもりでございます。

当委員会としては、まず、これを最初の最重要課題として位置付けておりましたし、この発出した意見は、かなりの部分、実際に第5期の消費者基本計画において反映されたものと認識しております。そこが、まず、前半において我々が力を尽くしてきたことだというところについて、御理解をいただければと思います。

それから、先ほど、最近の幾つかの意見などについて申し上げましたが、なぜ、建議ではなくて意見なのかというところについても、御疑問を持っていらっしゃるのかもしれません。まず、これも対象によるわけなのですけれども、最初のほうで出した意見、先ほどの本会議にも出ていらっしゃった方は、本会議の資料の1-1以下のところを御覧いただくと、当委員会が出してきた一連の意見が載せられておりますが、その意見の中でも、サプリメント食品に関する消費者問題については、これを建議とするか、意見とするかというところについて、相当ぎりぎりまで、私たちのほうでも検討をしていたところでございます。

先ほど本会議で申し上げたところにも関連しますが、これは、食品表示基準の諮問があった際、諮問があった事項に対する直接の答えだけではなくて、もう少し広くサプリメントについて検討が必要ではないかということで、特に食品表示部会において精力的に御検討いただいたところでございました。それを受けて本会議でも意見交換を行い、意見ということで最終的には発出したところでございます。

これが、どうして意見だったのかというところについては、まず、求められた諮問に対する答申の期限がかなりタイトに決まっておりましたので、通常の流れで建議を出すには、まだ時間が足りないということもございました。また、一方で、政府の閣僚会議におきましても、サプリメントについて検討を行うということが合意されておりましたので、当委員会としては、まずは意見という形で発出し、その後、それをフォローアップする中で、必要に応じて、更に建議にまで高めるということを視野に入れて、とりあえずは、その段階では意見にしたところでございます。

今回、まだ、そこから時があまりたっておりませんので、それをフォローアップして直ちに建議ということにはしておりません。しかし、これも先ほどの本会議でも申し上げたところですが、第9次の消費者委員会において、ぜひその点も含めてフォローアップをしていただき、場合によっては建議ということも検討していただきたいと、私としては考えているところでございます。

それから、その他の問題についてですが、エンパワーメント専門調査会の報告を受けた意見ということについては、具体的に法制度として、これをこのようにしてくれという性質のものではございませんでしたので、これは意見としております。それから、レスキューサービスに関しても、これは、もしかしたら、後で別途御質問があるのかもしれませんけれども、レスキューサービスに関しては、非常に重要な問題と思っておりまして、まずは先ほど申しましたような骨子で、大きくは3点になりますけれども、問題提起をしているところでございます。

これにつきましても、特に1点目で申し上げたように、デジタルプラットフォームにおける特別な事情下での調査確認義務ということについて問題提起をしています。これは従来の最高裁の判例、この判例自体は検索型のプラットフォームに関しての判例ではございませんが、広告を載せている新聞等に関する判例の考え方を踏まえたもので、また別の事例では、検索連動型の広告を掲載するプラットフォーム、あるいはより広くデジタルプラットフォームについて、今日、多数人への情報提供を媒介しているという意味で公共性があること、あるいは社会に対する影響が非常に大きいということについては、裁判例としても触れられていたところでございますので、そのような考え方を踏まえて、問題提起をしたものです。今回はレスキューサービスということに焦点を絞ってはいるのですが、検索連動型の広告を掲載するデジタルプラットフォームについては、こういう考え方が妥当するのではありませんかと、少なくとも調査確認義務と民事的な責任というのは、一定の状況下では導かれる可能性があるのではないかと思われますし、そのようなことも踏まえて、政府として、更なる対策ないし検討を行っていただきたいという、大きな問題提起をしたところでございます。それ自体、非常に大きな球を投げたつもりでございます。そして、これは、今までなかった問題提起であり、具体的に特定の制度ないし特定の法律をこのように変えるべきだというところではない、より広い視点から大きな問題提起をしたということですので、建議という形にはしませんでした。

そういうことで、それだけではないかもしれませんけれども、大きなところについては、なぜ意見であって、建議ではなかったのかということについて、やはりテーマにもよるし、あるいは先ほどのサプリメントについては、時間的な制約とその後の政府の対応を見ておく必要性もあると考えられたから、そのような結果になったということを申し上げました。

少し長くなりました。

(問) パラダイムシフトの調査会の報告書について、お聞きしたいのですけれども、その既存の枠組みにとらわれずという考え方のもとで、一方、消費者契約法を中心にということになっていて、消費者契約法が中心にということになっていて、それで十分なのかどうかという、そこの疑問があります。

例えば、ダークパターンとか、アテンションエコノミーとか、幅広いものに対して規制を設けるなどの場合、もっと広く縛ることができるのが、例えば、新法みたいな考え方、そういった部分というのは、この報告書からどう読み取れるのかという、そこについて教えてください。

(答) ありがとうございます。

まずは、消費者法制度のパラダイムシフトについては、この大きなテーマについて、専門調査会で精力的に御議論をいただいて、報告書を取りまとめていただきました。沖野座長はじめ専門委員の皆様に改めて感謝を申し上げたいと思っております。

その上で、今の御質問についてですが、この報告書には、「消費者契約法を中心に」ということで、消費者契約法という法律名が1つ書かれているのですが、当然、消費者契約法だけに関わる問題ではございません。それは、このパラダイムシフトの専門調査会の報告書を御覧になっても、ルールと担い手をどのように適切に組み合わせるか、あるいはルールといっても、法的なルールだけではなく、その他の仕組みも含めて、どのようにうまく機能するような制度設計をするのかということが大きなところです。その前提として、消費者の多様な脆弱性を捉えて消費者像を見直すというところがあるのですが、その見直しをした上で、どのような仕組みが一番、今後の消費者法制度、特に取引分野を中心にした消費者法制度としてふさわしいのかということについて、基本的な大きな考え方を示していただいたというものでございます。

それで、そのルールの組み合わせということについては、当然のことながら、多様なルールが関わります。少なくとも消費者契約法は民事法ということでございますが、御指摘のとおり、行政規制とか、あるいは刑事罰などをどのように組み合わせるのかと、どういう場合に、それが必要であり、それがないといけないのかということについても考えられておりますし、そういう意味では、決して消費者契約法だけに限るということではありません。恐らく、その言葉が入ったのでは、何ら法律名が書かれていなかったら、どこに行き着くのかが分かりにくいということがあるので、具体的な法律名を1つ代表格として挙げたということなのではないかと認識しているところです。

取引法でも、例えば特定商取引法などは、民事ルールと行政規制あるいは刑事罰が入ったような法律でございますし、その他、取引分野としても広いので、様々な関係する法律があるところでございます。

ただ、この専門調査会の報告書は、あくまでもグランドデザインを示すということになっておりますので、具体的にこの法律をどのように変えるのだというのは、次のステップということになろうかと思います。だから、それを全部列挙するという形にはしていないということだと認識しております。

また、代表格として何か挙げておく必要があるだろうということに加えて、もう一言申し上げるとすると、やはりこのパラダイムシフトの専門調査会の検討が開始されたことの1つの直接的なきっかけとしましては、2022年、3年前の消費者契約法の改正のときの附帯決議があったことだと思います。その際、改正されるべきと思われた改正が必ずしも十分な形では実現されなかったというところがございまして、それで衆参両院の委員会の附帯決議において、抜本的な見直しが必要なのではないかということが触れられておりました。

それが直近の、もちろん大きく見るとそれだけではありませんが、少なくとも直近の検討のきっかけということであったと認識しております。そのため、それとの関連を示す必要があるということで、消費者契約法を中心としてという文言になっているのではないかと思っております。

ついでに、これは私の勝手な思いですけれども、消費者契約法が、将来もずっと純粋に民事法であり続けるかということ自体も、やはり再検討の余地があるのかもしれません。これがどうなるかというのは、更に具体的な検討をしてからということになろうと思いますし、すぐに消費者契約法の性質まで変えるということにはならないかもしれません。けれども、少なくとも、もう少し長いスパンで見ると、消費者契約法の大きな在り方自体が見直される可能性もある、そういう可能性も含んだ大きな視野からの専門調査会報告書なのではないかと認識しているところでございます。

(問) 関連してなのですが、2022年改正で判断力の著しく低下した消費者が、著しい支障を及ぼすような契約をした場合の取消権すら実現できませんでした。

何でそれができないのかというところが、本当は出発点だったはずで、消費者委員会は、2017年に高齢者、若年成人、障害者等の知識、経験、判断力の不足を不当に利用し、不利益をもたらす契約が行われた場合の取消権は喫緊に検討しろということを取りまして答申をしています。

それに対する回答が、この中には全くなく、先生は契約法の専門家なので、それが少しは見えてきているのか、皆さん、これは一体どうなったのですか、誰もが抱いていると思うので、一体この取消権、このようなひどい場合も、契約から離脱できない、ここはどうなったのでしょうね、それがどこまで見えてきているのか。

最初に委員長に諮問されたときに言われた格差だけではないという、当たり前のことがきちんとなされたのだと思います。でも、それで、一体、具体的にどうしていくのか、何も見えていない現状があるのですけれども、そこについて、契約法の専門家である先生から見えてきているものがあったら教えてください。

(答) ありがとうございます。

消費者委員会における過去の答申では、いわゆるつけ込み型勧誘の取消権等について要求していたではないかということだろうと思いますし、その対応がどうなっているのかということが、今回の専門調査会の報告書では見えにくいという御指摘だと思います。

つけ込み型の勧誘取消権ということについては、御指摘のとおり、特に高齢者や若年成人等の知識、経験、判断力の不足を不当に利用し、多大な利益をもたらすという契約の不当勧誘についての取消権、それだけではなかったかもしれませんけれども、そこを中心に位置付けていたのではないかと思います。

つまり、いわゆる脆弱な消費者の保護が中心に据えられていたのではないかと思います。

脆弱な消費者をどのように守るのかということ、言わば類型的あるいは属性的に脆弱な消費者をどのように守るのかということが重要であること自体は否定するものではございません。

しかし、今回の報告書では、既存の枠組みにとらわれず、消費者法制度の土台となる考え方を見直そうということでありまして、先ほども冒頭発言で申しましたように、消費者ならば、誰しもが多様な脆弱性を有するという認識を消費者法制度の基礎に置くべきということが示されているところでございます。

私は、もともと民法を専門としてきましたが、民法の延長線上として、従来の消費者法、消費者取引法においても、消費者を一般的、平均的、合理的な消費者というような形で、近代法のモデルを基礎として捉えてきたのではないかと思います。

その中で、特に保護が必要な脆弱な消費者への対応という形で、脆弱性が捉えられていたのではないかと思います。

先ほども申しましたように、そういう観点は非常に重要です。しかし、今回の報告書では、それだけではないというところを分析し、示したというところが重要でございまして、誰もが有するところの多様な脆弱性を捉えて、その脆弱性を踏まえた上で、ルールについて考えていかなくてはいけないということで、従来の分析をより精緻化したものと認識しているところでございます。

規律の在り方についても、今、御指摘のあった取消権というのは、1つ考えられる救済手段でございますけれども、この報告書は、それ以外の手段、例えば民事的な救済についても損害賠償というところまで含めて、組み合わせというのが必要なのではないかと、どういう場合に、どういう形での救済を与えるのかということ、あるいは救済という形だけではなくて、事前の、そういう被害を防ぐという意味でのルール、先ほど御指摘があったような行政規制まで含めて、どういう分野で、どういう法的な規制が必要なのかというところも考える必要があるのかというところが、御指摘されているのではないかと思います。

そういう意味では、本報告書では、従来より視野を広げて、様々なバリエーションを捉えて、考え方を示しています。

(問) 先生、それはもう分かっていて、書いているので、そこは分かっているのです。それで、例えば損害賠償とか、いろいろなものを入れることで、今まで救済できなかった判断力の著しい低下した人が、こんなに著しく、生活に著しい支障があるときに、どのように救済できるようにつながっていくのかと聞いているのです。いろいろな手法がある一般論は書いてくださっていますが、何も見えないと、具体的には何も見えませんという話をしていて、では、どういう方法が、それで、この場合、救済ができるようになることは見通せるのでしょうかという質問です。教えてください。一般論で書いてあることは分かっているのです。

(答) この報告書自体は、一般論とおっしゃいましたが、かなり抽象度の高いものでございます。

これは、グランドデザインを検討するという使命としては、仕方がないことでございまして、取消権について具体的にどうだという形での検討は行われていません。例えば、クーリングオフがどうだとか、あるいは損害賠償がどういう場合にどうだというようなこと、具体的なところについては、次のステップで検討するということだと思っています。

(問) 上から消費者委員会が注視するだけなのですか、消費者庁がやることを。

(答) 消費者庁がやることを注視するだけかということですか。

(問) はい。

(答) 消費者委員会としては、消費者行政を監視するという役割を担っており、さらに、諮問があったときあるいは特に検討を要するテーマを独自に設定したときに、それについて調査審議を進め、その上で答申を行いあるいは意見等を発出するということが役割ですので、その範囲で活動をするということしかございません。

(問) 先ほどの話もそうなのですけれども、やはり甘いのではないですか、向こうができないことは建議として出せないということを繰り返しているので、ほとんどこの前のサプリメントに対する回答とかも、ほとんど回答できるものはないという回答でしかない。

それで、あれだけ意見書を出して、この点もピンキリ型の表示みたいなものがモデルとして出てきたときに、本来なら、施行されているのだから、手引きみたいなものはきちんと書かれていてしかるべきではないですか、それらが全く書かれていなくて、また、今後の意見で、手引きをつくってくださいという意見を出す、何か違うのではないですか、もっとちゃんと切り込むべきなのではないのですか。

(答) もう少し厳しく対応してほしいという期待及び要望が出されたものと受け止めました。

私たちも、先ほど言いましたように、特にサプリメントについては、相当に議論をしたところでございます。その他、もう繰り返しになるので言いませんけれども、それで甘かったということになるのかどうか、それは、私たち自身というより、むしろ皆様が評価されることかもしれません。

(問) 建議できないというのは、やはり、いつも中途半端。

(答) ただ、先ほど言いましたように、まずは意見を出して、その上で建議を全く出さないということではなく、その問題1つとっても、次期になりますけれども、フォローアップをしっかり行っていただきたいと考えておりますし、それで、もちろん必要に応じてということになりますけれども、建議ということも念頭に置いて検討を進めていただくことを、こちらとしては、リクエストをしたいということでございます。

留意事項についての意見交換を先ほどしましたけれども、私からもそういう思いは述べさせていただいたところです。

ですから、これも繰り返しになりますけれども、建議が1本も出なかったということだけを捉えて、何をやっているのだという評価はしてほしくないということでもございますし、それから、もちろん期待が大きいと、もっと先に進んでほしかったというところもあろうかと思いますけれども、私たちとしては、できる限りのことをやったということです。それともう一つ、これは、言い訳ではないのですけれども、かなり多様な問題を幅広く扱うということになりましたので、2年間ある問題だけを集中的に検討していくということにはなりませんでした。その時間の流れの中で、できる限りのことをやってきたと認識しているところでございます。

(問) パラダイムシフトに関する報告書などでも掲げられて、調査会の質疑の中にもあったのですけれども、消費者契約法自体の在り方とかを考えていく必要があるという御意見がありましたが、それも大きなスパンの中で、今後の大きな視野の中で見直されるものと、それで、先ほどの様々な分野を扱う中で、多様にあったものを捉えていくということだったと思うのですが、次期委員会のほうで早急にというか、時代の流れとかを汲んで、最優先して取り組むべきものは、どういうものかと、その課題、お考えをお聞かせください。

(答) パラダイムシフトに関してですか。

(問) パラダイムシフトから出たことも踏まえてですけれども、いろいろデジタル空間とかも非常に複雑なことが、消費行動の中では、デジタル空間とかがものすごく入り込んできて、また、コロナ禍とかで、すごく海外とかの取引だとか、すごく盛んに行われているという現状の実態を踏まえつつ、報告書が出ているのを含めて。

(答) ありがとうございます。

私自身がというと、パラダイムシフトには限らないということでございましたけれども、やはりパラダイムシフトの報告書は消費者法制度、とりわけ消費者取引法制度の土台となるグランドデザインを示すものでありまして、それで直前の御質問にもありましたように、やはりその次に、それを具体化するというところが肝要なのだろうと思います。

この報告書自体は、非常によくまとめられていて、やはり人間像、消費者像というものをきちんと見直していかないといけない。従来の合理的な人間像の考え方で法制度をつくっていこうとすると、どうしても壁にぶち当たってしまうというところがありますので、消費者の脆弱性を踏まえる必要があります。それからデジタル空間の中でという特徴についても、そこで顕著に問題になる脆弱性というところもありますし、それからアテンションエコノミーとか、金銭以外でないようなものが価値を持っているというところも捉えて、取引法制をどうするかという大きな点も指摘されているところです。

そういうことで、ぜひこの考え方を具体化する、それは消費者委員会として直接取り組むということになるかどうかは分からないのですが、具体化してもらいたいと思っております。個人的には、恐らく、先ほどおっしゃったことと同じような思いで、やはりこんなにひどい消費者被害が生じているときに、救済手段がないというのはおかしいでしょうというところがあります。一方で、このグランドデザインをつくるということは、今までの改正の経緯を踏まえると、今、これをつくっておかないと、また、細かなところばかり議論をして、結局実現できないということになりかねないので、それが非常に大切だったと思っているところです。

ですから、消費者委員会は消費者行政の監視役という役割を担っているものではありますけれども、少なくとも個人的な関心事としては、このパラダイムシフト報告書で示された考え方の具体化の作業というところが非常に大きな関心事ということになります。

それから、ほかの点として、今の点にも多少関わるところではありますけれども、決済制度というか、支払手段の多様化に関する専門調査会についてです。この専門調査会は、消費者委員会のもとで、諮問を受けるという形ではなく、独自に立ち上げたものでございますし、それについては、まさに、今おっしゃったデジタル化にも密接に関わっています。急激な変化により、一言で言うと、訳が分からないような状態になっていたというところがあり、そして、関係する法律も複数あり、それを所管する省庁も複数あるけれども、そこから抜け落ちているような問題があり、対応できていないのではないかというところがございました。今回この中間整理において、かなりの部分について整理がされたと思います。こういう全体を通した整理ということが、なかなかほかのところではやってこられなかったのではないか。もちろん、学者の論文とかでは、何かに焦点を当てて検討され主張が展開されるというものは存在したのですが、全体を見渡して、何が今起こっているのか、しかも実態調査なども踏まえて何が起こっているのか、法制度としてどういうものがあって、どこが凸凹になっており、穴があるのかということを見渡せるような整理ということは、従来あまり行われていなかったのではないかと思います。

そういう意味で、この中間整理は非常に意味があると思いますし、中間整理が終わったら、先ほど次期に向けての期待をまとめた「留意事項」にも含めていたのですけれども、今後は、この中間整理を踏まえて、どのようにこの問題に対応していくのかという対応策などについて、より具体的に検討していただきたいということでございます。

これも関係省庁が複数ありますし、問題としてはかなり大きな問題なのですが、今、これをやらなければいけないという強い思いを持って、この専門調査会を、第8次の消費者委員会において立ち上げたところでございますので、そこが次期に対する大きな期待ということになります。それだけではないのですけれども、特にとおっしゃったので、以上、2点を申し上げました。

(問) 質問というか確認なのですけれども、レスキューサービスのところの意見の中で1番目の検索連動型広告における調査確認の義務、これは、情プラ法をイメージされているという理解でよろしかったですか、報告書の中では、何か手法が、いまいちよく分からなかったのですけれども。

(答) 現在の情プラ法では、適用対象にそもそもなっておらず、これでは、なかなか対応することが難しいという状況にあるものと認識しております。

その上で、だからこそ、民事的には少なくとも、こういう考え方というのが妥当するのではないですかと、そうすると、公法的なルールとしても将来的には、検討をする必要があるのではないですかということで投げかけているということです。

ただ、デジタルプラットフォームだけでこれに対応するということは、現状では難しいところもあります。広告内容について疑念を抱くべきような特別な事情があったときに対応してくださいということは一般論としては言えると思うのですけれども、前提として、その情報が適切な形でデジタルプラットフォームに来なければ、それは一般論としてはいいかもしれないけれども、実際にはあまり機能しないということになるかもしれません。そこで、デジタルプラットフォームに、適切な形で情報が早く伝わって、それを踏まえた対応をデジタルプラットフォームに期待できるような仕組みを用意するなど、その周辺までを含めた整理が必要なのではないかと考えております。

もう一つは、先ほど本会議においても、委員からも御指摘があったところでございますが、やはり検索で上に来るというだけではなくて、値段が実際とは大きく異なり安そうに見えるというところが1つ問題です。幾らからとして、非常に安い金額をまずは掲げておいて、「マルマル円から」とする、いわゆるにょろにょろ表示というようなものがございます。そのような表示の考え方についてもう少し整理する必要があるのではないかと考えています。

かつて消費者庁のほうで、いわゆるナンバーワン表示というものについて実態調査をして、その考え方を整理されたということがございました。それと同じ問題ではないのですけれども、そういう手法を通じて、消費者庁のほうでも、これに関する実態を調査して、こういう場合は問題ですよという考え方を整理するようなことはできるのではないかと思っております。その辺りも含めて、幾つかの周辺の仕組みとか対応とかを併せることにより、デジタルプラットフォームに対する対応も求めやすくなる、そういうことになるのではないかと思っております。

(以上)