後藤消費者委員会委員長 記者会見

2023年8月10日
消費者委員会

日時

2023年8月10日(木)15:50~16:37

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

○後藤委員長 消費者委員会委員長の後藤と申します。よろしくお願いいたします。

本日、私からの報告事項は2件ございます。

1件目は、デジタル化に伴う消費者問題ワーキング・グループの報告書と、報告書を踏まえた意見についてです。

デジタル化の進展に伴い、通信販売において、消費者と事業者の接触が容易になり、いわゆるチャットを利用したやり取りを行った結果、消費者が事業者と接触した際の動機とは異なる契約の締結に至るなど、事業者が消費者の意思の形成に影響を与える行為により、消費者被害が発生しています。

そこで、これらの消費者被害への対応を検討するため、令和5年1月から同ワーキング・グループを再開し、調査審議を行い、8月に報告書を取りまとめました。同報告書を踏まえまして、本日、意見を決定いたしました。

意見の内容ですけれども、事業者が消費者の契約締結の意思の形成に影響を与える行為により、消費者被害が発生していることを踏まえ、チャットの定義を必要に応じて明確にすることも含め、以下について十分に検討を行うことを求めています。

1、特定商取引法の通信販売において、チャットを利用して事業者が消費者の契約締結の意思の形成に影響を与える行為に対して、勧誘の規制等の導入に向けた検討を行うこと。

2、勧誘規制等の導入に向けた検討に当たっては、第1に、勧誘に先立って、事業者名・販売目的等を明示すべき義務を設けること。

第2に、再勧誘の禁止のほか、不実告知や故意の事実不告知等の事業者による不当性の強い行為については禁止行為とし、適合性原則違反等については、指示対象行為とするなどの行政規制を設けること。

第3に、民事ルール、これは取消権とかクーリング・オフでありますけれども、それを創設することを含めて検討するよう求めています。

詳細につきましては、お手元の資料を御覧ください。

消費者庁においては、意見に盛り込まれた内容について、更に検討を深めていただきたい論点への対応も含め、しっかり取り組んでいただきたいと考えております。

これらの意見への対応については、本会議において、今後、必要に応じてフォローアップを行ってまいります。

2件目ですけれども、消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループの報告書と、報告書を踏まえた意見についてです。

過去に生じた多数消費者被害に発展した事件に見られる共通の特徴を踏まえ、それらを、いわゆる破綻必至商法と総称して、その要件を整理するとともに、これにどのように対応すべきか議論を行いました。

深刻な多数消費者被害対策の一環として、令和3年に預託法が改正され、販売預託を原則禁止とするなど、破綻必至商法を行う事業者への対処として有効な制度が導入されたものと評価できます。

消費者庁においては、被害の拡大防止や被害回復といった観点から、同法の施行状況について検証を行うことが必要であると考えます。

また、破綻必至商法を行う事業者を市場からより効果的に排除するべく、行政による破産手続開始の申立、その他の手法による消費者の被害の拡大防止等に資する措置を取ることが可能となる制度整備又は拡充に向けた検討を行うことを求めています。

詳細については、お手元の資料のとおりです。

消費者委員会としましては、引き続き、多数消費者被害に係る消費者問題への取組について、消費者庁を始めとする関係行政機関の取組を注視してまいります。

私からは、以上です。

質疑応答

(問) まず率直に、2本とも建議にできなかったという理由について、お教えください。

(答) これは、両方のワーキングについて、意見として決定すると、そういうことでありまして、建議としないで意見としたということについては、建議と意見の取扱いの区分がありまして、建議に関しては、法制度の改革等、具体的にそれを促すような内容になっているということであれば建議であるということでありますが、そこまで行っていないもの、例えば具体性が欠けていて、それを直ちに実行する、例えば法改正をするというような形で実行していくということまでは、まだ至っていないというもの、この場合は意見ということになりますけれども、私たち消費者委員会の委員の方々の御意見で、今回については、両ワーキングとも報告書の内容というのは建議までは至らず、内容的に意見という形で発出することがよろしいと、そういう判断をしたということでございます。

(問) 1回中間取りまとめを行って、建議にもできず、また、いずれも再度検討したということなのですが、まず、チャットを利用した勧誘の規制についてなのですが、どういうところが十分ではないと言っているのでしょうか。

消費者庁が、最後に意見を出しています。この中で、エビデンスが明確ではないとか、相談件数がはっきりしないとか、あと定義が不明確という話なのですけれども、はっきり言って、キーワードがないから、相談件数がはっきりしないからとか、それは消費者委員会のせいなのでしょうかみたいな、SNSのところは、すごく増えていることが分かっていると、目検で調べるとかというのは、消費者庁がやればいいようなことなのではないかと思いますし、定義も、はっきり言って、立法作業をするのは消費者庁なので、そこまで消費者委員会の委員の方たちは、この報告書の内容がちゃんとしていないと思っているということなのでしょうか。

(問) ちゃんとしていないとは思っていなくて、報告書の内容というのは十分検討した内容であると思っています。

取扱いの難しさというのは、これは両ワーキングとも非常に難しい問題に取り組んでいるということ、難しくて大きな問題と言っていいと思いますけれども、それに取り組んでいるということでありまして、特定商取引法の規定の中で、通信販売の問題と、それから電話勧誘販売の問題とあるわけでありますけれども、今のこの報告書で取り上げたチャット勧誘については、位置付けがなかなか難しいということでありまして、チャットというものは、電話に近い性質を持っているということなのですけれども、通信販売という位置付けもあり得て、両方ともぴったり当てはまるかというと、どちらにもぴったり当てはまるものではない、その間に存在するような類型、ただ、そこについて非常に被害が増えているというのはおっしゃるとおりですので、その被害が増えているということに対する対応というのが必要であるということなのです。

そういうことですけれども、先ほど2つの類型の間に存在すると、こういう類型になりますので、そこに規制を加えるというのは、では、その領域というのは、どこからどこまでの領域かということ、これは、やはりチャット勧誘ということの定義にも関わってくる問題でありまして、私たちは、定義については非常に神経を使って、消費者委員会としてできる限りの検討はしたということでありますが、新しい問題でありますので、その定義付けということについても、我々の委員会の範囲ではここまでというところをぎりぎりまで考え詰めていますけれども、いろいろ参考とすることができるものも少なくて、ストーカー規制法の中での定義ということも参考になるのですけれども、それが特商法は、先ほど言ったような電話勧誘販売と通信販売、そういうような類型、それ以外の類型もありますけれども、特商法としての定義として、これでよろしいのかというのは、正にまだ回答ができなくて、なかなか難しいところであると、こういうことであります。

それから、チャット勧誘ということに関して、やはりPIO-NETで、それに類する入力ということについて、なかなかきちんとデータがないということも含めると、被害実態をどこまで正確に把握できるかということについても、なお問題があるということでありまして、そういうようなところを勘案すると、具体的に一定の方向性を示すというところまではいっていない。

ただ、だから内容的に、まだまだ検討する余地があると、そのようには報告書の内容を思っていませんで、十分に世に出す内容、価値があるものだと思っていますけれども、建議か意見かと言われたら意見ということで、意見であるからといって、別に軽く扱うということではなく、これを真剣に受け止めて、その内容を実行することに取り組んでいただきたいと、そういうつもりで意見として出しているということであります。

(問) 消費者庁は、何が具体性が欠け、実行するまでには至っていないと言っているのでしょうか。2つとも教えてください。消費者庁は何が具体的なところまで行っていないと、どこが足りないと言っているのか、2つの報告書について、お教えください。

(答) それは、私の認識するところと、消費者庁が言っているところが一致しているかどうか、ちょっと分かりませんので、本当に正確には消費者庁にお聞きいただいたほうがよろしいと思いますけれども、私が先ほど述べたところ、そのことについては、消費者委員会自体が、ここが足りないと判断していると、建議にはならない状況だと判断しているということでありまして、消費者庁がどうお考えなのかということとは離れて、消費者委員会として意見とするという判断をしているということです。

(問) チャット勧誘規制のほうについては、最後に消費者庁から意見が出ていますので、大体何を言ったのかというのが分かるのですけれども、もう一つのほうの破綻必至商法に対する行政による破産申立とか、そういう違法収益を没収して、分配する仕組みについての提案に関しては、消費者庁は、どのような点に対して疑問符を投げてきているのでしょうか。

(答) ルール形成ワーキングのほうは、非常に大きな問題でして、設置法の附則の第6項から、ずっと課題とされてきたということでありまして、行政手法研究会、これは消費者庁で開催されましたが、そこでも議論されている。

消費者委員会の中でのルール形成ワーキングでも第3弾ということになりますが、第1弾、第2弾で公法、私法、それから自主規制ということのそれぞれのルールの役割とか規制手法、そういう問題を扱ってきて、非常に解決困難な難しい問題というのが第3弾で、この問題として出てきているということであります。

行政に一定の権限を付与して、それで、例えば破産の申立権限を行政が行使するということを報告書としては考えているということでありますけれども、それも一つ考えられる手法として出しているということでありまして、この問題を解決するということになると、例えば破産申立権限を消費者庁なら消費者庁に与えるということが一番いいこと、効果的な手段なのかどうかということは必ずしも言えない。

そういう意味で、考えられるものというのを幾つか出しているということであります。例えば、行政による解散命令というのも可能性として考え得るものであるとか、幾つか選択肢を出しているということで、先ほど建議と意見の違いということで申し上げた、具体的に法改正等を促すところまでにはなっていないということです。

そうなるのも、ある意味、致し方ない問題でありまして、非常に大きな問題ですから、例えば野球で、ピッチャーが野球のボールではなくて、もっと大きなバレーボールのボールを投げているとか、良くない例えかもしれませんけれども、そうすると、ずばりストライクというのは、なかなかなりにくいと、そういうこともあります。

それから、近年の法改正の状況で言いますと、預託法の改正があったということでありまして、預託法の改正で、販売預託については原則禁止として、内閣総理大臣の確認を受けないで行った場合については、それが無効だということになったわけでありまして、それは非常に重要な法改正であって、今後その法改正の効果ということを見ていくのも非常に大事な問題ということになります。

破綻必至商法の全部ではありませんけれども、一定部分のものは、販売預託の形を取っていますので、そういう意味で、こういう破綻必至商法についての解決というのは、預託法の改正で一歩進んだということであります。

ただ、一歩進んだということであっても、具体的な救済手法等が預託法の改正でも規定されているわけではありませんので、足りないところはあるということでありますが、一歩進んだものを、まず大切にしようということでありまして、一歩進んだものの検討を通して、今、ルール形成で扱っている問題に対する対応を考えるほうが、より生産的で、より実効的な法制度につながると、現時点では認識しているということであります。そういうことで建議ではなくて意見としたということになります。

(問) 委員さんの発言の中から、消費者庁は、預託法改正で、この問題は終わったのではないかと、そう言われたのではないかと受け止められるような発言がありました。

それで、これは消費者庁、消費者委員会設置法附則6項に書かれている、消費者庁創設時の大きな課題であって、建議で、これを参考にそういうことを検討しろということも言えないということなのでしょうか。

(答) いや、言えるとか言えないというよりは、消費者委員会というのは、あくまでも独立した機関でありますので、消費者委員会の判断で、自分たちの報告書ということは、どういうものにふさわしいのかということについて、意見がふさわしいと、こういう判断をしているということであります。

だから、言うべきものを言わないというような判断ではなくて、むしろ、これは意見として世に問うのがふさわしいと、そういう判断ですので、御理解いただけたらと思います。

(問) 今の建議のところなのですけれども、前の期だと思うのですけれども、それこそ預託商法の改正を出すときの建議は、それこそ分けたと思うのです。法の在り方を検討しなさいという建議を出した上で意見を付けるような形を取ったと思うのです。

そういう上で言ったら、皆さんの思いからしたら、今回はチャットの在り方、法の在り方を考えるべきだという建議を出すこともできたと思うのですけれども、それを出さなかったというのは、今、委員長の話を聞いていて、今一そこが理解できなかったものですから、皆さんの中で、まだまだ及んでいない部分があるという言い方だったかなと思うのですけれども、それでも、本当に法の突き詰めたところをやるのは消費者庁の仕事であって、考えることを求めるということは、建議でもできたのではないかなと思うのですけれども、それをしなかった理由というのは、どういうところなのでしょうか。

(答) 今、おっしゃった対象は、デジタルワーキングについてですか、それとも両方についてですか。

(問) チャットのほうです。

(答) チャットのほうですか、チャットのほうについては建議で出して、そして意見も付けるということというのは、一つ考えられる方法ではあるかなとは思うのですが、建議で出すときに、それでは、どういう建議を出すかという問題もあるわけでして、現在ある法制度をもっと積極的に使えと、そうすると、一言でいうと執行の強化ということになりますけれども、執行の強化ということを建議として出すということも、一つはあり得るかとは思うのですけれども、私たちが今回の意見に込めた思いということは、むしろ、私たちの思いを集約的にこの意見で述べるので、それを受け止めてくださいということなのです。

ですから、建議か意見かということについて御関心があると、私は受け取りましたけれども、むしろ建議でも意見でも、意見として今回出しているのですが、その内容を受け止めて実行していただくということが大事だということでありまして、そういう意味からいうと、両方、建議と意見ということで、建議のほうは、専ら執行の問題とするという分け方をするよりも、純粋に意見としてぶつけると、そういう選択のほうが良いのではないかと、今、御質問を受けて、そう感じましたけれども、ただ、これは、建議にするか、意見にするかという議論の中で、建議にしつつ意見にするということについて、そう真剣に消費者委員会の中で議論されたというよりは、今、お聞きして、私が今思ったということで、思ったことを率直に申し上げたということであります。

(問) チャットを利用した勧誘の在り方の意見についてなのですけれども、改めてこの意見書を出すのと、消費者庁に求めることを委員長のお口から頂きたいのですが、基本的には、特商法の改正を検討するように求めるという理解でよろしいのか、そこをはっきりしていただきたいのと、あと、早急に対応してほしいという委員の意見もあったので、委員長として求めることをコメントいただきたい。

(答) デジタルの問題というのは、非常に大きな問題でして、法律での受け止め方ということは、特商法の中で受け止めるというのが一つあると思います。

それで、特商法以外の法領域にもデジタルの問題というのは及んでいますので、特商法で受けて、例えば特商法の改正をするということは、一つの選択肢として重要な選択肢だと思っています。ただ、視野として、大きな問題であるということは念頭に置いておく必要があると思います。

結局、報告書で扱ったところは、先ほど言いましたような電話勧誘販売にもストレートには当てはまらないし、それから通信販売にもストレートに当てはまらない、そういう領域をどうするのかということを念頭に置いて議論をしましたので、そういう意味からいうと、消費者庁に直接考えてもらいたいということについては、消費者委員会としては、基本的には特商法ということを念頭に置いているということになります。

特商法を念頭に置いて、どういうことを求めたいのかということでありますけれども、通信販売は、従来広告規制というのを基本に置いていたということでありまして、勧誘規制ということについては、基本的に規制を置いていないということであって、その勧誘規制についてどういう位置付けをするかということになると、例えば、通信販売の中にチャット販売というような形で、勧誘規制の問題を置くというのも一つあり得る選択肢かもしれません。それは一つ有力な選択肢だと私は思いますけれども、委員の方々もそこまで共通の認識があったわけではなくて、例えば特商法の中に入れるのに、通信販売の一定の類型として、今、問題としているようなチャット勧誘を入れること以外に、むしろ、その外に出したほうが良いのではないか、つまり、先ほど言いました電話勧誘販売とか通信販売とか、そういう類型が特商法にはあるわけでありますけれども、ほかに、訪問販売などもありますが、そういう類型の中にプラス1つ新たな類型を設けるということもあるということでありまして、そこでどれが良いかという選択肢というのは、なかなか現在の状況だと、まだ、方向性として打ち出すには至っていないということであります。

ただ、問題状況として、基本的には大きな問題であって、特商法だけの問題ではないけれども、とりあえず、できることとして特商法の中の一定の改正の方向を考えるということで、そういう意味からいうと、特商法の見直しということになろうかと思います。

(問) チャット勧誘販売のほうなのですけれども、議論が時間的に十分であったかどうかという点について、委員長としての受け止めといいますか、感じ方をお願いします。

(答) 議論として報告書にまとまったということでありますので、結果的には、時間を有効に使って、特に非常に難しいテーマで、ただ、非常に重要なテーマで緊急性もあるということで、事務局の方は非常に苦労して、いろいろな資料を作っていただいて、委員の方々も非常にデジタルに詳しい方を委員に加えていただいたりして、質的には非常に良いものができたと思っています。

時間的にもっと時間を掛けるということであれば、これは、先ほど言いましたデジタルの問題は非常に大きな問題であるという、ほかの法領域とも、もちろん関係するということでありますので、そういうところも念頭に置きつつ、いろいろな議論をするということがあって、特に発信者情報開示の問題は、なかなか大きな問題でありまして、表現の自由とかに関係する問題で、そういう問題などについて扱うことに本格的に手を出す、それを掘り下げると、そこまで行く時間はなかったと思います。

ただ、時間がなかったとはいえ、そういう問題点があるということは、委員からも発言があって、本会議で弁護士会のヒアリングも行い、できる限りのことはしたとは思っています。

時間が足りなかったかというと、ある意味、何事ももっと時間があったらというのは、今回に限らず、いろいろなところで起きることでありまして、そういう意味からいうと、少なくとも、できる範囲内で時間は有効に使って検討ができたと思っています。

(問) チャットのところなのですけれども、建議を執行で出すよりは意見として出したほうが良いと、建議は何で執行でしか出せないのですか。もともと建議は執行で出していますね、でも完全に無視されていて、特商法の広告規制の行政処分は1件も行われていませんね、でも、なぜ同じ執行でしか出せないのですか、直接委員の意思で意見にしたと、委員長は説明されていますけれども、消費者庁が良しと言わないから出せないのではないのですか。

(答) いや、そんなことはありません。

意見にした理由というのは、先ほど言いましたように、建議にするだけの熟した内容に、報告書自体がなっていないから建議ではなくて意見にしたということです。

(問) でも、執行でしか建議を出せないというのは、執行だったら消費者庁がオーケーということですか、何で建議は執行でしか出せないのですか。

(答) 消費者庁がオーケーと言うかどうかというよりは、委員会としての判断ということでありますので、ちょっと先ほどから消費者庁がオーケーしないといけないのですかとか、そのようなことをおっしゃっていますけれども、制度としてそういうものではありませんので、消費者委員会は独立した機関でありますので、もし、建議まで熟している内容であったら建議として出すと、ただ、それだけの話で、今回は熟していなかったということです。

(問) だったら熟したものを出してくださいよ、消費者委員会の意味がないではないですか。消費者委員会は何のためにあるのですか。

(答) ですから、熟したものということに関しては、例えば、第7次ではここまでしかできなかったのだけれども、第8次に関しては、それを踏まえて、第7次までここまでやった、それはまだ熟していなかった、それを引き続き第8次で熟すものに練り上げていくと、こういうことは、選択肢としては十分あり得ることだと思います。ですから、熟したものを出してくださいということに関して、消費者委員会として出しませんと言っているわけではなくて、それについては、また、8次以降の営みの中で答えが出てくることだと思います。

(問) 特にルール形成ワーキングのほうは、関わってきた委員の先生たちが、僕が生きている間に、こういう報告書ができると思わなかった、感慨深かったと。今から抵抗とか、逆風とかが予想されると、だけれども、これを訴えていく人たちは、消費者の中でも非常に弱い立場で推進力にはならないと。消費者委員会とか、公益を担う官庁の人たちに頑張ってほしいというメッセージを残されていますけれども、それをちゃんと消費者委員会の委員たちは受け止めて応えた結果がこれということですか。

(問) いや、そうではなくて、今の御発言は、ルール形成ワーキングの中で、最終回に、山本和彦先生、破産法の大家、本当に第一人者の先生でありますが、その先生がおっしゃったことであって、私、その場にいましたので非常に感銘を受けました。涙が出そうな感じになりました。その思いは全く私も同じで、ルール形成ワーキングで同席した人たちも、山本和彦先生と同じように、このルール形成ワーキングで営んだことについては、自分としてできることはやったと、そうおっしゃっています。

それを消費者委員会として受け止めて、今はもう7次が終わりという状況に近付いていますので、8次以降で、どういう形になるか、まだ未確定でありますけれども、消費者委員会としても受け止めるということになるのではないかと思います。

8次以降のことについては、まだ未確定なことですから何とも言えませんけれども、こういう流れの中で、今、おっしゃっていただいたような問題意識というのは、消費者委員会の中では十分共有されていることになります。ですから、そこで建議だとか意見だとか、どちらになるのかということを現時点で御質問されても、私たちは、この問題は非常に重要な問題だと思っておりますので、今後もこの問題を考え続けていくという状況だというのが、現在の状況だと思います。

(問) 先ほどの話で、今回議論がまだ熟していないかもしれないというところで、だけれども、これだけ具体的な意見、方策をこういうようにしましょうと、明示義務を入れましょうとお伝えしている中で、そうすると、今後もし議論が熟していった中で、この結論が変わっていくとか、この結論が完璧なものというか、熟していくことで結論が変わっていくということもあるのでしょうかね、今、出されている意見、やり方が、実はもう少し考えると違う方向だったという考え方にもなっていくのかなと。

(答) これは、どちらのワーキングについてもということですか。

(問) チャットのほうです。

(答) チャットのほうについては、今後、仮にではありますけれども、消費者委員会なり、消費者庁なりで検討会等を開催して議論をする機会があるとすると、そこの中で、今回の私たちの報告書や意見について新たな知見を加えていって、そして、より大事な論点があるとか、そういうことにはなっていく可能性は十分あるのではないかと思います。

報告書の中で、チャットに関していろいろ議論した結果をまとめているわけでありますが、課題があるということに関する取組がより進んでいけば、そこでの知見が、また増えてくると思います。

それから、チャットの勧誘において消費者がどんな状況になるのかというのは、私たちも関心があるところであって、心理学とか、行動経済学とか、そういう専門家の方にヒアリングをすることもしたのですけれども、それもあまり従来なされていないことを行ったということで、回数としては、ヒアリングを1回ということでありますので、仮にもっとそこのヒアリングを重ねたら、より豊富な知見に基づく検討がなされることはあると思います。

そういう意味で、全く第一歩と思っていまして、むしろ先ほど申し上げましたように、デジタルの問題というのは、非常に広がりがありますので、とりあえず、私たちは自分たちができる範囲の問題として、チャット勧誘ということを取り上げたのですけれども、これを参照していただいて、そして、デジタルに関する法的な問題に取り組む関係省庁が、一つの参考資料として参照していただくことになることを願っています。

そういうような形で生かされれば、私たちが今回決定した意見というのが、一定の役割を果たすと考えています。

(問) 委員の中には、エビデンスが必要だからという発言を消費者庁とかがしていて、全く認識がずれていると、危機感が全く欠落していると、これを先延ばしすればするほど被害が拡大すると。

そういう中で、消費者委員会自らが熟していないから意見にしたと言うと、だったらこの意見は熟していないのだから、やらなくてもいいということのメッセージになりませんか。中間報告もやって、ここまで報告書をまとめたのだと、やってくださいと、何で建議にできないのか、もう少し消費者委員会は戦ってほしいのですね、ここで自らそうやって言ってしまうことが本当にいいのですかね、委員の人たちの発言の内容と違いますね。

(答) 今、私が言えることは、第7次の委員会として、既に決定している建議と意見ということの区分に従って、建議ではなくて意見としたということでありますが、もし建議にするということであれば、これは建議と意見の区分ということを、また問い直す、再考するということが必要になってくると思いますけれども、それについては、今ここで直ちに再考すべきだとか、そういうことは、今、問題提起を受けて、すぐということをお返事としてはしかねる状態になっています。

(問) 建議と意見の区分は、誰がどこで決めたのですか。

(答) それは、消費者委員会として決めました。

(問) それは、いつですか。

(答) 以前から建議や意見を発出するときに分類として行っていますので。

(問) でも、建議として1回出して、意見も一緒に出していることもありますね。

(答) それもあります。

(問) 何か、本当に基準に明確に沿っているように理解ができないのですけれども。

(事務局) 少し補足してもいいですか、建議とするか、意見とするかというのは、どちらですかというのは、もちろん消費者委員会で決めていただきます。

どういう形で出すかというのは、より具体的に法改正を求めるとか、そういったものは、これまで建議で出してきたことが多いです。

先ほどお話があったように、建議と意見を分けて出したこともあります。ですから、必ずしも、こういう形でやってきたことが多いというだけであって、こうでなければならないとか、そういう明確なことがあるわけではありません。意見表明をしていく内容に照らして、この場合は建議として言っていこうとか、この場合は、もう少し検討する、しなければならない事項があるから意見ということで、この点については、委員会としては、こういう意見を持っていますということを意見表明していこうということで、その内容に応じて言っていくというのが一つのやり方になっています。

ですから、必ずこうでなければならないということは、一定の考え方は整理していますけれども、それは、そのときの委員の先生方のお考えですとか、内容に即して決めていくというものになっています。

今回、2つとも意見になりましたけれども、いろいろな御説明の仕方、委員長もいろいろ丁寧に御説明していただいていると思いますけれども、ルール形成のほうは販売預託で、もう少し販売預託の改正の行方を見なければいけないというところがあって、直ちにこういう制度設計が必要だということにはならないだろうということで、意見ということにしています。

チャットのほうは、とても大きな問題でデジタル規制というものを置くわけですけれども、特商法をああいう形で変えていくというのは、あの形が良いのか、そうした場合に、では、エビデンスはどのぐらい詰まっているのかとか、定義をどう考えていくのかとか、あるいはほかの規定の仕方もあるのではないかと、委員の先生方はいろいろ考えて、今回は意見がふさわしいということで意見にしたということであります。

どちらにしても、委員会としては、ワーキング・グループの取りまとめは、しっかりとしていただいて、それに乗っかっている形で、委員会としては、言いたいことは全てあの意見に盛り込まれています。あとは、これを実現していただきたい、少しでもこの実現に向かって関係省庁が動いてもらいたいというのが、今、委員会として最も求めているものだと思います。

(以上)