後藤消費者委員会委員長 記者会見

2022年9月2日
消費者委員会

日時

2022年9月2日(金)12:40~13:06

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

○後藤委員長 本日は、お越しいただきまして、どうもありがとうございます。

私からの報告は、2件ございます。

1件目は、デジタル化に伴う消費者問題ワーキング・グループの報告書と、報告書を踏まえた建議及び意見についてです。

近年、SNSがコミュニケーションツールとして一般化している中、SNS上の投稿や広告をきっかけとしたものや、SNSのメッセージでのやり取りを経て契約に至り、トラブルが発生するといった、SNSが関連した消費者問題が増加しております。

そこで、これらの消費者問題への対応を検討するため、本年2月からワーキング・グループにおいて調査審議を行い、8月に報告書を取りまとめました。同報告書を踏まえて、本日、建議及び意見を決定しました。

建議の内容ですけれども、建議事項の1では、SNSのメッセージなどインターネットを利用した広告表示に対する特商法に基づく執行強化を求めています。

建議事項2では、特商法における解釈について電話勧誘販売に該当する場合を事例に即して分かりやすく、消費生活センター等、関係団体等に周知することを求めております。

建議事項3では、SNS関連の消費者被害について、消費者安全法を活用して消費者への注意喚起をするとともに、関係事業者等にも情報提供することを求めています。

また、意見においては、消費者被害の未然防止のため、SNS事業者に対して期待する自主的取組について述べております。

詳細につきましては、お手元の資料を御参照ください。

消費者庁におかれましては、建議に盛り込まれた内容について、しっかり取り組んでいただきたいと考えております。

これらの建議への対応については、本会議において、今後、フォローアップを行っていきたいと思っております。

2件目ですけれども、消費者教育の推進に関する基本的な方針の変更に向けての意見についてです。

平成30年3月に策定された現行の消費者教育基本方針の対象期間は、令和5年3月末となっており、現在、消費者庁を始め、関係省庁において基本方針の変更の検討が進められていると承知しております。

消費者委員会としましても、基本方針の変更の検討に当たり、議論を深め、基本方針に盛り込んでいただきたい項目を取りまとめ、本日、消費者庁と文部科学省宛ての意見を決定いたしました。

近年の消費者を取り巻く大きな環境変化として、SDGsの重要性の一層の高まりや、コロナ禍等を契機とした急速なデジタル化の進展が挙げられます。

そこで、今回の意見では、第1にSDGs達成に向けて、消費者市民社会の一員として行動する消費者の育成、第2にデジタル社会における消費者被害の未然防止と被害回復に向けた対応について述べております。

第3に、また、EBPMを推進していくため、消費者教育の効果測定についても意見を述べております。

詳細につきましては、お手元の資料を御参照ください。

消費者庁と文部科学省におかれましては、可能な限り、基本方針の変更案に本意見の内容を反映していただきたいと考えております。

消費者委員会としましても、今年度末の基本方針の変更に向け、関係省庁の取組を注視しつつ、引き続き調査審議を行ってまいります。

私からは、以上でございます。

質疑応答

(問) 建議を出されるのが、多分1年半ぶりぐらいになるかなと思うのですけれども、意見にとどめることもできたのかなと思うのですけれども、その上で、あえて建議にされた思いとかという部分を、改めて伺えますでしょうか。

(答) これは、意見表明の仕方としまして、建議とか意見とかがあるわけですけれども、それについて、委員会の意見表明等の態様区分についての整理というものが、令和3年の10月になされておりまして、それによりますと、建議は、制度・運用の改正・改善等に向けた具体的提案と理由を含み、関係行政機関に対して、何らかの行為を促す意図がより明確なものという位置付けになっております。

そのことから、今回の建議において執行の強化、解釈の周知、注意喚起ということについて、具体的提案として関係行政機関に対して、行為を促す意図が明確だということでありまして、建議ということにさせていただきました。

(問) それは、もちろんだと思うのですけれども、あえて被害が多い、今まで注意喚起をしてきたけれども、なかなか被害の防止につながっていないというところで、改めてより一歩踏み込んでやってもらいたいという思いが、消費者委員会としてもあったと。

(答) それは、おっしゃるとおりです。

(問) 関連ですが、確認も含めてなのですけれども、今回の建議の中には、特商法の改正とか、消費者安全法の改正という、改正は含まれていないということですか、執行と解釈の周知と。

(答) そうですね。改正ということについては、そこまで踏み込んだ形にはなっておりません。

(問) そこでちょっと気になってくるのが、まず、消費者団体や日弁連などでは、10月に特商法の5年後見直しの抜本改正への提案をしていくキックオフの集会であったりとか、つまり去年改正がされましたけれども、5年後ということで、その一つのきっかけとして、まだまだ積み残されたものがあるのではないかということで、改正運動がこれから始まるわけですけれども、今回の建議がこういう問題があるよということでは、非常に参考になるのではないかと思いますが、消費者委員会としては、例えばここに出てくる建議の2でしょうか、二段階型の勧誘であるとか、つまり解釈は、確かにクレジット会社とか何かは、していないのだけれども、しないというか、自分の都合の良いようにやっているのだけれども、その法的な規制として何らかの形の強化とか、そういうのは、ないのでしょうか。

(答) それにつきましては、検討しなければならない課題がありまして、改正ということまでは及ばなかったという状況でして、ただ、消費者委員会として、こういう課題があるということについては、かなり蓄積はできておりますので、そういうことについて、自主規制で足りるかというような問題もありますので、もう少し時間をいただいて、検討を続けていくということを考えております。

(問) もう一点なのですが、もう一つ法律が出てきて、消費者安全法が出てきております。

消費者安全法は、確かにここに書かれてあるように、注意喚起をして、要するに悪質な、消費者への情報提供という形でやっておりますが、この中で、よく言われていることが、情報提供ということだけではなくて、本来、消費者安全法の中には、必要とあれば、要するに指示の要請の中に、特商法と同じような形の消費者の利益にかなうような、つまり、情報提供だけではなくて、事業者に対して指示ができると読み取れもしたのですけれども、そうなると、それは運用なのか、それとももう少しはっきりとした法改正が必要だったのかということで、たしか議論があったと思うのですけれども、そこの点も。

(答) 法改正と今おっしゃったのは、どの法律について。

(問) 消費者安全法です。そういうのは、なかったですか。

(答) そうですね、消費者安全法の法改正ということについては、今回は、特定商取引法の中の通信販売について、主として議論しておりまして、具体的にそこでどういう対応がなされているかということについて、特定商取引法と、それから消費者安全法が活用されているというような実態把握というのはしておりますけれども、それにプラスして消費者安全法の改正ということについては、議論が及んでいない状況です。

それについては、ワーキングで特に議論されていないし、それから、本会議のほうでも特に議論されていないので、それ以上は、ちょっと申し上げられない状況になります。

(問) もう一点だけ、この建議は消費者担当大臣ですね。

(答) はい。

(問) それで意見は、関係省庁と書いてありましたけれども、どこになるのでしょうか、関係行政機関というのは。

(事務局) 消費者庁と総務省と、あと消費者行政関係の省庁に全て。

(問) 例えば、今後の課題みたいな形で、決済とかが出てくると、当然ながら経済産業省、クレジットカード問題であるとか、そういうことが出てくると思うのですが、経済産業省は入っているということですか。

(事務局) 関係の行政機関、消費者行政の関係の行政機関には、全て参考で配付しております。

(答) 決済については、重要な問題だということは認識しておりますけれども、それについて、本格的に検討するには、もう少し時間が必要だということでして、今後の課題としておりますので、そういう意味で、経済産業省に向けて直接、決済について意見表明をすると、そういう状況には、現時点ではないと思います。

(問) どうしても、例えば定期商法の事例があったりとか、特商法の悪質商法の事例があったりするときに、支払い方法はどうなのかということを、いつも聞くと、クレジットであったりとか、つまり割販法であるとか、経済産業省が本来管轄する、指導するようなところが、ぽこっとあるのだけれども、それに対しての連携みたいなものを消費者庁が、執行に当たって、あまり重視されていないような、要するに情報提供はされているのでしょうけれども、というような感じを受けていたもので、ですので勧誘であるとか、被害の発生であるとかは、当然ながら決済と密接に関係があるので、そういうこともちょっと思ったのですが、決済は、これからの問題だと。

(答) そうです。どうもありがとうございます。

(問) 建議事項の1のところの執行を強化することというのは、要するに、これは、もっと件数を増やしてやりなさいという理解で良いのでしょうか。

(答) 件数ですか。

(問) 執行の強化といった場合に。

(答) 具体的に、広告表示についての特商法の11条とか、それから、12条というのは、誇大広告等についての問題ですけれども、そういうものについて、より活用するということが重要だということでして、その結果、件数が増えたということであれば、確かに件数が増えるということにはなると思うのですけれども、特に件数が増えるというようなことよりは、文字どおり執行強化ということで、そこについて、より徹底してと、そういう意図ですけれども。

(問) ありがとうございます。

もう一点、議論の中で出ているのでしょうけれども、恐縮なのですが、4のところの特商法と消費者安全法の注意喚起で、両法に限らず、関係する法制度を連携させた運用とありますけれども、これは、具体的なイメージというのは、どういう感じなのか教えていただけないでしょうか。

(答) それは、単独の法律でということではなく、ある事象に関して適用できる法律を広く探し出して、関連するものについて、どれか一つということよりは、可能であれば、連携して使うという形で、具体的には今回の問題について言いますと、特商法の問題だけではなく、消費者安全法の問題になる場合もあるので、両者を使うということでして、これは、そういう事例も現にあるものですから、そういうようなところにも示唆を得て、そういう方向で進めていくということが大事ではないかと、そういうふうに考えております。

(問) ありがとうございます。

事例もあるというお話でしたけれども、例えば、どんな法律をリンクさせてというのは、事例としてあるのですか。

(答) 報告書を見ていただくと分かると思いますが、報告書の何ページでしたでしょうか。特商法と消費者安全法と両方使った事例というのは、どこに出ていましたか。

(事務局) 事例としては、情報商材の関係ではないのですけれども、消費者安全法と特商法を連携して行っている事例というのは、すみません、ちょっと今すぐには出てきませんけれども、あると承知しております。

(答) 特商法が問題となる事例について、並行して消費者安全法の注意喚起をするということについては、有力な手段だと考えておりますので、そういう意味で、報告書にも書かせていただいていると、そういうことです。

(問) 直接出ていないのですけれども、霊感商法の検討会が、消費者庁でやって、その中の一つとして、消費者教育は出てきたのですね、消費者教育の重要性と。 今回、消費者教育の推進に関する方針 の変更に向けての意見が出ましたけれども、消費者庁であるとか、消費者委員会であるとか、これまで考えていることを、垣根を越えてということを、大臣自身がおっしゃっているのですけれども、委員長として、要するに今回の霊感商法の検討会で検討されています、その中でも、消費者行政に非常に密接なことがいろいろ言われてはいるのですけれども、消費者教育もあるし、相談窓口もあるし、何か受け止めとして思うことはありますでしょうか。

(答) 消費者庁の検討会が始まって1回目がなされたという状況ですので、とりあえずは、そこでどういう議論がなされるのか、重要な議論がなされると思いますので、それについて消費者委員会としても注目して対応していくということで、具体的に何か現時点でどうこうということは考えておりません。今後の様子を注視していく、そういう状況であります。

(問) 関連して、検討会の中では、例えば特商法についてとか、消費者契約法についてとか、法律の状況、被害救済、未然防止のために何ができるのか、できないのかというのを検討するということですけれども、そういう法律の、いわゆる法改正をして、そういう被害救済や未然防止につながるのかどうかと、実際それが可能なのかどうかというところについて、委員長のお考えをお聞かせください。

(答) 今、ここで自信を持ってこうだということは言えない難しい問題だと思っていまして、霊感商法のことについては、消費者契約法に、平成30年の改正で、一定の状況においては取消しができるという条文が入りましたけれども、その条文1つとっても、それの適用可能性とか、そういうことについて、考えるべき問題というのがたくさんありますし、それから、信教の自由とか、いろいろな問題もありますので、今、どうこうというのは、なかなか言えない状況で、困難な問題であるけれども重要な問題であるので、とりあえずは、消費者庁の検討会、それから法務大臣が議長となる会議も始まったということですので、そういう動きを注視しながら、消費者委員会としても、必要であれば対応するということでありまして、私の意見というのも、これは、消費者委員会の委員の方々の、必要であれば意見を伺いながら、という形になりますので、そういう方向で考えさせていただきたいと思っております。

(以上)