後藤消費者委員会委員長 記者会見

2022年3月31日
消費者委員会

日時

2022年3月31日(木)11:39~12:03

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

○後藤委員長 お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。

私からの報告事項は2件でございます。

まず、本日の本会議において、お手元の資料のとおり、「消費者基本計画工程表の改定素案に対する意見」を取りまとめました。

当委員会では、昨年12月に消費者基本計画工程表の改定に向けた意見を発出しました。

その後、消費者庁を始めとする関係府省庁では、その意見を踏まえつつ、工程表の検証・評価及び見直し作業を行い、取りまとめられた工程表の改定素案は、今月9日からパブリックコメントにかけられているところです。

当委員会においても、1月以降も引き続き関係省庁からヒアリングを行うとともに、パブリックコメントにかけられている工程表の改定素案については、3月10日の委員会本会議で消費者庁からヒアリングを行ったところです。

今回の意見では、総論としてコロナ禍やデジタル化等の社会状況の変化に伴って生じている新たな消費者問題への対応について触れつつ、施策を検証・評価することを可能とするための定量的な指標等の設定を行うこと等の消費者政策におけるEBPMの推進について指摘し、各論として、 消費者契約法については、検討会報告書から改正法案に反映されなかったと見受けられる事項について、引き続き検討すること。

アフィリエイト広告等については、報告書において、今後の課題とされたステルスマーケティングについて、実態把握、検討を行うことについて、それぞれ工程表に記載することを求めているほか、 明日4月1日に成年年齢が引き下げられることを踏まえ、成年年齢引下げ後の取組の重要性について改めて記載をしています。

また、年明けに発覚した産地偽装問題を踏まえた記載を新たに盛り込んでいます。

そのほか詳細は、お配りの資料のとおりです。

関係府省庁等におかれましては、意見の各項目について積極的に検討の上、可能な限り工程表の改定案に反映していただきたいと思っております。

次に、明日4月1日から成年年齢を20歳から18歳へ引き下げる改正民法が施行されます。これにより、18歳及び19歳の年齢層が未成年者取引取消権を喪失することになるため、20歳代初めで見られる消費者被害が18歳及び19歳の年齢層にも拡大することが懸念されております。

これまでに、消費者庁、文部科学省、法務省、金融庁を始めとする関係省庁が連携して、消費者への周知や消費者教育の充実等に取り組んでこられたと承知していますが、消費者委員会としても昨年12月に、「成年年齢引下げに伴う若年者の消費者被害防止に向けた対応策に関する意見」を発出しました。

これにより、関係省庁による更なる取組の充実を促すとともに、一定程度後押しできたのではないかと思っております。

また、消費者委員会として、3月18日に、「これからの18歳を考える~成年年齢引下げと若者の消費者被害の防止に向けて~」というテーマで、消費者問題シンポジウムを開催し、約300名の方にオンラインで参加(視聴)申込みをいただきました。

シンポジウムでは、第1部で私からは「成年年齢引下げと若者の消費者被害の防止に向けて」と題し、基調講演を行いました。

次の第2部では、学識経験者、学生、関係省庁等の方々にパネリストとして御登壇をいただき、パネルディスカッションを行いました。

改めまして、シンポジウムに御協力、御参加いただきました方に、この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。

関係省庁におかれましては、施行後も消費者教育や制度整備等の取組を継続的に行っていただきたいと考えております。

また、社会全体への注意喚起が重要ですので、報道関係の皆様におかれましても、引き続き、各種報道を通じて注意喚起に御協力をいただければ幸いです。

本日は、年度末の最後の会見ということでございますので、来年度に向けた抱負等について一言申し上げたいと思います。

コロナ禍の拡大から2年が経過し、消費者を取り巻く環境の変化は新しい生活様式のもと、徐々に浸透してきたように思われます。

一方で、それに伴い、消費者行政には新しい課題が日々現れています。今後の消費者政策の推進においても、ライフスタイルの変化や、デジタル化の進展等を念頭に、引き続き、積極的に調査審議に取り組んでまいりたいと思います。

更に、先般、閣議決定された消費者契約法、消費者裁判手続特例法の改正法案の国会での審議状況を注視しつつ、改正特商法、預託法、改正公益通報者保護法や、取引DPF消費者保護法の施行等に向けた取組を着実に進めることも重要であると考えております。

消費者委員会としても、状況を注視しつつ、必要に応じ、調査審議を行ってまいりたいと思います。

また、委員会では、本年1月に2つのワーキング・グループを設置しました。

1つは、若年層の消費者トラブル防止への懸念やデジタル化が進展する中でのSNSの投稿や、広告を端緒とした消費者問題等をテーマに、「デジタル化に伴う消費者問題ワーキング・グループ」を設置し、本年2月に議論を開始しました。

もう一つは、悪質商法における被害回復の実効性確保をテーマに、「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」を再開し、これらも本年3月に議論を開始しました。

今後も両ワーキング・グループにおいて、積極的に議論を行っていく予定であります。

そのほか、消費者委員会としては、先ほど申し上げました消費者問題に限らず、消費者被害の状況が深刻なものや行政による取組が不十分と考えられるもの等については、今後、重点的に調査審議を通じて取り上げていくとともに、必要に応じて建議等を行ってまいりたいと思います。

私からは、以上でございます。

質疑応答

(問) 先ほど最後に、来年度に向けての抱負をいただきましたが、今年度を振り返って後藤委員長が印象に残っている事案ですとか、あと、改めてこれは課題だなと感じたことがありましたら教えてください。お願いします。

(答) この7次の消費者委員会、昨年9月に発足しまして、9月以降、消費者基本計画工程表の改定に向けて関係省庁からのヒアリングを重ねつつ、意見を発出してきました。

そのほか、成年年齢引下げや各種法制度など、種々の課題について調査審議を行うとともに、オンラインシンポジウムという新たな取組も行うことができました。

また、2つのワーキング・グループにおいて議論を開始したところでありまして、明日からの新年度においても積極的に調査審議を行っていきたいと思います。

そうした中で重要なものということで感じているのは、やはりデジタルの問題でして、デジタルを通じた消費者トラブルというものが顕在化しているという状況ですので、それに対する対応ということについては、ワーキング・グループの中の1つで扱うとともに、今後も継続的な課題として取り組んでいく必要があると思っています。

それから、成年年齢引下げについても、いよいよ明日からということでありますので、むしろ明日からがスタートというつもりで、実際にどんな被害が生ずるのか、事業者の自主規制というようなことで足りるのか、そういうところの推移を見つつ、状況によっては法改正も視野に入れるということもあり得ると思いますけれども、より注視していきたいと考えております。

以上です。

(問) 今の成人年齢の引下げについての追加で質問なのですけれども、百数十年ぶりの大改正ということになると思うのですが、なかなかまだ世の中全体が、認知は進んだものの、まだ理解までは深まっていない印象を受けてはいるのですけれども、その中で政府のほうも、より保護者とか、企業にも取り組んでもらうための方針を示すということを言っていますけれども、この前のシンポジウムも、かなり多くの方々に見ていただいたのではないかと思いますけれども、後藤委員長として、更に浸透させていく、更に広げていくために、委員会として、もしくは政府というか、それ以外として、どういったところに更により積極的に働き掛けていきたいなと感じていらっしゃいますでしょうか。

(答) 広報活動については、今までも各省庁、力を入れて取り組んできていますけれども、その効果がどういうふうに出ているのかという検証、これは、やはり非常に大事なことでありまして、それを踏まえた上での対策ということが大事になってくると思います。

それから、成年年齢が18歳に引き下げられることへの対応として、やはり長期的な展望が必要でして、家庭の中でのしつけというようなところに、最初はなってくると思うのですけれども、お金を無駄遣いしてはいけないとか、そういうところから一歩一歩ということであって、発達に応じた消費者教育ということが非常に大事だと思います。

もちろん、学校教育の場での消費者教育は大事でありますけれども、家庭ということも考えると、その家庭を営んでいるお父さん、お母さんに対しても周知、広報をより強く打ち出すということで、お父さん、お母さんに対しても関心を持っていただいて、お子様の成長を見守るという中に、そういう消費者教育ということを据えていただく、そういうことが大事なのではないかと思っています。

(問) ありがとうございます。

私も含めて、既に大人になっている一人一人が自覚を持たなくてはいけないなと、改めて感じております。

もう一点なのですけれども、とはいえ、4月、明日から変化して、どういう影響が出てくる、既に懸念されていることもあるとは思うのですけれども、実際どういう変化が出てくるかというのは、なかなか見えにくいというところもあるのですけれど、通常の消費者委員会での、その工程表ですとか、意見書に対するヒアリングとかというペースでの影響の判断というか、影響の考慮というようなスキームは変えられないのか、今年は少し特殊な事情も兼ねて、定期的に何がしか、この成年年齢引下げに関する影響については、別途ヒアリングだったりとか、調査するみたいな仕組みを取り入れられるのか、何かその辺りの、今の後藤委員長のお考えというのがありましたら、教えていただけないでしょうか。

(答) 消費者委員会として、具体的に、今年、成年年齢引下げの初年度ということで、どういう取組をするかということを、まだ具体的に打ち出すという段階にはなっていないのですけれども、やはり初年度ということに関しては、従来とは違った取組というのが必要だと、私の個人的な意見になるのですけれども、そういうふうに思っています。

そのための取組というのは、1つは、先ほどのワーキング・グループがあり、そこではデジタルという角度から行っていきますが、更に、今後どういう被害が生じてくるか、今まで、確かにこういう被害が生じてくるという懸念というのは、各方面からたくさん示されているわけでありますけれども、その懸念を受けて、事業者側で自主規制をする動きも徐々に広がってきていますので、具体的にどういう被害が起きてくるかということを、従来の懸念されていることを参照しつつ、よりピンポイントに、ここが大事だというところを探り当てる、そういうことが大事だと思っています。

先ほど申し上げた家庭教育等も含めた、啓発という問題以外に、具体的にどういう被害が起こってくるかということについて見ていく。それへの対応として、ある被害に特化した相談窓口の拡大とか、あるいはより一般的な方法として、若者向けに特化した相談窓口の拡大など、そういうことにつながっていくと思いますので、その辺については注意して、初年度、それから2年度、力を入れる。そういう年だと思っています。

(問) もう一個少しテーマを変えて、今回の素案の中にもあった、いわゆる産地表示の話なのですけれども、かなり不安が広がった中で、これも、いわゆる原料原産地表示も今日で終わって、明日から完全移行になるという、実はそういったタイミングもあるのかなと思うのですけれども、こちらについても今後継続的に、KPIを示されたりして、引き続き注視されていくということは、方針として決まっているとは思うのですけれども、何かこの産地表示に関して特出しで、何か検討したいというようなことは、委員の皆さんからの意見ですとか、後藤委員長の認識としてはいかがでしょうか。

(答) これについては、今のところ、農林水産省による実態調査、それから消費者庁及び農林水産省による対策の公表があり、実態調査の結果発表は2月1日だったと思いますけれども、それから対策の公表は3月18日だったと思いますけれども、そういう意味で、関係省庁が連携して一定の対応がなされていると認識しておりますので、当面は関係省庁の取組の動向を注視したいと考えております。

(問) 改めて、別の生鮮とか農水産物に広げての議論を検討されるとか、また、この原原表示がスタートしますけれども、それについて、また改めて状況を確認されるとかというのは、具体的に何か決まっているものはないということでしょうか。

(答) 消費者委員会として具体的に決まっていることは、現時点ではないですけれども、本会議での質疑の中でも食品に関する問題というのは、非常に委員の方々の関心が高くて、食品全般に対する表示の問題とか、トレーサビリティの問題とか、そういうことに関しては、関心度が高いということから、委員の方々の意見をお聞きして、状況によって対応するということが考えられると思います。

(問) 先ほどの食品表示の件に関連して、先ほど委員長は、関係省庁と連携しているという御評価がありましたが、アサリの表示は、たしか2月に熊本県知事が来庁されて、それから、多分2か月も経たないで見直しになったかと思います。こうした動きのスピード感については、どのように皆さんは受け止めていらっしゃいますか。

(答) 今のところ、関係省庁のスピード感ということであれば、スピード感を持って対応していただいていると認識しております。

やはり、現時点でアサリの原産地表示の問題については、大きな問題だと思いますので、それ相応の対応をする必要があるということは確かなことであって、先ほど申し上げたような対応を、農水省を始めとして、消費者庁ももちろんですけれども、行っているということでありますので、そのスピード感ということであれば、現時点で、特にスピードが遅過ぎるというようなことを申し上げるような状況ではないのではないかと考えています。

(以上)