後藤消費者委員会委員長 記者会見

2021年9月7日
消費者委員会

日時

2021年9月7日(火)18:30~18:54

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

○後藤委員長 9月1日に第7次消費者委員会が発足し、本日、初回の消費者委員会本会議が開催されました。

その会議の場において、委員の皆様の互選により委員長を拝命いたしました後藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

まだ第7次の委員会が発足したばかりですし、私自身が委員長に指名されたのも先ほどですので、委員長として今後取り組むべき課題を詳しく御説明できるような状態ではありませんが、一言御挨拶を申し上げます。

私は、早稲田大学で民法と消費者法を担当しています。消費者委員会との関わりとしましては、第4次の消費者委員会で消費者契約法や特定商取引法の専門調査会、それから成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループなどに関わらせていただきました。また、東京都の消費生活対策審議会で、都が取り組むべき課題の審議などに関わってきました。こうした中で、消費者行政には新たな課題が次々と現れてくることを実感してきました。昨今の状況を見ましても、デジタル化の進展、新型コロナウイルス感染症の拡大など、社会経済情勢の変化や消費者ニーズの多様化に伴い、新たな課題が現れていると認識しております。

消費者委員会には、こうした動きを的確に捉えて対応していくことが求められます。消費者行政全般の監視役である消費者委員会の委員長としての重責を担うことに、身が引き締まる思いでおります。

デジタル化の進展との関係で申しますと、今後、AI等のデジタル技術を用いた事業活動によって、消費者にとって利便性の向上が期待されますが、他方で、より複雑化した技術を消費者が理解することが一層困難になり、消費者トラブルにつながるおそれがあります。こうしたトラブルについて、消費者被害の防止、抑止の観点から、継続的な調査審議を行うことが必要です。

これとの関連で、本年6月に成立しました特定商取引法・預託法の改正では、消費者の承諾を得た場合に、契約書面等の内容を電磁的方法で提供することができる旨の規定が入りました。しかし、不意打ち的な勧誘などにおいて、消費者による真意に基づく承諾が可能なのかといった点で、消費者団体など各方面から懸念が示されています。消費者庁では、これに対応するための検討会が始まっています。こうした動向を注視しつつ、状況によっては消費者委員会としての意見表明などを行うこともあると考えています。

さらに、成年年齢の引下げも来年4月に迫っています。成年年齢が引き下げられますと、18歳、19歳の者が未成年者取消権を失い、悪質商法の狙い撃ちにされるとして、法案に反対する意見が多く出されました。

デジタル化にせよ、成年年齢の引下げにせよ、それによる被害を防止する仕組みとセットで進めることが必要で、新たな制度を導入する際には、それにより取り残される人が出ないようにすることが不可欠の課題です。弱い消費者、ぜい弱な消費者という視点は、個人的には消費者法の研究者として大切にしてきたものです。消費者委員会の委員長としても、常にこのことを念頭に置きたいと考えています。

コロナ禍の中ですが、消費者委員会としての機能を十分に果たすためには、消費者団体等各方面との意見交換や、消費者委員会としての取組の成果等の発信を強化していくことが不可欠です。新型コロナ感染症の防止に留意しつつも、オンラインによる実施等工夫をしながら、消費者問題の現場との結び付きを心掛けていきたいと考えています。

私自身の専門は限られており、消費者委員会が扱う多岐にわたる課題に対応するには全くの非力ですが、幸い消費者委員会には深い御知見と多様なバックグラウンドを持つ委員の方々がお集まりです。

また、事務局の皆さんには、第4次の消費者委員会における専門調査会などで随分助けていただきました。あまり多くない人員配置の中で丁寧なサポートをしていただき感嘆しておりましたが、この度、改めてお世話になることになります。

委員の皆さんと十分相談し、事務局の皆さんに助けていただきながら、第7次の消費者委員会を運営していきたいと考えています。

私の冒頭での発言は以上にしたいと思います。これからいろいろとお世話になる機会が多くなると思いますが、どうかよろしくお願いいたします。

以上です。

質疑応答

(問) 先生に1つお伺いしたいことがあります。第4次の消費者委員会に携わられて、これから第7次の委員長として活動されるということですが、第4次の頃と今を比較しまして、特に消費者をめぐる環境で大きく変化したなと感じられている部分がありましたら教えてください。

お願いします。

(答) どうもありがとうございます。

第4次と、これから第7次でありますけれども、消費者をめぐってどのような場面で大きく環境変化があったのかということでありますが、これにつきましてはコロナの問題が非常に大きいと思います。デジタル化もコロナの問題と結び付いているということでありまして、先ほどぜい弱な消費者ということを念頭に置きたいというお話をさせていただきましたけれども、デジタルという場面では、ある意味ほとんどの人がぜい弱な消費者に当たるわけでありまして、ぜい弱な消費者という視点が、特にデジタルの場面で重要になると認識しております。

それから、第4次のときには、私は消費者契約法専門調査会でいろいろ議論をさせていただいたのですけれども、平成28年と平成30年に消費者契約法の改正がありまして、今、その次の改正に向けた検討会の報告書が取りまとめられるという段階になってきております。

そういうときに、消費者をめぐる環境変化ということで私が思っていますのは、消費者というものを等身大と言いましょうか、ありのままに捉えるという見方が進んできたと思います。4次から7次の間にも、消費者の捉え方についていろいろ新しい知見が出てきている。消費者を単に情報・交渉力の格差という観点から事業者と対比して捉えるということではなく、より消費者の実態に合った捉え方が出てきている。取引形態につきましても、デジタルプラットフォームを介して消費者と消費者の取引も増えています。こうしたことが、この数年の大きな流れと認識しております。そういう部分を考えるということが従来あまり強く念頭には置かれていなかったと思いますけれども、私としてはそのようなところに関心を持っています。

以上です。

(問) 私も関心のあるテーマとして、委員長もおっしゃっていた来年に控える成年年齢の引下げというのが幾つかある中の目下の大きな一つのテーマだと思うのですけれども、残された時間が僅かな中で、どういったことを消費者委員会としてやっていきたいというように今、お考えでしょうか。

(答) 消費者委員会としてということは、これから委員の皆さんと御相談しながら、どういうことをやっていくかを決めていくということでありますけれども、私が今、成年年齢引下げとの関係で考えていることは、成年年齢引下げが間近に迫ったということでありまして、各省庁横断的にいろいろ準備をしてきているわけでありますけれども、新型コロナ感染症の発生が、それにややブレーキを掛けたという言い方が適切かどうかは分かりませんけれども、そういうことがありまして、例えば学校で出前講座などを開くという計画をしていたのだけれども、その出前講座は結局コロナの関係で開催できないことになって、先延ばしになったということがございます。

そのようなことで考えますと、コロナに際して、実際に出前で話をしたりするという機会が失われているという分、デジタルを活用した教育、若者に対する啓発等をするということが非常に大事になってきていると思います。

やはり核になるのは消費者教育の問題でありまして、消費者教育の中でも、より具体的に教育していくということが必要でありまして、どういう被害に遭うか、例えばクレジット関係で被害に遭うとか、貸金関係で被害に遭うとか、そのようなことについて、単に成年年齢が引き下げられて、18歳、19歳が未成年者取消権を失うから気を付けましょうというようなことではなく、こういうことをしたらこういう被害に遭うので、こういう注意が必要だということを具体的に示していく。そのためには出前講座などの直接の対面形式の企画が大きな役割を果たすということでありますけれども、それに代わるものとしてのデジタルの教育に力を入れることが大事ではないかと思っています。

いろいろな工夫がありまして、例えば高校で授業自体がオンラインで行われているという状況で、消費者被害の問題について、消費生活センターの相談員の方に、高校生向けの授業をしてほしいという場合に、出前講座というのは難しいという状況であっても、例えば高校と消費生活センターをオンラインでつないで、高校と各家庭にいる生徒をオンラインでつなぐ。そのように2か所をオンラインでつなぐというような工夫がなされているという話も聞いておりまして、そうなると、技術的にできる範囲は限られる、それなりの設備とかがないとできないということもあるかもしれませんけれども、そのような形で、デジタルによる消費者教育を強く進めることが必要だろうと考えております。

以上です。

(問) 今のお話に関連しまして、先生は先ほど単に引き下げるというのではなく、具体例を場面とかで示しながら教えていくことが大事だというお話がありました。これから成年年齢引下げによる対象の若者が、このことを自分事として捉えるためには、どのような対策や教育が必要でしょうか。

お願いします。

(答) 自分事として捉えるということに関しては、今後の長期的な話でありますと、これから現実に直面する層は、今の高校2年生ですが、その段階というよりも、やはり小学校から段階的に、お金の使い方というようなことと、それから契約とはどのようなことなのか。契約の中でも例えばクレジットなどだと理解しにくい部分がありますので、年齢、発達に応じて段階的に教育していく。それから、段階的に教育するということとの関係で言いますと、小中高の連携というのでしょうか、ある部分については繰り返して復習を入れるような形で、また新しいところに進む。そのようなことが大事であると思います。

学校以外のところにどれだけ期待できるかということもありますけれども、家庭の中で子供に親が教えることもたくさんあって、親が教えるという場合に、実は親自体も、契約の仕組みとか成年年齢が引き下げられるということがどういう影響を与えるかということについて、あまり的確に認識していないという状況があるのかもしれません。そのように考えますと、早いうちから若年層への教育を考えることが大事だと思いますけれども、さらに、家庭のお母さんとかお父さんが子供とともに学べるような機会を増やしていく、このようなことが大事なことなのではないかと思います。

これも委員の皆さんといろいろ御相談しながら、今後、成年年齢引下げについての対応を考えていくことになりますけれども、私が現時点で個人的に考えているのは以上のようなところになります。

(問) こういった委員長会見という形でいつもコミュニケーションを取っていただき、情報発信していくと思うのですけれども、初回ということなので、メディアに何か期待されていることとかがあれば、ぜひ教えていただけないでしょうか。

(答) すみません、今、よく聞こえなかったのです。

(問) 委員長として、メディアに対して期待されていらっしゃることがあれば、是非教えていただけないでしょうか。

(答) メディアの方々に対してということでありますと、非常に工夫していろいろな啓発を目的とした番組を提供していただいているということであって、それは非常にありがたいと思っています。

具体的に成年年齢引下げとの関係で、若者ということを念頭に置きますと、いつもテレビで見ている人というのでしょうか、あまり法律に詳しくないようなタレントさんなんかでも、その人がいろいろな意味で非常に影響力を持っているということがありますので、そのような人たちに啓発等の場面でもっと活躍していただいてもいいかなと個人的には考えているのですけれども、今のお話も、委員の方々といろいろ相談しながら考えていかなければいけないことでありまして、私個人はそんなことを考えておりますけれども、その程度でよろしいでしょうか。

もう少し発言したほうがよろしいということであればしますけれども、あまり個人的な見解を出すような場ではないと思いますので、今、申し上げた範囲で受け取っていただけるとありがたいと思います。

(問) ありがとうございます。

引き続き、我々もいろいろな質問をしていきたいですし、是非いろいろな意見を聞かせていただければと思います。よろしくお願いします。

(答) どうもありがとうございます。よろしくお願いします。

(以上)