山本消費者委員会委員長 記者会見

2021年6月18日
消費者委員会

日時

2021年6月18日(金)12:00~13:00

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

○山本委員長 しばらく記者会見をしておりませんで、大変失礼いたしました。

今日は、随分久しぶりに皆さんとお会いすることができて、大変うれしく思います。

本日の報告事項ですけれども、2件ございまして、まず1つ目は、消費者基本計画及び工程表の改定についてです。

消費者委員会では、4月に発出した意見への対応状況あるいはパブリックコメントがこの間に行われておりましたので、その結果等について、先週10日の本会議におきまして消費者庁から説明をいただき、改定案に対する意見を取りまとめました。

この意見を踏まえまして、消費者基本計画及び工程表は15日にそれぞれ決定をされております。

当委員会では、昨年の秋以降、コロナ禍と緊急事態下の消費者問題をテーマとして、関連施策等の進捗状況について関係省庁からヒアリングを重ねるとともに、必要な取組について議論を行ってまいりまして、この基本計画、工程表につきましても、まず何度かと言いますか、随分多くの回数議論を重ねてまいりました。

今回の見直しでは、コロナ禍における消費生活のデジタル化の加速など、消費者を取り巻く環境の著しい変化に対応するため、工程表だけではなく、計画本体についても改定をされているということで、大変時宜にかなった適切なものであったのではないかと評価をしております。消費者庁では、大変な作業で御苦労をいただいたことになるわけですけれども、適切なものであったと評価をしております。

今後、計画及び工程表に基づいて、関係省庁において積極的に取組が進められることを期待しております。

2つ目ですけれども、「特定商取引法及び預託法における契約書面等の電磁的方法による提供についての建議」を出したところでございますけれども、それについての話です。

まず、この建議は、2月4日に発出をしておりますけれども、その趣旨について改めて確認をしておきたいと思います。

これは、既に2月4日に建議を出しており、また、その後に記者会見も開いておりまして、その際にも質疑をしたことでございますので、特に新しいことではないのですが、改めて確認をしておきたいと思います。

契約書面等の電磁的方法による提供を可能とすることにつきましては、特定商取引法、預託法が消費者に十分な情報提供をし、その合理的な意思決定の機会を確保して、消費者トラブルを防止するという観点から、事業者に対して、契約書面等の交付を義務付けているということがございます。

これは、一般の業法等と異なりまして、特商法、預託法に関しましては、特に事前の許認可の制度を取っているわけではなく、したがって、いろいろな事業者が過去にもトラブルを起こしてきたということがあり、非常に大きな被害が発生しているということがあり、それに対応するために、そういったリスクを軽減するという観点から作られている法制度であって、その中で契約書面の交付が意味を持っているということでございまして、また、契約書面等は、交付時がクーリング・オフ期間の起算点となり、消費者の権利行使、被害の救済を図る上でも重要な機能を果たしているといったことがありますので、電磁的方法による提供を可能とする場合には、そのような契約書面等の制度趣旨、機能が維持されることが重要であり、それが必須の条件であると建議をしております。

それを前提とした上で、更なる消費者保護を図る観点から、デジタル技術を活用した取組を実施するべきであると。

先ほど申し上げたことが建議事項の1に書かれているわけですが、今、申し上げたデジタル技術を活用した消費者保護のための取組ということが、建議事項の2に書かれております。

したがいまして、デジタル化を消費者行政の分野で検討する場合には、利便性を向上させることだけでなく、消費者保護を十分に図るという両面を考え、その両立を図るための包括的な視点からの検討が重要であろうと考えて、それで建議を出したということでございます。

この建議が出るまで、あるいはその後のプロセスについて申し上げますと、もともとは規制改革推進会議第3回成長戦略ワーキング・グループ、これは昨年の11月9日に開催された際ですけれども、特定継続的役務提供という取引類型における概要書面及び契約書面の電子化が取り上げられたということです。いわゆるオンラインで完結をするものについて議論がされました。

その後、公の場におきましては、消費者委員会の今年1月14日の本会議におきまして、特定商取引法の全ての取引類型、通信販売については既に制度がありますので、これを除くわけですけれども、及び預託法における契約書面等について、消費者の承諾を得た場合に限って、電磁的方法により交付することを可能にするということ。

それから、次期の通常国会に、これは、このときから見て次期ということですが、次期の通常国会に提出予定の特定商取引法及び預託法の改正法案で改正を行う予定であるということを説明されました。

今年の1月14日に本会議において、そのような説明を受けたということです。そして建議を2月に発出し、今年の6月9日に法案が成立しました。

このプロセスについてですけれども、私の専門分野であります行政法の分野で、もろもろの法令の改正をする際には、立法事実等の調査を踏まえた上で、関係者の意見を聞きながら、オープンな場で丁寧な議論の積み重ねをするのが、一般的であります。これは皆さんもよく御承知のとおりです。正式な審議会ということもありますし、あるいは法令には基づかない、いわゆる懇談会と言われるもの、検討会とか研究会とか、そういった場を作るとか、あるいは有識者からヒアリングするとか、そういったことをしながら法案を作っていくのが普通でありまして、それと比較いたしますと、今回の法案提出までのプロセスにおいては、そういった十分な検討がなされたとは言えないのではないか。そのことは否定できないと思います。

これは、前に建議を出した後の記者会見においても質問があり、私が、そのようにお答えをしたところです。

その事実の認識は今でも変わっておりません。

今後のことですけれども、政省令あるいはガイドライン、通達の策定、整備をするということです。

これにつきましては、スケジュールを明らかにするとともに、その検討は透明性を持って消費者サイドからの意見も十分聴取して行わなければならないと思います。

この点も建議の中で、もし、このような電磁的方法による交付をするのであれば、当然そのようなプロセスを経なくてはいけないと指摘しているところです。

技術的な事項については、その分野の専門家の意見等を踏まえて、十分に調査をして、デジタル技術を活用して、更なる消費者保護を図るという観点から、やはり検討しなくてはいけないのではないかということです。

消費者委員会として、どう取り組んでいくかということですけれども、法律の附則におきまして、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において、政令で定める日とされておりますので、恐らく、施行されるまで、かなり検討が重ねられると思います。2年を超えない範囲ということですので、少なくとも2年近くは掛けるのではないかと思います。

法の施行がされるまでの間、建議への対応について特命担当大臣に対して、その実施状況の報告を求めるとともに、政省令等の策定、整備について、必要に応じて、消費者委員会においても調査・審議を行ってまいりたいと思います。

具体的には、消費者庁における検討の状況を注視しながら、随時報告を求め、消費者委員会としても検討し、随時意見を述べるといった対応をしていきたいと考えております。

本日の本会議の場におきましても、この点について委員からの指摘があったところですけれども、建議に対して正式な回答が来るまでは、あるいは少し時間が掛かるかもしれないと思っております。本格的に検討を始めますと、結論が一定程度見えるまでは、答えることが難しいだろうと思いますので、時間は掛かるのではないかと思いますが、しかし、その間、何も消費者委員会が消費者庁から状況を聞かないで、消費者委員会として何も言わないということではなく、これだけ明確な建議を出していることですので、消費者庁から随時どういう状況になっているか、どのような検討状況になっているかということを聞き、そして、消費者委員会として、それに対して消費者庁に意見を言っていくことは、当然しなくてはいけないと思っております。

さらに、附則におきまして、書面交付を電子化する規定の施行後2年を経過した場合において、規定の施行の状況について検討を加えると、これは、したがって、更に先の話になりますけれども、検討を加えて必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずることと定められております。したがいまして、法が施行された後も消費者委員会において、契約書面等の電磁的方法による提供に伴う取引の状況あるいは法令等の運用状況等を注視して、政省令等の運用に対して、随時調査・審議を行ってまいりたいと思います。

この点につきましても、建議の中で、法が施行された後に、十分に監視をしていく必要があると指摘していたところですので、そのことを実施していきたいと思っております。

私からは、以上となります。

質疑応答

(問) 特商法の建議の関連の質問ということで、先ほど山本委員長からプロセスについてのお話の中で、十分な検討がなされたとは言えない、そういうことは否定できないというお話がありました。

これは、再三国会の審議でも、議論が拙速であるとか、どうして有識者検討会が報告をまとめた後に、急にこういう話が出てきたのだということは何度も指摘されたのですけれども、その度に消費者庁が言ってきたのは、消費者委員会に意見を聞いたと、そういう答弁をずっとしてきました。その1点でした。業者とか、消費者サイドの委員の人、いろいろな人立場の人が集まっている消費者委員会を通していますということでした

でも、今の山本委員長の話だと、それだけでは十分だとは言えないという思いお持ちだと思うのですけれども、このかい離というか、消費者委員会がアリバイでよく使われているなと、私は聞いていて思ったのですけれども、そういう消費者庁の態度については、どう思いますか。

(答) 消費者委員会としての建議は、先ほども申しましたように、もしこれを電磁化する場合には、こういう条件が必要であるということでして、それ以上のことは言っていなかったわけです。

これは、消費者委員会において、1つには、委員の間にも、意見の違いがあって、積極的に考えていくべきではないかという立場の方と、むしろ否定的に、進めるべき話ではないという方と、それから、その中間にいろいろなニュアンスの意見の方がおられて、その中でまとまる線として、もしこれを進める場合には、こういった条件が必要であるということは、コンセンサスが得られ、それは消費者委員会として、はっきりと言っておかなくてはいけないと考えて、建議を出したということです。

消費者庁との関係ですけれども、特に消費者庁から、立法事実等に関していろいろな説明があって、それを受けて建議を出したわけではなかったのです。そういう状況で、全くオープンな場で議論がされていなかったことであり、しかし他方で、非常に時間は切迫していましたので、その中で、消費者委員会としてできることをやろうということで、できる範囲でヒアリングを行って、内部でいろいろ議論をして、建議を出したのです。

ですから、特商法、預託法のほかの部分については、ずっと議論をして、その上で法案を出していますから、もちろん思いとしては、消費者庁に、そこはもう少し議論を重ねた上で出していただきたかったということはありますし、確かに答弁におきまして、消費者委員会と、その建議が引用されたということがありますが、しかし、今申し上げたような状況、つまり、委員会の中で、最小限のコンセンサスが得られたところについて建議を出したのであり 実は、前提には、いろいろな議論があり、あるいはいろいろな意見があったということが、伝わりにくい形で、消費者委員会の建議が引用された部分があったのではないかという感じはあります。

それから、消費者委員会としては、消費者庁からいろいろな資料等の提示があって、その上で議論をしたわけではなく、あくまでもできる範囲で建議をまとめたのであり、それ以上に何か積極的に、電磁化を進めるべきだという意見を多くの人から聞いたわけではありません。事業者としては、訪販協から聞きましたけれども、それ以上のところまでは、ヒアリング等を公の場で行ったわけでもございません。そこのところが、もし、必ずしも伝わらない形で引用されていたとすれば、それは少し消費者委員会の建議とか、あるいはその審議のプロセスとは違うのではないかという気がいたします。

(問) お話の中にもあったのですけれども、消費者委員会が出されたその建議の前提になったのは、もし、これを進める場合にはというところで、最小限のコンセンサスが得られたところを、という話だったのですけれども、その本来なら、その前ですね、これを進めるべきなのかどうなのかというところの議論から出発するべきことであったのではないかと、それは検討会でそうした議論があっても良いでしょうし、そういう議論を消費者委員会の中でもしてみても良かったのかもしれないと、そこが全部飛んでしまって、とにかく入れるに当たって何か言いたいことがあれば言ってくださいみたいな流れになってしまっていた。これは、その話の中でもありましたけれども、十分な検討がなされたとは言えないという、そのお話の背景には、そうした流れがあったということなのですかね。

これは意見ということですよね。

(答) そうですね、委員の中で、意見がいろいろありましたので、したがって、絶対これをやるなという形で、建議をまとめることは難しかったのですね。もし進める場合には、もしも電磁化をする場合には、こういう条件をという形で言ったのは、今、御指摘がありましたように、要するにそれ以上のことを言えるだけのプロセスがなかったので、そこのところだけ言うしかなかったということですね。そのプロセスがなかったので、委員の間でもいろいろな意見が分かれたのです。

(問) そのプロセスがなかったので、委員の中でもいろいろな意見があったということは、そもそも論の議論から離れられないという側面もあったと思いますし、これをやるべきなのかどうかということ、契約書面の電磁化を例外的に認めるべきなのかどうかというところの議論も、その前提としては、委員会の中でも、ちょっとしないといけないわけですね、そういう意見を持っている人もいて、なかなか議論の論点が絞りづらかったという、そういう話なのですか。

(答) どうしてもそのレベルの話になると、デジタル化の是非のようなそもそも論になってしまうところがあります。しかし、この問題は、具体的に電磁化の方法としてどういうやり方が考えられるのか、それについて事業者がどういうニーズを持っているのか、特商法の取引類型にはいろいろなものがありますけれども、それぞれの取引類型について、具体的にどのような形で事業者が電磁的な方法で書面を交付することを考えているのか、そして、それには消費者にとってどういうリスクがあり、あるいはメリットがあるかという、その辺りの細かい議論を詰めないと、結局非常に一般的な話になってしまうのですね。

ですから消費者委員会としては、本来は、電磁的な方法による交付については、そこのところを議論しないといけないはずであるという意図で、あえてそこのところにフォーカスした形で建議をまとめたのです。

(問) あえてまとめた、その裏にある、本来は、こうしたところを議論してからというか、議論すべきだ、こういう問題を、こういう点において法改正をするならば、その前提として、そうした細かい取引類型ごとに見たり、業者の要望がどこにあるのかを見て、そして消費者の保護が図られるのかと、それを狙ってというか、あえて出した建議なのですけれども、それが伝わったと思っていますか。

(答) もう一つ付け加えますと、これは、私個人の見解になってしまうのですけれども、いわゆる電磁的な方法による交付という問題だけを取り出して議論することに、非常にやりにくいところがあると思うのですね。そもそも特商法あるいは預託法において、あるいは消費者保護全体のやり方としてデジタル技術をどう使っていくのか、あるいはそれにどう向き合っていくのかという中で、考えないといけない問題で、それが電磁的交付を認めるのですか、認めないのですかという形の問題に収れんされたというか、そこだけが切り取られたところに、非常に議論の難しさがあったのではないかと思います。

というのが、先ほどのつけ足しですけれども、消費者委員会の建議が伝わったかどうかという点については、委員の中にもいろいろな意見、感覚を持った方がいたのは確かです。

私は、記録を読んだだけですけれども、確かに中には、建議の意図が十分反映されているのかどうか、あるいは少なくとも、読んだ人が、建議というのはこういうものだと持たれるイメージと、実際の建議との間に差が生じているのではないかと懸念される部分があったのは、確かですね。

(問) 山本委員長の御専門である行政法の考え方で、いわゆる立法事実に基づいた法の議論というところで、最初、御発言があったと思うのですけれども、オープンな場でどれぐらいの期間が必要なのかというのは、ケース・バイ・ケースというところもあるのではないかなと思います。

 今回で言うと、特商法とか預託法もありましたし、ほかの分野でいうと、入管法とかもありましたけれども、山本委員長が今回、問題だなとお感じになった、立法事実が不十分だとお感じになった点は、そのプロセスなのか、そもそも基となる調査や情報量などの不足、どちらが大きいとお感じになっていらっしゃるのでしょうか。

(答) 基は、やはり調査なのでしょうね。調査をするには、それなりのプロセスが必要ですから、結局プロセスの問題にもなるのですけれども、まずは立法事実ですので、基礎となる調査が重要です。つまり、電磁的方法による交付ですと、具体的にどのような方法をとった場合には、どのようなリスクが消費者にとって発生する可能性があり、あるいは事業者側で、どのようなプロセスによる電磁的交付の方法が考えられているのかを明らかにすることです。

それから、現在、既に電磁的交付の方法による契約の締結を認めていている法律、これは業法ですけれども、金商法のような業法がありますので、そういった分野において、実際にどのような形でそれが行われ、あるいは、どのような問題が生じているかという辺りを明らかにすることです。

最後に申し上げた業法の分野については、ある程度消費者委員会で調査をし、あるいはヒアリング等を、全相協等にいたしまして、ある程度調べたのですけれども、ただ、例えば電磁的交付の方法として、どのようなものが技術的に可能なのか、可能でないのかとか、そういう方法を取ったときにどういうリスクが発生する可能性があるのかとか、あるいは事業者の側がどういう方法を取ることを考えているのかとか、その辺りのところまでは、消費者委員会の側に情報が提供されたわけでもなく、消費者委員会の側で、これだけの時間で調査・審議を尽くすのは非常に難しかったのです。

(問) その上で、本来であれば時間を掛けて事実を積み上げていくものが一般的だと思うのですが、やはり今回のケースみたいに、次期国会に提出する法案に盛り込まれていると、そうなってしまいますと、やはり時間的制限が出てきてしまうと。

その際に、立法事実を示す責任があるのは、やはり提案している行政側にあると、委員長はお考えになるのでしょうか。

(答) おそらく、その辺りが委員の間で意見が分かれたことの理由といいますか、基になっているところがあると思います。

つまり、普通であれば、私が日常的に知っている行政分野では、今申し上げたような立法までのプロセスになるのですけれども、現在、新型コロナウイルス感染症の関係で、大きく取引の仕方とか、あるいは社会生活全体が変わってきています。こうしたデジタル化の流れがあるときに、通常の形で議論を積み重ねた上でやるのがいいのか、あるいは、更に言えば、それをしなければいけないのかというところについて、若干意見、感覚の違いがあったのではないかと思います。

おそらく普通であれば、先ほど申し上げたような立法までのプロセスになるのですけれども、今回の場合、あえて言うならば、そこのところを国会で、方針としては、デジタル化ということで進めることになったわけです。

ただし、当然国会では議論がされ、その後で具体的な電磁的方法についての政省令あるいはガイドラインを示すときに、更に議論がされます。順序が逆になってしまうところはあるのですけれども、そのようなやり方を取ることも、このテーマについては考えられるのではないかという感覚を持った委員もいたのではないかと思います。

その場合であっても、実際に例がありますけれども、非常に厳しい条件を付けて、事実上、取引類型によっては、ほとんど電磁的交付が考えられないというような政省令の作り方もあると思うのです。順序は逆になってしまうけれども、しかし、後で制限をかなり掛けることも可能であり、それで電磁化を認める感覚を持った委員の方もいたし、逆にそれを進めるべきでないと言われた委員も、非常に厳しい条件を政省令で付けることは、現実に例があり、あり得るだろうと考えて、その限りで建議をまとめることについて賛成をしていただいたのではないかと思います。

私の感じでは、普通であれば、調査等はあらかじめやるべきであると思いますけれども、政策上、どうしても進めなくてはいけない事情がある場合には、速やかに立法措置を進めるというやり方もあり得るので、したがって、絶対にそうしなくてはいけないとまでは言えないと思います。

(問) 国会の役割、責任、行政の役割、責任、そして消費者委員会の役割、責任につながってくる話なのかなとも理解をしたのですけれども、またちょっと別の観点から、施行まで2年のうちにオープンの場でしっかり議論をしていくことが必要だと思うのですけれども、先ほど委員長は、2年近く使うのではないかというお話をされていたと思うのですけれども、個人的には、きっちり決まった上で、やはり周知啓発の部分もかなり重要なテーマなのではないかと思うのですけれども、いわゆる2年いっぱいで議論し尽くしてしまうと、結局、施行をどんとした瞬間に、しっかりした制度設計がされていたとしても、知らなくて悪質業者側が、そこにつけ入る隙を生んでしまうという懸念も生じると思うのですけれども、必要な議論の期間がいつまでというわけではなくて、周知啓発がどれぐらい必要だというふうには、お感じになられているのか、その辺りを最後に聞かせてください。

(答) その点は、私の先ほどの言い方が不正確でしたが、当然、周知啓発の期間も含めて2年であり、周知啓発の期間も必要ですから、議論を2年するわけではないと思います。もう少し短い期間の議論で、その上で周知啓発をしていくというプロセスを当然踏むだろうと思います。

2年近く経つと、また技術の進歩等もありますので、そのときに前提となっているもろもろの情報技術を前提にして、どういう形で議論がまとまるかが、まだ見えづらいところもありますが、2年かけてということではなく、周知啓発等の期間を引いた分だけの期間ということになろうかと思います。

(問) 消費者委員会の役割としての消費者行政の推進ということと、それと消費者行政の監視ということと、もう一つ、ずっと歴代の委員長がおっしゃったのは、パイプ役ですね、消費者の声の政策への反映というか、この消費者の意見の反映というのがなかなか今回、大反対が全国であったわけで、電子化については、これに対して今後どうされていくのか、要するに意見を消費者委員会としてお聞きになっていくのか、消費者団体のですね、ということを先ほどちょっとおっしゃいましたけれども、それを確認したいということ。

もう一点が、先ほど委員長の会見の中で政省令の作り方、技術上電磁化できないような厳しいものということも、今後あり得るということでありました。

建議の中に、ずっと注目されているのが有効な承諾、消費者の承諾を得たかどうかということ、その立証責任自体が事業者側にあることを明確にすると、承諾を得たかどうかの立証責任を事業者側に課すと、この点について、具体的な相談現場で、私は、これに同意していないということを消費者が言った場合、つまり、それを立証しなければいけないのは事業者側にあるわけで、となると、その契約自体がチャラになるような可能性のような厳しいものだと、私は思っていたのですけれども、そういう政省令の在り方としては、こういう立証責任についてのものも委員長としては、お考えになっていらっしゃいますでしょうか。

この2点をお願いします。

(答) 消費者の意見を聞くという話ですけれども、これは、当然、消費者委員会の役割ですので、やっていこうと思います。

政省令を検討することになると、消費者庁でも、当然それはやっていくことになると思いますけれども、しかし、消費者委員会としても、それはやっていきます。

現に建議を出すまでに、不十分であったというおしかりを受けるのですけれども、しかし、できる範囲では、ヒアリング等も行っておりますので、おしかりを受けている部分を補う意味でも、今後、当然それは消費者委員会としてやっていくつもりです。

それから、承諾の立証責任の話ですが、これは、国会における消費者庁の答弁の中でも、承諾の存在の証明責任は事業者側にあると言われております。これは、消費者委員会でもともとは言っていたことですけれども、有効な承諾がなかった、書面交付が有効でなかったということになれば、クーリング・オフの期間は進行しないことになりますから、いつでもクーリング・オフができる状態になるわけです。

ですから、問題になりますのは、真の承諾があったといえるかどうかを、どれだけ厳しく見ていくかという点にあると思うのです。

幾つかの考えるべきことがあって、1つには、事業者側の説明があろうと思います。要するに事業者が承諾の意味、承諾の方法について十分な説明をした上で承諾を取ったのでないと、真の承諾があったとは言えないということが、1つはあると思います。

それから、状況ですね。つまり、言わばオンライン完結型で、当然、消費者の側は、電磁的な方法がどういうものであって、それによってどういう書面が交付されるかも大体知っているだろうという場合ですと、真の承諾があったと言いやすいと思うのですけれども、そうではないような場合、訪問販売の例を前にも出したのですけれども、電磁的な方法について、理解を十分していない、あるいは理解するのが難しい人に対して、形式的に、とにかく承諾を取ったという状況であると、なかなか真の承諾があったとは言えないのではないかと思います。

ですから、立証責任が事業者側にあるといった上で、真の承諾として何を求めるかというところが更に重要になり、そこのところについて、正に政省令あるいはガイドラインを詰めていく過程において、技術的な面であるとか、あるいは実際の消費者の行動あるいは事業者のビジネスモデル等も考えて、議論を詰めていくことになるのではないかと思います。

それから、国会答弁の中では、承諾自体を書面で取るという話も、確か出ていたと思いますけれども、その辺も、どういう状況で承諾をするかを具体的に考えて、真の承諾があったと言える方法を議論していくことになるのではないかと思います。

(問) 書面の電子化以外の部分も、預託、特商法、重要なものが、今回成立したと思うのですけれども、特に定期購入の部分ですとか、オーナー商法については、過去委員会からも意見や提案を出されていると思います。

一旦、書面の電子化を切り離した上で、それ以外についての評価、委員長の受け止めを教えていただけないでしょうか。

(答) そうですね、書面の電子化の話が入ったために、何か今回の改正法全体がその話になってしまっているところもあるのですけれども、ほかの部分に関しては、消費者委員会として、従来意見を言ってきたテーマ、つまり、定期購入、あるいは、販売預託について、非常に強く対応していただいたと思います。消費者委員会の意見よりも更に強くと言いますか、意見を出した際には、可能性として言うにとどめたところも含めて、かなり強く規制の方策を盛り込んでいただいていると思いますので、ほかの部分に関して申し上げるならば、非常に歓迎すべき法改正であり、消費者委員会が言ってきたことを実現していただいたと思っております。

(問) 消費者基本計画だったかと思います。消費者委員会で、昨年8月に意見書として出された地方消費者行政、40年後の在り方みたいなものをテーマとして出された中で、非常事態であったりとか、緊急事態であったりとか、災害時であったりとか、今回のコロナのような状況であっても、地域の見守りネットワーク、地域の消費者の権利であるとか、消費者の利益を守るような地域組織について、動けるような体制を整えるべきだということを報告書、意見書なり中で触れられていらっしゃるのですけれども、今回の基本計画の中で、地方消費者行政の充実とありますが、消費者委員会としては、何か具体的なこととして出される御予定はあるかどうか、それ以降ですね、それをちょっとお聞きしたいと思ったのです。

これから、災害が発生する可能性もあるということなので。

(答) 地方消費者行政に関する報告書の中では、確かに災害対応について言っております。報告書は、中長期的な視点に立ったものですので、具体的に、すぐにどのような方策を取るかということについては、それほどは言っていないといいますか、どちらかというと、大きな方向性を示す趣旨のものであったと思います。

ただ、報告書の中でも、例えばデジタル化、デジタル技術を見守り等に生かしていくことや、あるいは直接見守りと関連して言われていたかどうかは、定かではないのですけれども、例えば、高齢者の中にもアクティブシニアと言われる、まだまだ社会公共的な活動をする意欲と能力にあふれた方もいるわけでして、そういう方に役割を担ってもらうということを言っております。いろいろな方策を取っていくことが必要ではないかと思います。

現在、消費者委員会としてやっていることとしては、消費者関連情報の提供の在り方検討ワーキング・グループを立ち上げまして、議論をしております。

ここでは、主に地域貢献等を非常に積極的にやっていただいている事業者の取組をいろいろ調査いたしまして、そういった地域貢献等をやっていただいている事業者に、消費者保護についても役割を、是非、もっと担っていただけないかということを議論しております。

デジタル化が進むといっても、例えば、地域で買い物をしたりということがなくなるわけではありませんし、特に高齢者の方に関しては、正に地域において購買活動を行うことが、なおあるわけでして、そういう購買活動に関わるような事業者の方などに、是非消費者行政についても、更に積極的に取り組んでいただけないかということを考えています。こうした方策は、地域の見守りという点でも、特に高齢者の見守りという点において、1つの可能性としてあるのではないかと思います。消費者委員会としては、是非、報告書をまとめたいと考えております。

(問) 今回の国会で成立したデジプラ法についても伺っておきたいと思うのですけれども、デジタルプラットフォーマーの在り方などは、委員会からも提言とかを出されていたと思うのですが、一方で、消費者白書で言われているみたいに、昨年ネット通販のトラブルが、恐らくコロナの影響もあって増加していたり、やはり定期購入だったり、ネット関係のトラブルが増えているというのも事実だと思います。

改めて委員会として、法案成立に対する受け止めと、まだ、課題だと感じていらっしゃる点というのは、どういったところにあるのでしょうか。

(答) 取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律に関しては、今まで、競争政策等の観点からの、デジタルプラットフォームにおける取引等の規制については、法制度がだんだん整備されてきたところですけれども、消費者保護の観点という点では、まだ遅れていましたので、今回、この法律が成立したことは、デジタルプラットフォームにおける取引をめぐるいろいろな問題について、消費者保護という観点から法律が作られたという意味で、非常に大きな意味を持っていると思います。

これから、消費者の観点から、デジタルプラットフォームにおける取引を考えていくことができる大きな基礎になるのではないかと思っております。

ただ、これからの課題という点で申しますと、かなり努力義務にとどめられた部分があります。そこのところは、官民協議会という場で、これから議論をして、自主規制をすることもあるでしょうし、あるいは、更に法令上、何らかの規律を入れていく必要があるということになれば、それを進めることもあり得ると思いますけれども、官民協議会で議論をしていくことになっております。

率直に申し上げて、もう少し規律として入れるべきだったのではないかと思う事項があります。

例えば、C to C取引は、今回、全部法律から落とされていて、結局、官民協議会等の場で議論していくことになります。全体として、もう少し消費者保護の観点から基礎になる規律を明確に定められなかったかという感じはありますけれども、これは、今後、官民協議会等で議論を重ねて、しかるべき対応を取っていくことになるだろうと思いますので、消費者委員会としても、そこでどういう議論がされるかを十分見ていかなくてはいけないと思っております。

インターネットの世界は、少し前までは、およそ国の規制等になじまない世界という感覚があったのですけれども、それが、本当にここ数年だと思いますけれども、一気にどの国も、あるいはEU等も含めて、この分野について、いかに規律をしていくか、これは、もちろん国が直接規律をするだけではなく、自主規制とか、共同規制というやり方も含めてですけれども、そういう規律の枠組みを作っていく必要があるのではないかという議論が、一気に加速したというか、そのような流れができているというところがあります。

そういう国際的な流れから見ても、日本で、そんなに悠長に議論しましょうというのでは、多分ついていけないと思うのです。官民協議会等で、これから議論をしていただき、その際には、国際的な潮流も見ながらになると思いますけれども、更にこの分野について、規律を進めていく必要があるのではないかと思っております。

(以上)