山本消費者委員会委員長 記者会見

2021年2月4日
消費者委員会

日時

2021年2月4日(木)11:59~12:52

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

○山本委員長 本日、私からの報告事項は2件です。

まず、最初の報告事項です。

本日の本会議におきまして、特定商取引法及び預託法における契約書面等の電磁的方法による提供についての建議を取りまとめました。建議事項としては、契約書面等の電磁的方法による提供の在り方について、及び、デジタル技術を活用した消費者保護及び消費者教育等の2点でありまして、具体的な内容はお手元の資料にあるとおりです。

特に電磁的方法による提供に際し消費者保護のために実施されるべき事項について、かなり具体的に述べております。建議事項の1の(1)から(4)の部分で、それぞれ具体的に要求事項を挙げております。消費者庁において、それをしっかりと検討していただき、取り組んでいただきたいと考えております。この建議に関しましては、本会議の場でも私から申し上げたとおりですけれども、建議事項1の部分におきましては、現在、承諾があった場合に電磁的方法による契約書面の交付を認めている各種の法令に比べましても、かなり厳しい条件をつけております。

具体的には、承諾の取得の実質化、本当にその消費者が電磁的交付の意味を理解した上で承諾をするのでなければ、真の承諾とは言えないとしています。建議事項の(3)に消費者の有効な承諾を得たかどうかの立証責任は事業者側にあるとありますけれども、要するに、事業者側がはっきりと真の承諾があったと言えなければ、それは有効な承諾とは言えない、したがって、クーリング・オフの期間も進まない、つまり、いつまでもクーリング・オフができることになります。これが一つです。

もう一つは、提供の具体的な方法で、契約を結んだことがはっきりと消費者に分かって、その契約の内容について理解をするためには、一覧性を保った形で交付が行われて、消費者が後々のために自分で容易に保存ができなければいけないということです。これもかなり厳しい条件です。最近の若年層にはスマホしか使わない方がおられますけれども、そういった場合にあって一覧性を保った形で交付を行うということになりますと、かなり工夫をしなければいけないと思います。

このように厳しい条件をつけた理由が、建議事項の3ページから5ページにかけて1から4という形に挙がっております。簡単に申しますと、普通の業法等は、それぞれの業を振興する意味合いを多かれ少なかれ持っていることが普通です。そのために法制度が定められている。しかし、特商法・預託法は、それぞれの取引類型において、消費者にとってのリスクがいろいろな部分にあり、それを除去するという目的で作られています。これは大きく他の業法等と違うところです。ですから、書面の電磁的交付を行うとすれば、検討に当たっては、そのようなリスクが除かれるような形で具体的な方法が考えられなくてはいけない。それから、特商法・預託法には参入規制がないということがあります。普通の業法ですと、参入規制があって、一定の水準の事業者しかその事業を営むことができないわけですけれども、特商法・預託法はそうではありません。したがって、現実にかなり悪質な事業者が取引を行って、過去において大変な被害が生じています。そう考えますと、普通の業法等における規制で曖昧になっている部分等がありますと、必ずそこに付け込まれます。それで、電磁的方法を認めるとすれば、明確に方法を特定する、限定するといったかなり厳しい措置が必要になるという趣旨で、建議事項の1を書いております。

建議事項の2は、本会議の場では広くと申しましたが、電磁的な方法による交付を考えるとすれば、もっと広い視野から、消費者にとって利便となり、消費者保護を実現できるようなデジタル技術の活用を検討していただきたいということを述べております。一番具体的な例が、クーリング・オフの通知について、電磁的方法によってできる旨を明確にすることですけれども、それに限らず、特に7ページの終わりから8ページの部分にかけて具体的なアイデアがいろいろ書かれております。例えば、リマインドを行うとか、開封確認をするとか、更に広く言えば、消費者教育の充実・強化、消費者行政のデジタル化、相談対応等についてのデジタル化を更に進めていくといったことを挙げております。

この建議につきましては、委員からいろいろな意見が今日は示されました。

この建議の内容については、委員の方に異論はございませんでした。

ただ、そこから先の部分については、それぞれの委員がそれぞれのお考えをお持ちでした。およそ電磁的な方法による提供を認めることに反対であると言われた委員もおられました。明確には言われなかったのですけれども、電磁的な方法による提供を認めることに関しては、現在の社会におけるデジタル化の要請、必要性が、新型コロナウイルス感染症の拡大によって更に喫緊性を増していることに鑑みると、およそできないとして反対まではできないのではないかといったニュアンスの意見を言われた方もおります。そこのところは委員の間でいろいろな意見がありましたけれども、全員に建議の内容については賛成をしていただきました。

今後、先ほどのようなかなり厳しい条件をクリアするような電磁的な方法による提供について十分検討しなくてはいけない。この点についても、建議の中に書かれておりますけれども、委員の間で一致があったところです。これは、消費生活相談の現場におられる方だけでなく、幅広く、事業者の側からも、一体どういう具体的な方法が考えられるかということについて意見をいただかなくてはいけないでしょうし、制度面あるいは技術面における専門家の方の知見もいただかなくてはいけないと思います。

そういったきめ細かい検討をこれからしていく必要があるということを含めて、このように取りまとめました。建議ですので非常に重い意味を持っております。大臣に対して建議をする場合には、大臣からどのような対応をしたかということについて明確に報告をしていただくことになります。

そういう意味で、非常に重いわけですけれども、これを短時間でまとめるのは非常に大変でした。建議になりますと、私が経験した中でも、ほぼ1か月プラスアルファぐらいでしょうか、そのような期間でまとめたことはなかったと思います。1年とは申しませんけれども、非常に長期間をかけて作るのが普通です。しかし、この問題に関しては、極めて重大かつ喫緊の問題であり、このタイミングで建議を出さないとタイミングを逸してしまうという、非常に厳しい状況でした。そのために、異例ではありますけれども、極めて短期間の間に建議をまとめました。

委員の皆様には大変な御苦労をおかけしましたし、先ほど申しましたように、意見がそれぞれおありの部分もあったのですけれども、今これを言っておかなくてはいけないという思いは一致し、何とか取りまとめることができました。事務局の皆さんにも大変な御苦労をいただきました。

次に、第2の報告事項ですが、消費者関連情報の提供の在り方検討ワーキング・グループについてです。1月14日の335回消費者委員会本会議におきまして、消費者委員会ワーキング・グループ設置運営規定を改正し、消費者関連情報の提供の在り方検討ワーキング・グループを設置いたしました。このワーキング・グループは、安全・安心な市場の醸成及び消費者自らが安全・安心な商品・サービスを提供できること等を目的として、消費者関連情報について事業者等と連携した新たな提供の在り方を検討していくというものです。

消費者にとって必要な情報が実際に十分消費者に届いていないのではないかという問題意識は消費者委員会でずっと持ち続けていたところです。制度的には、消費者に対して情報がいろいろ提供されているのですけれども、本当にそれが消費者に届いているのかという部分になお検討する余地があるのではないかという問題意識から、このワーキング・グループを立ち上げました。消費者に一番身近に接しているのは事業者ですので、そういった事業者等と連携して消費者に必要な情報を提供していくことが考えられないかという問題意識で、このワーキング・グループを立ち上げました。

構成員ですけれども、受田委員、片山委員、新川委員の3名で、座長は新川委員、座長代理は受田委員が務めます。現時点で、オブザーバーとして、生駒委員、その他有識者にも御参加いただける予定です。

スケジュール、検討事項の具体的な内容につきましては、今後、ワーキング・グループの中で議論をして明らかにしていくことになると思いますが、まずは第1回の会合を2月目途に開催したいと考えております。

私からは以上です。

質疑応答

(問) ありがとうございます。

冒頭、御発言もあって、丁寧に説明いただいたのですけれども、改めて、今回の電子化について、なぜこのタイミングだったのかというところと、委員長がおっしゃられていたように、特商法・預託法の特異性に鑑みた今回の建議の意味合いを改めて教えていただけないでしょうか。

(答) タイミングにつきましては、もともとは規制改革会議の中で英会話のオンライン受講を特定継続的役務提供の契約として行う場合に、契約書面を紙で送ることになりますと、そこだけが言わば紙のやり取りになって、他は電気通信によって契約の締結過程からサービスの提供まで全部が済むわけで、そこだけ紙になってしまうところを改められないかという要望があったことが発端になって、消費者庁で検討をして、特商法・預託法全般について、これを認める議論が進みました。現在、改正法案が用意されているようですけれども、その中に、販売預託の原則的禁止等と併せて、契約書面の電磁的方法による提供も盛り込む動きがあります。

そのように急速に話が持ち上がり、具体的な消費者庁の検討、提案というところまで至っておりますので、このスピードに合わせて消費者委員会として意見を言うにはこのタイミングしかないだろうという判断です。いろいろな状況に鑑みてということになります。

特商法・預託法の特質に鑑みたという点ですけれども、具体的には、3ページから4ページにかけての部分で、特に建議の理由の1のところに書かれておりますし、先ほども申しましたが、特商法・預託法という法律が、それぞれ消費者にとっていろいろなリスクを伴う取引の類型について、実際に過去にもいろいろなトラブルがあり、あるいは、トラブルというレベルではなく極めて重大な被害が発生しているという経緯及び法律の趣旨を考える必要があるということです。

他の法律、例えば、電気通信事業法等において、消費者の承諾があったときに電磁的な交付をする例はあるのですけれども、これについては、それぞれ業を振興していくといった意味合いがあり、事前規制、一定の参入規制があって、要件を満たした事業者だけが入ってくるという事情があります。その2点が特商法・預託法にはないのです。そういったことを考えると、ここは厳しい条件をつけなければ、電磁的な方法による交付を認めることはできないのではないかと考えて、条件を具体的に挙げたのです。

(問) すみません。追加で1点だけ。

建議ということで、大臣からの報告を求めていくことになるとは思うのですけれども、明確に時期は示されてはいませんけれども、とはいえ、改正案が本国会で提出されて成立してしまえば大きな流れができてしまうのかなと感じています。明確にいつまでということは示せないかもしれないのですけれども、山本委員長としては、少なくともこれについてはすぐに回答・対応について報告してほしいといった点はありますでしょうか。

(答) 今のところはまだ法律も制定されていない段階ですので、具体的なタイミングを申し上げるのは難しいところです。

どれも結構難度の高い条件ですので、それほど簡単に結論が出るとは思えません。建議の中でも十分検討してくださいと申し上げていますから、相当の期間が必要になる可能性はあると思います。

ただ、委員がそれぞれ極めて強い関心をお持ちのテーマですので、あるいは、完全に結論が出ていない段階であっても、現在の状況を伺う等々のことはあるかもしれません。

(問) 今、委員長もおっしゃっていましたけれども、今回の建議のタイミングが、急に話が出て、消費者庁の提案も、急にというか、改正の中に盛り込まれそうだという検討過程みたいなことに対する思い、もっとゆっくりやってもよかったのではないのとか、そういった思いみたいなところがあれば伺いたいと思います。極めて重大な問題がこれだけどんどん進んでしまうということに対する思いを伺えればと思うのですけれども。

(答) その点については、委員の中でも、先ほど申し上げましたように、意見と言いますか、感覚が若干違うところがあったのではないかと思います。

つまり、一方では、デジタル化の流れが、現在、社会全体においてあり、また、求められているという状況に鑑みると、迅速に進めるべきであるという意見がありました。他方において、先ほど来申し上げているような懸念事項が極めてたくさんあり、消費者団体あるいは消費生活相談員の方々からたくさん寄せられています。この問題については、慎重にもっと議論をすべきである、その上で結論を出すべきであるという意見もございました。そこは両方の意見がありました。

私は専門が行政法ですけれども、個人的に申し上げれば、行政法規の改正をする際には丁寧な議論の積み上げをするのが普通ですので、今回の話には、私個人の専門的な立場から言うと違和感があったことは確かです。

ただ、他方において、これだけ社会的な声というのは、一般的なデジタル化というくくりになってしまうのですけれども、それが出てきている中で、およそ電磁的方法が駄目だとまで言い切れるかというと、それは難しいのではないかとも思います。

(問) 先ほど委員長が御指摘くださいました特商法・預託法の特殊性、参入規制がない点とかを踏まえて丁寧な条件をつけたことは大変よく理解できたのですが、そうであればこそ、消費者保護の立場から、まずここをやれとは言えなかったのか。

5ページに、契約書面を電磁的方法によって提供する際には以下の事項が実施されるべきであるというところまでの考察がなくて、消費者委員会は本国会で成立を目指している特商法にこの改正案も盛り込んで良いと言っているのかどうか。そこがすごく不明確なので、まず先にこっちをやれとはなぜ言えないのか。

その2点について、教えてください。

(答) 改正をすべきではないとなぜ明確に言えないのかと。

(問) すべきではないということではなくて、まず、こちらをやってからにしろと。片山委員長代理とかもおっしゃっていたのですけれども、まず、デジタル完結型のものだけにとどめて、まず、これをやれとはなぜ言えなかったのか。

(答) ありがとうございます。

要するに、取引の類型あるいは取引の種類によって限定をして、後でそれを広げる可能性を検討するというやり方が考えられたのではないかということですかね。

(問) 今回の法改正も、間もなく出ようとしている特商法案に1月14日の段階で盛り込む方針を消費者庁が示して自民党で了承されてしまっているという状況がある中で、それは是としているのかというところです。

(答) ありがとうございます。

そこについては、先ほど申しましたように、委員の間で意見がいろいろあり、必ずしも委員の間に意見の一致がなかったと言ってよろしいかと思います。それが1つ。

それから、先ほど申し上げた社会におけるデジタル化の要請を考えたときに、建議の中で懸念事項に対する対策をいろいろ挙げていますけれども、これを満たすような電磁的方法による提供の仕方がおよそないと言えるかというと、そこまで言うことは極めて難しいのではないか。建議の中で取引類型の性質あるいは実態をよく見てと言っており、取引類型によって、電磁的方法による提供がやりやすい類型となかなか考えにくい類型があることは確かだと思います。ただ、比較的やりにくいだろうと考えられる類型についても、建議に書かれている条件を満たす方法がおよそないと言えるかというと、それはなかなか難しいということです。

その2点があって、今回は御指摘のところまで明確には書いていません。

ただ、建議に書かれている条件を満たすような提供の方法をいろいろ検討した結果として、ある取引類型については、現実に条件を満たすような方法はおよそ考えられないという事態が出てくる可能性はあると思います。つまり、制度的には電磁的方法を認めることになったとしても、具体的・現実的に実現可能な方法を検討したときに、方法がほとんど考えられないということが、取引類型によっては出てくる可能性があるのではないかと思います。具体的な検討をまだ全然していませんので、方法があるのかないのかということについて明確に建議の段階で言うことはできなかったのですけれども、可能性としては、今申し上げたようなこともあるのではないかと思います。

(問) 法改正の仕組みとして、これまでの通例とかから考えると、まず、そこを検討して、委員長がおっしゃったように、これはそう簡単にできるようなものではないと。かなり時間がかかるのではないかと。まず、改正されてしまって、施行されてしまってからでは、被害が拡大してしまう恐れがあると。そういう状況で、この建議はどこまで言っているのか。過去の経験からして、建議は相手方と折り合うところしか盛り込めないと、預託法などのときも意見と建議が分けて出されましたけれども、そういうところもあるのではないかと考えてしまうのですが、委員長としてはどのようにお考えでしょうか。

(答) ここに書かれた内容は、もし法律が成立しますと、政省令ないしガイドラインのレベルで書くことになろうかと思います。そこのところで慎重な検討をして、厳重な、非常に重い条件を満たす方法にするように求めております。

過去のいろいろな消費者関係の法律を見ましても、政省令やガイドラインのレベルで極めて厳しい規制を行う例はあるのです。ですから、安易に政省令等を緩い条件で作って、ガイドラインも緩い条件で作って、それで施行することには消費者委員会は反対するということです。

法律が制定されてから施行まで今回の件に関してどれぐらいの期間を取るかは分かりませんけれども、ここまでの検討をした上で施行ということになりますと、それなりの時間が必要になると思います。検討のための時間も、事業者の側が準備をする時間も必要になると思いますので、かなりの時間を要するのではないかと思います。法律が制定された場合にも、施行まで十分な時間を取って、取引類型ごとの性質あるいは実態もよく考えて、建議の条件を満たすような内容の政省令あるいはガイドラインにしていただきたいということです。

(問) 分かりました。ただ、預託法とかはすぐにでも施行していただきたい部分もありますので。

(答) 法律を施行する場合にも、条文、規定によって施行の時期をばらばらにすることはよくあります。確かに、おっしゃるように、すぐに施行していただきたい部分はもちろんあります。ただ、この建議の内容に関しては、十分な検討をした上で施行していただきたいと思います。

(問) ありがとうございました。

(問) 他の業法と違う条件、厳しい条件を課しているという部分なのですけれども、金商法や電気通信事業法を想定されていらっしゃるのかなと思っているのですが、それで良いのかということ、具体的にそれらには書いていなくてこの建議には書いているという部分はどこを指しているのか。方法の限定とか、そういうことかなと思っているのですが、まず、そこをお願いします。

(答) 具体的に想定しているのは、今、御指摘のあったように、電気通信事業法や金商法や割販法といった法律です。

それらとの違いに関して申し上げるならば、今おっしゃっていただいたような方法の限定という点です。確かに、ガイドラインレベルである程度方法を書いている例もあるのですけれども、それに比べてかなり厳しい限定をかけるべきであると建議では言っています。

建議事項の1の(1)、承諾の取得の実質化についても、それほど細かく規定したものはないのではないですか。

(事務局) 電気通信事業法とかでいろいろ書かれてはいるのですけれども、それと同列で良いのかという問題意識で絞り込みをすべきではないかということがここには書かれていると思います。

(答) 例えば、建議の5ページの(1)に承諾をデフォルトとして設定することについて慎重であるべきと書いています。他の法令に関するガイドラインの中には、デフォルト設定も許容する例があります。建議で「慎重であるべき」というのは、そういう例があるので、はっきりと駄目だとまでは書かなかったのです。しかし、「慎重であるべき」であるという意味合いとしては、本会議の中で丸山委員も言われましたけれども、消費者委員会としては、普通に考えると、これでは駄目だという思いで書いています。

一覧性については、契約書面が一覧性を保った形で閲覧可能であるべきとガイドラインの中に抽象的には書かれている例があります。しかし、具体的にどうするのか。先ほど申しましたように、特に若年層の方はスマホで全部契約をすることもありますけれども、そういったときに、スマホの画面の中で一覧性を保った形で契約書面を提供する方法が具体的にどういうものかは、よく分からないのですね。建議ではそこのところも十分検討してくださいと言っています。このように、既存のガイドライン等でおよそ触れていないわけではないのですが、その中で極めて一般的にしか言われていないことについて、具体的に契約の性質や実態に照らして考えていただきたいということ。

それから、既存のガイドラインで具体的なレベルで言っている点については、先ほどの承諾をデフォルトとして設定するのでは不十分ではないかということの他に、提供方法の限定についても、例えば、6ページでPDFファイルを添付してメールで送付する方法を書いています。しかし、既存のガイドラインではもう少し幅を持たせているのです。例えば、ウェブ画面を閲覧可能な状態に一定期間保っておけば良いといったガイドラインもあるのですが、それでは不十分であろうと建議では考えています。

(問) 一覧性の部分で、先ほどスマホで一覧性を持ってできるのかという御発言があったのですけれども、委員長の思いとしては、それはかなり難しいというか、どうすればスマホで一覧性ができるのか、何かそのイメージのようなものがあるのでしょうか。

(答) 私自身は、大変難しいと思います。消費者委員会でも悪質なお試し商法に関する意見を出したことがあります。そこでは、最初にはお試しと書いてあって、よくよくスクロールをして後ろを見ていくと定期購入になっているという場合について、定期購入であれば明確に示さなくてはいけないという意見を示しました。このように、非常に難しいだろうと思います。

これは、契約の中身の複雑性によると思うのです。比較的単純な契約の内容であれば、一覧性を保った形でスマホでも閲覧が可能なことはあると思います。しかし、非常に複雑な分かりにくい内容の契約も、特商法あるいは預託法の中に含まれています。そういうものについて一覧性を保った形で契約内容を示すことは非常に難しいのではないかと思います。そこのところを技術的に工夫して可能とする手段があるのかどうかということを、検討していただきたい。私は、技術に詳しいわけではないので、今の段階では直感的にしか申し上げられないのですが、契約類型によっては極めて難しいのではないかと思います。

(問) すみません。最後に1点だけなのですけれども、真の承諾の立証責任のところで、立証の仕方というのは何か考え得ることがあるのでしょうか。他の制度とか、参考にできるものがあるなど、どのようなイメージを。

(答) 立証責任は、真の承諾、真意による承諾があったのかなかったのか、はっきりどちらとも言えないときに、承諾はなかったとするルールです。ですから、事業者の側が「承諾がありました」と言おうとしても、承諾があったのかなかったのか、どちらとも断定できない、判断できない場合、承諾があったとは言えないことになる。事業者の側がはっきりと真意による承諾があったと言えなくてはいけないのです。

具体的な状況としては、いろいろな場合があると思います。先ほどの英会話の例を考えますと、契約をする消費者はオンラインを使って英会話の受講をしようとしている。契約も同様に、オンラインで全部締結しようとしている状況ですから、電磁的方法による交付の意味が分かって承諾していることが、ある程度、推測できると思うのです。

こういう場合ですと真の意味の承諾があったと言いやすいと思うのですが、具体的な例を出すとやや差し障りがあるかもしれませんけれども、例えば、訪問販売等で、高齢者の方に対して、電磁的方法による交付があります、電磁的交付の方法とはこういうものですよと一渡り説明して、電磁的交付によってこのアドレスに送りますからサインをしてくださいと言って署名を求める。サインしてもらう。これで果たして真意の承諾があったと言えるかというと、非常に難しいだろうと思います。

この建議の(1)の後ろから4行目で、消費者の年齢や判断力等も考慮した上で、承諾の効果、用いられる電磁的方法の種類及び内容、クーリング・オフ期間の起算点等について、あらかじめ、十分な情報提供がされることが必要であると言っているのですけれども、取引の類型によっては、今申し上げたように非常に難しい場合があると思います。そういう場合についてどういう方法があり得るのかということを正に議論していただきたいというのが建議の趣旨です。それがないということになりますと、真の意味の承諾を得る方法がないため、実際には有効な承諾は取れないことになると思います。

(問) 先ほどの事業者の立証責任は最低限だとは思っているのですが、現実に本当に細かな書面を送ってもらって、何とか手に入れ、書面があって現実に書面交付の不備を指摘しても、なかなか現実に返金に結び付けるのが困難な状況がある中で、立証できなくて、お金を返しなさいと言ったときに、本当に返すのだろうかと。その辺で、もう一歩進んで、もうちょっと立証できないときは契約を取り消すとか、そういったことも求めたほうが良かったのではないかと思ったりもするのですが、いかがでしょうか。

(答) 契約の解約に関して申し上げれば、立証できなければ、真の承諾はなかったことになりますから、クーリング・オフ期間が永遠に続くわけです。いつでもクーリング・オフできるという状態になります。

(問) そうなのですけれども、今もそれを使ってこれは書面に不備があるので交付されていないことですよねと言って、クーリング・オフができますよねと言って、説得をしても、今でも返金しない事業者がいっぱいいる。訪販とか、そういう取引類型で果たして立証責任が事業者にあるだけで大丈夫なのかという不安がどうしても拭い切れないところがあるのですが。

(答) それは電磁的方法による交付の問題に限らないと思います。一般的に、特商法・預託法の執行を厳正に行わなくてはいけないという話かと思います。その点に関しては、本会議の中で柄澤委員が、悪質事業者に対する厳正な法執行ということを強調されました。これは、電磁的方法によることが良いのか悪いのか、どのような方法でやるべきか、やることが可能かという議論を超えて、もっと一般的に特商法・預託法の執行の在り方、被害の回復の仕方を考えていただく必要があるということだと思います。

6ページの(4)にある実態把握と検討の中で、そういった悪質事業者への対処について書かれています。これは、そういう意味で、電磁的な交付を認める・認めないということを超えて、悪質事業者への対応をしっかりしていく、それがなければ電磁的な交付の方法を安直に広げていくことには問題があるという趣旨です。

(問) 行政処分をしていただいても返金にはつながりませんので、その辺は民事効のところが残されていると思っています。

本会議でも少し委員長に触れていただいたのですが、消費者庁のやり方として、公の場で全く議論もしないで、公表したときに決まってしまっていると。これについて消費者として何らかを言っていただきたかったという思いがあるのですが、委員長はこの辺りはどう考えになっていますでしょうか。

(答) この建議の中で、消費生活相談の関係者等の意見を聴取して十分に検討を行って必要な措置を講ずべきであると言っています。逆に言うと、今までそういったことが行われていない。だからこう言っているのです。

これは先ほどの規制改革会議の一つの要求に端を発した問題ですけれども、そこで言われた英会話のオンライン受講以外に建議に書かれているような電磁的な方法による提供の方法等について、具体的な例が示されてそれについて議論が行われているかというと、それはないですね。

消費者委員会で何とか訪販協等に対してヒアリングを行って、ある程度、意見を伺いました。それ以外の公の場でこういった具体的なレベルでの議論はなかったと思います。そのことは事実として認めざるを得ないと思いますね。

そのときにどうするかという点について委員の間でいろいろな意見があったのですが、建議に挙げているような具体的なレベルで関係者等の意見を聴取して検討が今まで行われているかというと、それはないのではないか。ないからこのように建議をしたということです。

(問) この問題について、今日、12月までの意見書は公表してくださったのですが、この問題についてどのぐらいの意見が来ているかお教えいただくことはできますでしょうか。

(事務局) 昨日までの数字でございますが、全部で26件の文書が届いております。

(問) 集中審議を行っていただいて、平場でいろいろな意見を聞きたかったというところがあるのと、皆さんから要望があるのは、消費者委員会のデジタル化を進めてほしいというのか、消費者委員会もこんなに喫緊で本当に日にちがない中でいろいろな議論が進んでいる中で、なかなかテレビ会議で消費者委員会の議論の傍聴ができないと。このことについても、さすがに早急に対応していただきたいみたいな意見がありますので、是非委員長には御検討いただければと思います。

(答) 了解いたしました。

その点は、事務局とも話をしていきたいと思います。確かにデジタル化というときに消費者委員会のデジタル化も正に課題です。貴重な御意見をいただきまして、どうもありがとうございます。

(以上)