山本消費者委員会委員長 記者会見

2020年11月5日
消費者委員会

日時

2020年11月5日(木)12:30~12:55

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

(山本委員長) 本日は、私から報告事項が2件ございます。

最初に、本日の本会議におきまして、フィッシング対策協議会、警察庁及び総務省から、フィッシング被害の現状と対策等について聴取をいたしました。今般、このテーマを取り上げた経緯といたしましては、昨今、フィッシングの報告件数が急激に増加しているということがあります。

具体的な事案としては、フィッシングのメールやSMSを受信した消費者が偽サイトにアクセスし、IDやパスワード等の情報を入力してしまうことで、当該情報を不正利用されるといった被害が生じているものと認識しております。

本日の聴取内容につきまして概略を述べますと、フィッシング対策協議会からは、フィッシングに対する一般ユーザー等からの報告件数や事例の傾向、この中で先ほども申しましたように、非常にフィッシングの報告件数が増えているといったことが対策協議会からございましたけれども、事業者側、それから消費者側それぞれで取るべき対策等についてお話をいただきました。

警察庁からは、サイバー犯罪の情勢、インターネットバンキングに係る不正送金事犯の発生状況や手口、その被害防止対策や警察庁での取組状況等についてお話をいただいております。

総務省からは、フィッシング対策にも有効な技術的対策の一つである送信ドメイン認証技術の概要及び普及状況、消費者への注意喚起の取組状況等についてお話をいただきました。

本日の聴取内容により、悪質事業者が様々な巧妙な手口を利用して消費者をだますという実態を伺うことができました。

各委員から御意見がございましたけれども、本事案につきましては、関係行政機関におかれまして、それぞれの取組を評価していただくことはもちろんですし、相互の連携の強化についてもお願いしたいと思います。

特に、不正アクセス行為等の検挙が非常に重要になると思いますので、警察庁におかれましては、引き続き取締りの強化をお願いしたいと思います。

それから、関係行政機関等におかれましては、その時々の手口の特徴をタイムリーに周知し、こうした被害の未然防止や事後的な対策のために、消費者ができることの情報提供に力を入れていただきたいと思います。例えば不審なEメールやSMS内に記載されているURLには絶対にアクセスしないということ。それから、フィッシングの被害に万一遭った場合には、188(いやや)や警察のフィッシング110番等に速やかに連絡し、入力してしまったID・パスワードをすぐに変更するといったことを消費者に対して呼びかけていただきたいと思います。

それとともに、消費者の方にも、是非現状、こうした被害が急増しているということに留意をし、自らを守る対策を取っていただきたいと考えております。

当委員会としても、引き続き、必要に応じて何らかの意見表明を行うことも含めて調査審議を進めてまいりたいと思います。

以上が1件目です。

2件目ですけれども、消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループの設置についてです。

第5次の消費者委員会、つまり前の期の消費者委員会におきまして、消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループを設置し、同ワーキング・グループにおいて、取引分野に係る消費者法のルール形成の在り方や実効性確保のための方策などについて検討し、ルール及び担い手のベストミックス等の観点を示した報告書をまとめました。

その後、第6次、つまり今期の消費者委員会におきまして、委員の間で議論した結果、同ワーキング・グループの報告書で示された観点の重要性に鑑みまして、更に深掘りをして検討することが必要ではないかという結論に至り、同ワーキング・グループの活動を再開し、具体的な検討を行うことといたしました。

そこで、本日の第330回消費者委員会本会議におきまして、同ワーキング・グループを再開し、それに伴い、消費者委員会ワーキング・グループ設置・運営規程を改正いたしました。本ワーキング・グループの構成員は、丸山委員、新川委員、片山委員、それから私の4名です。座長は丸山委員、座長代理は新川委員が務めることになります。

なお、現時点におきまして、更にオブザーバーとして、消費者委員会の大石委員と柄澤委員が御参加いただける予定です。

具体的な検討事項やスケジュールにつきましては、今後ワーキング・グループの中で明らかにしていくことになりますけれども、まずは第1回会合を今月中にでも開催できればと考えております。

私からは以上です。

質疑応答

(問) ワーキングの設置について伺います。前回、去年の6月に報告書をまとめられているかと思いますけれども、今、委員長の発言でもありましたが、委員の皆さんで意見が一致して、再度設置ということでしたけれども、今後具体的な項目はワーキングの中で明らかにされるということですが、意見の一致した点や再設置する意義、目的など、現時点で説明できることがあれば教えていただけないでしょうか。

(答) ありがとうございます。

このワーキング・グループは、今、お話がございましたように、第5次の消費者委員会で設置され、報告書を取りまとめておりまして、かなり広範な分野にわたって、その報告書の中で取り上げております。公正な市場を実現するための消費者法取引分野におけるルール形成の在り方、ルールの実効性確保に資する方策、それから行政、事業者、消費者の役割について検討するということで、非常に広い分野にわたって取り上げて議論しましたけれども、今回はその中である程度論点を絞った上で、実態把握に基づいて、より実践的、具体的な検討を行うことを目指したいと思っております。

今、お話がございましたように、具体的な審議内容につきましては、今後ワーキング・グループの中で議論することになりますけれども、現時点で委員の間では、最近に始まったことではないのですけれども、最近も議論の対象になっております自主規制の活用について、前の期のワーキング・グループの報告書の中でも一般的には言っていたのですが、この点についてもう少し深掘りをしてみたらどうだろうかという議論はございました。ですから、まずはその辺りから議論を始めることになると思います。

具体的なスケジュールにつきましては、今後ワーキング・グループの中で議論をしていくことになるかと思いますけれども、この期の消費者委員会の委員の任期が来年の8月までですので、そこが一応の目標になるのではないかと考えております。

(問) 関連というか追加ではあるのですけれども、前回の報告書の中で幾つか論点がある中で、いわゆる消費者の消費者裁判特例手続法や適格消費者団体についても触れられていたと理解しているのですけれども、今、初回というか初めての裁判事例が進んでいて、課題も見えてきたりしているところではあるのですけれども、それについては今回、委員の中では、取り上げるべきだとか、深掘りするべきだという意見は出ているのでしょうか。

(答) それは、消費者庁で何年後か見直しをするということになっていますよね。

どうぞ。

(事務局) 見直しの附則がついていて、消費者庁ではまだ具体的な検討案などがあるとは聞いていない状況です。

今回のワーキング・グループは、どちらかというと消費者裁判手続特例法とか個別に絞るというよりは、消費者行政あるいは消費者法の全体をふかんして議論することになるのではないかという気がしております。特に消費者裁判手続特例法に焦点を絞った議論をするという議論は今のところあまりないのではないかと思います。

(答) ありがとうございます。

(問) 今の質問の消費者裁判手続特例法の関係で、消費者委員会にも昨年意見書が、消費者機構日本ないし他の2団体からも出ているかと思うのですけれども、今、事務局もおっしゃっていたように、消費者庁でもまだその検討が始まっていないような状態で、3年見直しの1年が経過している中で、消費者機構日本はなかなか大変だなと見ていて思うのですけれども、消費者委員会として何かしら意見を出すとかというお考えはないでしょうか。

(答) 今すぐに具体的に何か行動するという計画はございません。

ただ、御指摘のように、特例法の見直しが法律上義務づけられているということはあります。確かに事例が1つ出てきているということもありますから、どういうタイミングで何をどう取り上げるかを考える必要があろうかと思います。

これは消費者庁とも連携を取りながら進めていくことになるのではないかと考えておりますが、今のところ具体的にどうするかというところまでは、計画はございません。

(問) 一番最初におっしゃいましたフィッシングのことなのですけれども、午前中は見ていないのですが、意見としてまとめられたのか、それとも先ほどのお話だと、必要に応じて何らかの意見を表明していくということですが、継続して議論されていくテーマとして挙げられているのでしょうか。

(答) 今日の本会議におきましては、まずは関係団体あるいは関係行政機関から現状を伺いました。これは先ほども申し上げましたけれども、報告件数が非常に増えているという状況があります。委員の間でも、実際にそういう事例に行き当たった方がいらっしゃいまして、実は私の身内にもそういうことがあって、これは異常な状態であろうと考えまして、本日はまずは関係機関、関係団体から状況等を伺いました。

したがいまして、本日は直接それについて委員会として何か意見を言うことまではしておりません。ただ、今後、必要があれば意見を言っていくことも視野に入れて、調査審議を進めていきたいと考えております。

先ほども申しましたように、フィッシングのプロセスのそれぞれの段階においていろいろな対策が考えられ、しかし一つ一つの対策だけでは十分それを防ぐことができないということで、トータルに考えなくてはいけないということがありますので、その辺りについて今後調査審議を深めて、必要であれば意見を言っていくことになるのではないかと思います。

(問) もう一点、御発言の中になかったのですが、この後に託送料金についての検討を消費者委員会でやられますね。

(事務局) 本日の午後に電力託送料金についての調査会がございます。

(問) これについて、賠償と廃炉の負担金を託送料金に上乗せするということについて、消費者委員会で8月までの間で専門調査会か何かで、報告書に基づいた意見を出されましたね。今回、この後やられる託送料金のことについては、何がテーマになるのでしょうか。

(答) 今日の話ですか。

(事務局) 御指摘の賠償負担金や廃炉円滑化負担金についてはこの8月に意見をとりまとめていただいて、それで一区切りになっておりまして、本日御議論いただきますのは、経済産業省で電力の託送料金制度全般についての制度設計を検討しておりまして、それについて、消費者の観点から、あちらの議論に意見を反映していくために、委員の皆様に御意見をいただいて、それを消費者庁を通じて経済産業省にお伝えしていくということを今、行っているところでございます。

(問) 8月の意見だと、正にそのことを盛り込まれていたような気がして、つまり、託送料金の制度がとても複雑だと。委員の中でも、消費者に対して納得できる説明をするようにということをエネルギー庁に対して諮問を出してきた消費者庁に、消費者委員会は言うようにという意見だったと思うのです。

10月に入ってから裁判もあったわけで、そうすると委員会でやっている託送料金のことについては、今おっしゃったあれだと、制度的な検討であるとか、経産省がやっているようなことに対しての評価というか、そういう問題点を挙げるということがテーマになるのでしょうか。出てみれば分かるということなのでしょうけれども。

(答) 今日の午後のことは、私は直接には分かりませんけれども、8月に意見を出したときには、今、御指摘のように、説明を消費者に対して丁寧に行っていただきたいということを申しました。

制度そのものの話になりますと、消費者委員会のミッションからやや外れるところもありますから、直接それについて消費者委員会で正面から取り上げて、何か言っていくのはなかなか難しいのではないかと思います。

ただ、消費者に対する説明の部分はしっかりとやっていただきたいということでして、それとの関連で、あるいは今後更に議論があるかもしれません。

(問) 出された意見に対するフォローアップみたいな感じかなと思ったのですけれども、そうでもないわけですね。

(事務局) それとはまた話は別でございまして、8月の意見については、経済産業省において決められたルールに基づいて事業者から託送料金の変更申請等が出されまして、こちらの調査会においてはルールに基づいて適切に料金設定がなされているかという観点から御審議をいただいたということでございます。その際には、基本的に料金についてはルールに従って適切に設定されていることを確認したということですが、消費者の納得が得られるよう、分かりやすく、丁寧な情報提供・説明を行うことを求めたところです。

今御議論いただいているのは、経済産業省で行っている電力託送料金制度改革の詳細設計、レベニューキャップ制度などが今、議論されていますけれども、そういったものについて消費者側からの意見を反映していくという観点からの議論をしていただいていると御理解いただければと思います。

(問) フィッシングの話に戻ってしまうのですけれども、今日のヒアリングというか聴取の状況を聞いていると、手を替え品を替えというか、犯罪者側の技術の進歩がかなりスピード感が速い一方で、審議や各連携のスピード感との差があるなという印象を強く受けたのですけれども、基本計画の工程表でも5年計画で対策の取締状況を確認するとか、認証技術の普及状況を確認するということがKPIなどに盛り込まれているわけですけれども、どうしても今日見ている指標だと、取締件数や検挙件数はすごく分かりやすいものだなと思った一方で、報告件数が急増しているのに対して、対策がどの程度効果があったのかというのがなかなか見えづらいものもあるのではないかという印象を受けているのです。

先ほど言っていた調査というところで言うと、何か今までにないものというか、こういうものも見てみたいなというものが山本委員長や消費者委員会の委員の方々から何かあったりされているのであれば、教えていただけないでしょうか。

(答) その点については、これから具体的に詰めていきたいと考えております。

例えば今日、私が冒頭に質問をしたことで言うと、スマホ対策はどれぐらい進んでいるのかということを申しました。DMARCの普及状況についてもお伺いしたのですけれども、他にもいろいろあるだろうと思うのです。ですから、そういうことについて、現在、関係機関、関係団体において情報がどれぐらい集められていて、それが消費者に対してどれぐらい届いているかといった辺りは少し注意して見ていく必要があるのではないかと思います。

それを工程表の中で具体的にどのように反映させるべきであると消費者委員会として言っていくかというところは、これから正に考えなくてはいけないと思っておりますけれども、しかしこれだけ報告が急増していて、しかも前からある話ですので、どういう対策を打っていったら良いのか、そして、KPI等にどうこれを反映させていったら良いのかという辺りは非常に重要な話であり、今後委員会でも議論を深めていきたいと思っております。

(問) もう一個、最後にしようと思うのですけれども、今回みたいにいわゆるフィッシングの被害が急増しているので、これだけ1つ抽出してというか抜き出して議論されたのかなという印象を受けたのですけれども、どうしても基本計画だったり工程表というとかなり膨大な、本当に隅から隅までを扱っているものだと思うのですけれども、こうやって個別に切り出してとか、注目すべきものを強調してというか、しっかり議論するということ自体は必要なことなのではないかとも私自身は感じたところではあるのですが、こういう議論の仕方自体は、現在の委員の皆さんや山本委員長のお考えとしては、どのように感じていらっしゃるのですか。

(答) 正に今、御指摘のあったとおりでして、工程表は非常に幅広くいろいろなテーマを取り上げていて、消費者委員会としてはそれを広く見ていかなくてはいけないのですけれども、悪い意味で注目すべき事象があったときに、それは特別に取り上げて、場合によっては分けて審議をし、意見を言っていくことも、消費者委員会の役割として重要であると思います。

委員の間でもそのような認識は共有されていると思いまして、本日はこの問題だけを特別に取り出して議論した次第です。ただいま御指摘のあったように我々も認識をしております。

(問) ありがとうございました。

(以上)