山本消費者委員会委員長 記者会見

2020年6月29日
消費者委員会

日時

2020年6月29日(月)15:30~16:06

場所

消費者委員会会議室・テレビ会議

冒頭発言

(山本委員長) それでは、私から報告事項が1つございます。

先頃の26日の本会議につきまして、お手元の資料のとおり「悪質なお試し商法」に関する意見を取りまとめました。通信販売でお試し価格、初回無料などをうたった健康食品などの定期購入に関しまして、PIO-NET上の相談件数が令和元年度だけで約5万件に及び、今でも毎月数千件単位で推移しております。

消費者委員会といたしまして、このような状況を看過できず、本件問題について集中的に調査、検討を行い、今般、本意見を発出するに至りました。

概略を簡単に述べさせていただきますと、まず「第2 問題意識」の部分ですけれども、ここで「悪質なお試し商法」として問題視している3つの類型を挙げております。

1つ目が、お試し価格を誇張して1回限りの販売と見せかけ、実際は複数回の購入が条件となっているなどの回数縛り型。2つ目は、中途解約した場合に、初回がお試し価格ではなく通常価格に戻るなどの違約金型。3つ目が、電話で解約しようとしてもつながらないなどの解約困難型です。

これらの類型における問題の所在として、いろいろあるのですが、第一にお試し価格を他の契約条件よりも誇張するなどの表示の問題が(1)にございます。(2)といたしまして契約内容自体の問題。(3)といたしまして解約手続の問題。(4)といたしましてお試し価格のみ払えばよいと誤認させるなどの消費者による誤認の問題といったことが挙げられます。

以上の問題意識を踏まえまして「第3 意見」の部分ですが、消費者庁におきまして、早急に対応いただきたい事項を挙げております。

1つ目がガイドラインの見直し、具体的には特商法第14条第1項第2号に関する「インターネット通販における『意に反して契約の申込みをさせようとする行為』に係るガイドライン」がございますが、これについてです。見直しの一例といたしまして、申込みの最終確認画面で消費者の重要な考慮要素となる契約条件の全てを明瞭に判読し、適切に理解できるような表示とすることなどを挙げております。

2つ目といたしまして、特商法に係るガイドラインの整備などによる執行の強化、ICT等の活用による執行の高度化を挙げております。

3つ目といたしまして、消費者が実際の状況を体感できるような形式などで注意喚起を行うことなどを挙げております。

最後に、その他検討が必要な事項ということで、これはもう少し中期的な課題になるのですけれども、少額多数被害に係る実効的な救済の仕組み、インターネット取引における消費者の利益保護を実現するための民事法上の効果の在り方、アフィリエイト広告に係る責任の主体や内容の在り方について言及いたしました。

このように意見を大きく2段階に、1の早急に講ずべき事項と2のその他検討が必要な事項という形で2つに分けております。

その趣旨でございますが、消費者庁では、本年夏までの取りまとめを目指して、特商法などの法制度の在り方を検討するための検討委員会を開催しております。消費者庁の検討委員会でも定期購入に係る消費者問題を取り扱っていただくことが時宜にかなうと考えられまして、当該検討委員会で受け止めていただき、早急に御対応いただきたい事柄を明確にしたというのが1の部分です。

ただ、本件問題の論点は非常に多岐にわたっておりまして、この問題、具体的にお試しの問題に限らず、インターネット取引全般に及ぶかなり重要な論点が含まれておりまして、こういった論点につきまして、2の部分に挙げているのですけれども、これにつきましては、消費者委員会としてその他検討が必要な事項ということで、今後の状況を注視し、必要に応じて更に調査審議を行いたいと考えております。消費者庁における検討会でも、こういったところまで検討がどれだけ進むかということがありますので、そのような消費者庁の今後の検討の状況も見ながら、消費者委員会として必要に応じて調査審議を行ってまいりたいと思います。

消費者庁におかれまして、本件の問題に関する議論を深めていただくにあたって、今回発出した意見の趣旨を踏まえて、是非検討いただきたいと考えております。

私からの冒頭の発言は以上になります。

質疑応答

(問) 今回、早急に見直すものとしてガイドラインの見直しなのですけれども、そもそも今、問題になっている定期購入の悪質な業者というのはガイドラインも見ていないような人たちなのかなというイメージがありまして、効果の程はどの程度を見込んでいるのかということについて御見解をお聞きしたいのです。

(答) 今回、意見として提示しておりますのは、まず、ガイドラインを見直す。ここで基準を明確にするということがあり、ただ、御指摘のように、悪質な事業者は見ていないではないかという問題がございます。したがいまして、今回は更に執行の強化あるいは高度化ということで、特に健全な事業者団体などと連携を図りながら監視を強化するということを提示しております。執行がインターネットの場合には非常に難しいということがありますので、そこについても今回は併せて検討、工夫をしていただきたいということを言っております。

最終的には、やはり消費者に対する注意喚起も非常に重要ですので、これは現在でも行っているところではあるのですけれども、更にそれを強化するという形で今回、ガイドラインだけでは確かに絵に描いた餅になってしまう可能性がありますので、その上で執行を是非強化していただきたいということを言っております。

以上です。

(問) そもそも、消費者委員会の場合は意見、提言、建議とあるわけですけれども、今回、意見とされた理由は何かということが1点。

2つ目が、議論の中でクーリング・オフの必要性ということの議論はあったでしょうか。それで、難しさということはどういう点があったでしょうか。

もう一つが、ここに執行のガイドラインということが出ておりますけれども、これは特商法のことについて書かれているような気がしますが、景表法については何か議論がありましたでしょうか。この3点をお聞きしたいのです。

(答) 第1の、意見にしたということなのですけれども、現在、消費者庁で正に検討されている問題でして、消費者委員会として検討途中の段階で、建議という形で縛ってしまうことが余り適切でないということがあります。通常は検討途中であると、余りその間に議論の在り方を縛ってしまうのはどうかというところがあるのですけれども、今回はやはりこれが喫緊の課題である、待ったなしであるということがありましたので、意見を発出しましたが、やはり審議の途中ですので建議というところまでは行っていないということです。そういう理由です。

それから、クーリング・オフについて議論があったかということですが、これはありました。最後のその他検討が必要な事項というところに民事法上の効果の在り方とございますけれども、これにもいろいろな意味合いがあり、その中でクーリング・オフの制度を導入することが考えられるのではないかという議論がありました。たしか本会議の場でもそういう意見を提示された方がいらっしゃったのではないかと思います。

ただ、これになりますと、法改正、特商法の改正を要するということで、すぐに対応できるものでもなかなかないだろうということがありますし、それから、どのような場合にクーリング・オフを認めていくかという要件設定を慎重に考えなくてはいけないということがあります。

したがって、これにつきましては、その他検討が必要な事項という中に含めております。要件の設定の仕方によっては、健全な事業を営んでいる方にも影響が出てくる可能性がありますので、そこのところは更に慎重に検討を深める必要があるのではないかということです。

景表法ついては、今回は特商法にとりあえず絞った形で特に早急に講ずべき事項を挙げております。ただ、今回、直接意見を言っているのは申込みの最終画面の話ですけれども、今回の意見の4ページの注の8では、むしろ誇大広告の禁止等といったところについても、今後ガイドラインを整備して、お試し等の表示そのものを制限していくことが考えられるのではないかと言っております。お試しと書いてあるけれども、実際は定期購入であるという場合です。

ですから、この延長線上の広告規制の問題として、景表法の問題もありますし、医薬品等に関わるものですと薬機法にも広告規制がございますので、そのようなところにもつながっていく可能性があるということは議論しております。これについてもたしか本会議の場で、景表法とか薬機法の規制も併せて考えていかなくてはいけないのではないかという指摘がございました。

以上です。

(問) 今回、意見ということで、先ほども検討が進む中で、一方で喫緊の課題ということでの意見ということでしたが、検討会の結論が出た上で再度また何か消費者委員会から発出されたり、動きみたいなことは考えていらっしゃるのでしょうか。

(答) 特に今回、先ほどの注の8で挙げた部分であるとか、あるいは2のその他検討が必要な事項という部分に関しましては、やはり消費者庁の検討会等の動きも見ながら、必要であれば委員会として更に議論をしなくてはいけない課題であると考えております。

今、具体的にどういったタイミングでということまで固まっているわけではございません。消費者庁の検討会の動きも見ながら、必要であれば、やはりこれは検討していかなくてはいけないだろうと思います。ただ、それほどすぐに結論を出せるような課題でもありませんので、ある程度の時間を要するかとは思いますけれども、今後更に検討していきたいと考えております。

(問) もう一点なのですけれども、このお試し商法ではない質問なのですが、検討会の話で今、預託法と特商法の検討会では、もちろん、このお試しも含めてですけれども、販売預託の議論がかなり進んでいる状況かと思います。改めて検討会の動き、デジタルプラットフォーマーも含めてウォッチされていると認識はしているのですけれども、夏までに出てきたものに対する消費者委員会としての何か意見、ヒアリングなどは現時点で考えていらっしゃることはありますでしょうか。

(答) これもまだ消費者庁の検討会が進行中ですので、具体的にどういったタイミングで何をするかといったことまで固めているわけではございません。ただ、報道等によりますと、販売預託に関して申し上げれば、全体としては消費者委員会の意見を踏まえた形で検討が進んでいるように見えます。販売と預託がセットになった取引を原則として禁止するといった方向性が検討会の河上先生などから示されているようです。したがいまして、おおむね消費者委員会が言ってきたことと同じ方向で動いているのではないかと思います。

その上で、結論が出てきた場合にどうするかということですけれども、これは消費者委員会として建議、意見を出しているところですので、しかるべきタイミングで消費者庁の検討の状況を伺う機会を当然設けることになるのではないかと思いますし、必要に応じて消費者委員会としても更に検討することになると思います。

(問) 6ページのその他検討が必要な事項の(2)と(3)についてもう少し詳しく知りたいのですけれども(2)のインターネット取引における消費者の利益保護を実現するための民事法上の効果の在り方というところなのですけれども、どういう法律が効果を見込めるとお考えなのかというところと(3)については、責任の主体というところもどういうものが想定されているのかというのを教えていただけないかと思います。

(答) まず(2)に関しましては、やはり本会議でも指摘があったところですけれども、まず、お試しという表示をして、実は定期購入であったという場合に、現在の一般ルールである民法に基づいても救済ができる場合があるのではないかと。つまり、本当にお試しという部分、初回のその部分にだけ契約の効力を認めるといったことも、現在の民法の一般ルールの下でも考えられるのではないかといった議論がありました。

ただ、ここで主に想定しているのは、民法の一般ルールだけでは明確でありませんので、やはり特商法の中に契約を無効にするといった規定、あるいは先ほどのクーリング・オフの規定といった形で何か規律を設けることができないか。恐らく、検討を進めていくとそのような方向になるのではないかと思います。ですから、具体的には現在の特商法等に新たに定めを置くことが考えられないかといったことです。

(3)は、実は更に難しいところがありまして、これになりますと結局、特商法の枠も超えて、およそインターネット上の表現をどのように規律するかという問題になってきます。したがいまして、現在のプラットフォームの議論も関わってくるところがありますし、アフィリエイト広告を行っている広告主の問題もあります。ここになりますと、今すぐに具体的にどのように責任を定め、誰にどれだけの責任を負わせて、あるいはどのような内容を規律するかということがなかなか難しいところがあります。特商法とか景表法も基本的には事業者を規制しているのですけれども、2の(3)の問題になりますと、それを更に超えた検討課題になりますので、現在のところではまだここについては具体的にどうとは言えない状態です。むしろ特商法と、先ほども話が出ましたけれども、消費者庁でインターネット取引全般に関する検討も進んでいるようですので、そういったものも見ながら検討していくことになるのではないかと思います。

(問) 今までの議論とは離れてしまうかもしれないのですけれども、コロナの関係の転売規制のことで伺いたいのですが、3月にマスクなどの転売規制がかかりまして、7月になって若干価格も下がってきて、供給量も増えてきている状況かなと思います。

ただ、まだコロナの第2波、第3波に備えると商品が不足するおそれはあるとは思うのですけれども、改めてコロナで特別的に、ある特定の商品の転売規制をされている状況が続いている中で、消費者委員会としてこの状況が続いていることに対する今の委員長の御認識と、更に広げる必要があるのか又は縮小すべきなのではないか。そういった議論が今、もし進んでいたら教えていただけないでしょうか。

(答) この点につきましては、取引の実態がどうなっているかをかなり詳細に分析しなくてはなかなか答えが出ない問題だろうと思います。現在の動きのみならず、将来を予測する部分も必要になってまいります。消毒液などは先手を打ったという性格がかなりあり、現状だけでなく、更に将来、どういう状態が見込まれるかを考えた上で規制をかけたといったことがあります。

したがいまして、消費者委員会でそこまで現在のマスク等々の取引、価格等の実勢がどうなっていて、将来どうなるかというところまで細かく分析をしているわけではございませんので、具体的に今、これについて新たに規制をかけるべきだとか、これについて規制をやめるべきだというような具体的な議論まではされておりません。

ただ、2回諮問があったわけですけれども、そのときには両方の方向からの議論がありました。実態に照らせばこういった規制が必要であるという御意見と、取引そのものの禁止といいますか、制限をするということから慎重に行うべきであって、状況を見て、必要性がなくなればそれは解除すべきであるという御意見の両方ございました。

消費者委員会から能動的に動ける問題かというと、それはなかなか難しいところがありますので、関係省庁から必要に応じて状況を聞いて、必要であれば消費者委員会から意見を申し上げることになるのではないかと思います。

(問) この高額転売も含めて、コロナ対策としての消費者問題に対する消費者庁や各種団体の対策というものを改めて評価する場というものがまだ余りないのかなという個人的な思いを持っていまして、コロナ禍が続いている状況ではあるものの、第2波、第3波に備えることを考えると、どういったものに効果が一定程度見込めて、もしくはもっとこういう対策が必要な点もあるのではないかみたいな議論は消費者委員会でこの夏とか秋に検討される可能性はあるのでしょうか。

(答) このコロナの問題は非常に多岐にわたっているということがありまして、一番手元の問題としては、詐欺的な商法やあるいは誇大広告、虚偽広告といった問題がまずあり、それについては、かなり消費者庁で全体としては迅速に対応いただいているのではないかと見ております。

ただ、更に今、取り上げました転売規制の問題、もっと長期的には、特にインターネット取引等がこれでますます活発になっていくと思われますので、そのような新たな取引形態に対する対応をどうするのかということ。これは従来から議論されてきたところですけれども、ますます議論を加速化させないといけないと思います。それから、もっと広く言えば、いわゆる新たな生活様式に対応して、消費者政策として何をしていかなくてはいけないかという問題もあろうかと思います。

したがって、非常に短期的な問題から中長期的な問題があり、また、従来から議論されてきた問題もあれば新たに出てきた問題もありということで、非常に問題が多岐にわたっておりますので、消費者委員会としてもしかるべきタイミングでその辺りを少し整理して、必要なことについて更に検討を深めていくことが必要ではないかと個人的には考えています。

それがいつのタイミングになるか、目下、次々に問題が出てきているというところがありまして、なかなかそこまで落ち着いて検討するところまで行かないのが現状ではあるのですけれども、非常に重要な問題ですので、消費者委員会としてもしかるべきタイミングで整理をして、いろいろなスピードで、あるいはある程度めり張りをつけて検討していくことができればいいと思っております。

(以上)