山本消費者委員会委員長 記者会見

2020年3月27日
消費者委員会

日時

2020年3月27日(金)18:54~19:24

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

(山本委員長) 本日ですけれども、次期消費者基本計画の原案についてです。

本日の委員会本会議におきまして、消費者庁から当委員会が1月に発出いたしました意見の反映状況や、パブリックコメントの結果等について報告を頂きまして、答申の取りまとめについて議論を行った結果、本日、消費者委員会として答申を発出いたしました。

今回の基本計画は、案の作成の段階から、これまでに消費者委員会が発出をしてきた意見等をかなり強く意識をして作成され、構成も分かりやすくなっております。

加えて今回の原案につきましては、当委員会から1月に発出をいたしました「次期消費者基本計画案(令和元年12月)及び工程表策定に向けての意見」や、パブリックコメントに寄せられた意見をかなり反映していただいており、委員会として高く評価をしております。

本日の本会議で、各委員から様々な意見が出ました。特にこういったことを強調してほしいとか、もう少し本来であれば表現を工夫してほしかったといった意見が出ましたけれども、ただ内容的には委員会の意見を反映していると判断をいたしまして、本基本計画に基づいて今後、関係省庁をはじめとする各主体において積極的に取組が進められることを期待しております。

これは今日の本会議でも少し話が出たのですけれども、消費者庁において現在、次期基本計画に加えまして、工程表の策定に向けて検討が進められていると認識しております。

本日の議論も踏まえて、工程表に反映が必要な事項については積極的に反映いただくなど、引き続き検討を進めていただきたいと考えています。委員会といたしましても、この工程表についてヒアリングあるいは必要に応じて意見表明を行うなど、引き続き注視をし検討していきたいと考えております。

私のほうからは以上です。

質疑応答

(問) 基本計画のことではないのですが、今日、その後、預託法の建議へのフィードバックの関係と、公益通報者保護法の改正案についてのヒアリングがあったかと思うのですが、それぞれ受け止めを頂ければと思うのですけれども。

(答) まず、預託法の問題に関しましては、現在消費者庁の下で検討委員会が設置され議論をされており、法改正を視野に入れて夏頃をめどにして一定の結論を得たいという表明がございました。

消費者委員会で以前に建議、意見を発出しておりますけれども、それについてもかなり検討をしていただけるのではないかという感じがいたしました。そこで具体的に挙がっていた案として、例えば端的に販売預託商法を一定の要件の下で禁止する。この場合には、技術的には要件をどう書くかという問題はあるのですけれども、しかしそれも有力な選択肢であると言われておりましたし、あるいは参入規制の問題に関しましても、若干ちゅうちょされていたところもあるのですが、とにかく事業者の情報を迅速に取ってくることについては、必要性を非常に強く認めておられまして、そこのところは私たちの参入規制をという問題意識と共通しているのではないかと思います。

それまでの間は、現行法の執行あるいは啓発、注意喚起を進めていかなくてはいけないわけですけれども、それについて警察庁からは都道府県警察に対して積極的な取締りの推進を指示しているということであり、また、消費者庁と警察庁あるいは各都道府県の消費者行政部局と、一層の連携強化を図っていくということでございました。

根本的な法改正に至るまでは、まずはそういった対応をしっかりとしていただいて、やはりこれだけ大きな被害が出ておりますから、その撲滅につなげていただければと期待していますし、それから今日もスピード感を持って取り組むようにという意見が委員から出ておりました。その点については、やはり委員会としても今後よく注意をして、消費者庁あるいは警察庁の動きを見ていきたいと考えております。

それから、公益通報者保護法の改正案でございますけれども、まずはやはり消費者庁において、長い間改正が行われていなかった、問題点もいろいろ指摘をされていた公益通報者保護法に関して、改正法案を作成し国会に上程されたということで、その点についてご尽力に感謝を申し上げたいと思います。

今日も委員会で、かなり多岐にわたる論点について説明を頂いたのですけれども、私の感じですと、一つ一つの論点が非常に複雑ということはないのですけれども、しかし例えば外国において何かお手本になるようなものがあるとか、あるいは考え方としてこれが基本だというようなものも、実はあまりはっきりしない法律でありまして、その意味では非常に困難な作業だったのではないかと思います。

消費者委員会の専門調査会も非常に大変でしたけれども、庁においても非常に困難な作業に取り組んでいただいたのではないかと思います。

内容に関しましては、今日も話が出ておりましたけれども、不利益取扱いに対する行政措置を委員会としては言っておりました。けれども、その点について今回は盛り込まれなかったので、その点は残念でありますが、ただこれは今日も話が出ておりましたけれども、結局これだけのことをやろうといたしますと行政機関の側で体制をきちんと整備しなくてはいけないということがあります。

つまり、不利益取扱いは労働者と事業者との間の民民の関係、特定の事業者と特定の労働者との間の関係の問題になりますので、事実認定が難しくなることは委員会の場で指摘があったとおりであり、また、だからこそ専門調査会においては、行政機関が連携してやっていかなくてはいけないと申し上げておりましたし、ヒアリングも重ねました。

このような制度は、類例がないわけではなく、民民の関係であっても行政機関が一定の判断をすることはあり得るのですけれども、それをやるにはかなり行政機関の側で体制をつくらなくてはいけないという事情があったのではないかと思います。

今回、附則の中で、これは附帯決議ではなく附則ですから、附帯決議より強い意味を持っていますし、それから5年後見直しというのはよくあるのですが、3年後見直しとして、不利益取扱いに対する措置について検討をすることという形で、具体的にこのテーマについて検討を求める規定が置かれています。確かに制度として盛り込まれなかったのは残念ではあるのですけれども、このように強い形で法律の中に書き込まれた意味は、大きいと思います。

したがいまして、それまでは現在の体制で関係行政機関の間で連携を取って、不利益取扱いが起きないようにしてほしいと考えております。

他方で、守秘義務です。公益通報を受ける事業者側の担当者について、守秘義務が刑事罰つきで課されます。この点は、専門調査会の場では、確かに守秘義務は重要であるので、事業者の体制整備義務の中で、事業者が責任を持って秘密が漏れないようにすることが必要であると議論しました。

それから、現行法上も民事法上は不法行為となり、担当者個人が損害賠償を請求されることはあり得ますけれども、それ以上に刑事罰を科すことになりますと、特に調査をする段階で、必然的にこの人が通報したのではないかということが分かってしまうような、微妙なケースがあり得るところでして、その点について専門調査会の場では委員からかなり懸念が示されました。刑事罰をつけるところまでやるのは、現場に対する影響が大き過ぎるのではないかといった意見がありまして、そこまでは踏み込まなかったわけですけれども、今回はその点についても書き込まれました。

そうすると結局、刑事罰の運用の問題になろうかと思いますので、そこは恐らく慎重に運用がされるのであろうと思います。

他方で、守秘義務そのものは、現在でも民事法上はかかっているわけですから、その点では特に専門調査会の意見と大きく違うことはないのではないかと考えております。

この法案がとにかく、国会で審議をされ成立をして、一歩でも前にこの制度が進むことを願っておりますし、これが成立した暁には委員会としても継続的に施行状況等を注視し、といってもまだ施行まで少し間があるわけですけれども、その前にまず指針の策定がありますので、指針の策定に関わり、あるいは法律の施行に向けた準備状況を見ていくという形で継続的にこの問題には取り組んでいきたいと考えております。

(問) 別件なのですが、新型コロナウイルスの件です。基本計画には盛り込まれています。つまり、1月30日の消費者委員会の意見の中にはないのですけれども、基本計画には盛り込まれている。

それとは別なのですが、要するに国民生活安定緊急措置法のマスクを指定するときの諮問答申は、たしかこちらでも意見を出されたというか、要するに承認されたと、それは非公開だったような気がします。

もう一方、インフルエンザ措置法の改正法に基づいた対策本部が設置されて、これはいろいろな議論がありましたけれども、人権を制限するということがあって、それで対策本部ができたと。

このコロナについては、明らかに大きな消費者問題。消費生活に対して大きな影響を与えている。マスクにしても指定されたとはいえ、高値転売は禁止されたとはいえ、品薄が続いているような状況の中でもあるわけで、そうすると消費者委員会として何らかの形で、この新型コロナウイルスに対する意見なり検討なりをやる必要があるという形の意見は、委員会の中でないのでしょうか。

(答) 大きくいえば、物流の問題ですね。

マスクが品薄になっている、あるいはトイレットペーパーが品薄になっている。それから、今回東京都が外出を控えるように求めたために、買物客が、殺到までいくのかどうか分かりませんけれども、押し寄せたといった流通に関わる問題が一つあろうかと思います。

今、御指摘がございましたように、国民生活安定緊急措置法の施行令の改正の際には、委員会を急きょ開催いたしました。その翌日に閣議決定がされて、政令が定められたということがございます。これは委員会としても、やはり注視をしていかなくてはいけないところではないか。

マスクの転売の問題に関しましては、微妙なところがありまして、現在は規制をする必要性があるだろうと考えて、委員会で意見をまとめたわけですけれども、ただ他方において取引活動そのものを規制する、例えば取引のやり方を規制するのではなく、取引活動そのものを抑えるのは、経済活動の規制としてかなり強力な厳しい手法になりますから、委員会の場では、よく状況を見て必要性がなくなればそれは即解除することを検討するべきであるという意見が出されまして、担当省庁におきまして、その点はよく承知しているので、よくよく動向を注視していきたいという表明がございました。

したがいまして、その辺りのところは委員会としてもよく注視をしていきたいと考えております。

それからもう一つの問題は、付け込みですね。言わば、消費者の不安に乗じて様々な形で消費者に対して勧誘その他が行われるといった現象で、こうした問題はある意味でふだんからあるといえばあるのですけれども、それが新型コロナの影響で非常に強く表れているということではないかと思います。

これそのものについて、委員の中から具体的に何か言及があったわけではございませんけれども、ふだんから生じている消費者問題が非常に強く表れていることになりますので、やはり状況を見て委員会として必要があれば議論をしていきたいと思っています。

今日も委員の中で、現在のところ消費者庁のほうで、今までの災害時に比べますと、かなり迅速に動いていただいているのではないかという意見がありました。

ですから、現在のところは消費者庁がかなり迅速に対応していただいていると思いますけれども、消費者委員会としてもこの点は今後、注意をして見ていきたいと考えています。

(問) 今日のお話とはあんまり関係ないのですけれど、消費者裁判手続特例法に基づいて消費者機構日本が東京医科大と争って勝訴されたかと思うのですけれども、それで特定適格消費者団体3団体から、消費者委員会にも消費者庁にも去年だったと思うのですけれども、もともと3年をめどに見直しをというものがついていて、意見書が出されているかと思います。

結果、今回は勝訴したからよかったかと思うのですけれども、いろいろすごく制度的にも課題があるものだと思うのですけれども、私が聞いている限り、消費者庁が今から何をするというアナウンスは特段、伺っていないのですけれども、意見書も出てある程度時期もたっていて、消費者委員会として何か先に動くみたいなところがあれば伺えればと思うのですけれども。

(答) これは3年後に見直すことになっている話ですので、したがいまして消費者庁として、何らかの検討は当然行われるものと認識をしております。

それがないときに、消費者委員会のほうから何か言うかということですけれども、現在では具体的にそこまでのことは考えておりません。

ただ、当然施行後3年後に見直すことになっていますから、これから動きが出るものと思います。

(問) 先ほどの新型コロナに対する委員会としての動きというか、対応ということでちょっと伺いたいのですけれども、前回は翌日に発表ということがあったので非公開という形だったと思うのですけれども、いわゆる解除については委員会側から状況の説明を求めたりすることも公開の場で可能なのではないかと思うのですけれども、向こう側からの意見を待つのではなく、時期を見て説明を求めるようなお考えはあるのでしょうか。

(答) これは、かなり経済状況を詳細に分析しないと何とも判断ができませんので、基本的には関係省庁、経済産業省あるいは厚生労働省等々が判断をすることであると思います。

解除をする際に、消費者委員会に意見を聴く義務は、法律上は定められているわけではないと思いますけれども、しかし先日の委員会の場で、経済産業省から、その場合にはやはり意見を聴くことを検討したいと発言されましたので、その場で委員会として意見を言っていくことになると思います。

(問) あともう一点、今、マスクだけがいわゆる対象商品になっているかと思うのですけれども、その対象を広げるというような意見、後で議事録が公開されたときにはそこまではあまり踏み込んだ意見は出ていなかったのではないかと認識はしているのですけれども、委員や委員長の中でさらに対象商品を広げていくお考えなどはあったかどうかを伺えますでしょうか。

(答) そのときにトイレットペーパーに言及されていた委員がいたと思うのですけれども、品薄という事実の指摘で、それを対象に加えるべきという意見ではなかったのですけれども、状況としてはほかのものも品薄になっているという認識は表明されました。

さらに対象商品を広げるかという点ですが、先ほども申しましたように、非常に強力な規制手段ですので、やはり慎重に動かざるを得ないのではないかと思います。

この政令で商品が指定されたのは今回が初めてだったと思いますけれども、必要性があるときは使わなくてはいけないということがある一方で、取引活動そのものを抑えるということですので、やはり影響が非常に強く出ます。

したがいまして、差し当たり現時点ではそれをさらに広げるという具体的な意見までは、委員間では出ていないということでございます。

(問) これで最後にしようと思うのですけれども、今回は消費者庁所管で法律上も消費者委員会に聴くという文言があったので、施行前に意見を聴かれているものだと思うのですけれども、いわゆる今話題になっている、新型インフル等というか新型コロナウイルス特措法については、特に委員会に聴くというような立て付けにはなっていないとは思うのですが、そちらもかなり条件としては同様の、かなり厳しいというか経済活動を縛るという形になるかと思うのですけれども、直接に消費者にどこまで影響が及ぶかというのは発動してみないと分からないところではあるのですが、その辺りを委員会としてウオッチしていく、もしくはいくべきだというか、委員長としてどのように受け止めていらっしゃるのでしょうか。

(答) 国民生活安定緊急措置法に関しては、取引の問題を直接のターゲットにしているため、消費者委員会に意見を聴くことが可能な仕組みになっているわけですが、新型インフルのほうの特措法ですね。あちらに関しては、国民生活全体を押さえることになりますので、したがいまして、なかなか消費者委員会が単独で動いて意見を言っていくことを検討するのは非常に難しいと思います。

まさに私たちも大学で今、新学期が始まる前に大変な状況になっているのですけれども、もし法律上の措置が発動されることになれば、国民生活全体がまさに非常に大きな制限を受けることになりますので、もちろんその中で消費者委員会として、消費者への影響という点で見ていかなくてはいけない部分があると思います。ただ他方で、消費者委員会だけで動いて意見を言っていける事柄でもないところが、難しい点ではないかと思います。

(以上)