山本消費者委員会委員長 記者会見

2020年1月30日
消費者委員会

日時

2020年1月30日(木)12:29~12:54

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

(山本委員長) 本日は、私から報告事項が1件ございます。

本日の本会議におきまして、お手元の資料のとおり「次期消費者基本計画案(令和元年12月)及び工程表策定に向けての意見(案)」を取りまとめました。

この次期消費者基本計画につきましては、平成30年9月に発出をした「次期消費者基本計画策定に向けた基本的な考え方についての意見」を始めといたしまして、次期の計画策定に向けての課題や、留意すべき視点について、委員会として累次指摘をしてまいりました。そして、消費者庁から、随時その検討状況についてヒアリングを行ってきました。

当委員会は、昨年12月から行動経済学や消費者志向経営などの個別施策についてもヒアリングを行い、12月25日の消費者委員会本会議において、次期計画案について消費者庁からヒアリングを行っています。

以上が、これまでの経緯でございますけれども、今般の本意見につきましては、以上に申し上げたヒアリングの結果や、これまでに当委員会として行った建議、提言等を踏まえたものとなっております。

以下、ごく簡単に内容について述べさせていただきます。

「第1 計画に反映が必要な事項」では「1.計画全般に関する事項」といたしまして、2ページの上から2番目の〇にありますように、SDGsと消費者政策の取組を俯瞰した記載を追加すること、これは、SDGsと消費者政策との関係は多面的でございまして、多様な消費者を取り残さないということもありますし、食ロスの問題にみられるように、消費の在り方の問題もありますし、それからSDGsに取り組んでいる事業者を消費者として応援する消費を行っていくといった側面もあると思いますが、そのように多面的になっておりますので、そういった全体を俯瞰する記載を追加すべきであるということです。

それから、次の〇にありますように、連携や協働の取組については、一般的にはずっと言われてきましたけれども、今まで何をやってきて、どれぐらいこれが進んできたのか、そして今後10年間を見据えた課題、どういったことを今後やっていく必要があるのかというところを、具体的に示していただきたいということを述べております。

次の「2.政策の基本方針に関する事項」でございますけれども、ここにおきましてはまず「コミュニティの形成等における行政の役割」として、もちろん自助、共助は重要ですけれども、行政にも依然として果たすべき役割があるということをもう少し書いたらどうかということです。

それから、2ページ目の2の(2)に「消費者志向経営の促進に向けた取組」として、、先ほど申しましたように、消費者委員会の本会議において、昨年末にこれについてヒアリングを行っているところですけれども、消費者志向経営を広げていくためには、例えばそのフォローアップとか、あるいは基準の明確化等が必要ではないかという意見をここで書いております。

そして、2ページの一番下では「協働を支える地域の枠組みの構築」として、地域のネットワーク、消費者団体との協働の在り方等について述べております。

それから、3ページに行きまして、3ポツですけれども、ここにおきましては「行政基盤の整備に関する事項」を挙げています。今回の基本計画案において、非常に重要であり、私たちとしても評価をしたいと思っているところですけれども、第4章におきまして、行政基盤の整備について、特に記載があります。

その点につきまして、委員会としても更に意見を述べており、(1)の「情報基盤の整備」について、PIO-NETが消費者行政における基盤、委員会の本会議では「根幹」という言葉も使われましたけれども、基盤、根幹をなすものであるから、具体的にそれについて今後の方針を書いてほしい。それから、やはり国がそこで果たすべき役割も書いていただきたいということです。

それから、3ページの(2)で、専門人材のプレゼンスの向上に向けた取組の方向性等について記載をされたいと言っております。

そして、(3)では、地方における組織基盤について書いております。やはり地方の消費者行政が、消費者行政の基盤であります。

しかし、消費者行政に限らず、地方行政がこれからやっていく見通しが厳しい状況になっていくことを踏まえて、例えば市町村に対する都道府県の役割であるとか、あるいは地方公共団体に対する国の役割といったことも含めて、今後考えていく必要があるのではないか、そういった方向性について書いていく必要があるのではないかということを意見として述べております。

そして、3ページの(4)では「消費者庁の司令塔機能の発揮」として、これは消費者庁が発足した当時から言われてきたといいますか、消費者庁が発足したときに、正に期待されていた原点ですけれども、これについても記載をされたいと書いております。

4ページの4の部分、これは個別施策の部分でございますけれども、ここにおきましては「消費者事故の発生・拡大・再発防止に向けた取組」、それから「被害回復・救済に向けた取組」が今回の基本計画では、余り記載されていないということもありまして、「被害回復・救済に向けた取組」も昔からの課題ではあるのですが、依然として重要であるということを指摘しております。

第2でございます。

これは5ページ以下ですが、ここでは「工程表策定に向けて留意すべき視点」ということで、今回は基本計画案についての意見ですから、工程表について直接言うことはできないのですけれども、今後、工程表を策定していく際に留意すべき視点として、現時点で消費者委員会として気が付いていることを述べております。

例えば「新規施策の積極的な反映」、SDGsへの取組や取組の進捗状況等も踏まえた、より効果的なKPIの設定、これは5ページの終わりから6ページの初めにかけて書かれております。あるいはその次にあります、工程表の年表における取組の期限の明確化といったことです。これは、従来から消費者委員会が述べていることです。

そして、6ページのアラビア数字の2のところでは、具体的に現時点において、工程表への策定が必要と考えられることについて整理をしております。

以上が内容の説明でございますけれども、関係省庁等におかれまして、本意見の各項目について十分に検討された上、可能な限り次期計画の原案等に反映をしていただきたいと考えております。

当委員会としては、本意見の計画への反映状況、それからその後の実施状況等について、引き続き監視を行い、消費者被害の状況が深刻なものや取組が不十分と考えられるもの等について、必要に応じて建議等を行ってまいりたいと考えております。

私の冒頭の発言は以上です。

 

質疑応答

(問) 冒頭に発言があった消費者基本計画のことについてなのですが、かなり委員から多様な御意見が出ていたと理解しているのですけれども、今回のこの意見書として出されたもので、おおむね委員の求めているものが全て反映されていると委員長としてはお考えでしょうか。

(答) 表現につきましては、いろいろな意見がなおあるところではありますけれども、考え方については、今回のこの意見の中に全て取り込んでいると認識しております。

(問) その上で、今回の意見が反映されるような形で、改めて修正なり、新しく出てきたものが出てくれば、委員会として新たに議論ですとか、修正ですとかということは出てこないという受け止めなのでしょうか。

(答) 修正というのは、基本計画についてですか。

(問) この後、改めて意見を踏まえたものが示されるとは思うのですけれども、これが反映されていれば、おおむね委員会として特段反論ですとかということは、恐らくなく済むのかどうか、その辺りのこと。

(答) 現時点においては、今日まとめました意見に沿った形で修正をしていただくかどうかを見てまいりたいということで、現時点ではそれ以上のことは考えておりませんが、もちろん、更に基本計画が変わるとか、あるいは状況が変化をすれば、そこは適宜対応することになるとは思います。

(問) 「消費者庁の司令塔機能の発揮」というところなのですけれども、やはりこれは必要だと思います。

一つあるのは、これは現在の政策、施策への反映かもしれません。国民生活センターが先週発表しました、立替払型の後払い決済サービスということについて苦情がすごく出ている。しかも、それは定期購入商法のバックボーンになっているような支払方法ということを指摘されたときに、これは特別調査として発表されたときに、これについては、割販法であるとか、資金決済法であるとか、現行の法律の適用を受けない、つまり、それは隙間事案ではないかと思いました。

つまり、そういう隙間事案がまだまだあるということについて、消費者庁は本来、その隙間事案に対しては、各省庁、関係省庁に対して、一歩踏み込んだ対応をするということがその司令塔機能としての一つの役割であるかと思います。

ですが、これについては、恐らく消費者庁はプラットフォームが介在する取引の在り方ということで、現在いろいろな形で委員会を設けているわけで、それが夏頃をめどにいろいろ報告を出してきて、それがこの基本計画の工程表の中にどう入るかということであるとか、ちょっと外から見ていると分からないところはあるのです。

消費者委員会として、そういう点、つまり、隙間事案への対応であるとか、基本計画の全体的なことですけれども、もう一つが、現在、当面反映させるべきものとして、国政が指摘したそういう隙間に対しては何とかするように、そういう具体的なことは盛り込まれませんでしょうか。

(答) 今日まとめた意見の中では、3ページの終わりから4ページの始めにかけて、司令塔機能ということを書いておりますけれども、その中には、当然、隙間がないかどうか、それについて適切な対応をどのように取っていくべきかということの検討をしていただくということも、これは正に消費者庁が発足したときからの課題でありますので、当然含まれていると理解をしております。

話がまた別になるのかもしれませんが、基本計画の中にも、例えばオンラインプラットフォームの問題などは、これから本格的な議論が消費者庁において始まっていくというように、正に現在動いている、あるいはこれから動き出すという部分がかなりありますので、これについては、今後消費者委員会としても継続的に見ていきたいと思います。

それから、具体的に後払い決済の話でございますが、私どもも国民生活センターでそのような課題の指摘があったことは認識をしております。これについては、オンラインプラットフォームとも関わっているところがございますので、今後、被害実態も更に調査をした上で、検討していく必要のある課題ではないかと思います。

差し当たりの対策といたしましては、国民生活センターで、後払い決済サービス事業者への要望という形で幾つかの指摘がされておりますので、まずはこれが守られていくかどうかを見ていくことになると思いますが、委員会としても、この問題は非常に重要な問題であると認識をしておりますので、今後注視して、検討してまいりたいと思っております。

(問) 消費者庁と消費者委員会ができて10年ということなのですが、当初も消費者庁と、要するに国民生活センターが消費者庁への一元化への問題がふっと沸いたときに、国民生活センターを消費者庁に持ってくるというのは、そういう議論があったときに、国民生活センターが独自の役割、一つとして立ち至っているその機能ということを重視して、そのときに国センが集めたものに対して、政策に反映させるという提言というか、要するに政策提言という形で消費者庁に出すということを、当時国民生活センターも約束してきたわけなのですけれども、約束というか、そういう議論があったわけですが、国民生活センターの記者会見に何回か出ても、その政策提言というのがどうなっているのかというのがなかなか分からない。

お答えになっているのは、よく消費者庁と国民生活センターとの情報交流の場があるという形で、そこでいろいろ出してくるということなのですけれども、一般的に見たときに、やはりこういう点を政策提言としてやってほしいということに対して、消費者委員会としての役割はいろいろな形で意見を出したり、建議として出せるわけですが、そうすると全体的な政策の透明性といいますか、そういうことも何か必要ではないかという感じがするのですけれども、そういう点はどうでしょうか。

いろいろなことが政策として問題を提起したときに、基本的にはこうすべきだという、そういうことが一般消費者に分かるような形の発表の在り方ということなのですけれども。

(答) 消費者庁と消費者委員会、それから国民生活センターとの関係については、確かにかつてかなり議論がされたことがございました。

結果的に、現在はこの3つの機関がそれぞれで活動しているということについては、いろいろな議論があろうかとは思いますけれども、この3つが分かれていることによって、例えば国民生活センターはこのようなことを考えている、それから消費者委員会はこのようなことを考えている、消費者庁はどう対応しているというプロセスが、見えるようになっているという面があると思います。

これが、仮に一つになりますと、内部的な意思決定過程で、いろいろな意見が出て、表には最終的にまとまったものが出てくるのかもしれませんけれども、それぞれのプロセスでどのような意見があったかということは出にくくなる面があろうかと思いますが、現在は3つの機関が分立をしていることから、意思決定過程がある程度はっきりと見えるようになっているということがあろうかと思います。

もちろん、その中で、更に工夫をしていかなくてはいけない部分はあると思いますけれども、現在の体制自体がある意味で、意思決定過程を通常の行政機関よりは透明化しているという面があるのではないかと思っています。

(問) 本日のものとは直接に関係ないかもしれないのですけれども、預託法の建議が出されて間もなく半年がたつかと思うのです。

2月までに委員長に報告せよというふうな建議が出されていたかと思うのですが、1月も明日までということで、間もなく2月に入るかとは思うのですが、その辺りの日程の状況とか、もしお示しいただけるものがあるとすれば、御説明いただけないかと思います。

(答) 明確に2月と書いてあるのです。2月にとにかくどのような状況になっているかを報告するように求めていますので、現時点では、正に2月にそれをやっていただいて、そして委員会として、それに対して更にどのように考えていくかということになると思います。

依然として問題が解決されないままという状況でございますので、間違いなく2月にとにかくフォローアップをするということです。そうしていただかないと困ります。

(問) 関連して、委員会に出された要望だったり、意見の中にも、預託関係が幾つか出されていたかと思うのですけれども、メンバーが替わったということもあるので、その関心の具合というか、度合いとかというのは、委員長が見られていていかがでしょうか。

(答) 確かに、委員がその間に交代をしておりますけれども、今までの被害の状況がひどいということがありますし、それから今でも問題が依然として残っているということがございますので、さすがに委員が交代したからといってスタンスが変わるということはございません。

それぞれの交代をされた委員も、このままでは同じ事が繰り返されるのではないかという危機感を持っておられます。

(以上)