高消費者委員会委員長 記者会見

2019年8月30日
消費者委員会

日時

2019年8月30日(金)12:30~12:46

場所

消費者庁記者会見室

冒頭発言

○高委員長 御出席いただきまして、ありがとうございます。

私からは、報告事項は3件でございます。

1件目は「いわゆる『販売預託商法』に関する消費者問題についての建議・意見について」でございます。

本日、いわゆる「販売預託商法」に関する消費者問題についての建議と、その建議に関する消費者委員会意見を発出いたしました。

我が国では、物品等を販売すると同時に、当該物品などを預かり、自ら運用したり、第三者に貸し出すなどの事業を行うとして、利益の還元や物品などの一定価格での買い取りを行う商法を悪用し、多数の消費者に深刻な被害をもたらす事案が繰り返し発生してきました。

こうした状況を踏まえ、当委員会では、本件について、1年以上にわたり、様々な観点から検討を進めてまいりましたが、今般、法制度の在り方や法執行の在り方の検討などを求める建議と、その法制度の在り方について消費者委員会の考え方を示した意見を発出した次第でございます。

本件は非常に難しい問題ではありますが、消費者庁を始めとする関係省庁において、しっかりとした検討や取組が行われ、しかるべき対応がとられることを期待したいと思っております。

また、当委員会としても検討状況を注視し、適切にフォローアップを行っていく必要があり、そのことを次期消費者委員会にしっかり引き継ぎたいと思っております。

2件目は「地方消費者行政専門調査会の論点整理について」でございます。

8月26日に開催されました、第24回地方消費者行政専門調査会において、専門委員や有識者ヒアリングなどを踏まえた論点整理が取りまとめられ、本日の本会議において、専門調査会の新川座長より論点整理について御報告をいただいたところでございます。

本論点整理は、地方消費者行政専門調査会再開後、計5回にわたる専門委員や有識者ヒアリングなどを取りまとめたもので、現段階における中間的な整理ということでございます。

次期消費者委員会の下においても、引き続き検討を行い、議論を深めていただくものと期待しております。

最後は、来月1日に発足いたします第6次消費者委員会において、留意して調査審議をしていただきたい事項等について、「次期消費者委員会への移行に当たっての留意事項」として取りまとめを行いました。詳細については資料を御確認ください。

以上です。

質疑応答

(問) 1点目の預託商法に関するものなのですけれども、建議としては、在り方を検討と、少し軟らかい表現になったのかなという印象を受けたのですけれども、ただ、思いは意見に込められているかと思うのですが、改めて、委員長としての建議・意見に込めた委員会としての思いを教えていただけますでしょうか。

(答) まず、2本立てとして、なぜ行ったのかということから整理させていただきますと、当委員会としては悪質な「販売預託商法」による被害の防止、それから、被害が確定する前のより早い段階での取締り、それから、被害回復のためには、委員会意見で述べたような法制度が必要であると考えております。

他方、本件は非常に複雑な問題でございまして、預託法の部分的な手直しでは済まない可能性もあります。今日、お配りした資料を御覧になってもお分かりになるかと思いますけれども、金商法の問題、出資法の問題、それから、刑法の詐欺罪の問題と、いろいろなところが絡んでくる問題なのです。例えば、我々が意見で求めているような新しい法制度を作ることになれば、「販売預託商法」の定義をまずどうするのかということとか、あるいは、刑事罰を科すための要件を検討する上で、特に組織犯罪処罰法の適用対象にするということまで考えれば、要件をどうしていくのかということ、関係省庁と調整をする必要がある。そういう事態が考えられるということで、分けております。

また、委員会から制度改正の内容を決め打ちしたような形で、つまり、こうすべきだと固めてしまうと、制度を作る側の消費者庁を必要以上に縛ってしまって、かえって不都合が生ずる可能性が出てくる。我々は新法を想定していますけれども、例えば出資法をこういう形で改正することで、これに対応できる、その意図どおりになる可能性だってゼロではないわけですね。

消費者庁、消費者委員会ともに、消費者被害をもたらす悪質な「販売預託商法」をなくすという目指すべき方向、これは前回の本会議でも確認させていただきまして、完全に一致しておりますので、ともに協力しながら、法改正あるいは新法、いずれの形になるかは分かりませんが、次期委員会として、進めていただければ有り難いと思っています。

(問) 追加で1点だけ、意見に参入規制のお話もありましたけれども、その点はいかがでしょうか。

(答) 参入規制については、委員会としては、これは何らかの形で、届け出制でも何でも良いのですけれども、どこにどういう事業者がいるのかということをまず把握しなければいけないし、そもそも届け出を行っていないことでもって、その事業者を摘発することも可能になるという意味で、制度はあったほうが良いと思っています。

ただ、前回の本会議に御出席されていたかどうか知りませんけれども、どれぐらいの事業者がいるのか、該当する事業者がいるのかが分からない状況です。かなりの数がいる、あるいは今後出てくるかもしれないということを考えると、行政コストがそれに見合ったものになるのか、消費者被害の防止に見合ったものになるのかなどを考えると、なかなかそこまで言えないのではないかというのが庁の理解ですね。

ですから、委員会としては、まず実態調査を行ってほしいと。私などは、そんな事業者はまずいないだろうと思っているのですが。物を売って、預かって、最終的にはそれを買取りも保証するということは、前も言いましたけれども、その販売行為は売上計上できないのです。最終的に現金でお返しして物を引き取りますということをやっている限り、これは売っていないわけですから、そんなビジネスをやろうとする事業者なんて本当にいるのかと思っています。ですから、まず実態調査をしてほしいと。その中で、合理的な参入規制があり得るのならば考えてもらいたいということですね。

(問) 今回、意見と建議とを分けたということなのですが、意見に書かれている内容について、基本的なところで、さほどそれを書いたからといって、どういう法規制にしろとは書いていなくて、こういうところを禁止しろというふうに書いている、そういう法律を求めているわけで、今までの感覚からして、これを建議事項に入れられなかったのはなぜかと。今の委員長の御説明ではなかなか納得がいきにくいところがあって、委員会としては、法改正をする側との合意がとれないと建議が出せないということなのでしょうか。

(答) 法改正を、実際に汗をかいてやるのは、最終的には消費者庁ということになりますね。法改正の作業にも相当人が要るわけです。人を投入しなければいけないし、時間もそこに割かなければいけない、そうすると執行が緩くなってしまうというような、こういう問題もありますので、一方的に委員会の考え方だけを発出するということでは足りません。建議だけ出して、それが実際の法律となって機能し始めるかというと、そうとも言えません。そういう意味で、今回2つに分けて、意見の内容については、あれは消費者委員会としての考えですので、その観点から継続的にウオッチをしていくことにしました。例えば、どうしてそういうことができないのだということも問いただして、できない場合には、それに相当する別の措置があるのではないかということも今後次期の委員会で指摘していただきたいと思っております。

(問) やはり物が足りないということが分かった段階で、警察か何かが入ってすぐに止めないと、WILLなどは今もなお相当大きい被害が拡大しているような状況なのですが、それを含めて、今回の意見のポイントというのは、何を考えてああいうふうにされているのかをもうちょっと分かりやすくお伝えいただけると助かります。

(答) 意見のポイントですか。人それぞれ、注目している点は違うかもしれませんが、私としては、警察ができるだけ早い段階で動ける法律にしたいということがあります。ですから、具体的な形式を決めてしまえば、売って預かるというビジネスをやっている事業者で、仮に商品がない場合、あるいは実際のその商品よりも随分高額な価格で販売している場合、というような形式を決めてしまえば、その要件がそろったところで、即、警察が動ける法律にしたいと思っております。つまり、これまでは、そこに故意があったかどうかとか、不実の告知があったかどうかとか、そういうところを固めなければ、警察は動けなかったわけですが、もし意見書に示したような新法ができれば、警察は、形式がそろったところですぐに動けるわけです。

今回のジャパンライフの事件では、警察が動いたのは最後の最後でした。そうではなくて、例えば、2回目の行政処分の時点で、既に商品の数は足りなかったわけです。我々が考えている法律では、この段階で警察は動くことができるわけです。

もう一点は、参入規制も重要ですけれども、そもそもやり得がなくなれば、この事業に参入するインセンティブがなくなるわけですから、犯罪収益の没収というのがカギになると思っています。これは、非常に難しい、ハードルは高いかもしれませんが、犯罪収益の没収という仕組みができれば、状況は大きく変わると思います。そういった規定を盛り込める形にしてもらいたい。既存の法律の中にそれを入れ込む場合、かなり無理が生じてくるため、新法でもって組織犯罪処罰法に該当する前提犯罪として、販売預託商法を位置付けるということです。

ただ、今後、消費者庁でいろいろ知恵を絞って、例えば既存の法律の中で同じような懲役4年以上という、刑事罰を科すことができる方法が出てくれば、それは我々が考えている新法でなくても良いという議論もあり得るかと思います。いずれにしましても、しっかり注視していきたく思います。

(問) イメージとしては、新法を考えられていたと。

(答) 意見の内容が、我々の一番目指したいところではございました。可能であれば、ああいう建議でということもあるのでしょうけれども、ただし、建議にしてしまうと、先ほども言いましたけれども、庁としてもっと柔軟にいろいろ発想があって、あるいは金商法とか出資法の解釈をこういうふうに変えて、あるいは法律をこういうふうに変えて、こう対応ができる、意見で書いているものと同じ効果を生むことができる、考えることができるということであれば、その可能性まで、私たちは潰す必要はないと思っています。

(問) 不勉強で恐縮なのですけれども、ジャパンライフのお話のところで、2回目に物がない、消費者庁が行政処分をした、その段階で警察として別に動くことができなかったわけではないかなと思うのですけれども。

(答) 物がなくても、例えば、相手側は、来月仕入れる予定ですというような抗弁を使うこともあるわけです。またそれは、不実告知について、故意はなかったなどを言ってくるわけです。このため、警察としてはなかなか動けないということになります。ですから、もっとすっきりと、商品がない段階で、しかも販売預託という形式のビジネスにおいて商品不足があったときに、すぐ動けるようにしたい、ということです。

(以上)