高消費者委員会委員長 記者会見

2019年6月13日
消費者委員会

日時

2019年6月13日(木)17:20~17:35

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

(高委員長) お忙しいところ、御出席いただきましてありがとうございます。

私から、報告事項は1件でございます。

消費者委員会はこれまで、消費者契約法や特定商取引法といった取引分野における個別法については、専門調査会を立ち上げ、必要な見直しの検討を行ってきましたが、委員の間で議論の結果、市場の公正を実現するためには、個々の法制度を見直すだけでなく、中長期的な観点から、消費者法(取引分野)におけるルール形成の在り方やルールの実効性確保に資する方策、そして事業者、事業者団体、消費者、消費者団体及び行政等の各主体の役割や連携方法を検討することが重要ではないかという結論に至りました。そのため、平成30年2月の第266回委員会本会議におきまして、ワーキング・グループの設置を決定し、座長は鹿野委員にお願いをし、計21回の会合を開催して議論を行ってまいりました。

このたび、取りまとめられました報告書については、本日の消費者委員会本会議にて報告を受け、内容を踏まえて検討を行い、本会議として意見を取りまとめました。

この意見においては、第1に、ワーキング・グループの報告書について、中長期的な観点から市場の公正を実現するための消費者法(取引分野)におけるルール形成の在り方や、ルールの実効性確保に資する方策、そして事業者、事業者団体、消費者、消費者団体及び行政等の各主体の役割や連携方法について適切な取りまとめが行われたものと考えており、関係省庁において、今後、消費者法(取引分野)の制度の整備その他の政策を立案・実施するに当たって本報告書が提示する観点を踏まえること、本報告書が指摘する民間の取組について、その普及・促進に向けた支援を行うこと及びそれらの政策を実施する上で関係省庁間の連携を一層推進することを求める、特に、消費者庁においては、消費者行政の司令塔・エンジン役として、各府省庁の縦割りを超え幅広い分野を対象とした横断的な政策の企画立案等を行っていくこと、及び、関係府省庁間の連携強化の取組を推進することが求められるところ、それらに当たり、本報告書を踏まえていただきたく思っております。

2番目に、また、事業者、事業者団体、消費者及び消費者団体等の民間の主体においても、本報告書を踏まえ、各自の役割を改めて意識し、更なる活動と連携が展開されることを期待しております。

第3、その他、関係省庁においては、所管団体等に本報告書の内容を広く周知し、その内容が活用されるよう努めていただきたく思います。

第4、なお、消費者委員会においても、今後、本報告書に盛り込まれた内容を踏まえ、関係省庁の取組を注視し、消費者政策について調査・審議を行うとともに建議なども発出していきます。

本報告書取りまとめに至るまで、ワーキング・グループにおいて約1年以上にわたって審議に熱心に取り組んでいただきました鹿野座長、委員の皆様、審議に協力してくだった関係者の方々にもこの場を借りて厚く御礼申し上げたく思います。

以上でございます。

質疑応答

(問) 今回の報告書自体は、一般的消費者の定義であるとか、一時的脆弱性とか継続的脆弱性ということであるとか、刑法の見直しに当たって連邦量刑ガイドラインの例を引いておられたり、あと特定適格団体の権限についても触れられていたり、とても重要な、一歩踏み込まれたものが結構盛り込まれているということなのですけれども、一番下のところで、建議等を発出していくというのは、これはこの報告書に基づいて何か一つ出していくとか、それとも別々にいろいろ建議を幾つか出していくとか、どうなのでしょうか。

(答) 4番目に申し上げたことでしたか、最後に申し上げたことですね。その意味は、この報告書に示された内容に基づいて、今後、政策提言とか建議などを行っていくということです。つまり、我々のスタンスを明確にしたということです。

座長がいらっしゃいますので、もしよかったら。

(答・消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ 鹿野座長) 御質問、ありがとうございます。

おっしゃるとおり、この報告書は取引分野について幅広く検討しておりまして、各検討箇所において具体的に念頭に置いたいろいろな法律というものもございます。ただ、この報告書自体は中長期的な観点からの考え方を整理したという形を取っておりまして、具体的な各法律をこうすべきだというような提言としてではありません。ですから、具体的な各法律、制度等に関しては、今後、より具体的な形で消費者委員会としても検討していくということになろうかと思います。

(問) 報告書の内容ではなくて恐縮ですが、徳島の移転の関係の話で、まち・ひと・しごと創生本部は、案という段階ですけれども、消費者庁は徳島に恒常設置をというようなことを言っていますけれども、消費者委員会としては先だって出された報告書の中では、東京の消費者庁の機能強化が必要なのではないかというようなことをおっしゃっていたと思うのです。まだあっちの徳島に恒常設置するものの人員というものが出てきていない中であれですけれども、そういう判断がなされたことに対して、委員長として何か思うところがあればと思うのですけれども。

(答) 前回説明したものを超えるものでもないし、またそれ以下でもありません。よろしいですか。

(問) あともう一つよろしいですか。

前もお話があったと思うのですけれども、預託の関係で、一時期は結構早い段階で建議をという話もあったかと思うのですけれども、その後、延び延びになっているのかなと思っていたのですが、スケジュール感とか、どうなりそうだというのを今答えていただける範囲で伺えればと思います。

(答) 特にスケジュールは説明できませんけれども、今日せっかくこの報告書が出たではないですか。これに消費者委員会のスタンスが見えてきます。

例えば27ページの下辺り、これは抽象的に書いているようだけれども、具体的なものをイメージしながら消費者委員会の中で議論をしたものです。先ほど座長からも説明がありましたけれども、中長期的と言いましたけれども、ここに記載している問題などについては、そんなに時間を置いて建議などを考えているものではございません。

例えば、27ページの下、4の「行政による悪質商法、不当な取引行為に対する対応の徹底」というところがあるのですけれども、読み上げます。「今後、取引の複雑多様化が一層進む中で隙間事案の後追いとなることを防ぐために、現に発生している悪質商法を実効的に規制できるような立法措置を迅速に講ずる」ということです。

その次に書いたことですけれども、「法執行の面では、違法収益の剥奪や制裁金については、比較法的に見ても、我が国の制度整備が遅れているのが現状であり、強化することが求められる。例えば、対象の範囲を広げることや、制裁金の上限を引き上げることが考えられる。行政機関による破産申立て、財産保全等の制度の整備も検討されるべきである」と。

それから、「犯罪が成立する可能性がある行為についても、行政が端緒を把握できるようにすること、行政が把握した情報を基に、関係機関と適切に連携すること」、特に警察等でしょうね。それから、「消費者に注意喚起・啓発できるようにすることや、厳格な刑事罰により抑止すること、犯罪収益の没収とそれにより被害回復を図る仕組みを拡充することが重要である」と書いていおります。これは委員会の決意だということです。

預託については、具体的なことは言えませんが、それも悪質商法の一つとして考えなければいけない問題だと思っています。

(問) ありがとうございます。

(問) 今、具体のことではないという御説明があったばかりなのですけれども、消契法の改正、見直しの議論が多分進んでいるところで、それが一番近いのかなと思ったのですが。

(答) 消契法の議論が進んでいるというのは。

(問) 消費者庁内で見直しというか、改正についての議論をしていると思うのです。

(答・消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ 鹿野座長) 消費者庁での検討ということですね。それ自体は一応承知しているところです。

これは、消費者庁とは別に消費者委員会で設置されたワーキング・グループの検討ではございますが、特に今回の報告書ではルールのベストミックスと担い手のベストミックスということに焦点を当てておりまして、そのうちのルールのベストミックスの中に各民事法、行政規制、自主規制がどうあるべきかということも記載してございます。特にその中で民事ルールの在り方、とりわけ特商法の民事ルールとは違う消費者契約法の民事ルールの在り方についても記載をしているところでございます。

もう一つは、この概要はお持ちですか。ここの左下のところにも書いていますように、直ちに消費者概念を変えるという話ではないのですが、消費者像として脆弱性という観点にも注目すべきだということ。そして、継続的な脆弱性ということだけではなく、従来、高齢者の保護ということは社会的にも大きな重要な問題とされてきましたし、いろいろな取組がなされてきたとは思いますが、そのような継続的な脆弱性ということだけではなくて、誰もが陥ることがある一時的な脆弱性ということについてもしっかりと注目をして、それでルールづくりをすべきだというようなことも記載しているところであります。

これらは、かなり消費者契約法も意識したというところでもございますが、先ほど申しましたように、この報告書自体は具体的な法律をこのように変えるべきだという提言という形は取っておりません。ですが、念頭には置いているということで御理解ください。

(問) ありがとうございます。

(以上)