高消費者委員会委員長 記者会見

2019年4月11日
消費者委員会

日時

2019年4月11日(木)16:44~17:06

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

(高委員長) お忙しいところ、御出席いただきまして、ありがとうございます。

私からは、報告事項1件でございます。

食品表示部会におきましては、昨年10月に内閣総理大臣から諮問がなされ、諮問された内容である「遺伝子組換えでない」ことを表示するための要件などを中心に、遺伝子組換え表示制度の改正案について調査審議を行ってまいりました。

計5回にわたり食品表示部会で議論いただいた結果、先月13日の第52回食品表示部会において諮問を了承する方向で結論が取りまとめられ、その後、答申に付する附帯意見に関して、委員間における調整を行い、委員長である私の同意を経て、4日付で答申を発出いたしました。

答申の内容は、お手元の資料にあるとおりでございますが、諮問された内容を適当とした他、審議の過程で消費者庁より追加で修正提案のあった点についても提案のとおり変更すべきとされました。

また、附帯意見として、マル1新たに検討中の公定検査法を含む監視に関して、マル2普及・啓発、周知や理解の促進に関して、マル3制度の見直しに関しての3点について、議論を踏まえた意見を付しております。

今回の答申に至るまでに、食品表示部会において、熱心に議論いただいた臨時委員の皆様を初めとする関係者の方々に心から御礼を申し上げます。

以上でございます。

質疑応答

(問) 委員長にまず、改めて今回の答申についての受けとめをお聞きしたいということと、公定検査法が完成しない中での議論になったことについて、部会長からも御意見をいただければと思います。

(答) もう部会長から直接お話ししてもらったほうが良いですね。

お願いいたします。

(答・食品表示部会 受田部会長) 御質問ありがとうございます。

公定検査法が確立される前の段階で、今回の答申に至ったことに関してという御質問でございました。

今回、お手元にお配りしております答申書の附帯意見の1ポツにある「新たに検討中の公定検査法を含む監視」ということで、4行にわたって意見を述べさせていただいております。

もう御存じのとおり、現在も国立医薬品食品衛生研究所において、リアルタイムPCR法を原理といたしますΔΔCq法という方法で、この公定検査法の確立が正に進められているところでございます。

本来的に言うと、こういった検査法、公定法が確立をされ、そしていわゆるその方法の特徴がつまびらかになった状態で、この検出されないという閾値が、ある意味、ボーダーの部分がしっかりと議論されるべきであるということは、委員の皆様からもいろいろ御意見をいただきましたし、私部会長の立場でもそうあるべきだというふうには考えておりました。

一方で、こういった遺伝子組換え食品の改正を求める声は当然、消費者側からも聞かれていたということもあって、正に同時進行になったというように私自身は受けとめております。

したがって、公定検査法の確立がまだ済んでいない段階であることを、しっかりと我々としても議論が尽くされていないといいますか、そこの部分の未整備の部分がまだあるということで、このような附帯意見を付させていただいて、今後、しっかりと科学的検証の仕組みの確立を急ぐべきというように意見を発出したところでございます。

(問) 今回の議論の中で、意図しない遺伝子組換え材料の混入について、日本だと5%を基準にされているということに関して、諸外国などから比べても高いのではないかという説明を消費者庁の方もされていたと思うのですけれども、今回、この点の基準についてはどのように考えられたのでしょうか。

(答・食品表示部会 受田部会長) 御質問ありがとうございます。

議事録等も公開をされていますので、全体の5回を通じて、どの部分が一番議論になったかというのは、それぞれに御覧いただければと思うところです。

今、御質問のあった意図せざる混入の混入率の閾値である5%に関しては、実際には、それほど議論の俎上には上がっておりません。

基本的には、先ほど御質問があったように、検出されないというところが、改正においては一歩特出すべきポイントでございましたので、そこの部分でかなり議論が進んでいったというのが1点です。

それと、5%に関しての受けとめ方として、5%という閾値が、諸外国との比較においても甘いというか、高過ぎるのではないかという話も若干ございました。

ただ、今、現状の調査データは手元にはありませんけれども、現実として、意図せざる混入の比率は、各事業者のデータにおいてもそれほど高いものではないということで、従来の仕組みを運用していくということで、すなわち5%を踏襲するということで、そのままこの数字を今回も維持するということになっております。

(問) 表示のグランドデザインの件と絡めての話なのですけれども、あれは安全性に関するものを優先するという意見もあったりして、ちょっとお聞きしたかったのは、今回の遺伝子組換え表示というのは、消費者委員会として優先順位としてはどのようにお考えでしょうか。

(答・食品表示部会 受田部会長) 御質問ありがとうございます。

グランドデザインの議論に関しても御注目をいただいていて、いろいろな議論がどこに着地をしていくのかというところで、かなりいろいろな視点から議論いただいているところでございます。

表示自体の分かりやすさを追求するということで、ともすれば、表示されている面積に対して、情報量が多過ぎるのではないかという意見も聞かれているところでございまして、その際に、表示項目として仕分けをして、具体的に言うと、容器縛りで書くべきものと、そうではなくて、容器以外のところで何らかの表示をするというような、例えばウエブを使うという議論もされているところでございます。

容器縛りに関しては当然、これまでもいろいろな検討会で議論されているように、安全性の確保という点で重要といいますか、大きな安全性をお示しする内容に関しては容器縛りで、それ以外の自主的、合理的選択の機会の確保に資するものについては、それとは別にという話が御存じのとおり展開されているところでございます。

今回の遺伝子組換えの表示に関しては、それはどちらにという点でございますけれども、基本、今回の部会の議論は、現在の8農作物及びそれ由来の33加工食品に関して、これはもう既に安全性が確保されているということでございますので、当然、その表示に関しては、自主的、合理的選択の機会の確保に資する表示内容であるということで、議論をさせていただきました。

(問) 食品表示に関してなのですけれども、遺伝子組換えでなくても質問は大丈夫ですか。

(答・事務局) はい。

(問) 消費者庁で、今度新しく食品添加物の表示に関する検討会が立ち上がりまして、来週、第1回の会合が開催される予定です。

そちらでまた改正が必要であると判断されれば、また諮問を受けて、消費者委員会でも御議論されることになるかと思うのですが、現状、委員になられた方々からの意見、上がってきた課題について掘り下げて検討するということで、特に消費者庁から課題が設定されているわけではないのですけれども、もし現状、食品添加物の表示について課題だというふうに認識されているものがありましたら、教えていただければと思います。

(答・食品表示部会 受田部会長) 御質問ありがとうございます。

今、御質問の中にありましたように、消費者庁側で食品添加物に関する議論が始まり、恐らく少し時間が必要だと思いますけれども、そこで上がってきた答申といいますか、改正に向けた提案を今後は当然この消費者委員会の食品表示部会で具体的な諮問を受けて議論することになってまいります。

現状では、そういった消費者庁側での検討会が立ち上がったばかりですし、私個人としては、まだ全く予断を持って云々ということではなく、そこでの議論を注視し、得られた、また具体的な諮問を受けてしっかりと議論をしてまいりたいと思っております。

当然ながら、この食品表示部会も8月までが一定の任期ということになりますので、このまま行きますと、今期の議論というのはなかなか難しいだろうと。諮問を受けるタイミングという点から、そういうことになるのではないかとは思っております。

(問) 今の質問との関連もあるのですけれども、先ほど出てきたグランドデザイン、食品表示の全体像は、前にお聞きしたときは、要するに消費者委員会の自ら調査であると。そうなると、諮問と答申という枠組みではなくて、むしろ消費者委員会の問題意識であるなどということが前提として出発している。

そうなると、今回の遺伝子組換えであっても、遺伝子組換えでないというものがどうなのかいうことを諮問を受けたり、そういうことなのですけれども、例えば、先ほど最初に質問が出たように、5%がどうであるかとか、あるいは対象作物がどうであるかとか、これは消費者庁では現行どおりだということで来たわけですけれども、そうすると、今度新しく始まる食品添加物であっても、食品添加物の中では遺伝子組換え技術応用をした添加物もあるわけで、そうなると、そういうことは表示でどうなるのかということを、結構、消費者の現場では課題がいろいろと提案されていたりとかしてきていて、その表示のあり方について、消費者委員会で、グランドデザインの中で、あるいは自ら調査の中で、このようなことをピックアップしていくなどということはどうでしょうか。要するに、諮問、答申ということではなくてです。

(答・食品表示部会 受田部会長) 御意見ということかもしれませんが、今、何度も申し上げたように、基本的には、この消費者委員会の食品表示部会として、これまで諮問を受けた内容に対する答申をするということで活動、ミッションを担っております。

例えば、先ほどの5%の点については、特にそれを何%にしますかという聞かれ方ではなくて、全体の食品表示法の改正として、それを妥当と見るかどうかというところで答申を出させていただいております。

ただ、そうは言いましても、中身に関する議論は当然やらなければいけない。私自身は部会長として、その点は強く意識をいたしました。したがって、先ほどの8農作物33加工食品を更に限定することなく、もっと広げるべきだとか、あるいは、科学的検証が可能なたんぱく質やDNAが残存していないものに対する適応性も考えるべきだという意見も聞かれましたけれども、議論の中では科学的検証という部分で現行の諮問に対する答申としてお認めをするということになった次第です。

では、諮問されなければ議論しないのかという点でございますけれども、当然、グランドデザインの議論でお分かりのとおり、例えば原料原産地の表示のあり方を巡って、社会的検証に基づく導入がなされたわけでございますが、その場合に、更に情報量が増えていき、表示に対する情報の過多という表現をされる方もいらっしゃいますけれども、そういうようなことが散見されるようになってまいりました。

このようなところが分かりにくい一つの原因であるということで、消費者委員会に多くの御意見も寄せられるようになったということが背景にございまして、諮問ではなく、このいろいろな食品表示全体像に関して議論をすべきではないかという指示をいただいて、食品表示部会で今、議論しているところでございます。

ですから、このような考え方でいきますと、いろいろな食品表示全体に対して、消費者の皆様からの御意見をまず起点にいたしまして、議論すべき内容については積極的に議論をしていく。その諮問に対して、答申という形で議論というところがなかなかできないような分野というか、俯瞰する部分も含めてですけれども、そういったところは、正に食品表示部会で議論しなければならないのではないか。そういうことは考えております。

ですから、単に諮問に対する答申のみではないということかもしれないですね。

(問) 今の質問ともちょっと関連するのですけれども、社会的検証のことについて、遺伝子組換えの時も議論に上っていたかとは思うのですが、これをもう少し食品表示の検証で導入するほうが良いのか、それとも、やはり科学的検証にこだわるべきなのかみたいなところについて、部会長はどのようにお考えでしょうか。

(答・食品表示部会 受田部会長) 先ほどの繰り返しになりますけれども、今回の遺伝子組換えの答申に関しては、部会を通じた議論において、科学的検証というところをバックボーンにして議論をしていったというのは御存じのとおりです。

一方で、社会的検証ということが拠り所にならないのかという点については、もう先例として、原料原産地の表示は基本的に社会的検証に依拠するということになっております。

ですから、今回の検出されないという任意表示で、遺伝子組換えでないという表示を可能にする仕組み自体も、基本は科学的検証なのですけれども、原料に遡ったときには社会的検証として分別生産流通管理の記録等を重視していく必要が絶対にあるということになろうかと思います。

今の流れとしては、このような科学的検証に依拠しながら、社会的検証を組み合わせるものと、新たに社会的検証でその表示が成り立つ部分も出てきている。これが現状であると思っております。そういう中で、ずっと部会での議論は進んでいるというふうに認識しております。

(以上)