高消費者委員会委員長 記者会見

2019年1月30日
消費者委員会

日時

2019年1月30日(水)16:14~16:33

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

(高委員長) お忙しいところ御参集いたただきまして、ありがとうございます。

私からは、報告1件でございます。

お配りしております資料のとおり、2月2日の土曜日、全大阪消費者団体連絡会と共催で「消費者問題シンポジウムin大阪」を開催いたします。

「高齢者の消費者被害の防止に向けて」をテーマに、消費者被害の未然防止に熱心に取り組んでおられる消費者団体の方、大阪府の消費者行政担当者、弁護士の方を交えたパネルディスカッションを行います。

消費者委員会より、パネリストとして蟹瀬令子委員が、基調講演を私が務めさせていただきます。

報道機関の方におかれましては、社内大阪担当支部などと連携していただき、取材をしていただければ幸いに存じます。

以上でございます。

質疑応答

(問) 消費者委員会の中で検討されているルール形成ワーキング・グループでしたか。あそこの報告書はいつ頃でしょうか。グランドデザインも含めて盛り込まれると聞いておるのですが。

(答) 対外的には申し上げたかと思うので間違いないと思うのですけれども、3月末ですね。そのつもりで、今、鋭意努力しているところでございます。よろしいですか。

(問) 今、御周知のありましたシンポジウムの概略というか、この中でどのようなことを話される御予定なのかを少し伺えればと思うのですけれども。

(答) パネルディスカッションの内容については、私はコーディネーターの方がどのようなシナリオを考えておられるのかよく分かっていないので、そこは何とも言えませんけれども、統一テーマは「高齢者の消費者被害の防止」ということですので、それを中心に議論されるだろうと思っています。

私自身については、今年2019年に入って、特に消費者委員会として力を入れていきたいと思っているところをお話ししたいと思います。

具体的にどんなことを思っているのだと。

(問) そうですね。ざっくばらんな感じで良いのですけれども。

(答) 前回もリレー報告会ですかね。そこでもお話をしたのですが、4つ柱がございまして、大きな柱の1つは、特にジャパンライフの問題もございましたので、いわゆる預託商法の問題について結論を出したいということですね。2番目は、先ほど言いましたルール形成の在り方に関する報告書、これをきちんとまとめると。それから、3番目は地方の消費者行政の在り方ですが、これはタイムスパンを長めに取ってどういう方向に行くべきかという委員会としての見解を示したいと思っています。4番目、最後は消費者庁と同じく設立10年ですので、記念のシンポジウムをやるということですね。

もちろん、その他をやらないわけではなくて、私の頭の中でぱっと優先順位を付けるとその4つがまず最初に挙がってくると思っています。それぞれについて話をする時間はないので、恐らく大阪では預託、特に預託は高齢者被害が非常に深刻でございましたので、例の預託の問題に関して消費者委員会としてどういう議論をして、可能であればこういう方向に行きたいという話をしようと思っています。

ルール形成のところについては、これも私が一番関心を持っているところの話が中心になって申し訳ないのですけれども、行政の処分の在り方について、新しいアプローチをするべきではないかという話をしようと思っていますし、ルール形成の中ではそういった章か節か分かりませんけれども、それを設けて報告書の中に書きこんでいければと思っております。それは大きな政府を作れないという前提の中で考えたときに、できるだけ効率的に行政資源を使うためのアプローチということで、そういう話をしたいということです。抽象的でよく分かりませんか。

(問) 可能でしたら、具体的に新しいことを考えられているというものがどういうものなのかというのは、少し興味があるのですが。今、委員長がおっしゃった新しい行政アプローチの点ですね。

(答) これは話しても良いですね。ルール形成の会合で、既に話をしておりますので。

私が考えているのは、アメリカに「連邦量刑ガイドライン」というものがございまして、これは量刑を決めるときの細かな手続です。その手続でもって有責点数を決める。例えば点数が1から10まであるのですけれども、基準の罰金額があって、有責点数というのが、1から10と言いましたが、例えば捜査に協力的であったかとか、早い段階で非を認めたかとか、あるいは司法妨害はなかったかとか、更には会社の中の内部統制の仕組みとか、コンプライアンスの体制とか、こういうものがきちんとできていたかと。そういうものを計算していって、有責点数を決める、有責点数に紐付けされた乗数を決めます。例えば、乗数が2だとしますね。そうすると、基準の罰金額が例えば1000万ドルだとしましょうか。それ掛ける2になって、最終罰金額は、2000万ドルになる。一番低いものを1とすれば一番大きなペナルティーは80倍になります。つまり、メリハリを付けるそういう手続があるわけです。

日本の刑事罰の仕組みの中にこれを持ってくるというのではなくて、行政処分を考えるときにそういう仕組みがあることで事業者側の協力を引き出せるのではないかという提案です。これは「21世紀型の消費者政策の在り方について」で、15年前に既にやっている提案です。ただ、そのとき、この必要を指摘しただけで結局、取組は進まなかった。進まなかった理由は、行政処分のガイドラインみたいなものを作るとなると、これは行政組織全体に関わる問題となってしまう。だから、一遍にそんな大きな変更、改革などは行うことができない。このため、今回の報告書では、ガイドラインの発想に最もなじみのある分野に絞って提案をする、具体的には、景表法の課徴金制度ということです。

課徴金の決定額についても、今は基本的にオール・オア・ナッシングで、1かゼロかで判断することになっています。課徴金納付命令を出すか出さないかと。若干裁量はあるのですけれども、自主申告があった場合には50%免除するとか、そういうのはありますが、基本的にイチゼロで決める仕組みとなっています。ここイチゼロではなくてもっとメリハリを付けて、先ほど1対80と言いましたが、そこまでの幅でなくても良いのですが、ある程度の幅を付けてペナルティーを決める、課徴金額を決めるという仕組みを導入すべきではないかという提案です。

こういうことをやれば、例えば先回の日産の件ですけれども、相当の注意を払ったかどうかというところで争いになりましたが、イチゼロで判断する必要はなくなると思うのです。双方が議論して、ある程度納得できるところで決着することだって可能になると思います。

(問) 2点あります。今のに関連して、何度も委員長からはありますけれども、預託商法、できるだけ早いうちに方向性を示したいという発言があったかと思うのですが、できるだけ早いうちということの時期と方向性、前々回のこういった記者会見でも同様の質問が出ていたと思いますけれども、もう少し具体的になっているようでしたらその具体的な話を教えてください。それが1点目です。

2点目は、またお答えいただいた後にします。お願いします。

(答) いつ頃というのは、本当に申し訳ない、はっきりとは言えない。ただ、私の個人的な希望としては3月末に決着させたいと思っています。これは委員会の決意として、平成の終わりとともに息の根を断つぐらいのつもりで対応したいと思っていますので、拙速な対応策では駄目だろうと考えています。仮に短期的な答えを出したとしても、もうちょっと長期的に腰を据えて考えなければならないとも考えています。その意味で、3月で全て終わるということではありませんが、3月頃に何らかの形は出したいということです。

具体的にどんな方向があるのかというと、これまでたくさん全国の特に弁護士会の方々から意見をいただいている、この可能性も議論させてもらいました。金商法の集団投資スキームの中に位置付けてやれば良いではないかというところで、私もそのとおりだと思っております。ただ、これだけで議論を終わらせる必要はなくて、もっといろいろな可能性を考えていくべきではないかと思います。

こういう議論をするときに出てくる反対の声というのは、例えば新しく金商法の中にそれを盛り込むという話が出たときに当然出てくるのは、それをやることで大きな政府を作ってしまうという反論です。だから、それを避ける方法も考えておかなければ、うまくいかないと思っています。

あとは、これはまだ議論はしていませんけれども、こういう方向で事務局の方々は検討してくれないかと私がお願いしているのは、そもそもこういった商法そのものが犯罪なのだという位置付けです。既存の法律の中にどうやってはめ込むのかという話ではなくてですね。それが可能かどうかは分かりませんけれども、そういった議論もしてもらいたいということ。

それから、ジャパンライフだけではなくて、最近のWILLもそうですけれども、共通している点というのは、本来であれば負債計上しなければいけないものを売上計上しています。意味は分かりますでしょうか。要するに、商品を売ったということにしておいて売上計上しているけれども、実質的には、理屈上、それをレンタル用に使うわけですから、消費者の人たちにお金を出してもらって、そのお金でレンタル商品を備えて、それを運用して利益を出していくという形を採っている。運用で利益を出し、その果実を資金提供してくれた方々に、つまり、資産を預託してくださった方々に、リターンとして返す仕組みですから、本来、これは企業にとっては負債となります。ところが、提供された資金が売上計上されている。こうした会計処理が認められない仕組みというのは作れないものかということですね。

お金を生む仕組みというのは、まず財務キャッシュフローといって、お金を借りてくる、あるいは出資してもらう。それを受け取った後に、今度は投資キャッシュフローといって、集めた資金を投資して、つまり物に換えて、その物を運用して営業キャッシュフローを生み出していく。営業活動を行なって、お金を生み出し、その後、出資した人、貸し付けた人たちに配当なり金利なりを支払うわけですね。ビジネスとは、こういう循環になっている。ところが、いわゆる預託商法のスキームは、財務キャッシュフローでお金を集めて、投資もせず、そのままキャッシュを配っている。だから、本来こんなものはビジネスとしては成り立たないわけです。したがって、預託商品を販売した時点で、売上計上を認めない仕組みとしなければなりません。このように考え、現在、私個人としても公認会計士などに意見を聞いているところです。

(問) ありがとうございました。

もう一点、全く別件なのですけれども、専門委員会でオンラインプラットフォームの専門委員会が開かれていると思うのですが、今、公正取引委員会とか総務省とかでオンラインプラットフォームをめぐる個人情報の取扱いなどを含めて似たような委員会が起きていて、今後進むべき方針で、こちらの委員会の特徴としてどういう提言の方向性で意見を集約していくのかというところを今の委員長のほうでお考えがありましたら教えてください。

(答) その点、説明していただいて良いですか。

(答・事務局) オンラインプラットフォームが介在する取引につきまして、他の役所でも専門調査会が立ち上がっているというところは承知しております。こちらは消費者委員会の下に設置された専門調査会でございますので、消費者がそういった取引を安全・安心に利用していくためにはどういったことが必要かと。今、直接的にオンラインプラットフォーム事業者などに移転のルールとか役割などが課せられているわけではないところでございますので、そういた状況の中で、でも、この取引は拡大していくと。それで、消費者が安全・安心にその取引にこれからもずっと参画していくためにはどういった仕組みやルールが必要かといったことを、提言としては消費者の立場に立って打ち出していきたいと考えております。

(問) 何か規制につながるような話になっていきそうなのでしょうか。

(答・事務局) 今はプラットフォーム自体に対して何か規制があるわけではないという状態でございまして、いきなり法制的な対応を求めるかどうかというところまでは、議論はまだ行っておりません。

(問) 先ほどおっしゃっていた景品表示法の課徴金の有責の話なのですけれども、不勉強で恐縮なのですが、先生からもう既に提案はなさっていて、前は何かいろいろな議論があって余り進まなかったという話だと思うのですけれども、今回、提案なさって、見立てとしてはいつ頃どういう形で進めていきたいとかというものはおありでしょうか。

(答) ルール形成のところでの報告書というのは、それですぐ法律の改正とか、そういう議論につながるものではありません。今後5年程度先を見て、こういう方向で行くべきではないかという報告書を出すことになります。ただし、法改正の時期になって慌ててやるのではなくて、今からでも議論を始めてほしいという意味で、そういう報告書を作るということです。

(問) 議論を始めてほしいという報告書自体はいつ頃。

(答) それを3月の予定で出したいと思っているのですけれども。

(問) 始めたほうが良いというのは、どの程度のところまで行きそうな感じなのですか。進展具合というか。当然、法改正という実体としては、先生がおっしゃるように5年とか。

(答) それを出したからといって、例えば消費者庁をすぐ縛ることができるかとか、そういう話ではないのです。委員会としてこういう方向で今後しつこく意見を言っていこうというものを出すのですね。

(問) 意思表明というか、方向性を示すみたいなことになるのですね。

(答) そのように解釈していただいて良いと思います。

(以上)