高消費者委員会委員長 記者会見

2018年8月2日
消費者委員会

日時

2018年8月2日(木)16:59~17:25

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

(高委員長) お忙しいところを御出席いただきまして、ありがとうございます。

私からは、報告事項は2点でございます。

まず第1に、本日の本会議におきまして、お手元の資料のとおり「関西電力による大飯原子力発電所3・4号機の再稼働に伴う電気料金値下げ後のフォローアップに関する消費者委員会意見」を取りまとめました。

2枚目以降が、専門調査会の報告の本体でございます。

初めに、本件の経緯が示されております。関西電力では原発再稼働の遅れを理由に過去2度に渡り値上げがされており、経済産業省による査定方針において、原則として、原発が1基再稼働するごとに値下げを行うべきであるなどの条件が盛り込まれております。そのフォローアップとして、昨年8月に高浜原子力発電所3・4号機の再稼働に伴う電気料金の値下げに関して調査審議し意見を発出したこと及び今回の大飯原子力発電所3・4号機の再稼働に伴う本年7月の電気料金値下げについて調査審議を行ったことが書かれております。

次に「2.値下げについての評価」では、関西電力による電気料金の値下げについての評価として、原発再稼働による火力燃料費の削減分が原価に反映され値下げがなされていること、販売電力量の減少などの原価を上昇させる要因は、そういうものがあったものの、経営効率化によって経費削減で吸収されていること、それが確認されたということを書いております。

また、「3.今後の課題」では、専門調査会の基本的な考え方として、原発が再稼働した場合、電力料金は停止前の水準まで戻すべきと考えることを示した上で、関西電力及び各電力会社においては、今後、原発再稼働などの進展が見られるのであれば、停止前の水準まで電気料金を戻すよう努力することが必要であり、仮に料金水準を戻すことができないのであれば、その理由について十分な説明が必要であるとしております。加えて、電力・ガス取引監視等委員会及び消費者庁に対しまして、今後、関西電力のみならず各電力会社において原発再稼働が行われた場合には、原発再稼働により節約された燃料費が料金に適切に反映されているか、引き続き丁寧な検証を行うことが必要である。電力・ガス取引監視等委員会及び消費者庁におかれましては、本意見に示された今後の課題への積極的な対応を期待いたします。

続きまして、もう一点ございます。公益通報者保護専門調査会における「中間整理」についてでございます。

公益通報者保護法は、平成18年4月に施行されましたが、その附則において、施行後5年をめどに施行状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずると規定されており、これまで消費者庁の検討会などにおいて検討が行われてまいりました。このような経緯を踏まえ、当委員会は、本年1月に内閣総理大臣から諮問を受け、「公益通報者保護専門調査会」の再開を決定し、公益通報者の保護、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の遵守を図るための規律の在り方や、行政の果たすべき役割について調査審議を行ってまいりました。そして、先月18日に開催されました第17回の専門調査会で「中間整理」が審議され、先月末に公表されたことを受け、本日の消費者委員会本会議で報告を受けたところでございます。本中間整理は、専門調査会におけるこれまでの審議の内容を踏まえ、現時点においておおむね方向性が示された事項と、今後の検討課題として残されている事項を整理したものとなっております。

今後は、関係団体等からのヒアリングを行うなどと聞いております。最終の取りまとめに向けて、引き続き検討を深めていただきたいと思っております。

以上、2点でございます。

質疑応答

(問) 公益通報者保護専門調査会についてお聞きしたいと思うのですが、今後の調査会としての報告書をまとめる時期のめどの予定と、「今後の検討課題」とされている内容については、この残りの期間を経て、ある程度の方向性を示されたものに入っていくものがどれだけあるのかという見通しについて、教えていただけないでしょうか。

(答) 詳しいところは山本座長にお願いしたいと思いますけれども、めどとしては、今年の末までということを一応考えております。もちろん座長がそれは無理だと言われるかもしれませんけれども。

その他の検討課題について、どのようにやっていくのかというところをお願いできますか。

(答・公益通報者保護専門調査会山本座長) この「今後の検討課題」の中に入っている事柄には、実はいろいろな種類のものがありまして、それはこの中間取りまとめの段階でもそのような意見が委員から出されたところなのですけれども、「方向性が示されたもの」というところに書かれていて、それを更に具体化する必要があるといったものが1つあります。これはかなり議論が必要であろうと思われます。

それから、法制的に、つまり、制度化をするときに技術的にどのように規定ができるのかということについて更に検討する必要があるといったことがございます。これについては、この専門調査会でできることには限界があるところですので、それについては、ある程度基本的な考え方を取りまとめた上で、そこから先の部分は更に法制上の措置の仕方を検討していただくということになるのではないかと思います。

もう一つは、そもそも法制度としてこれを入れることがなかなか難しい部分があるのではないか、かなり工夫をしないと入らないのではないかというものがあります。これについては、ある程度、法制的な検討をした上で、どう考えても難しいということであるとすると、検討項目からは最終的には落ちることになろうかと思います。そのように「今後の検討課題」というところにもいろいろな性格のものがありますので、それぞれ議論の仕方が若干変わってくる可能性はあろうかと思います。数を見るとかなりたくさんありますので、その辺りはうまく整理をして進めていきたいと考えています。

(問) 今の質問に関連してなのですけれども、今おっしゃっていた、更に法制上の措置の仕方を検討するというのは、別にワーキング・グループとかをもう一個設けて検討するという趣旨なのかどうかということと、法制化が難しいものというのはここに書かれてある中で具体的にどの部分のことをおっしゃっているのかということが、もし示せるものがあれば。

(答・公益通報者保護専門調査会山本座長) 法制化に関しては、これはむしろ事務局ベースで最後のところはやっていただかざるを得ないところがあろうかと思います。そこまでこの専門調査会で詰め切るのは難しい部分があろうかと思いますが、多くのこの手の調査会、審議会等においても、完全に法文の姿まで見せるということまでは大体していないと思います。最後のところは事務局等々で詰めていただくというところがどうしても残ると思います。

それから、なかなか法制化が難しいのではないかという部分については、余りここで私の考えを申し上げるのも難しいところがありますが、ただ、この中で申しますと、「慎重な検討が必要」というように、かなり慎重さを強調したような書きぶりになっている部分があります。これについては、普通に考えるとなかなか法制化をするのは難しいのではないかと。更に工夫ができるかどうかを検討するけれども、現時点ではかなりハードルが高いのではないかと考えている部分です。

(問) 関連なのですけれども、そうしますと、この報告書の中に「引き続き検討」が必要であるというものとか、「慎重な検討が必要」であるというもの、いろいろ書かれています。「引き続き」が結構多いのですけれども、確認なのですが、これは公益通報者保護法の改正、法律改正がある種組み込まれている、要するに、前提なのか、それともそこの法改正自体が難しいという、そういう前提で先ほどの法制化が難しいとおっしゃったのか、そこが気になるのですけれども。

(答・公益通報者保護専門調査会山本座長) 「方向性が示されたもの」という部分には、かなりの部分といいますか、ほとんどの部分は法改正が必要になってくる事柄ですので、法改正自体は当然目指して我々はやっていますし、実際に「方向性が示されたもの」という部分の相当部分は法改正が必要になってくるところです。ですから、およそそれをしないということは、現時点では考えておりません。

(問) もう一つ、関西電力のことなのですけれども、関西電力で基本的な考え方としては、先ほど委員長が説明された、原発が再稼働した場合は電気料金は停止前の水準まで戻すべきだということが前提としてあると。関西電力の場合は、今回の引下げというのは、その水準というのはどういう水準なのでしょうか。どういうところまでの水準。戻っているのですか。

(答・公共料金等専門調査会古城座長) 関西電力に関しては、専門調査会は適切だという判断です。燃料費が下がった部分がちゃんと料金の値下げに反映されているということと、もう一つは、燃料費が下がっているけれども他の事情があるからそこまで下げられませんということは言っていないということで、これは2つチェックをしましたのでオーケーですけれども、専門委員会としては、他の電力会社についてはそうしない危険があるので、「3.今後の課題」のところで書いてありますように、強めに出しています。燃料費が下がった場合は、ちゃんとその分、5%を下げられるのだったら、5%を下げてくださいと。他の事情があるので3%しか下げられませんということは原則として認められないし、非常にきちんとした説明をしてほしいということが今後の方針の中で書かれています。

もう一つは、値上げのとき、1度目の値上げと2度目の値上げで、2度目の値上げのときだけ再稼働のときは下げますよという義務づけが条件としてはあるのですけれども、1度目は条件がついていないので、1度目の値上げについては再稼働でも値下げする義務はないと考えている電力会社がいらっしゃるようですけれども、電力料金の原則はコストに応じた料金ですから、コストが下がったその分下げるのは当然ですから、条件がなくても基本的な性格からいって下げる義務があるという考え方で、1度目の値上げ分についてもちゃんと下がっているかどうかを監視委員会がフォローアップをしてほしいということを書いてあります。

あと、正確を期すために述べておきますが、元に戻すというのは、例えば、5停止して5再稼働したといったら元に戻ります。5停止したのだけれども、2廃炉になってしまった、3しか再稼働しないという場合は、本当の意味では元に戻りません。燃料費が3つ再稼働したおかげで減った分だけ下げてもらうということになると思います。

(問) 消費者委員会の意見というのは、ここの電力料金についての検討は、消費者委員会、消費者庁ではしていなかったのですか。

(答・公共料金等専門調査会古城座長) 消費者庁ではなくて、今は消費者委員会の専門調査会でやるということに整理されているのです。

(問) それを意見として提示して、この意見自体は、消費者庁、監視委員会にも提示されていらっしゃいますけれども、電力・ガス取引監視等委員会及び消費者庁ということなので、その2つに対して意見を提示したということですか。

(答・公共料金等専門調査会古城座長) 電力会社についても意見が述べられています。電力会社にはこういう義務がありますよと述べていますし、監視委員会、消費者庁についても意見を述べています。尊重してもらえるものと考えています。

(答) 逆を言うと、その意見のとおりに現実が動いていない場合には、我々としてはまた何らかの措置を採るということになると思います。多分尊重していただけると思いますが。

(問) もう一つ、今日は傍聴ができなかったのですが、消費者法分野のルールワーキング・グループが午前中にあったということで、ここでは中間整理が案として検討されているということです。もう一つが、先ほどの消費者委員会では、第4期の消費者基本計画の中間取りまとめに対する検討もされたということ。

確認したかったのは、消費者法分野におけるワーキング・グループの中間整理で、これがまた今年中にはまとまるのでしたか。中間整理だから最終整理があると思いますけれども、この中で出てきていることは、基本計画、及び、今、第3期の基本計画の中の工程表も閣議決定されていますけれども、どこかのところに入るものなのでしょうか。基本計画あるいは改定は3期ですから出ておりますけれども、このワーキング・グループのグランドデザインというのですかね。最初におっしゃった。

(答) 基本計画の中に入る内容として議論しているわけではございません。

ただ、ここのルール形成のところの報告書が最終的に出てきたときには、例えば、基本計画に間に合わなくても工程表の中でこの点を強調してもらえないか、ここにKPIを入れてもらえないかとか、そういう材料としては使えるのではないかと思っています。

基本計画そのものは、そんなに具体的な内容まで書き込まないと思いますので。ルール形成のところで議論しているような内容までは入らないと思います。

(問) これはこれで、消費者委員会として提示されていくということになるのでしょうか。

(答) ルール形成ですか。そうです。最終的にはそうです。

(問) これはいつまででしたか。

(答) 今年中ですね。

(問) 公益通報者保護制度なのですけれども、すごくざっくりした質問で恐縮なのですけれども、この法律で非常に実効性が課題だとされていたかと思うのですけれども、今回の中間取りまとめを経て法改正に向けるということですけれども、実効性については上がりそうだというめどがあるかどうかということをお聞きしたいのですが。

(答・公益通報者保護専門調査会山本座長) この専門調査会の場でも実効性を上げることが重要であるということは十分に議論されておりますので、現時点で制度を変えることによって実効性が上がるような方策はなるべく工夫をして入れていきたいと思っています。

例えば、この今日の中間整理の概要版で申しますと、3ページ目に「通報体制の整備」というものが挙がっていまして、事業者と行政機関、それぞれについてその体制整備の義務化を図るべきではないかということが「方向性が示されたもの」ということで書かれております。

例えばそういったことですけれども、あるいはその次の4ページ目の「一元的窓口」とございますけれども、通報する場合の窓口として一元的なものを設ける、それによって通報しやすくするといったことが書かれておりますし、その下にあります不利益取扱いがあった場合のそれに対する行政措置の導入ということが書かれていますけれども、例えば、そういった形で実効性の確保を制度を工夫することによって図れる部分については、なるべく図っていこうということでございます。

(問) 証拠収集の免責というか、そこについては難しいという書き方をされているかと思うのですけれども、これはやはり難しいという御判断が多かったということなのですかね。

(答・公益通報者保護専門調査会山本座長) これは結局個別の判断にならざるを得ないところがありまして、いろいろなケースが考えられるものですから、裁判例においてもそれぞれの個別の事情を考えて判断している状況にあります。これを一般的にこういう要件の下であれば収集行為ができるとか、あるいはできないと書くことが、非常に難しいということが一つはありまして、それでここに「今後の検討課題」ということで、実際に法律に規定を置くとした場合にどういうものが考えられるかということはかなり考えなくてはいけないということでございます。

それから、もう一つは、専門調査会で出たのですけれども、結局、資料をそれだけ収集しなくてはいけないというのは、現在の2号通報とか3号通報をする場合に、真実相当性の要件が課されているということがありまして、そうすると、なるべくいっぱい資料を集めなくてはいけないという事情があることと裏腹の問題というところがありますので、一つそこで議論をされたのは、例えば、外部通報の保護要件というところの中の2号通報の部分で、真実相当性の要件を緩和すべきという議論が出ています。そこのところの要件を緩和すれば、それほど無理をして、とにかく資料を持ち出さなくても通報が適法にできるということになろうかと思いますので、この通報を裏付ける資料の収集行為という話は、保護要件のところと密接にリンクをしているところがあります。

そういうことですので、その辺りを全体としてどうするかということを更に議論していきたいと考えています。

(以上)