高消費者委員会委員長 記者会見

2018年3月8日
消費者委員会

日時

2018年3月8日(木)18:00~18:14

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

(高委員長)

お忙しいところを出席いただきまして、ありがとうございます。

私からは報告事項1件でございます。

先ほどの消費者委員会本会議にて「消費者契約法の一部を改正する法律案に対する意見」を取りまとめ、発出することとしましたので、御報告いたします。

御存じのように、当委員会の下部組織である消費者契約法専門調査会においては、平成26年10月から2年9カ月の間、計47回にも及ぶ議論を重ね、報告書を取りまとめていただきました。昨年8月8日には当委員会にてその報告書の内容を踏まえつつ、当委員会として早急に検討すべき喫緊の課題と考えたことを付言した上で答申をしております。その後、消費者庁において立法化に向けて作業をしていただいた結果、今回の消費者契約法の改正法律案の策定に至ったと理解しております。

当委員会としては、今般、本法案成立後、さらに対応が必要な次の3点について意見表明を行いました。

1点目は、さきに述べました付言に掲げた3点です。

消費者契約における約款などの契約条件の事前開示に関する努力義務。

「つけ込み型」勧誘の類型について、知識・経験・判断力不足を不当に利用し課題な不利益をもたらす契約についての取消し権。

消費者に対する配慮に努める努力義務について、考慮すべき要因として「当該消費者の年齢」も含めること。

2点目は、「平均的な損害の額」の立証に関する規律の在り方について、その精査、検討方法などについて明らかにした上で、法律上に推定規定を設けるために必要な事項を速やかに検討すること。

3点目は、「困惑類型の追加」について「社会生活上の経験が乏しいこと」、これが要件に付加されることによって特に若年層の被害対応に重点が置かれたものとなっていることから、答申の趣旨を実現するため、高齢者などの被害対応についても速やかに検討すること。

当委員会としては、答申した事項につき、本法律案が成立した後、消費者庁において速やかに今、申し上げました三つの点の検討を進めることを強く要請いたします。

以上でございます。

質疑応答

(問) 委員会として、消費者庁が出した法案に対して、これが意見だと思うのですけれども、委員長としてどのように受け止めておられるのでしょうか。

(答) 今、説明したとおりなのですけれども、基本的に今回の法案、これは喫緊の課題に応えるためには必要であると。特に今回の法案というのは、成年年齢の引下げという状況に鑑みて、先ほどの「社会生活上の経験が乏しいこと」という、我々の意見では述べていなかったところなのですけれども、それを書き込む形で喫緊の課題に応えようとしている。その点は評価しようということでございます。ただし、先ほど申し上げた3点ですけれども、それを書き込んだことで、今後とにかく余り時間を置かないで検討しなければいけないことがあるということで、三つの類型を出させていただいたということでございます。

(問) ありがとうございます。

具体的な進め方なのですけれども、再び専門調査会の立ち上げなども含めて、可能性としてはそのように考えられると思ってよろしいのでしょうか。

(答) 速やかに検討せよと言ってどういう形でやるのか、それもあわせて委員会の中で固めたく思っております。消費者庁自身が、まずは動き始めることを期待しておりますけれども、今はお答えできないのですが、専門調査会の立ち上げということもあり得るかもしれません。

(問) この意見そのものについては、消費者庁に対して、また意見として渡すという理解でよろしいのですか。

(答) そうです。

(問) ありがとうございます。

あと、「社会生活上の経験が乏しいこと」というのを以前の付言も踏まえて消費者庁側が改正案に盛り込んだものと見受けられるのですけれども、「社会生活上の経験が乏しいこと」に限ったという見方もありますし、そこを盛り込むことで若年成人の皆さんを守るという意味合いも両方持つと思うのですが、委員長、どちらのほうで評価をされたか伺えますか。

(答) 良い質問をしますね。

我々としても、民法の改正を受けての対応、これはとにかく迅速にやらなければいけない。その意味で、これを追加したことについて特に否定的な意見はありません。ただし、先ほども言いましたけれども、これを書き込んだことで、例えば霊感商法などの被害に遭う人とか、そういったものが外れる可能性がありますので、そういった面を補う形での議論を至急始めたいということでございます。

(問) 改めてお聞きしたいのですが、この意見が提言とかの建議にならなかった理由がまず一つということと、この意見自体は本法律案成立後ということになっていて、つまり、制定された後のことを提案されていらっしゃるのですけれども、付言などは、要するに、この法律を改正するに当たって検討してほしいということだったと思うのです。つまり、今国会でやってほしいということかと思うのですが、この法律案成立後というのは、どのような議論があったのでしょうか。

(答) もちろんここを盛り込んでいただきたいというのはありますけれども、専門調査会でもじっくり議論していただいて、消費者庁、自民党の関係者とも議論した上で、ここが精いっぱいだったのだろうと理解をいたしました。

ただ、実をとらなければいけない。だから、今回のこの意見を出すことで、我々がこれまで申し上げてきた意見、特に付言の内容などを次に生かそうと考えているわけです。成立後と書かざるを得ない状況も実際にはあるということでございます。

ただ、否定的に考えているわけではありませんので、そこは間違わないでくださいね。至急これを法律として成立させることが重要だと思っていますので、その上で次のステップに進みたいという意見でこの三つを出しているということです。

(問) 重複するのですけれども、付言が全く盛り込まれなかったではないかという厳しい見方をされている方の意見もあるのですが、それについての評価というと、つまり、早急に成年年齢の引下げに対応するためには、この法案が限界だったのではないかという見方でよろしいのでしょうか。

(答) 消費者契約法の改正についての質問ばかりですね。

改正案そのものには、確かに付言の内容は取り込まれておりませんけれども、例えば皆さん方が見ておられる付言の(2)のところ、「つけ込み型」勧誘の類型についてと書いているのですが、これは少なくとも若年成人に対しての手当というのはできているわけで、ただ、そこに力点を置いたために高齢者、あるいは障害者の問題が外れてしまったという理解を我々はしています。ですから、一切それが取り込まれなかったということでもないだろうと思っているのです。

(問) 意見のところで、本法律案成立後という先ほどの御説明があったので、そこは理解できるのですけれども、消費者委員会として、今回の法律案の内容について国会審議でどういった議論をしてほしいとか、どういった点に留意してほしいとか、そういった意見はございますか。この法律案について今国会でという意味です。

(答) 国会でということですか。消費者委員会としては、国会の議論に対して意見を出す権限はないと思うのですが。

だから、希望はありますけれども、委員会として、言う立場ではないということです。

(問) 今日の議題とは全く別件になるのですが、ここ数年、日本企業においてさまざまな偽装であったり、不正といった問題が相次いでいて、日本製品とか日本企業に対する信頼自体が揺らぐような事態になっているかと思うのですが、そういった中で公益通報という内部通報の重要性は高まってくると思うのですけれども、高委員長として、公益通報をした社員に対する企業の報復に対して刑事罰を設ける必要性について、委員長の考え方をお伺いできますでしょうか。

(答) 今、そういう専門調査会を設けて議論しているところで、私自身の意見を今、表明するべきではないと思っております。その議論の推移を注視していただければと思います。 私は一応オブザーバーで出ておるのですけれども。

(問) また別件なのですが、食品表示のことについてなのですけれども、今、委員会では部会はありましたか。

(答・事務局) 既に設置をしております。

(問) ということは、今、消費者庁で遺伝子組換えの表示であるとか、今後、食品添加物の表示であるとかということをやっていきますけれども、食品表示部会は、今、何をされている。

(答・事務局) まだ委員のほうの発令が済んでおりません。

(問) 作ることは決まっている。

(答・事務局) 既に表示部会自体については設置済みでございますけれども、委員の発令がまだ終わっていません。

(問) 委員がまだ決まっていないということですか。

(答・事務局) 発令がまだされておりません。

(問) いつ頃になるのでしょうか。

(答・事務局) なるべく早急にとは思っています。

(以上)