高消費者委員会委員長 記者会見

2018年2月22日
消費者委員会

日時

2018年2月22日(木)16:00~16:14

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

(高委員長)

本日、私からの報告は2件でございます。

消費者委員会では、消費者庁及び文部科学省に対し、昨年11月8日に取りまとめた「消費者教育の推進に関する基本的な方針の改定に向けての意見」において、消費者教育を推進するために、今後5年間で重点的に取り組むべき事項を示しました。4点挙げたのですけれども、その後、12月6日の本会議で両省庁から基本方針の変更案、私どもが出した意見を受けて変更されたものを検討させていただきまして、ヒアリングをするなど進めてまいりました。

当委員会では、これらの検討の結果、2月8日の第266回本会議において「消費者教育の推進に関する基本的な方針の変更案に対する意見」を取りまとめ、消費者庁と文部科学省に発出いたしました。

この2月8日の意見では、2点でございますけれども、基本方針を踏まえて実施される施策の着実な実施。2点目は当委員会の11月8日の意見で、今後5年間に重点的に取り組むべきと指摘した事項の実施に向けた着実な取組。特に「消費者教育の効果測定を行うために必要な調査」への積極的な取組、11月8日に教育の効果を測定するための調査等を行うようにということを申し上げたのですけれども、それは改定案の中に入っていなかったので、あえて「消費者教育の効果測定を行うために必要な調査」というものを積極的に取り組むように求めたということです。

消費者委員会としては、消費者庁及び文部科学省には、これまでの当委員会の意見を踏まえ、基本方針の変更案を作成いただくとともに、変更案に盛り込まれた事項については、現在改定作業が進められている「消費者基本計画工程表」にも盛り込んでいただき、消費者教育の着実な推進に向け、積極的に取り組んでいただきたいと思っております。

2件目は「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループの設置」についてでございます。

消費者契約法や特定商取引法といった取引分野における個別法については、これまで専門調査会を立ち上げ、必要な見直しの検討を行ってまいりました。

こうした個別法に関する調査審議を重ねる中での蓄積をもとに、委員の間で議論をした結果、取引分野におけるルール形成の在り方、ルールの実効性確保に資する公正な市場を実現するための方策、行政、事業者、消費者、各々の役割について整理を行い、包括的に検討することが必要ではないかという結論に至りました。

そこで、2月8日の第266回本会議において、消費者委員会ワーキング・グループ設置・運営規程を改正し、新たにワーキング・グループを設置いたしました。

構成員は、鹿野委員、池本委員、樋口委員、山本委員及び私の5人でございます。なお、座長は鹿野委員、座長代理は池本委員が務めます。

このワーキング・グループの第1回目の会合は、3月1日午前11時からの予定でございます。

私からは以上でございます。

質疑応答

(問) 先ほど、消費者教育の報告書が消費者庁から発表になりました。それに関連してなのですが、いわゆるマルチ商法につきまして、大学等で非常に関心を持っていて、教育についてもこれについて重点的な取り上げ方がされておるのですけれども、いわゆるマルチ商法という場合、どうも連鎖販売取引との関係が曖昧なまま扱われているのではないかという気がします。連鎖販売取引は特商法で購入者等が受ける被害の防止を図り、もって健全な国民経済の発展を目指すという形になっていまして、必ずしも禁止されているわけではないわけです。これを悪質商法というように決めつけて扱うことについてはいかがなものかという疑問が若干あります。

これについての警告等を発する場合も、これも消費者庁のパンフレットにもそう書いてあったのですけれども、勧誘すること自体が違法であるみたいな取り上げ方がされるのです。それよりも、連鎖販売取引を行う場合には、違法な行為をするとあなたも行政処分の対象になりますよということを、むしろ積極的に強調していったほうが効果があるのではないかと。事業者の取締りと販売員に対する取締りのほうも両輪でいかなければなかなか効果が上がらないのではないかという気がします。この連鎖販売取引に対する扱いについて、悪質商法だからいけないのだ、だから、加入してもいけないのだという取り上げ方は、少し御検討いただくべきではないかと感じがするのです。これはただの意見です。

この間の訪問販売協会のヒアリングを行った際も、あのときは訪問販売協会のほうで、自分たちの所管範囲に連鎖販売取引が入っているということは一言もおっしゃっていなかったのですね。訪問販売協会には現在120社前後の正会員がおりますけれども、これの約4割が連鎖販売取引を行っております。これも訪問販売協会のホームページを見ていただければわかるのですけれども、そういう実態がありまして、問題ある企業ばかりではないと言えると思います。

マルチ商法という言葉に対する扱い方と連鎖販売取引という言葉の使い方を区別すべきではないかという考え方を持っていますので、その辺りのところ、御考慮いただければと思います。

(答) 御意見ということで承りました。その二つの言葉の意味は決して同一ではない、違いをきちんと意識して使い分けるべきだという御指摘ですね。それから、連鎖販売取引をやられている事業者の中には善良な事業者もいるのだ、それを一律に悪質事業者と捉えるような傾向があってはいけないと。

特に大学での教育の話をされたので、おっしゃるとおり、大学で消費者教育とかというと、例えば下着の云々とか、そういったものが取り上げられたりする。学生たちにも分かりやすいので、そういうものを取り上げておりますけれども、基本的に連鎖販売取引という言葉は余り学生たちの中にはぴんとこなくて、マルチという言葉だけで確かに教育されているのだと。だから、そこはきちんと整理して教育を行う必要があるなと思いました。

それから、教育に力を入れていく中で、自分たちは被害者ということではなくて加害者にもなり得るということ、これは委員会としても消費者庁としても強調していく方向にございますので、先ほどの御懸念はないのではないかと思います。

(問)これに関連してなのですけれども、行政処分される場合、販売員を処分するというケースは、消費者庁を設立してからはほとんどなかったと思うのです。経済産業省がこの法律の執行もやっていたときは、私の記憶では、一度だけ販売員の実名を公表したことがありました。それ以降はほとんどないので、先ほど言いましたように、事業者と販売員の両方から取締りを強化すべきだと。というのは、販売員はあちこちに移りますので、ここで商売ができなくなったら、また別の組織に行って、また同じような悪いことをするということが繰り返し行われていますので、この連鎖は絶たなければいけないのではないかという気がいたします。

(答)御指摘ありがとうございました。

要は、販売員の処分のほうが重要だということを今、おっしゃっているのですね。

(問) 両方ですね。

(答) でも、そうはいっても事業者の場合には監督責任というものがありますので、そう簡単に販売員だけの話ではないだろうと。ただし、おっしゃるとおり、販売員はいろいろな事業者を渡り歩くリスクというものもありますので、可能性もありますので、そこの部分は両方をきちんと見ながら行政として動いていくべきだと思います。ありがとうございます。

(以上)