高消費者委員会委員長 記者会見

2017年9月6日
消費者委員会

日時

2017年9月6日(水)17:30~17:54

場所

消費者庁記者会見室

冒頭発言

(高委員長) 今回、消費者委員会の委員長を務めさせていただくことになりましたけれども、先ほどの委員会の中でも自己紹介を申し上げまして、私自身、この委員会の仕事は初めてでございます。ですから、細かいところはよくまだ分かっておりませんけれども、この1から2カ月で一生懸命勉強して、キャッチアップできるようにしようと思っております。

本日は、抱負を述べるべきと思っております。私としては、最初のうちは、今申し上げましたようにまだ全体がどう動いているのかをよく理解しておりませんので、まず継続性を重視してやらなければいけないと思っております。既に皆様方にも、前回河上前委員長がお配りしたのかもしれませんけれども、「次期消費者委員会の移行に当たっての留意事項」というものを頂いておりまして、これを着実に実行に移していくことが最初の仕事だろうと思っております。

2番目は、委員の方々なのですが、今回新任の委員の方、私を入れて3人なのですけれども、本当に部会も何も経験したことがないのは私一人でして、皆さんそれぞれ経験のある方ばかりでございます。ですから、各委員の方々の意見を聞きながら、どういう課題を検討すべきかということも、私のほうが学ばせていただいて、それを施策あるいは答申等に反映させるよう、活動していきたいと思っています。これが2番目です。

3番目は、「おまえ、何でも受け身的なのか」ということになりますので、皆さん方の議論の様子を見ながら、私自身も考えるところを一委員として述べさせていただいて、それが実行可能であれば、是非進めさせていただきたいと思っております。

特に、今日、報告することというと、私が委員長に任命されたということと、2つの部会と1つの専門調査会がスタートしたという、これだけでございます。

質疑応答

(問) 4次の消費者委員会で、消費者契約法の改正に向けた答申に当たって、専門調査会が法改正を含めて措置すべき内容としたこと以外につきまして、3つのことを付言しました。

(答) 前委員長がですね。

(問) はい。一つは、要するに、約款とか条項の事前開示を事業者の努力義務規定として入れるべきだということと、もう一つは、高齢者とか若年成人の経験不足につけ込んだ契約に対して取消権を設ける。もう一点あるのですけれども、これらの規定を付言として答申したのですが、今回の消費者庁のパブコメに当たっては、この3点を抜かしているのです。このことについて、河上前委員長は大変不満であるということを申し述べておられました。なので、この点は法改正を含む問題ですので喫緊の課題だと思うのですけれども、新委員長はどのような対応をお考えでしょうか。

(答) とりあえず答申に書いてある内容について着実に法制化に動いてもらうということを私は考えております。ただ、事務局に聞きますが、前委員会の意見として付言が3つありましたが、これも答申の一部と考えてよろしいのでしょうか。

(事務局) 答申につけていただきました。

(答) そうですか。では、それは消費者庁のほうで議論してもらって、どうなるのか、我々でしっかりフォローするしかないですね。分かりました。ちゃんと注意して見ていきます。フォローします。

(問) 課題山積の健康食品についてどのように取り組んでいくお考えであるか、その抱負を教えてください。お願いします。

(答) 今日はそういう質問まで来ると難しいのですけれども、まず、消費者委員会を立ち上げてずっと消費者庁のほうの取組をフォローしていくというところしか、今のところはないですね。特に機能性食品の表示ですね。ここの部分については、特に注視していかなければならないと思っています。

(問) 委員長はコンプライアンスについて第三者委員会を昔やって、いろいろ提言されたことがあって、ある種、消費者問題のコアの部分についてはいろいろ関与されていたのではないかと思うのですが、先ほど、委員会のほうで外から見ていたということですが、消費者委員会について今までどう思っていらっしゃったか。

もう一つ、委員長ではなくて、委員に選ばれたことについて、何がどうなったかという、なぜ選ばれたと思われましたか。

(答) 私は消費者問題については、企業のコンプライアンスということをやっていましたけれども、ずっと関心はございまして、いろいろな審議会の仕事をやっていて、善良な消費者と善良な事業者の間の対話がまともになされないなということはずっと感じていました。どういうことかというと、審議会の場などになると、一般論で申し上げますが、消費者代表の方々は悪質事業者をイメージしていろいろ意見を言われるわけですね。審議会に出られている事業者の方は、普通善良な方が出ているわけですけれども、その方々もクレーマーみたいな消費者の方をイメージして、せっかく善良な方同士が対話している場であるにもかかわらず、なかなか建設的な意見交換ができず、これは何とかならぬものか、というようなことをずっと感じていました。

特にそうした関心が強くなったのが、随分昔ですけれども、もう15年前ですか。2002年に西友さんが札幌の元町店で、過去1年間に産地の偽装があった肉を売っていた。それで返金をいたします、ただ、過去1年間だから、とてもではない、レシートは無いでしょうから、自己申告でやってくださいと。もちろん偽装をやっていたことは責められなければいかぬのですけれども、自分たちで問題を見つけて、それをきちんと表に出して責任を果たしていこうという事業者は、私はそういう取組こそやらなければいけないと思っていましたので、当時の私は、それを評価すべきだと思っておりました。結局、この問題では、初日の9月27日に集まった方々は、午前中は主婦の方だけれども、そのうち学生たちが来て、それから、学生たちが携帯で電話して、ここに並ぶとお金がもらえるぞと言ってどんどん並び始め、最後は反社会的な勢力の人たちが並ぶこととなってしまいました。これを始め、3日目ぐらいで、確か年間の売上げを大きく超えるお金を払ってしまい、支払いを停止しました。何が言いたいのかというと、結局、自分たちはよろしくないことをやったと言って善良な事業者としてこれをお返ししようとしたところ、善良な消費者にそれは返らず、消費者というよりも悪質な勢力と言ったらいいのかな。そういう人たちを利する結果となってしまったわけです。

その結果を見て、ああいった事業者の善意が消費者の利益になるように生かせないものかと考え、確か、西友の会長だったと思います。そちらに面会をお願いし、会ったことがあります。もしあのときに、消費者の利益になるような受け皿があったらどうでしたかと言ったら、5,000万近くお金を出したのですけれども、そんなものがあったら、ぜひそこを利用したかった、でも、そんなものはなかったと。でも、もしあったらどうですかと言いましたら、それは有り難いとのことでした。そういう話をしているうちに、では、もし私がそれを作ったらどうですかという話をしたら、私の会社だけでそれをやってしまうといけないので、できればチェーンストア協会の方と相談してくれないかという話になりました。これは一般的な企業の方の反応です。それで、チェーンストア協会の方に会って、同じ話をしました。そうすると、このチェーンストア協会の方も、それはいいアイデアだけれども、うちの団体だけが動くことはできない、と言われ、次々と上の団体を紹介され、最後は経団連までの話となってしまいました。結局、事業者の方々は実に善良ではあるけれども、いざアクションとなると、なかなか消費者のためには動いてくれないということを学びました。

そういう経験がありまして、2002年もいろいろ消費者契約法の議論が進んでおりまして、2006年に成立するのですけれども、そのときは、適格消費者団体に差止め請求権を与える。こういう制度の検討をしておりました。私個人の意見ですが、この請求権を与えられたとしても、消費者団体は一生懸命やればやるほど財政的に細っていく運命になっていました。差止めをやるために一生懸命やればやるほど、消費者団体が細っていくのだったら、多分この消費者契約法の改正というのは余り意味がないなと思いまして、それで、多くの方の力を借り、先ほどの基金を準備し、僅かなのですけれども、2600万近くのお金を集めて、十数の適格消費者団体の方々に、スタートアップのところで、支援をさせていただいたことがあります。

ですから、コンプライアンスとかCSRの分野で、これまでずっとやってきましたけれども、私が目指したいのは、単純に言うと、正直者がばかを見ない、正直者が報われるような仕組みを作ることだと思っております。それを意識し、会社の中にも入ってきましたし、今、紹介させていただきましたように、消費者団体を支援する仕組み作りにも関与してきました。これからもそういう分野で仕事をしたいと思っていた時に、今回、ここで仕事をさせていただくことになりました。

(問) もう一つ、正直者がばかを見ないようなということで、消費者委員会には、消費者行政を推進するということと、消費者行政を監視するという機能がある。相反する機能かもしれませんが、監視について非常に消費者は関心を持っていて、去年1年間からの監視の一つの形としては、法律上は建議がある。建議は確か1つ、提言は2つ、意見はいっぱいあった。新委員長として、監視機能を発揮するに当たって、建議の数ではないのですけれども、どのようなことを求めていくのかということが何かあれば。というのは、消費者委員会には資料請求権という権利があって、各省庁に対していろいろ隠すものに対して出させるようなものがあるというようになっておりますけれども、それが果たしてどれだけの活用をされているのか、外から見ていると分からない部分があってということも含めて、監視機能について、どういう思いをされているか。

(答) 行政全体として、消費者利益になる活動をきちんとやっているかどうかということの監視ですね。これは当然やってまいります。その場合に、きちんと仕事をやっていない、フォローして問題があるということがあれば、今おっしゃったような方法でこちらから何らかの声がけをするということになるでしょう。ただ、私は意見で仮に動くのだったらそれでもいいだろうなと。提案であれば動くということであれば、それでいいだろうと思っています。だから、相手側の反応を見ながら考えていきます。建議までで大体動くものではないですか。これもやってみないと、感触が分かりません。

(問) やってみると。

(答) やってみるというか、反応を見ながら、とにかく余り手を抜くつもりはありませんので、せっかくやらせてもらうので、自分のできるところは、使える権限みたいなものはちゃんと使いながらやらせていただこうと思っています。

(問) 手は抜かないと。

(答) 不十分であればまた叱ってください。

(問) 15年とか20年近く前ですか。高先生の書かれたものとか取組を、企業コンプライアンスという言葉が出てきた当時、勉強させていただいた者の一人なのですけれども、当時、総会屋事件などいろいろあって、いろいろなところで高先生がコメントされていたのですけれども、当時と比べて現在までで日本国内の企業のコンプライアンスは向上したのか、それとも、そうでもないのか。その辺りの印象はいかがでしょうか。

(答) 全体はよく分かりませんけれども、私が関わっている会社を見る限り、もう過去のようなことはないなという印象を持っています。過去のことはないなというのは、例えば問題があったときに、これは消費者に対して不利益を与える問題だよねということが出てきたときに、それは隠しておけとか、あるいはこの問題は難しいから触らないでソフトランディングで放置しておけとか、そう判断する会社は、私は本当に減ったと思っています。

これまで幾つかの会社の社外役員をやってきましたが、その会社の現場の方と話す機会を得たとき、「難しい問題が出てきたときに、あなたたち、現場の方はどう反応するの」と聞いたら、「そういうものが出たら、誰かが必ず「これはおかしいんじゃないか」と声を上げるようになったと言っていました。全ての会社とはいいませんが、私ははっきりと変わってきたと思っています。

隠しておけば、それは結果的にすごいペナルティーになってきますね。それは消費者との問題だけではなくて、投資家との関係でも。例えば、リコールをやらなければいけないものをやらないで隠しておいて後で公表すれば、決算の数字が大きく変わってきますね。そうすると、これは損害賠償請求を受けることだってあり得るわけです。株主が損をしてしまいますのでね。

ですから、15年前と比較しろといったら、これは隔世の感があるように私は思います。もちろん見ておられる会社が、中堅規模の会社を見ているのだったら、多分、問題はまだあるのでしょうけれども。

(問) 今おっしゃったように中堅どころというか、例えば連鎖販売業界とか、訪問販売業界とか、かなりたくさん問題があるのですけれども、そうした問題のある業界の健全化を図るためには、今、何が足りないというところでしょうか。

(答) 個人の意見でいいですか。特商法の法律の内容を改正していくというのも、これは欠かせないと思うのです。ただ、コンプライアンスの関係の仕事をやってきた中で思うのは、執行です。これは前委員長も報告書を出されて執行のところの問題を指摘されていて、私もそこが一番重いなと思うのです。そうなってくると、結局、執行できるかどうかはお金の問題だと思うのです。他の委員の方々と知恵を出しながら、そこの手当て、特に地方の消費者行政のところというのは、ある程度支援していかなければいけないのではないかと思っています。

(問) 高先生が日ハムから提供していただいた資金を基に消費者支援基金を作られ、今はスマイル基金のほうの理事ということなのですが、消費者団体の訴訟制度について、先生から見られて、どのように評価されていらっしゃいますか。まだまだ課題が多くて。

(答) 集団的被害の回復の仕組みの話ですか。

(問) 仕組みの話で、消費者庁は、直接訴訟を支援することはなかなか難しいということで、体制強化のところに交付金を活用できるようにしてきて、今年初めて概算要求で補助金が入っているのですが、先生が見てきて、どのように活動支援とか、消費者団体の活動が軌道に乗ってきていると思っていらっしゃるのか、ここまで来るのにすごく時間が掛かったと思っていらっしゃるのか。

(答) 時間が掛かりましたね。だって、2006年の法律ができる時も、2002年からずっと議論してきて、あのときも損害賠償請求権はあってもいいのではないかと。でも、結局、差止め請求権だけで終わりましたね。だから、基金を作って、自分たちでやってみて、では、企業の方々が善意で寄附をしてくれるか試してみたわけです。寄附してくれるのだったら、差止め請求権だけでいいということを、ある意味、私は証明(反証)してみせたのです。そんなに企業の方々、事業者の方々、寄附してくださいませんでした。大きな金額については、ほんの僅かな企業と大学だけが寄付してくださっただけでした。だから、損害賠償請求権までは要るということの社会的な認識ができたのではないかと思っています。これも個人的な意見ですけれども、今の仕組みでは不十分だと思います。それが特定適格消費者団体の方々の活動資金になるというところに入っていませんから。それは、おいおい他の委員の方々の意見を聞きながら、議論させていただきます。問題意識はあります。

(問) あと、先生は特に今後消費者委員会の委員長として、この分野はどうしても力を入れてやっていきたいと思われているものが、個人的でいいのですが、そういう分野がありますでしょうか。

(答) 先ほどの特商法の執行の話ではないですが、ああいうものが実際に執行できるような仕組みを考えていきたいと思っています。ただ単に頑張れ頑張れと言って、こうやれ、こういうように情報を共有しろ、というのも必要なのだけれども、マンパワーが足りないですね。だから、難しいですけれども、知恵を出して、現実的な執行の方法についても議論したいと思っています。

(問) 消費者庁の執行自体も非常に激減しておりまして、根本的に見直していかないといけないのではないかと思っておりまして、マニュアルを作ればいいというような問題ではないのではないかと私は思っております。

それから、地方の支援の件なのですが、今回、地方消費者行政推進交付金が新規事業に使えるのは本年度までということで、新しい交付金が10億、概算要求でされているのですが、地方を今ちょうど取材をさせていただいているのですが、なかなか皆さん不安を持っている。その10億円がどこまでどう使えるのか。そして、それが本当に基本的な部分を、今まで交付金で支えられてきた消費生活相談員の人件費とか研修とか、基本的な部分を自主財源で置きかえられるのだろうかというところが、今すごくポイントになっていると思っておりまして、その辺りで何かお考えのような、思いのようなものがありましたら、お聞かせください。

(答) 委員の方々といろいろ意見交換しながら解決策を見つけていくというように持っていきたいので、余り私が言うと、今回の委員長は委員長にふさわしくないというようなことにもなりかねませんので、この辺りで勘弁してもらえませんか。言われたことは、もうちゃんと認識しています。何とかやらなければいかぬと思っておりますので。

(以上)