河上消費者委員会委員長 記者会見

2017年6月27日
消費者委員会

日時

2017年6月27日(火)17:14~17:43

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

(河上委員長) どうもお待たせしました。済みません。

お待たせした割に特に申し上げるようなことはなくて、あえて言えば先週の土曜日ですが、シンポジウムin盛岡というものを盛岡で開いてまいりました。テーマは食品表示の問題でして、特に健康食品について、どういうことに注意しながら健康食品とつき合っていったらいいかということについて、いろいろと議論させていただきました。60人ぐらいで、ほかにももう一つ大きな集会があったらしくて少し人数が少なかったですけれども、皆さん熱心に議論されておられました。あとで正式な報告書が出ると思います。

それぐらいでして、今日は御自由に何でも聞いていただければと思いますので、よろしくお願いします。

質疑応答

(問) 今のシンポジウムin盛岡の件で、結局どう健康食品と付き合えばいいという結論が出たのかどうかなのですけれども、どういう意見が多かったでしょうか。

(答) 自分たちは健康食品というものの情報の読み取り方とか、それがどういう形で健康とかかわっているのか、危険性も含めてメリット・デメリットをもう少しきちんと勉強しないと駄目ですねという感じで、どちらかというと健康食品が持っている機能だとか、その背景にある科学的な根拠等について余り過信し過ぎてもいけないし、だからといって排除する必要もないということで、適度な距離感を持ちながら健康食品と付き合っていきましょうという比較的穏便な話でした。

(問) 今、消費者契約法の専門調査会が続いていると思うのですけれども、今後のスケジュール感というか、どういう感じで議論を深め、結論を見ていくか。あと、これまでの流れについては委員長としてはどう見ていらっしゃいますか。

(答) 消費者契約法専門調査会自体の再スタートが遅かったと私は思っているのです。もっと早くにいろいろとスタートしないといけないぐらい非常にたくさんの論点があったので、その論点が十分に検討されないできた。今、第2クールに入って、残された論点の審議をしていまして、その中でまとめられるものはどうしても限られてくると思います。ただ、今回幾つかきちんとはっきりさせたいものはありまして、消費者庁もそれなりに、今、頑張って原案を出してくれていますので、少しピッチを上げながらやっていこうということで、予定をかなり詰めながら作業しております。

第4次の委員会が8月いっぱいで任期が終わりますので、そうなると、第4次の委員会が答申を出すためには、逆算していくとその前に本会議での報告を頂き、調査会での一定の取りまとめをやるという作業がありまして、少なくとも8月の頭ぐらいには、ある程度答申の中身がまとまっている状態にならないといけないのだろうと思っています。

(問) 今、委員長がおっしゃった、限定されてきてしまうかもしれないけれどもこの部分はまとめたいと思っているという部分は、具体的にはおっしゃられるとするとどういった部分になるのでしょうか。

(答) それはまだ具体的にお話しするのは難しいと思います。ただ、これまで事務局から出している原案、だんだん修正案が固まりつつあることは御承知のとおりでありまして、今まで出てきている案は、まずは何とか固めたいということだろうと思います。

消費者委員会としては、前に成年年齢の引下げに対応するための意見をまとめました。それとの関係では、年齢等に対する配慮義務に大きな関心を寄せています。高齢者も含めてですが、若年消費者などの年齢や経験や知識の不十分さというものに配慮して情報を提供してくださいという話と、そういう年齢による未経験とか判断力の不足というものにつけ込むような形での事業者の不当な勧誘に対しては何らかのサンクションを与える必要があります。例えば取消権のようなものを用意してくださいということは親委員会から申し上げたところで、これも事務局としては意識しながら作業してくれていると期待しています。

もう一つは、これは私自身の民法研究者としての意見として、去年から何度か申し上げ続けていることなのですが、民法が改正されて、「定型約款」についての規定が新たに入りました。その定型約款に関して、表示型の定型約款というのか、自分のところの定型約款によるということを相手に表示さえしておけば、相手方から請求されない限り、約款は見せなくてもその約款が契約内容となるとみなされるかのような規定があるのです。

そういうタイプの定型約款に関するいわば事前開示は必要ありませんという誤解されやすいメッセージを何とか消費者契約法のところでは打ち消しておきたいという気持ちが強くあります。情報提供のところです。別に「約款」と言わなくてもいいです。消費者契約法の場合は「約款」かどうか問いませんから。給付内容や契約条件については、「あらかじめ」消費者が認識し得るように努めなければならないというような、道徳的な義務でも良いから、消費者契約法の中で、民法から出てくる誤ったメッセージをちゃんと正すメッセージを消費者契約法で出しておく必要があるのではないかと考えております。事務局がどうそれを受けとめてくださるかは分かりませんけれども、個人的には何とか今回の答申の中ではっきりと書いてほしいと思っています。ただ、それは委員長としてではなくて個人としてそう思っているだけなので、専門調査会の中での審議でどうなるかを見守りたいと思います。

あと、不当条項が幾つか問題になっていますね。これまでなかったところに、それが加算されていくということがあるのではないかと予想しています。

(問) 関連ですけれども、8月までだと限られてしまうかもしれないということであると、平成27年にやったように、中間報告という形で1回まとめて更に続くというような可能性はあるのでしょうか。

(答) それは全然考えていません。というか、そもそも第5次の消費者委員会がどういう方針で問題に取り組むかということについては、第4次の委員会が余り口出しをすることでもないですから。その意味では、少なくとも私のこの第4次の委員会の中で言えることというのは一応全部言ってしまおうと。もちろん、今後に対する課題ぐらいは書いたとしても、まずは答申としては、第1次答申をやりましたけれども、第2次答申で一応打ち止めということにしたいと思っています。

(問) 国民生活センターが要望を出している海外マルチ取引について、消費者委員会に対して、要望として、特商法の関連の中で整理してもらいたいという感じだったと思うのですけれども、これについてはどういう対応をされるでしょうか。

(答) マルチ取引の消費者トラブルに関して、日本国内でマルチの親玉といいますか、一番最初の枝が出てきている限りにおいては、そこを起点とするマルチ取引は捉えられるものになります。もちろんその前にあるところが海外だとすると、これは恐らく法の適用に関する通則法に従って処理されることになりますから、もし仮に日本の強行法を使うということの意思を表明すれば、海外のところまで伸びていく可能性はあります。そういうこと関係なく、現在の特商法でも日本のところの一番最初の枝から後は、適用の対象になる。

ですから、その後どうしていくか、クレジットを組まされているときに、その問題にどう対応するのかということも含めて、海外事業者に対する対応方針について、まだ議論ができていないから、周知できるような状態ではないのだと消費者庁は言っているのでしょう。少なくとも日本の域内の問題に関しては対応可能なはずです。ですから、可能であるという前提で対応していただくように期待しているところです。

消費者委員会にも一応「意見書」が来たのですけれども、これは今何かをしてほしいというよりも、消費者庁が、できることをちゃんとできると、検討結果を明らかにしてくれるよう期待して、それを見守ってほしいということのようです。具体的に更に問題があるということであれば、また意見を申し上げることはあろうかと思いますけれども、現時点では、国センからの要請については、そういう情報提供があったという前提で、消費者庁のこれからの動きを注視する姿勢でおります。

(問) 国民生活センターのあれは、事業者の本社が海外にあって、勧誘者が日本人で、その勧誘者はマルチですので、特商法に関係するのであれば、私も連鎖販売として特商法の規制の対象に入ると思うのですけれども、国民生活センターは今回マルチ取引というのと連鎖販売をあえて分けて提起している。

つまり、国民生活センターでもそんなに詳しく分かっていない部分があったりなどしましたもので、日本人の勧誘者が、海外にあるから日本の法律に当たらない、クーリング・オフも、連鎖販売は20日だったと思いますけれども、それは使えないとかということを言いながら勧誘しているという、こういうはっきりと連鎖販売取引として規制できるものと、決済代行とか複雑な取引とかがあったりして、海外に事業者があるとかということで、国民生活センターもその事例の中でこれはこうだということをおっしゃっていないような気がしましたもので、それを消費者委員会のほうで特商法としてのくくりでできないものかということだったと思うのですけれども、大体適用できると。

(答) できるという理解です。国民生活センターも、そのことについては可能だというコメントをつけています。文章の後に、はっきりとできるというか「できる可能性があります」とかと書いてあるのでトーンが低いですけれども、理論的には全く可能です。消費者庁も、日本国内の問題としては可能であると考えているはずです。消費者庁が考えているのは、恐らく海外の根っこのところまで捕まえて何か対応できないかというところについては問題があるなということで、検討したいと、そういうつもりではないかと思います。

(問) 課徴金制度なのですけれども、今日本会議のほうで課徴金制度の実績の報告を受けたということで、そこのところは私は出ていなかったのですが、どうでしょうか。1年3カ月たって、今の運用の在り方ということと、これまでいろいろな課題として残されたものがあって、算定率の問題であるとか規模基準、150万円未満は納付命令が出ないとか、その他、今回は返金制度というものがタイアップで出て制度としてありましたけれども、委員長としては1年3カ月、どういう感想でしょうか。

(答) 今日も委員の方々からいろいろな意見が出て、特に課徴金で納入されたお金の部分について、消費者政策のために使えないのかというようなこととか、それ以外に、裾切りがありましたけれども、あの裾切りというのが本当に適切なところでの裾切りになっているのかというような御意見などです。

私自身も、今回課徴金を払った部分と、払わないでそのまま課徴金として納付を命ぜられた部分がありますけれども、それで実際に消費者の側で損失をうまく回復できたのかというと、疑問な部分があるのです。しかも、回復するような形で返金をしたかどうかという返金の量だとか、あるいはどのくらいの範囲の消費者がそれに応じたのか。それはほとんどデータとしては明らかにしてもらえないということなので、その課徴金がどう機能しているのかというのが今一つ見えないということがちょっと不満だったのです。

それで、いろいろお話を聞いたのですけれども、ただ、課徴金制度を導入したときに既に相当議論をして、そして、返金制度という一方で消費者の保護のための制度を入れつつ、なお、課徴金を課すことによって事業者に対する事前抑止を果たす。しかも、それは課徴金ですから、刑事的な制裁金なので、これは消費者被害のためのものではなくて、それは国庫に入るべきものだということで整理をした。また、3%というのは、私などは10%、20%は当たり前と騒いでいたのですけれども、そこを消費者庁として独禁法の時代のデータを使って3%というところで落とした。ですから、そういう調整の中で出てきている今の状況なので、これが今後具体的にどう機能していくのかは、もう少し様子を見ないといけないのではないかとは思います。

ただ、ほかの委員の方もおっしゃっていましたけれども、課徴金を課せられたということは、市場に対しては相当大きなインパクトを与えることになったようで、今後景表法に違反するような表示をしないようにということで、事業者の人たちが襟を正すいい機会になっているのではないかということは言われています。

(問) つまり、もう少し運用実績を見てみないとはっきりとは言えないけれども、違反抑止という一つの目的と返金制度自体の被害回復というのはあったけれども、この2つの目的が必ずしも満足いくような形ではない、それを判断するようなデータが提起されていないということですか。

(答) だと思います。実際には、損害の回復というのは、場合によっては別の方法で考える必要がありますね。例えば、多数消費者被害で少額の損害について被害を回復するために、まさに集団的な消費者裁判手続特例法ができたわけで、場合によってはそういうものを使って損害の回復を充実させるということを考えたほうがいいのかもしれません。

今日、委員会の議論の中でもそれを頭に置いて聞いたのですが、3%以上のお金を返金すれば、その部分については課徴金は減額してもらえるという制度ですね。実際に今回の返金されたお金が、まさに減額請求に相当するような金額だったのですかと聞いたのです。それは分かりませんという話でしたね。ですから、3%そこそこのお金だけで、ほかにもっと損害が生じていたとすれば、その生じた損害については別途の被害回復の請求を新たな特例法の中で考えるということはあってもいいのではないかという気がしました。それはまた特定適格消費者団体の方が考えることなのですけれども、役割分担をしないといけないのかもしれませんね。事前の抑止の問題と事後の被害救済というのを、1個の課徴金制度の中で実現するのは少なくとも難しいということは分かりました。

(問) 今の関連なのですけれども、例えば日本サプリメントのケース、特保のケースですけれども、この会社はそもそも返金計画は提出しなかったわけです。かつ、個々の消費者からは、特保だと思ったから買ったのに特保でなかったから全額返してくれという要求が会社に来て、日本サプリメントは全てそれを断っているということが国センの情報などでも明らかになっているのです。そうすると、そこで消費者は救われる方法というのは消費者集団訴訟というか、そういうものしかもうないということになるのでしょうか。

(答) 今のところはそうですね。実際問題として、特保としての効能効果を期待して、特保として含まれていると考えられていたものが含まれていなかったということによって、具体的に実際にどのくらい損害になるのかという、損害の算定の仕方はかなり難しいとは思います。しかし、少なくとも特保でなければ買わなかったという人が相当いるはずでして、そういうことを考えると、期待を裏切られたという部分についての損害は、これは額としてはそんなに大きくないとしても、あっておかしくないですね。それが例えば通信販売だったりすると、そのデータは残っているはずでして、購入した人たちの損害を集めることによって賠償請求することを考えることがあってもおかしくはないと思います。やるべきだということではなくて、そういう形での被害救済というのはあるのではないかと思います。

(問) 今の関連ですけれども、課徴金制度が導入されて、3社5件になっている。それに対して、いろいろな期待があったけれども、3%はいろいろな政治的なことかもしれませんが、返金額の算定もそれに合わせて購入額の3%以上ということに一応なっているわけです。実態としては、本当に当初の違反抑止という効果と消費者の被害の回復という、この2つの目的に基づいたこの制度に対して、実はこういう課題もあるのではないか、データがこう出ていない以上はこうではないかというところ、いろいろあると思うのです。返金自体が明らかになっていない部分があるし、返金措置計画書を出したか出さないかというのは、出したものに対して、OKを出したもの自体がホームページに載るだけで消費者にはそこがわからないわけですから、そういう課題を意見などということで、予定としては何かありますでしょうか。

(答) もちろん問題点が明確になってくれば、それを整理して出すということはあっていいだろうと思います。けれども、現時点で5件の事案を見たときに、果たして一般的な問題がそこまで整理して出せるかということは、自信がありません。他の委員の方々とも相談して、あえてそういうこともあるべしという話になれば考えますけれども、今のところはもう少し様子を見て、執行の状況を見守りたいと思います。恐らく消費者庁も手探りなのではないかと思います。なかなか一つ一つの事件についての調査が相当難しいとおっしゃっていましたから、もうちょっと様子を見たいと思います。

(以上)