河上消費者委員会委員長 記者会見

2017年3月28日
消費者委員会

日時

2017年3月28日(火)16:29~16:57

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

(河上委員長)
私からは、きょうは御報告すべきことはありません。御自由に皆さんのほうから御質問いただいて、私のほうで答えられる範囲でお答えするという形でやりたいと思いますので、よろしくお願いします。

質疑応答

(問) 先週の『週刊新潮』の「トクホの大嘘」という特集なのですけれども、その記事の中で、国とメーカーによる消費詐欺であると、特保についてそのように断罪しているのですが、それに対する消費者委員会の御見解につきましてお聞かせください。

(答) 記事の内容そのものは私も拝見しました。委員会での議事録等も引用して、根拠データを読み解いて、問題点を挙げ、あわせてデータとキャッチコピーとか、広告とのギャップ、そういうものについて問題視したものであると理解しました。

今回の記事は、消費者委員会として、この問題に対する姿勢を正すという意図もあるのかなという気はしまして、最終的に消費者委員会が特保の表示許可について、適当又は不適当の答申を出しているところですから、その意味では私は責任はあると思います。けれども、実際問題として考えていくと、特保という制度は、これは厚生労働省以来ずっとあった制度ですが、その制度の中で一定の積み重ねがあって、その枠組みの中で専門部会の方々が真摯に取り組んでくださっているという現状にあると認識しております。

むしろ、今回の記事が問題視している部分の多くは、消費者が製品を購入する際の期待度の大きさと、それから、実際の製品の効能との差が大き過ぎるのではないかという問題意識が根底にあるのではないかと思います。個別審査に関して、申請者が消費者庁に出した資料を、消費者庁からいただいて、その中で示されたデータや見解がひとまず否定されないといいますか、妥当であると判断すれば許可表示は適当であるという答申をこれまで発しているわけでして、各専門委員は、その制度の判断基準に従って、その範囲で真剣に審査を行っておられるということだろうと認識しております。

こういう特保の製品に関して、データとか考え方について様々な方々が追試をしたり検討したりして御批判されるということは、それ自体、結構なことだと思っております。

(問) そうすると、記事の中で試験結果の有意差が余りにも小さいのではないかという指摘が多かったのですけれども、むしろそれよりも広告が、過大表現が多いのが問題という感じでしょうか。

(答) どちらかといえば、やはり広告の表示が消費者に対して与えている期待の大きさとのギャップを生んでいるということなのではないかと思います。

御承知のように、人間が口にするものは薬品か食品しかないわけですね。その食品の特性というものは日常の食生活の経験の中で培われてくるもので、その中で体にいいとか悪いとかという判断があるわけです。特保の場合は、その中でも安全性に関して国が一定の保証をして、そして、その機能といいますか、それについて、なくはないという程度のものであれば一応、特保としての許可を出してきているということでありまして、食品としての機能を考えたときに、今までの特保についてオーケーを出すレベルが低かったとか高かったかとか、そういう話はまた別にあるのだろうと思うのですが、これまでの枠組みの中で委員の方々が、おかしいという意見もあれば、こんなものでいいのではないですかという意見もあって、全体としてはよしという判断をしたものが積み重なってきていると理解しております。

(問) そうすると、今の制度上、認めざるを得ないようなところがあるということで、制度自体の求められる科学的水準が低いという問題は何か感じられるところはあるのでしょうか。

(答) それはもちろん、なくはないわけでして、しかも申請書類で示されたデータというのはその時点のものであるわけで、科学的な進歩もあって、評価も変わり得るし、機能についての理解も変わるわけで、かなり以前に許可を受けた製品の再審査が必要ではないかという点とか、あるいは試験方法の見直しの必要性については、これまでも建議の中で申し上げてきたところであります。今後、その点に関して、やはり消費者委員会としては注意を持って、この特保制度というものを考えていきたいと考えております。

(問) 今の河上委員長のコメントを聞いていますと、昨年、特保等の在り方に関する専門調査会をされましたけれども、あのときの中でも上がっていた問題意識に非常に近いものであって、その辺の問題意識は既にこちらとしてもあったという理解でよろしいのでしょうか。

(答) 基本的に消費者委員会の問題意識は変わっていないということであります。

実は、健康産業新聞さんでしたか。前にインタビューを受けたことがございまして、そのときにも十分お話しできたかどうか心もとないのですけれども、その中で、消費者委員会の調査だけではなくて、いろんなアンケートで健康食品といったものについて、プラセボ効果のようなものもあるのかもしれないですけれども、6割ぐらいの方は満足しておられるということがある。逆に言えば4割ぐらいの方は、これは効かないのではないのかと思っている部分もあったりするわけですね。食品ですから、その意味ではそれほどいちいちと効能効果まで出すわけにはいかないし、本当に効能効果があったら、これは薬にした方が良いわけですね。

ただ問題は、その食品が実際の効能効果よりもはるかに誇大に宣伝されているように思います。消費者はやはり健康に対する意識が強いですから、健康不安をあおられた上で、これは効きますと言われてしまえば買ってしまうわけですね。ですから、売らんかなという態度で、食品の中でもそうした特保とか機能性表示とかといったものが利用されてしまうと、むしろ消費者の選ぶ権利といいますか、適切な食生活が危うくなるわけですね。ですから、食品業界の方に申し上げたのですけれども、やはり緊張感を持って食品というものの市場に送り出すときの心構えを持っていただきたいと思うのです。

やはり食は文化なので、健康食品を標榜する以上は、やはり健康に浴する食文化のために自分たちは世の中に食べ物を送り出しているという自負を持って、場合によっては消費者教育における食育なんかにもしっかりとコミットして自分たちの意見を述べていくといいますか、社会に対して貢献していただければありがたいと申し上げました。食べ物に関して言いますと、基本的には、バランスよくいろんなものを食べて、そして適度な運動をしていくのが一番でして、その意味では特保にしても機能性食品にしても、余りそれに頼り過ぎるのではなくて、あくまで補助的な役割として利用いただくのがいいのではないかと思います。

そうした特保に関する位置づけについて、国民の間で十分な認識や、理解が広まっていないのではないか。これさえ飲んでおけば、ほかの食品は少々乱暴に食べても大丈夫だという気持ちにさせてしまうようでは困るわけです。ですから、その意味では健康食品等々の表示・広告の適正化に向けた対応策をしっかりやっていただくことと、それから、消費者の食教育といいますか、食育について、今後とも消費者庁を含めて一層きちんとやっていただきたいと思います。私は健康食品を敵視しているわけでも何でもなくて、食品としての意味をきちんと消費者に理解していただくことが大事だと考えているところです。

(問) 同じ特保の『週刊新潮』の記事の件で、また今週も第2弾が出るということで、今回の『週刊新潮』の記事は今までと違ってかなり精査していて、また、専門的にかなり調べ上げているところがあると思いますので、余り軽く流せない部分もいろんな意味であるのかなと思うのですけれども、今後、審査における何らかの影響は出てきそうでしょうか。

(答) それはこれまでも、厳密さという意味では委員の間でも相当厳密な審査をやってきているわけであります。ですから、あそこで問題視された、例えば5人ぐらいの人間に対してやった検査で大丈夫だろうかとか、そういう話も含めて、もちろん、消費者委員会の中でもそうした議論はあった上で、今の制度の中では、とりあえず、マルであるという形で出してきているものですから、直接大きな影響があるとは思いません。けれども、消費者委員会からの判断をもとに、機能についての、消費者の誤解を招くようなことがあるとすれば、やはりきちんと対応してほしいということを申し上げております。

それから、特保制度というものは健康増進法の趣旨に従ってきちんと検査をして特保のマークをもらっているものである以上は、それにふさわしい商品であってほしいということについては前々からお話ししていて、今後はやはり基準も含めて見直しをしていかなくてはいけないという問題意識は既に持っていた部分であります。その意味では、記事について、やはり勉強させていただくことは多いということであります。決して、ほかの意見も含めて軽く見ているということはございません。

(問) 消費者庁の消費者安全課が子供の事故死について厚労省の人口動態調査、人口動態統計をもとに何か分析したりとかをして注意喚起とかをしているのですけれども、データを取り寄せるだけで、与えられたデータをもとに分析しているにとどめていて、例えば詳しく情報をとろうとするような姿勢も特にないのですけれども、何か統計法の縛りとかがあってできないとは消費者安全課は言っているのですが、この状態について、例えば消費者安全専門調査会で取り上げたりとかというお考えとかはありますか。

(答) 現在の消費者庁が消費者の事故原因に関してやっている分析が果たして十分かということについては、それは消費者庁で一生懸命やっているとおっしゃっているのだからそうなのだろうと思うのですが、ただ、その分析の手法に関してはどんどん新しい手法が出てきているので改善の余地があると思います。現在、専門調査会の中でビッグデータの処理も含めて、さまざまな事故原因に関して別の観点から原因を探り出すことができないだろうかということを考えておりますので、消費者庁からもいろんな話を伺いながら、もし改善できるような部分があるのであれば、そのことについても検討していかないといけないなと思っているところです。

(問) 関係府省連絡会議が一応、平成28年度分は閉めて、多分、その報告をぜひ受けたらどうだろうと思うのです。

(答) 恐らく事務方では受けているのではないかと思いますけれども、場合によったら、そのデータの中から消費者安全専門調査会がいろいろ考えられることは検討してくれると思います。

消費者委員会としてもずっと、この問題は考えてきているところですので、必要に応じて検討してみたいと思います。

(問) 簡単に言うと、消費者安全課はもうちょっと突っ込めるところがあるでしょうという話なのです。消費者庁の消費者安全課がもうちょっと、正直突っ込んで調べてもいいのではないかというところをやっていないと見られる。

(答) むしろ、そのことを消費者安全課に言ってあげてください。

(問) いや、きょうの消費者庁の会見で各社言ったのですけれども。

(答) やると言っていましたか。

(問) ほぼゼロ回答ですけれども、小児科医の見解というものは聞いていこうとか、そういったアプローチはやっていきたいみたいなことは言っていましたが、例えば一件一件を詰めていくようなことは難しいみたいな感じでした。

(答) 消費者庁には事故調(消費者安全調査委員会)もありますから、いろんな形で難しい案件に関して丁寧に一件一件見るという部分もやれる体制です。それはぜひ消費者庁の頑張りに期待したいと思います。

(問) 関連です。今、委員長がおっしゃった分析のあり方、AIを使ったりとかというのはわかるのですが、安全専門調査会の場合は一元的収集のところから始まっていて、どうも、消費者庁の子供の事故のあれを聞いたときに、要するに人口動態調査の結果があると、そのデータに対して触れられないという前提があって、それが法律の、いろいろある。

本来、例えば死亡事故であるとか重大事故であるとかということは、消費者事故の場合、各省庁の長、あるいは自治体の長が知った段階で、それは直ちに消費者庁に集めるということが消費者安全法の中で規定されていて、つまり消費者事故であるという判断も消費者庁がどういう判断かということで出されていると、何か話は、要するに先祖返りみたいな、何のために消費者庁ができたのか。つまり、一元的収集にあって、消費者安全法があって、そして人口動態調査は、今回、データは22年とかがありますけれども、例えば最近のデータは、今でも死亡事故が起きている可能性があるわけですね。そういうものがデータになって出てくるわけですが、そういう現場で起きたものについて、例えば救急車が発信したりであるとか、そうしたものは知った段階で行政機関の長はこれを教える、通知する必要がありますね。

そこのところがあれば、あるいは消費者安全法の中には、それがやっていない場合は各省庁に対して消費者庁はある種の権限を持っていて、消費者委員会の場合は資料請求権がありますし、そういうことがないかのような感じで話されているわけです。私の理解が間違っているかもですが、要するにとにかく、今、本当はやれるのに、できない、壁があるという形で、では、何のための安全法で、何のための通知義務なのかという、それがちょっとわからない。

だから、消費者委員会は多分それができますので、そういう消費者行政のあり方みたいな、要するに停滞しているとか、だって、あれは重大事故であったりとか、その可能性がある事故について、そういうものを資料請求したりとか、各省庁に対して言える権限が長にはあって、だから、通知の義務があったりとかするわけで、そういうことが本当に話されているのかどうかというのが聞いていてあれなのです。

だから、安全専門調査会の中で一元的なものと、あと、収集した情報をいかに生かすか、いかに活用するかということがたしか議論されていると思いますけれども。

(答) 集め方の問題ですね。

(問) はい。本当のところの、そこのところが、消費者庁からのヒアリングをされましたけれども、そこが腑に落ちないといいますか、はっきりしないのです。

(答)情報の収集の仕方に関しても、これまで建議を出すときに何度か議論をさせていただいて、そもそも消費者事故なのかどうかについての各関係省庁の認識が違うとか、あるいは場合によって重大性についての判断基準も違っていて、本来は伝えるべき情報が伝わっていない場合があるではないかということで、情報の収集のあり方について、さらにきちんと検討すべきであることを委員会から申し上げた記憶がございます。恐らく現在、消費者事故の、どういうものを消費者事故というかとかというスタンダードとか、それから、重大性のスタンダードについて出してきているのはそういう成果だろうと思うのです。では、具体的に情報がうまく集まっているかという結果の部分、これが必ずしも明らかではないということなのだろうと思います。

統計法上の問題があって、統計であらわれた数字の具体的な個々の案件に関してどういうふうに見るかという部分に関してはやはりブロックがかけられている。そうでないと統計がうまく出てこないので、やはり匿名性というものをとられているのだろうと思いますから、そこだけで情報にアクセスしようと思ったときには限界があることは確かですから、消費者庁がおっしゃるのはわかるような気がしますが、それとは別に、ちゃんとした消費者事故に関しての具体的情報収集がうまくいっているかどうかということについては消費者庁にもきちんと把握してもらう必要があることは確かだろうと思います。

今、お話を伺って、ちょっと残念だと思いました。

(問) 統計法上の縛りはあると思うのですけれども、例えば窒息事故があった。4歳までの幼児が亡くなったというのは、消費者事故として多分位置づけられるものが結構、その中の全部ではないですけれども、ある。でも、それが報告されているのかどうか。本来は統計法上の云々かんぬんよりも、そこで起きたこと。これが厚生労働省が知った段階で、あるいは各自治体の長が知った段階で本当は通知されているということだと思っていましたもので。

(答) はい。私もそう思っておりました。

(問) ですから、そこのところの検討とか議論がないような気がして、つまり、そういう権限が今、あるのだというところの前提で事故情報の収集というものが消費者庁には課せられているような気がしたのです。そこがどうなのだろうというのがありましたので、安全調査会のほうでも何か。

(答) どうもありがとうございます。また安全調査会のほうでも事故情報の収集方法についても検討課題の一つとして考えてみたいと思います。

安全調査会はまだ動いている最中ですので、どこまでそういうものが議題の中でやれるかどうか、自信がありませんけれども、恐らく入る情報の質によってアウトプットも変化してきますから、その意味では大事な問題であろうと思います。どうもありがとうございました。

(問) 今の関連で、事の発端がこの前、消費者庁の消費者安全課が発表した、子供による食品の誤えん事故で人口動態調査を持ってきたのですけれども、件数は出ているのですが、具体的事例が一個もなかったのです。何人死亡でそれぞれ、ある程度の食品ごとに何人死亡というのは出ていたのですけれども、具体的事例が一個もなくて、やはり今、まさに他の記者さんがおっしゃったとおり、せめて情報を厚労省からとれないにしても消費者庁として、例えば寄せられている事故情報で時期的に、これとこれは一緒かなとか、そういった突合ぐらいはできるのではないかという気がするのです。

そういうものも多分やっていないのですよ。他方で取り寄せて分析するだけという、それだけだったら統計法の縛りもあるのでしょうし、でも、まさにそこの生データをさわれるのは厚労省しかいないというところを考えますと、これはどこも結局、具体的事例には触れられなくて、分析し切れないとなりますと、まさにそれはすき間事案なのではないのかという感じがして、そうなると、消費者安全法で何かできないのかという話にもなりますし、そういう状況です。

(答) どうもありがとうございました。何ができるか考えてみます。

(以上)