河上消費者委員会委員長 記者会見

2016年10月26日
消費者委員会

日時

2016年10月26日(水)11:00~11:27

場所

消費者庁記者会見室

冒頭発言

(河上委員長) どうもお待たせいたしました。

今日は、私からの報告事項はございませんので、質疑のほうで、答えられることだけお答えします。

質疑応答

(問) 特保についてお聞きします。

4月に、消費者委員会で建議を出されました。その中に、確か10項目から16項目の提案をされていて、その中で、更新制度について、今ではなくて、しかるべき検討課題の中に入っていたと思うのです。つまり、更新制度自体はすぐにはできなくても、再審査制度というか、それを補償するような形で提案されていましたけれども、今回、日本サプリメントがああいう形になって報告してきたわけですが、新しい知見がわかった段階で消費者庁に報告するということをしなかったことが、初めての件ということになるわけですけれども、消費者委員会としては、あの建議以降、私は、事実は非常に深刻になっていて、今、実際は事業者団体の調査になっていますけれども、消費者委員会として建議以降、このような日本サプリメントの状況に対して、どのようにお考えなのか、改めて意見とか、建議とまでは言わなくてもそういうものを出される御予定はないかということを、まず一つお聞きしたい。

(答) 御承知のとおりで、消費者委員会は今年の4月に「健康食品の表示・広告の適正化に向けた対応策と、特定保健用食品の制度・運用見直しについての建議」を発出したところでありまして、今回のような事案が起きるということを、そもそも懸念してああいう建議を出していたということであります。販売されている製品に関与成分などが規格どおりに含まれているかを確認するために、場合によっては収去調査であるとか更新制がない現状で、事後チェック機能の重要な柱と消費者庁が位置付けている再審査制が有効に機能しているのかきちんと検証してくださいということを、強く求めたところでした。

実はこれに先立ちまして、平成23年の8月、特保の表示許可制度についての提言の中で、許可の更新制の導入に向けて、適切な有効期間のとりかたとか、申請に要する資料を迅速かつ効率的な審査体制ができるように検討を開始すべきだという提言を、既に行っていたところです。

今回の4月の建議につきましては、今月末が対応状況の報告期限になっておりますために、今後、その対応状況について、消費者庁に確認をしていくことになります。平成23年の提言で求めていた更新制の導入については、消費者庁のほうから、更新制が廃止された経緯であるとか表示許可の適否に関わる新たな科学的知見が得られた場合は、速やかに再審査手続を開始するからということで、慎重に検討する必要があるという認識を示しておりまして、その消極的な姿勢は、特保等の在り方に関する専門調査会のヒアリングにおいても変わらなかったという経緯がございます。

消費者委員会としては、今回の建議発出に当たって、消費者庁が述べているように、事後チェックの機能が有効に働いているのであれば、更新制というものが復活できなくても、この再審査制を代用することで、特保が消費者にとって有益な制度であり続けることは可能ではないかと考えまして、まずは今回の建議事項、つまり収去調査の実施と再審査制の有効性に関する検証を求めたところであったわけです。

しかしながら、今回の取消事案の発生によって、現在の特保制度及びその運用では、販売される製品の有効性に関する品質管理に問題が起きるということは防ぎきれない。残念ながら、事後チェック機能が有効に働いていないのではないかという強い疑問を感じているところです。

4月に発出した建議への対応状況報告の提出期限が今月末ということになっておりますので、消費者庁から状況報告が届き次第、消費者庁が、本日10月26日を期限として実施している特保に関する調査結果も含めて、状況を確認していく予定でおります。その確認の中で、現在の制度運用の何を変えれば特保が消費者にとって有益なものであり続けることができるかということについて、改めて検証していくということになろうかと思います。

まずは、本会議で建議のフォローアップということですけれども、そこで議論をさせていただいて、必要に応じて別途方策を考えていく予定でおります。

(問) 消費者庁の今日までの期限の報告書提出が要請されていますけれども、その結果、消費者庁がいろいろ調査するわけですから、何らかの形で、今回の日本サプリメントの件に関する消費者庁からの結果を待つということですか。

(答) それも含めて、今度の本会議でのフォローアップを予定しております。そこでの議論を踏まえた上で、必要に応じて対応を考えるという姿勢でおります。

(問) 建議の中では、収去調査と書いてありましたね。

消費者庁がやっているのは買上調査ということですけれども、違いというのは、行政上の使い方はあるのでしょうか。

(答・事務局) 買上調査につきましては、法制度にのっとらない買上事業だと認識しております。

(問) 法制度にのっとらないのですか。

(答・事務局) はい。

(問) 収去の場合は。

(答・事務局) 収去は、法制度にのっとった、監視指導の一環です。

(問) 消費者委員会は収去調査を求められているということですか。

(答) はい、収去調査を求めている。

(問) そういうことですね。

今、消費者庁がやっているのは、買上調査ですか。

(答) 買上調査です。

(問) 今の関連で、このフォローアップはいつ頃やるのですか。11月中とか12月ですか。年内には。

(答) まだ、フォローアップの時期に関して、細かい予定は決まっておりませんけれども、フォローアップの期限は6か月後にやることになっていますから速やかにやりたいと思っております。

できれば11月中にやりたいと思います。

(問) フォローアップした結果、これはまた建議、強く意見を言いたいというときは、かつての美容医療のときみたいに再建議みたいなこともあり得るということなのですか。

(答) 必要があれば、それはやらざるを得ないと思います。

ただ、その場合には、特保に関する有識者の方々に、きちんともう一度、そのフォローアップの結果を踏まえて検討はしてもらって、その上で、どういう形で意見表明するか考えたいと思います。

(問) わかりました。

(問) ちょっと確認なのですけれども、そのフォローアップの中で、健康増進法の改正があるとか、そういうところに関して、例えば、取消要件について、特保として許可されていないのに、特保として許可されているかのような販売表示をしていた場合の取消要件はあるのですけれども、そういう取消要件についての健康増進法の改正とか、そういうことはフォローアップの中で求められていく、要するに、制度改正ということも含めて検討されますか。

(答) 特保制度に関して、どういう形での改正が必要かということを検討してからでないとわかりませんが、もし必要であれば制度に踏み込まざるを得ない場合もあろうかと思います。

(問) 機能性表示食品に関してなのですけれども、前、検討会のほうで、今、行われている検討会とか、消費者委員会のほうでもこの間出たと思いますけれども、実際に買上調査の結果、成分が満たされていなかったり多かったり、そういう不備があるケースがあったというお話がありました。それのデータ的なところについて出すべきだという声が委員さんからも出ていて、消費者委員会としては、どういう形かわからないけれども、消費者庁のほうにそのデータをできればとりたいと思うと、前にお話しされていたと思うのですが、これについては、何か動きはありましたでしょうか。

(答) もう御承知かと思いますけれども、消費者庁の中に検討会があって、機能性表示食品の範囲拡大に関する検討はほぼ終了したと伺っています。

今、報告書の内容の検討を残すだけの状態だったかと思いますが、その中で言われていることが2つほどあって、一つがビタミン、ミネラルは見送るということと、関与成分が明らかでないものは、消費者庁や事業者団体が事前あるいは事後にチェックできる体制が確立した後で、ある程度同定できるものを、その範囲に含めていこうではないかという話になっていると伺っております。

これは、検討会で十分審議された結果であろうと思いますので、尊重したいと思います。ただ、今回の対象範囲の拡大については、消費者庁の事後チェック体制が確立した後に行うことになっているわけでして、今般、特保でもこういう事後チェック体制がうまく機能していないのではないかという疑義が生じているということを踏まえますと、やはり十分に体制を整えてから範囲拡大を検討していただきたいということで、慎重に対応していただくことを期待したいと思います。

なお、現在の機能性表示食品制度については、9月20日の消費者委員会本会議で、消費者庁に対して、現在の運用状況についてヒアリングを行いました。その結果、やはり事後チェックがうまく機能していないと思われる部分が見受けられました。これは本会議で示されたとおりでございます。

ですから、消費者委員会としては、今後、特保制度の運用に関する建議のフォローアップを行うとともに、機能性表示食品の制度運用に関する議論についても、引き続き注視していく所存でおります。

まだ具体的なことが申し上げられないのですが、この機能性食品制度に関しても、ちゃんと目配りをしていくつもりでおります。

(問) 今のことを聞いていて思い出したので、その思いを伝えるのですけれども、9月20日の消費者委員会の本会議のときに、機能性表示食品の買上調査の結果が出ていたのですけれども、それは5月の下旬に既に消費者庁の検討会で出ていて、なぜこんな4か月もたってから消費者委員会でヒアリングをするのだろうと思って、さすがにちょっと遅いのではないかと思ったのです。せめて2か月後くらいかなという感じはしたのですけれども、大分前の話を4か月後の今になって聞いているのだろうという印象を受けたということを、今、思い出しました。

(答) 機能性表示食品制度について、消費者委員会から答申を出して、9つの条件を並べました。その条件について、ちゃんと満たした状態で機能性表示食品制度を動かさないと、この制度は信頼を失いますということで、ゴーサインは出しましたけれども、その条件についてはしっかりやってくださいということを確認してやってきたわけです。

それが、その後の検証の段階で、きちんとできているかどうかということを見るということでありました。ただ、1年ぐらいたたないと、機能性表示食品の運用状況が一体どうなるのかということがはっきりわからないので、ヒアリングのタイミングを計っていた部分はありました。

そういう意味では、少し遅かったという御印象があるかもしれませんが、委員会としては、ある程度、機能性表示食品制度を動かしていったときの問題点が明らかになる時期としては、あの程度でよかったかと思っております。問題が発覚した時点とのタイムラグが生じたことは否めません。

(問) 私も含めて、数社の人で、5月の下旬の消費者庁の検討会のときに、去年の9月にまとまっている調査の結果を何でこんな5月に出すのかみたいなやり取りを、消費者庁の担当者とやったのです。

それも更に忘れた4か月後ぐらいに、この委員の中でまた同じ議論になるのですけれども、それは4か月前にできたよねという話で、今さら感があって、4か月前のことを何を今さらやっているのかみたいな感じでした。

(答・事務局) 要するに、委員長が先ほどおっしゃったように、それだけではなくて、9項目としていたものの検討状況がどうですかということを聞くタイミングとしてやったのでということだと思うのです。

(問) 時間が必要だったということですか。

(答) タイミングとしてどこがよかったかということは、今になって考えてみると、もう少し早くてもよかったのではないかと思われるかもしれませんが、条件としての9項目は結構厳しいものですから、ある程度期間がないと、消費者庁としてもハードルを越えているかどうかということを報告できなのではないかと思ったもので、時期的にはそういうことになったというわけです。

(問) ほかの項目も含めて、まとめてやるのが9月20日だった。

(答) はい。

(問) わかりました。

特保もフォローアップも、やはりなるべく11月中に。

(答) なるべく早く。

(問) わかりました。

(問) 関連なのですけれども、その9月の本会議の中で、7月に消費者庁の検討会が発表したもの、その検討会が発表した事後調査結果というものは、去年の9月か10月までに申請されたものを対象としてやった。

時間的なこともそうなのですけれども、もう一つ、その中で問題になったSR(システマティックレビュー)とか論文調査の中で、もしも国際的にケアも合わせると不十分な届出データで販売しているということとか、買上調査の中では、関与成分が規定の条件に外れていたというものが、7月の段階では発表されたけれども、商品名とかメーカー名は発表されていなくて、そういうものに対して、まず消費者委員会は、どんな商品なのかという報告を受けているのか。

あと、その商品に対して、公開はされていないのですけれども、どんな措置をとられているのかということに対して、消費者庁に何か要請はされているのでしょうか。

(答) 内部的には情報共有をして、いろいろ議論はしているはずですけれども、正式に、表ではやってはいないと思います。

(問) 消費者庁は、要するに全品をやっているわけではないし、個別の事業者に対しては、要請なり何かをしているということは、おっしゃることはおっしゃるのですけれども、消費者にとってみれば、そういう届出ガイドラインその他、届出だと思っていたもの、その中で必要なデータが不備だったということが何十パーセント出てきた。それと同時に、関与成分自体が、安全性と機能性に関係するかと思うのですけれども、関与成分自体が表示どおりではないということがあるので、そのときに、概要だけ発表されている。だけど、何がそうなのかとわからないという状況の中で、もんもんとするわけです。

それは、消費者委員会としては、何か。例えば、措置をして、一つ一つ公表しようとか思っていますか。

(答) できるだけ、消費者庁が把握した情報で問題のありそうなものは、早め早めに開示していただきたいということはいつも申し上げているところで、今後も、こうした制度的な問題に関して、情報の提供に関しては、強く要請していくことになるだろうと思います。

(問) ちょっと話題を変えるようで申し訳ないのですが、10月から始まった集団的消費者被害の回復制度について、消費者委員会のほうは、保障行政というものを足掛かりとしたワーキング・グループの報告書を出されていたりとかして、要するに、消費者団体に対してどう支援していくかということも提案されていたのですが、今回、回復制度では、1団体が特定適格団体の認定を申請している。だけど、ほかの団体も申請したいのだけれども、なかなか財政的な問題であるとか、あるいは支援の在り方についていろいろ要件があるわけですが、消費者委員会として、そういう報告書を出したことがあるということを踏まえて、団体訴訟についての何か意見はあるのでしょうか。

(答) 10月1日から施行されたわけですけれども、実際に特定適格消費者団体になれるだけの体力を持っている団体がどのくらいあるかということについては、私も現状を見ている限りかなり難しいという認識を持っております。

既に一部の適格消費者団体から申請が出されたということでありますが、今後より多くの団体が、この特定適格消費者団体として活動して、この制度が実効的に機能していけるように、環境整備を是非やっていかないといけないということを考えております。

前に出した官民連携の在り方に関する調査報告の中で、保障行政という考え方を出しましたけれども、必ずしも、そうした考え方で制度が運用されているとは思えない。個人的救済のためにそうした団体を作って、そこに国が権限を与えてあげるのだからという発想で考えている向きもございます。

しかし、それではだめで、せっかく市場の公正さを守るために作った制度ですから、国に代わってそれぞれの特定適格消費者団体が、実効的に機能するための支援が、積極的に実施されることを期待しております。

具体的にどういうことがあり得るかということは、もちろん、まだまだ検討しないといけない課題ではありますけれども、できるだけ側面支援をしていく方向で、消費者委員会としての知恵を出したいと思います。

(以上)