河上消費者委員会委員長 記者会見

2016年9月21日
消費者委員会

日時

2016年9月21日(水)16:00~16:31

場所

消費者委員会会議室

冒頭発言

(河上委員長) 始めさせていただきます。いつもと違って、座ってやらせていただきます。

報告事項が3件ございます。

お手元に資料を配付しておりますけれども、スマホゲームは、スマートフォンの普及とともに登場してきた比較的新しい形式のサービスでして、小さな子供から大人まで年齢を問わずに利用ができるということや、場所や時間を選ばずに利用することが可能なものであります。特に、ゲームの中で比較的簡単に課金がされる仕組みになっているということとか、スマホゲームの中で見られる電子くじと言われるものが一般に射幸性が高いと考えられるということ。位置情報を利用するといった、スマートフォンの機能を利用したゲームがあるといったような様々な特徴を持っているものであります。

スマホゲームのように、技術の進歩に伴って登場した新しいサービスについては、それが社会の中に定着していく過程で、その在り方について、事業者、事業者団体に加えて家庭や学校での教育を含む社会全体で考えていくことが重要であろうと思われます。

また、サービスの提供方法やその利用の仕方について、事業者等においては、現時点で消費者保護のための一定の取組が進められているわけですけれども、更に引き続いて、一層消費者の意見や相談に対して誠実に対応していくことが期待されるというものであります。

特に問題なのは未成年者でありまして、未成年者についてはゲームに対する没入感が非常に高いという特徴がありますために、未成年者の健全な育成という観点から、一定の配慮が必要であろうと考えられるわけであります。消費者においても、スマホゲームの特徴を理解した上でスマホゲームを利用することが望まれます。

こうしたことを考えて、消費者委員会では、スマホゲームに関する消費者問題について注視すべき観点というものを取りまとめました。

具体的には、スマホゲームに関しまして、消費者が安心して利用できる適正な環境、そしてスマホゲームの電子くじの射幸性、さらに、未成年者の高額課金の3つの観点について、今後委員会としては注視をしていき、必要に応じて意見表明をしていくことを検討してまいりたいと思います。

この意見ですけれども、ほかの提言や建議などと違いまして、他省庁に対して一定の取組を求めるという性格のものではなく、今後スマホゲームは技術の進歩に応じて新しい形態のものも生じることが想定されますので、消費者問題の状況によっては、その他の点についても必要に応じて、消費者委員会として意見表明ができるように注視してまいりたいと考えております。

もちろん、関係省庁あるいは事業者、消費者の方々にも、この観点を参考にしていただいて、スマホとの適切な付き合い方をお願いしたいというか期待したいと考えているところです。

これがスマホについての意見に関する御報告であります。

第2番目が、機能性表示食品制度の運用状況に関するものでして、昨日の消費者委員会で、機能性表示食品制度の運用状況について消費者庁からヒアリングを行いました。

この制度に関しましては、一昨年、食品表示基準に含めて制度化する際に、当委員会でも随分議論をしました。御存じの方も多いかも知れませんが、当時、消費者庁から当委員会に諮問があった時点で提出されていた食品表示基準案には、実際のところどのように制度を運用するのかといった詳細が全く盛り込まれていなかったのです。検討委員会の報告だけがあったわけです。後日、消費者庁が作成するガイドライン等によって制度の運用方法が決定されるという、極めて不透明な状況下での審議であったということがございます。

制度の導入が消費者の利益につながるように、答申書では、一応、制度導入を適当とするということにしながら、その前提条件としてかなりの数の附帯意見を付けました。諮問に対する答申としては、非常に異例な形で条件付けがなされたというものであります。

消費者委員会としては、ある程度状況が明らかになった時期に、どういうふうに制度運用がなされているかということについて確認したいとずっと考えてまいりましたけれども、今月末で制度導入から1年半になりますので、そろそろ検証するために必要なデータもそろった頃ではないかと考え、消費者庁から運用状況についてのヒアリングを行うということにしたわけでございます。

昨日は、消費者庁から、ガイドラインの概要や現在の執行状況に関して説明がありました。その一環として、消費者庁が実施してきた検証作業とその結果についての説明をいただいたわけですけれども、昨日の時点で、この検証結果の扱いに関しては、消費者委員会の委員の間からは多くの疑義が上がり、かなり議論がありました。

具体的に申しますと、検証の結果、届け出された研究レビューの方法や内容にかなり問題があるのではないかということ、それから市販されております機能性表示食品の買上げをして、製品の分析を行ったものがあるわけですけれども、実際に分析された結果を見ますと、届出書類に記載された方法では情報が不足していて分析できない事案があったり、さらに、その不足していると思われる情報を消費者庁の側で補完して分析をやってみたところ、製品に表示されている機能性の成分量が、実際に含有されている成分量と比べて多いもの、少ないものがあって、その成分量が一致しなかったという結果が出たわけです。

それに対して、現時点で消費者庁の対応は届出者に情報の追加提出を求めることにとどまっているということでして、果たしてそれでいいのかということで、随分疑問が出されました。

消費者庁としては、届出者からの回答状況を確認した上で、対応が必要かどうかを検討すると言ってくれましたけれども、委員の間からは、消費者の利益を考えるとその対応では遅すぎるといった意見がたくさん出ました。実際には既に届出番号が与えられていて、市場には機能性表示食品として出ているわけです。広告も出ているという状況ですけれども、そういうものが実際に届け出られた書類に書かれている形での成分量に比して不足していたり多かったりということがあるわけであります。

機能性表示食品としてカプセルとかそういうものになると、場合によっては過剰摂取して健康に被害が出るものだってあるわけです。しかも少ないということになれば、これは食品表示法にも違反する。

それを考えると、現時点で届出番号を与えられているものがそういう疑義があるとすれば、ちゃんとき然とした態度をとってもらいたい。

機能性表示食品制度というものができて、事業者が消費者庁に届け出た範囲で機能性の表示ができるわけですので、届け出た情報が表示している内容に対して足りないという事実が明らかになった時点で、食品表示法や景品表示法にのっとった指導などの対応がとれないのか。

消費者委員会としては、今回の確認を通じて、制度運用において最も重要な事後チェックの機能が、果たして有効に働いているのかどうかという点に大きな疑問を持ったわけです。消費者庁は、制度運用開始から2年をめどにして、問題があれば制度の見直しを検討するとしているわけでありますけれども、事後チェックがうまく機能しないということになれば消費者の利益につながりませんし、逆に言えば、正直にその機能性をチェックして届け出ている真っ当な事業者に対しても非常に気の毒な結果になる。制度の信頼性そのものが崩壊するわけですから、それを考えるといろいろと問題が顕在化してきていると言わざるを得ません。

2年前の答申書の中でも書きましたけれども、この制度は、根拠が内閣府令の中で規定されているものでありまして、ほかの届出制度と違いまして法律上の根拠がないという、制度そのものに関するぜい弱性を抱えています。

委員の中には、こうした今の消費者庁の、きちんと問題への対応に踏み込めない原因は、こうした制度的なぜい弱性に起因しているのではないかとおっしゃった委員もありました。

当委員会としては、以前からこの制度のぜい弱性の問題を速やかに解決することを求めているわけでして、改めて今回の疑義の生じた制度運用に関する体制整備も含めて、速やかに制度全般の見直しが行われることを強く希望しているところです。また、当委員会としても、引き続きこの制度については注視していく所存でございます。

これが、機能性表示食品制度に関するヒアリングについての御報告です。

第3番目が、成年年齢引下げ対応検討のワーキング・グループ設置についてであります。今年の9月1日付けで消費者庁長官から消費者委員会に対して、民法の成年年齢が引き下げられた場合に、新たに成年になります18歳、19歳の消費者被害の防止あるいは救済のための対応策について意見を求めるという諮問がございました。

これを受けて9月6日開催の委員会本会議におきまして、成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループを設置いたしまして、昨日20日に初回の会議を開催いたしました。

第1回のワーキング・グループの会議では、法務省、国民生活センターを招いてヒアリングを行いまして、若年層の消費者被害の実態について若干の議論を行ったところであります。

今後、有識者あるいは関係団体、関係省庁などのヒアリングを重ねまして、できれば本年の12月頃をめどに取りまとめを行った上で、消費者委員会としての意見表明というか答申を出したいと考えているところであります。

私からの報告は以上であります。

質疑応答

(問) 昨日確認するのを忘れてしまったのですけれども、成年年齢引下げのところで、後半のほうの関係省庁と関係団体のヒアリングは法務省、消費者庁以外ということになるのですか。どういったところですか。

(答) 現在、まだ調整中なのですけれども、昨日の段階で法務省には来ていただきまして、民法改正の現在の考え方といったものは伺うことができました。

それ以外に問題になるとすると、例えば特商法とかいろいろな法律がありますので、そういうところに関して経産省であるとか様々な関係省庁が出てくると思います。もし予定を言えるものがあれば、事務局からお願いします。

(答・事務局) まだ決まっていませんけれども、昨日ワーキング・グループの資料で今後の進め方というものが配られています。そこでは、後半のところで消費者教育とか法教育、金融教育もありますので、その辺に関するところもできればと思います。

(答) 教育関係ですから、文科省も関係してくるのでしょう。

(問) 関係団体がいまいちどの辺が対象なのか、全然思い浮かばないです。

(答) 今の段階では、私もよくわからないのです。

(問) そうですか。

あと、これはあくまで消費者契約法に絡んできそうなところは、やはり専門調査会と切り分けていくということは前提にあるのでしょうか。

(答) 成年年齢の引下げに関わる部分というのは18、19歳辺りの消費者問題に対する対応策の話になりますから、今の話にも出ましたけれども消費者教育であったり、かなり特化した部分の問題になります。

ただ、実際には青少年の被害の多い類型の消費者取引被害に対する対応を考えるときには、特商法や消契法とも重なる問題はあるだろうと思います。ですから、消契法、特商法等についての議論をする際に、論点を整理した上で場合によっては消契法の専門調査会に意見を聞くことはあろうかと思います。

ただ、それぞれ目的が若干違いますので、そこはある程度整理しながらやっていこうとは思っています。

(問) このワーキング・グループの12月の報告書の取りまとめの中に、例えば特商法とか消契法の改正とか見直しが必要なところとか法的措置が必要なことも、普通に盛り込まれる可能性はあるということですか。

(答) それは排除していません。今後の検討課題についての整理を行った上で、個別論点を検討して、中には出てくる可能性はあります。

(問) 本当にイメージなのですけれども、報告書の取りまとめのところでワーキング・グループの報告書の中に、例えば消契法の見直しが必要みたいなことを盛り込んで、それを受けて専門調査会で本格的に議論していくイメージですか。あくまでそうなればですけれども。

(答) それが必要であればそうですけれども、むしろ18、19歳の若年者については、こういう手当が必要だということについては、もうワーキング・グループで言い切ってしまうこともあるかもしれません。

(問) もう、そもそも専門調査会で議論も始まったと言えますね。この前の成人年齢引下げです。

(答) 既に様々な意見がありましたね。ただ、あの大きな問題をあそこでがんがんやっていますと、ほかの論点などにはなかなかたどり着けないので、若年者についての成人年齢の引下げに関わる問題は、むしろワーキング・グループで引き取ったほうがいいかとも思っています。

(問) わかりました。

(問) 昨日の消費者委員会の機能性表示食品制度の議論なのですけれども、まず、例えばGMPの義務化とか公開60日間の確保とか、委員長は事後チェックをしっかりしてほしいということなど、いろいろな意見が出たのですが、その中で、制度を見直すための検討会で特に委員長として求めていきたい点は、どういうところになるのでしょうか。

(答) 昨日の会議の中で出た議論は、それぞれ参考にしていただければありがたいと思っているのですけれども、注意していたのは、60日の確保の問題とか、それからGMPの義務化の検討をやってもらいたいといったところはかなり大きかったと思います。

私自身は、むしろ制度的なぜい弱性についての懸念が払拭できない。その部分は問題が起きるまではこれでやっていこうという姿勢でしたけれども、問題が起きてからでは遅いので、むしろ問題が起きる前に、今の段階でできることからやっておいたほうがいいのではないかと思いますので、制度的な見直しも是非考えてもらいたいと思っております。

(問) 今、消費者庁で関与成分の見直しの検討会が開かれているのですけれども、機能性表示食品制度に更に規制緩和して、ビタミン、ミネラルなどを加えたり、関与成分が不明というか明確でないものも入れてほしいという業界側の要望で検討会が開かれているのですけれども、委員長としては、今、関与成分を広げるべきかどうかという点でどのようなお考えをお持ちでしょうか。

(答) 私が何かを考えているかということは余り意味がないことです。むしろ消費者庁で議論をしていることとか、食品制度の中で議論されているところを注視しているということです。

これまで機能性表示食品以外に、もとのビタミンとかそういうものについての食品制度があるわけです。そこできちんとやらないと、やはり過剰摂取に伴う健康被害といったものも考えられるわけで、その辺も含めて慎重な姿勢で検討を続けていただきたいと考えております。

(問) 昨日、委員長が機能性表示食品の議論の最後のほうに、委員会としても今後議論していきたいという発言があったかのように思ったのですけれども、いろいろ問題がある中で委員会として改めて議論の場を設けるとか、昨日ももう既に意見が出ていましたけれども、改めて意見をまとめたりするお考えがあるのかどうか。

(答) 委員会としては、今の段階ではまだ何かワーキングチームを作って検討するというようなことは考えておりません。むしろ、消費者庁の中で検討が行われていますので、その検討会の結果を見守りたいと思います。

場合によっては、その検討会の結果を委員会で御報告をいただいたり、消費者庁から別の形で意見聴取があるかもしれませんので、それに対応する場面でやるべきことはやりたいと思っています。

(問) ありがとうございます。

(問) 先程の質問の確認なのですけれども、昨日何回も出てきていた、例えば不備があった部分とか、あとは実際に含有成分量が上回っていたりとか下回っていたりとかしていたものの件数とかについて、情報公開をという声が委員から大分上がっていましたけれども、昨日の段階では消費者庁はちょっとそれは言えないという答えでしたが、それに対して注視していくだけではなくて、もっと強く求めて情報公開をというやりとりを、具体的な手続はよくわからないのですけれども、そういう予定とかはあるのでしょうか。

(答) 消費者庁としては、今行政上の手続をとろうかとるまいかというような段階なので資料を出せないということでしたから、平場でそれをこれ以上要求しても難しいのではないかと思っています。場合によっては委員間打合せとか、そういう場を通じて裏で出せるものを出してもらって、これだったら表に出してもいいのではないですかというものがあれば、それはお願いするということはあるかもしれません。

委員会としては、今の疑義情報の段階でも手続上の不備があったということは事実なので、そのことについては出せるものは出してほしいということは要求しようと思っています。

(問) その要求しようというのは、裏で、具体的にはどういう形で要求するのか。

(答) 事実の問題として要求するというだけです。

(問) このスマホゲームのことなのですけれども、昨日も一部委員と事務局長には聞いたのですけれども、例えばこの適正表示を公的機関として意見を述べることとか、この刑法の賭博罪に該当する可能性が高くなるというところは、国の機関としてこういった意見表明をするのは初めてなのではないかとずっと思っていたのですけれども。

(答) 射幸性があるという話は、消費者庁からもある程度は出ていたことです。国民生活センターからもいろいろな注意喚起が出ているということなのですが、場合によって、この賭博罪であるとか風営法違反になる可能性があるという議論まで踏み込んで行ったのは、恐らくほかには余り見ないと思います。ただ、初めてだと大見栄を切るほど自信はございません。

(問) 例えばですけれども、すごくひどい悪質業者が出てきたときとかに、例えば警察とかが立件するときとかに、これはどれほどの効果があるかというか。

(答) 警察庁とも、一応情報交換をしながらこの意見を作りました。その意味では、風営法とか賭博罪に該当するかどうかについて、現時点ではなかなかぴたっと来るのは難しいということになるのだろうと思うのです。

ただ、我々の観点からすると、そういうものに関わってくる可能性は高くなるのではないかということを述べさせていただいております。その点は、警察などにも参考にはしてもらえると思うのです。

私などは、バーチャルな世界でもパチンコ屋に入ったら、それは問題だと思うのです。現実世界でパチンコ屋に行くのはだめだと言うのだけれども、バーチャルの世界でも若者がパチンコ屋に入っていくことと大して変わらないわけで、そういうことを考えれば、物理的な設備があってそこに入っていくかどうかというところがそれほど大きな意味があるとも思えない。青少年の健全な育成ということを考えれば、今の風営法とかそういうものの規制の仕方ももうちょっと考えてもいいのではないかという感じはします。

これは、まだこれからの課題です。

(問) すみません、全然記憶にないのですけれども、警察とかと意見交換をする場は公開でやったのですか。

(答) 公開ではやっていません。

(問) やっていないのですね。

検察とはやらなかったのですか。やはりそういった法的なところは、結構警察よりも検察かなという気がするのです。

(答) やっていないです。

(問) 検察とはやっていないのですか。では、警察庁ですか。

(答・事務局) 意見交換というより、事実確認をしたというだけです。

(問) そうなのですね。ありがとうございます。

(以上)