河上消費者委員会委員長 記者会見

2015年2月17日
消費者委員会

日時

2015年2月17日(火)19:10~19:52

場所

消費者庁記者会見室

冒頭発言

(事務局) どうも、遅れまして申しわけございませんでした。ただいまから、河上消費者委員会委員長の記者会見を始めさせていただきます。

(河上委員長) 遅れまして申しわけありません。それでは、記者会見の報告をいたします。

報告事項は2件ございます。

1件目は、次期消費者基本計画の素案についてです。平成27年2月版のものですけれども、この素案等に対する消費者委員会からの「意見」についてであります。

皆様のお手元に資料が既に配付されているかと思います。事務局に伺いますが、これは今日の委員会での意見を反映した形でのものですか。

(事務局) いえ、委員会で配ったものをお配りしておりまして、修正版についてはまた後日配付という形にしております。

(河上委員長) では、そのつもりで、よろしくお願いします。

次期の消費者基本計画の素案については、先月の29日木曜日から今月の19日木曜日までの期間でパブリックコメントにかけられているところであります。

消費者委員会としては、本年1月27日、それから、2月3日にそれぞれ委員会本会議におきまして「地方消費者行政の体制整備の推進等」「高齢者向け住まい」「エステ・美容医療サービスに関する消費者問題」、この3つのテーマについて、実施状況や今後の取組等について関係省庁からヒアリングを行いました。同時に次期計画の素案について、今月10日に、消費者団体ほか関係団体等との意見交換会を行ったところでありまして、当該ヒアリングや意見交換会の結果、その他の意見表明等の内容等を踏まえまして、本日の本会議で、今日お配りしている意見案をもとに内容を取りまとめたところであります。

本会議を御覧になった方は御存知かと思いますけれども、若干の字句修正とか部分的な削除がありましたが、基本的にはこれを土台にしたものであります。

意見のポイントをご説明いたします。

まず1ページの1番目の○です。消費者行政の総合調整事務というものが内閣府から消費者庁に移ったということについて、今国会で提出されている予定の関連法案の成立後は、消費者庁としては、この消費者行政の司令塔役を、あるいはエンジン役を強力に発揮するための総合調整機能というものが強化されることになるわけですから、もっと頑張れということをさらに書き込んではどうかということであります。

もともと総合調整機能はあるにはあるのですけれども、それが法律に書き込まれることによって強化されますので、さらにきちんとやってもらいたいということを書いたらどうかという話であります。

それから、2ページ目の6番目の○です。素案に示されております工程表について、やはりもう少し表現を工夫してほしいということです。5年間で検討や調査に取り組むというような形になっているものについて、具体的に、可能な限りスケジュールを明確化し、あるいは取組の進め方について見直しをしてほしいということです。

それから、KPI、いわゆる重要業績評価指標ですけれども、この指標について、もう少し考えて、効果が反映されるような形の指標を出したらどうかということで、以下の4つの基準を示して見直しを求めています。

(i)法令及びガイドライン等の見直しや改訂の実施状況

(ii)消費者や事業者等への、法令及びガイドライン等の周知状況

(iii)消費者関連法令の執行等、行政処分の実施状況

(iv)関連する取組全体の効果としての消費者被害の発生状況

ヒアリングをしますと、こんな会議を開いて、通達を出しましたとか、こんな冊子を何枚配りましたというようなことしか出てこないことがあるのですけれども、何枚配ったかというのではなくて、どのくらい、この法令に関する議論が人々に知られているかということがわかるような、周知率とでもいいますか、そういう周知状況などももう少し工夫をして、KPIを出さないと検証や評価につながらないのではないかということです。

2つ目ですけれども「関係省庁等ヒアリングの結果を踏まえ、留意が必要な事項」で、3ページ目のところに「(1)地方消費者行政の体制整備の推進等」を挙げさせていただいております。

御承知のように、来年度から地方消費者行政活性化基金というものが単年度の交付金という形で変更されるわけであります。そのことで、財政支援に向けて地方では随分不安な思いをしておりますので、引き続き最大限の努力をすることを明言していただきたいということです。

また、消費者安全確保地域協議会について、各地における取組状況やよい事例、好事例を共有するということも消費者庁に求めました。

3ページの2つ目が「高齢者向け住まい」の問題であります。

これは本会議でも随分やりましたが、未届けのものを含む高齢者向けの施設あるいはサービスの利用に係る契約上の問題が非常に増えているということで、その実態把握、あるいは事故情報の収集、消費者被害への対応に関する取組をやってくださいということで、厚労省、国交省にこれを求めております。

さらに3つ目ですけれども、これは3ページから4ページにかけて出てまいります「エステ・美容医療サービスに関する消費者問題」であります。

この領域の問題は全国の消費生活センターに寄せられております危害相談件数が増加傾向にあるということでして「フェイスリフト術」等の美容医療に係る集団訴訟などもありまして、問題が深刻化しております。

そこで、まず厚生労働省にはこれまでの取組に関する検証・評価、さらに、十分な効果が見られない場合の法規制を含めた措置を講ずる時期についてスケジュールの明確化を求めたというものであります。

これは、実は消費者委員会からは何度も意見を発出していることでもありまして、この間も同じことで厚労省にお話させていただきました。きちんと検証・評価をして、情報収集をし、それでも問題状況が改善されていないのであれば、是非とも法的措置をとってほしいということで、基本計画の中でもはっきりさせてくださいというわけであります。

また、消費者庁には、美容医療サービスを特定商取引法上の特定継続的役務として取り扱うべきかについて、引き続き検討を加えることを求めました。

次が、第4章、第5章関連部分で、個別施策についての事項ですけれども、消費者委員会からの最近の建議や答申等に関連するものについて幾つか主要なものを紹介いたします。

まず2)の「マル1事故情報の収集、公表及び注意喚起」ですが、例の「教育・保育施設等における事故情報の収集及び活用に関する建議」。これが昨年の11月に発出されましたけれども、これを踏まえて、事故情報を適切に収集及び活用するとともに、事故の原因を検証する仕組みを構築してくださいということであります。

それから、4)ですけれども、5ページ目に「食品の安全性の確保」というものを挙げました。「機能性表示食品」の安全性確保について、食品表示基準の制定に係る答申というものを出しましたが、御承知のように、この「機能性表示食品」について、答申には幾つもの留保条項をつけさせていただいた。かなり異例の答申になりましたけれども、この答申を踏まえて、制度を運用するに当たって、食品安全委員会の知見を活用することが有効であれば積極的に連携を図ってください。あるいは届出事業者から消費者庁への事故情報の報告が必ず行われる制度の構築をしてくださいということを消費者庁に求めました。

【2 表示の充実と信頼の確保】の3)ですが「食品表示による適正な情報提供及び関係法令の厳正な運用」というものがあります。

マル1で新たな食品表示制度、「機能性表示食品」の問題ですが、その円滑な施行というものを出しております。これは5ページ目です。この「機能性表示食品」については、食品表示基準の制定に係る答申。これは平成26年12月9日に出したものですが、この中で、新たな制度の法的な脆弱性ということを指摘させていただきました。この制度の脆弱性を克服するために、法的基盤について実施後、速やかに補強・整備することとされておりまして、その趣旨を担保する内容とすること。また、事業者からの届け出後、機能性に十分な科学的根拠がないことが判明した場合は、早急に適切かつ厳格な行政処分や罰則が科されるように執行体制の構築を求めたという部分がございます。

それから【3 適正な取引の実現】のほうです。

5ページから6ページにかけて、特に2)の「マル3安全・安心なクレジットカード利用環境の整備」というものも結構大きなテーマであります。御承知のように、平成26年8月に「クレジットカード取引に関する消費者問題についての建議」というものを発出いたしましたけれども、加盟店の管理の徹底に係る制度整備、さらにマンスリークリアの取引における抗弁の接続等といった制度整備に向けた措置をきちんと講じてくださいということを経産省に求めました。

マル4ですけれども、商品先物取引法の問題であります。これは「商品先物取引法における不招請勧誘禁止規制の緩和策に対する意見」で、平成26年4月。さらに平成27年1月27日開催の第182回消費者委員会本会議での議論を踏まえまして、消費者被害を防止するための取組を徹底することを明記されたいということを申し入れています。また、委託者の保護に欠ける事態が生じたというよりも、事態の兆候が出てきたら、直ちに制度を見直すことを求めたいということで、消費者庁、農水省、経産省に対して、この点を書き込んでいただくよう求めております。

次が【5 消費者の被害救済、利益保護の枠組みの整備】であります。

「2)高度情報通信社会の進展に対応した消費者利益の擁護・増進」というものがございます。これも随分大事な点が多いのですけれども、マル3のところに、特に「パーソナルデータの利活用に関する制度改正」というものがあります。「『パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱』に関する意見」で、平成26年7月のもの及び「いわゆる名簿屋等に関する今後検討すべき課題についての意見」を踏まえて、消費者の個人情報等が保護され、安心が確保されるための方策を継続して検討し実行していくことを求めましたけれども、今日の本会議では、それだけでは具体的でないので、もう一つ踏み込んで、やはり名簿屋についての実態をきちんと調査して、そしてそれに必要な分析を加えた上で対策を練ってくださいということまで書き込むという話になりました。そのほか、本日の会議では、PL法についても、調査に加えてと問題点の抽出・整理や対策の検討をお願いしてはどうかということになりました。

さらに「4.今後の課題」であります。

次期計画では、計画本体が閣議決定の対象とされて、工程表は1年に1回は見直しを行い、消費者政策会議で決定されることになっております。

中長期的に実効性のある消費者政策を推進していくためには、工程表に限らず計画本体についても不断の見直しを行うことが必要でありまして、工程表が修正される場合には、必要に応じて、計画本体も修正していくべきであるとしております。

当委員会としては、次期計画で示された施策の実施状況について、KPIも含めて検証・評価・監視を随時行い、消費者を取り巻く環境や課題、取り組むべき施策の内容等に大きな変化が生じ、施策の追加・拡充、整理等が必要と考えられる場合には、計画本体の見直しを含めて意見表明を行っていく予定であることを書き込んでおります。

関係省庁におかれては、本意見の各項目について十分検討の上で、可能な限り次期計画の原案について反映していただきたいと考えておりますし、これからパブコメがありますから、そのパブコメの成果も十分に反映してやっていただければありがたいと思っております。

当委員会としては、本意見の計画への反映状況、あるいはその後の実施状況等について引き続き監視を行いまして、消費者被害の状況が深刻なものや取組が不十分と考えられるようなものについては、必要に応じて建議等の意見表明を行っていきたいと考えております。

ちょっと長くなりましたが、以上が次期消費者基本計画の素案等に対する意見というものであります。

もう一つは、これもまた資料が配付されているかと思いますけれども、商品先物取引の不招請勧誘の禁止規制に関する「委員長発言」というものであります。

これも、文書が皆さんのお手元に配付されているかと思いますが、ご説明いたします。経済産業省及び農林水産省は、平成26年4月5日、「商品先物取引法施行規則」及び「商品先物取引業者等の監督の基本的な指針」の改正案を公表して意見公募手続を開始した。当委員会としては、この改正案が、消費者保護の観点から見て、重大な危険をはらむものであることに鑑み、かかる動向を看過することができず、深く憂慮し、その再考を強く求める意見書を同年4月8日に公表した。

その後、消費者庁も含む3省庁間で協議が行われた結果、本年1月23日、経済産業省及び農林水産省は「商品先物取引法施行規則」を改正し、新たな「商品先物取引業者等の監督の基本的な指針」、これは新監督指針といいますけれども、これを公表した。

消費者委員会としては、1月27日の第182回本会議において、本件について3省庁からヒアリングを行ったが、残念ながら、次の点については、消費者保護の観点から、委員間で懸念が拭えない。

第1に、これは法令の構造上の問題であります。本省令では、契約を締結できる基準について事前に説明する義務を課しております。それで、年齢、収入に関する条件を設けるなど、契約締結と契約内容に制限をつけた上で、勧誘行為を認める結果になっているわけであります。

しかし、この不招請勧誘の禁止は法律において原則、これはしてはいけないというふうに規定されているものでありまして、これを大幅に緩めて原則と例外を事実上逆転させるかのごとき形で省令で規定することが果たして論理的に可能なのかという問題があるということであります。

第2番目が、不招請勧誘禁止の規制の立法趣旨との関係であります。本省令では、契約締結の条件として、適合性原則や従前の説明義務の徹底が規定されているわけですけれども、立法の際、これらの措置をとっただけでは被害防止に十分ではないとの判断に基づいて、結果的に不招請勧誘が禁止されたという立法上の経緯がございます。

ところが、本省令は、こうした立法の際の経緯に反する形で、もう一度、適合性原則や事前の説明義務を徹底すれば何とかなるというふうに対応しているわけでして、その意味では、これまでの立法経緯からしても問題が大きいのではないかというのが第2番目であります。

第3番目が、これは実質的な問題でして、このままでは消費者被害を防止できないのではないかという懸念が払拭できないということであります。

この省令によりますと、事業者は、まず、契約が認められる基準を説明するわけです。その際に事業者は、消費者に接触することができるわけですが、そのときの、通常の外務員の行動パターンあるいは交渉パターンを考えますと、商品が一定の有利さを持っているとか、あるいは取引が持っている魅力というものを語らないで接近することは考えにくい。つまり、そういうセールストークが合わせて行われることが十分に予測できるのであります。

本省令では、基準について説明すれば、基準を満たすことを確認しなくとも、つまり確認は契約までにすればいいわけですが、それまでの間は実質的な勧誘を行うことは認められてしまうことになります。新監督指針においても、説明の際は「勧誘条件を満たさないことが判明した場合には、速やかに電話を切る等の対応を行わなければならない」とありまして、逆に言えば、年齢とか収入なんかの条件を満たさないことが判明しなかったというふうに言いわけをすれば、事実上、勧誘を継続できることになりかねないわけであります。

したがって、事業者は、基準を説明しても、条件を確認しなければ、条件を満たさない者に勧誘することは可能になってしまう。条件を満たさない者と契約することはできないが、勧誘された消費者が、後日、自ら契約を申し込むというふうに仕向ける。そういう形にすれば、場合によっては違法とならないとされることも懸念されるわけであります。なるほど、新監督指針においては「顧客から勧誘の要請があった場合でも、その前に顧客に対して勧誘がなされたことを受けて顧客が勧誘を要請するなど、実質的に顧客からの勧誘の要請があったと考えられない場合には、法第214条第9号に規定する不招請勧誘の禁止規定に抵触する」というふうにされてはいるのですけれども、その前に顧客に対して勧誘がされたことを受けて顧客が勧誘を要請したのかどうかを判断するのは大変困難なことであろうと思われます。

少なくとも、こうした脱法行為を許さないためには、基準の説明の際に合わせて条件を満たすかどうかを確認することを義務づけるとともに、基準の説明内容や方法、これだけのことをしゃべったらアウトである、これだけのことしかしゃべれませんというふうに、基準の説明内容や方法を限定する必要があるものと考えられます。そもそも条件の確認については、これまでも金融資産等を多めに記載するようにというふうに担当者が誘導したと認定されている裁判例がございますし、その実効性というものはかなり疑問であることは否めません。

「理解度確認テスト」もそうでして、商品先物取引の仕組みを説明されても、実際の相場変動によるリスクの大きさが本当に実感を持ってわかるものではないのではないか。また、これまでも事業者が理解度確認を書面で行っている例はあるわけですけれども、裁判所に出されたそういう理解度確認書面について実際に審理してみたら、事業者があらかじめ正解を教えていたとか、いろいろな行為によって結果的に被害が生じていたということもあるわけでして、今後、理解度確認テストを行うこととしても、同様の行為が行われる可能性は否定できないわけです。したがいまして、被害防止への効果には大いに疑問があると考えているわけであります。

仮に、以上のような問題をはらむ本省令が施行される場合には、経済産業省、農林水産省及び消費者庁において、まず、施行前から、あらゆる消費者に対して商品先物取引のリスクを最大限周知することはもちろん、特に、条件を満たさない消費者が条件に合致しない事実をあらかじめ自覚できるようにするとともに、取引の損失が事業者の計算となるべき省令違反の事業者の行為を具体的に周知し、繰り返し広く広報するなどして、想定される消費者被害の発生を防止するために最大限の取組を行うべきであると思われます。また、当初の接触時から取引開始に至るまでのあるべき事業者の説明対応内容を限定的に明示することで、事業者が脱法的対応をする可能性を可及的に排除すべきであると思われます。さらに、勧誘に関する苦情相談が増加に転じる兆しが少しでも見えたときには、直ちに省令を見直すべきであると考えられます。

少し長くなりましたが以前に本会議の最後にまとめてさせていただいたことを文章化することで、委員長発言として公表することにいたしました。

私のほうで用意していた御報告内容は以上でございます。

質疑応答

(事務局) それでは、質疑応答に移らせていただきます。マイクに向かって御質問いただければと思います。

(問) 先ほど基本計画のお話の中で、新たな食品表示制度についての言及があったのですが、現時点で科学的な根拠があるものがきちんと流通することが担保されているというふうに委員長は見ておられるのかというのが1点。あと、監視体制自体も実効性のあるものが構築されるのかというように見ているのか。この2点をお伺いしたいと思います。

(答) 消費者庁としては、監視体制をできるだけ準備したいと述べておられまして、それはそれで頑張ってほしいと思います。

科学的根拠がきちんと担保されているかどうかというのは、現時点では形式的な要件で、どのような種類のエビデンスが出てくるのかということにもかかっております。ただ、それでも間違ったものが出てくる可能性はありますし、エビデンスそのものが怪しいという問題は避けられないだろうと思うのです。

ただ、それについては、実際には届出といいますか、申請を受けてから60日の間、インターネットで公表することが手続上考えられておりますので、これは消費者だけではなく、競業他社からも見える状態になります。今、特保が、いろいろな資料をもとに検討されているわけですが、それは全く外からは見えないわけですね。ですから、特保の場合より透明度は高まるということになります。

場合によって、そこで問題が発見されれば、市場から排除される可能性はありますし、事後的な規制として景表法などが用意されていますので、そういうものでもって事後規制をしっかりとやってもらうということになります。担保されているかといえば、自主的な機関でやるわけですから、確実なことは申し上げられませんけれども、何か問題が含まれている場合は、それに対応するだけの一応の枠組みはできているのではないかと理解しております。

(事務局) どうぞ。

(問) もう一点、全く違う話で、特保についてなのですが、ちょっと古い話で恐縮なのですけれども、ノンアルコールの特保について、かつて消費者委員会から不適当という答申をされたと思うのですが、改めてノンアルコールの特保について、消費者委員会としてのお考えをお聞かせいただけますか。

(答) それについては、新開発食品調査部会とか食品表示部会での結論をもとに答申を出させていただきました。それによれば、ノンアルコールビールというものが世の中に出ていったときに、それを入り口にして未成年者がアルコールに接近するような機会が増えてくるのではないかということでして、それが国民の健康の維持増進という特保制度や健増法の精神に本当に合致するものかどうか。それが安全性や効果という観点から考えたときに、広い意味で将来の国民にとって、そのような安全性や効果があるかというふうに言われたときには、むしろ、これを特保として出すことが法の趣旨や認可要件に反するのではないかというのが専門部会の意見でした。私もそのようなご意見を尊重すべきだと思いましたので、その形で答申を出させていただきました。

(問) ありがとうございます。

(事務局) ほかはよろしいでしょうか。どうぞ。

(問) 2点質問がございまして、まず1点目がKPIの設定についてで、施策のKPIの基準としては、消費者庁さんとしては消費者関連法令の執行など、行政処分の実施状況ということで評価項目を設けられていると思うのですが、実際、こちらは素案などを拝見いたしますと、景品表示法での行政処分の執行状況などということで目標設定がされていまして、こういったものの場合、例えば事業者さんの、ある程度、取り締まりについて、場合によっては何か枠みたいなものを設けられて、一定の処分状況に達するまで処分してしまうといいますか、そういった執行になってしまう可能性もあると思うのですが、そういった点についてはどうお考えでしょうか。

(答) 市場が健全で、適切な表示がなされた結果、執行がないほうがいいわけですから、何が何でも何件上げるというやり方で目標にするという、これは消費者庁も考えてはいないと思います。

ただ、実際にどれくらい案件が上がってきて、そのうちのこれだけについては摘発をして執行した、処分ができたという、実施率といいますか、問題数との関係での割合のほうが意味があると思います。

(問) ありがとうございます。

次に「食品表示による適正な情報提供及び関係法令の厳正な運用」という点で、消費者庁に対して厳格な行政処分や罰則が科されるような執行体制を構築するということで意見を出されていますが、こちらの執行体制としては今、消費者委員会としてはどういったものを想定されていらっしゃるのでしょうか。

(答) それは消費者庁に聞いてもらったほうがいいと思うのですけれども、実際に今、規制のための法律はあるわけで、それで処分ができるようになっているのですが、問題が出てきたときにそれにきちんと対応できないような事態にならないように、人員増や予算増をお願いしました。前に本会議に川口次長がいらして、頑張って人員を増加して、執行体制を強化したいということを約束いただいたこともあって、「答申」にこぎつけたという経緯もございます。その意味では消費者庁の人員とか予算に関しての強化をお願いしたいということになります。

それから、消費者庁だけでは無理な部分がありますので、実際には地方自治体であったり、あるいは場合によっては消費者団体、そういう人たちの目というものをうまく活用するといいますか、利用させてもらって、執行を実のあるものに近づけてもらいたいと考えております。

具体的には書いておりませんが、そういう議論は前にも地方消費者行政の強化とかいろいろなところでやりましたので、それを見ていただければと思います。

(問) それも含めてということですね。

(答) はい。

(問) わかりました。ありがとうございます。

(事務局) どうぞ。

(問) 商品先物の件ですけれども、今回、河上委員長発言という形でペーパーにしたというのは、例えばここに書いてありますように、前回は意見書という形であったわけなのですが、これはどういう意味といいますか、意図があってということになるのでしょうか。つまり、意見書という形でもいいのかなと個人的には思ったのです。

(答) 委員会としては、商品先物取引法における不招請勧誘禁止規制を緩和するという案が出たときに、それに対応する形で昨年4月に「委員会意見」を既に表明しております。そこに新しいことを何かつけ加えて意見を出すのであれば委員会意見にしてもよかったのです。けれども、本日述べさせていただいたことは、言葉は多いですが、基本的には昨年の意見の趣旨の範囲内のことを少しわかりやすくお話ししたに過ぎません。そこで、同じことを再度表明するのを「委員会意見」として畳み掛けるよりは、「委員長発言」として苦言を呈するぐらいのほうが品がよいかなということであります。

(事務局) あとはよろしいでしょうか。どうぞ。

(問) 民法改正が法制審議会の民法部会で了承されましたけれども、これは多分、消費者契約法の改正にも大きくかかわってくると思うのですが、今回の動きの端的な受けとめと、今後、消費者契約法の議論にどうかかわってくるのでしょうか。

(答) まだ、これから法案の策定作業が行われるということですけれども、一般法ですから、少なくとも法制審で判断された内容は一応の前提になりますね。ですから、それを前提として消費者契約法を考えないといけないということで言えばかなり影響があります。

さらに、法制審での議論の途中でですけれども、消費者対事業者の間の契約関係も民法で規定しようかという意見が随分あったことは御承知のとおりです。そこでいっぱい議論をしてくれた議論の材料があります。これが結果的には民法の改正案にはならないで落ちたのですが、その議論というものそのものは生きていますので、消費者契約法の中で大いに参考にさせていただくということになろうかと思います。

もう一つ、最後の最後までぶら下がっていた約款の問題について、一応、法制審は通りました。あそこに組み入れの要件と約款の変更についての一定のルールが残っています。これは消費者契約の場合でも、多くは定型取引で約款は使われるということになりますので、場合によりましたら、その約款の有効・無効に関する考え方を、民法の表現ぶりと調整して、消費者契約法の中で考えていくことが必要になるであろうと思います。

ですから、多分近いうちに法務省から御説明をいただいて、どういう形で民法改正がおさまりそうかという、法文のテキストも前提にして消費者契約法の専門調査会で議論させていただくことになろうと思います。

(事務局) ほかの質問はよろしいですか。どうぞ。

(問) すみません。ちょっと答えがいただけないかもしれないのですが、ノンアルコールの特保の件なのですが、消費者庁のほうの意見が全然、どうするのかという対応がまだ出ていないのですけれども、もし消費者庁のほうが特保を認める形になった場合に、消費者委員会としては再度意見をお出しになるようなことがあるのか、ないのかというのはどうなのでしょうか。

(答) 消費者庁がどういう形で出してくるかはわかりません。ただ、消費者委員会は諮問に対する形で真摯に検討した上で答申をしたわけでありますから、その答申に対して消費者庁がそれなりの理由をつけて答申どおりにするか、答申とは違う結論を出すかであろうというわけで、仮に答申とは違う結論が出てきたときに、その理由がちゃんとそれなりに納得できるのかどうか。そのあたりは考えないといけないとは思います。話はそこからでしょうね。

(事務局) 以上でよろしいでしょうか。ありますか。よろしいですか。

(河上委員長) よろしいですか。

(事務局) では、以上で終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。

(河上委員長) どうも、遅くまでありがとうございました。

(以上)