河上消費者委員会委員長 記者会見

2014年7月15日
消費者委員会

日時

2014年7月15日(火)18:02~18:38

場所

消費者庁記者会見室

冒頭発言

(事務局) ただいまから消費者委員会河上委員長の記者会見を開始させていただきます。

(河上委員長) 始めさせていただきます。

まず、私のほうから報告事項が何件かございますので、その報告をさせていただきます。

第1は「『パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱』に関する意見」についてであります。

お手元に資料が配られているかと思います。資料1であります。

本年6月24日、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部において「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」が決定されました。ただ、この大綱は、保護するべきパーソナルデータの範囲やとるべき措置の内容など、必ずしも具体的に示していないという部分が多いものであります。今後、内閣官房において、制度設計の細部等を検討して法案化が進められる予定ということになっておりますので、現時点で消費者委員会として申し上げられることは限られているわけですけれども、言える範囲で消費者利益の擁護の観点から、意見を取りまとめることにしたものです。

意見の内容については、概要版で横書きのものがお手元にあるかと思いますが、そこに整理されているので、そちらをごらんになれば、意見の概要はわかると思います。

大きく4つほど、項目が立てられております。

第1が「第三者提供の目的外利用」の「(1)個人が特定される可能性を低減したデータの取扱い」についてであります。

これは低減の程度が不明で、その「適正な取扱い」という表現にとどまっているわけでして、その内容が一体どういうものになるのかが今後の課題であります。その内容を早急に明確にしていただく必要がありますし、本人同意の取得にかわるだけの十分な透明性の確保、再識別化の禁止などが「適正な取扱い」の重要な内容にならなければならないだろうと委員会としては考えております。また、問題発生があったときに、第三者機関が迅速に対応できるようにしておくことも必要です。

委員会の意見は、左の緑の枠の中にまとめてあるようなところになろうかと思います。

「(2)個人情報の範囲」ですけれども、大綱で書かれているところは、必ずしもこれに限ると限定しているわけではないのですが、ただ、読み方によっては非常に狭いところに限定してしまわれる可能性がある。そこで、保護対象としての「個人情報」を余り狭く捉えないように、十分配慮して検討していただきたいということであります。

前の技術ワーキンググループのほうでは「準個人情報」という概念をつくって、そこで細かく議論をしておりました。「準個人情報」と「個人情報」を厳密に分けることが難しいことは理解できますが、その「準個人情報」のところで問題となっていたかなりの部分が、「個人情報」としてやはりきちんと検討される必要があるだろうと考えております。

「利用目的の変更時の手続」も、よく問題になるところで、その場合の手続の緩和は業界からの要請が強かったと聞いておりますけれども、本人の同意なしに安易にそれができるということにならないように、やはり本人の同意を必要とするという原則は守っていただく必要がある。

その原則のもとで、仮に例外を許容するとした場合、オプトアウト方式による利用目的の変更を、安易に認めることは、適当ではなかろうということで、このあたりに関しても、大綱の考え方を少し厳密にしていただく必要があるのではないかと考えております。

その次の項目が「民間主導による自主規制ルール策定・遵守の枠組みの創設」という部分であります。これは自主規制ルールの策定過程に対して、マルチステークホルダーの参画という言葉が入っているのですけれども、その部分に、消費者が実質的に参画をできるようにするということを明確化して、消費者保護の観点を担保すべきであると考えます。

さらに、同時に自主規制ルールの適用外となってしまうアウトサイダーについては、そこでパーソナルデータが取り扱われる際に、きちんとより厳格な形でガイドラインが用意されて、適用されるということにならないといけないだろうと考えております。

「3 第三者機関の体制整備等による実効性ある制度執行の確保」という部分、これは(1)(2)(3)と小さく項目が挙がっておりますが、この「(1)第三者機関の体制整備」については、第三者機関が実際に、適切に機能・役割を果たして実効的な執行、効率的な運用がなされるような体制を整備することと、消費者保護の観点から関与する有識者が、第三者機関の方針決定過程に委員として参画するということが望まれます。消費者の声をこの第三者機関にもきちんと届ける必要があります。

また、非常に専門的な問題が扱われるために、消費者代表が入っても物が言えないということがないように、ある程度専門家にもそこに入っていただいて、サポートできるという体制をつくっていただければと思います。

「(2)苦情相談の受付体制」について。新たな相談窓口が設置されていない場合には、各地の消費生活センターなどに苦情相談が寄せられることが予想されるわけですが、現在の消費者相談の対象とは随分性格が異なった内容の相談がまいりますし、新しい法律に従った相談を受けることになります。そうなりますと、やはり現在の消費生活相談の相談員の方たちに対して、一定の情報提供や研修などの機会を設けていただいて、それがうまく実施できるように図る必要があるということです。

(3)は、「違反を是正するための勧告・命令の対象の制限」についてであります。

これは大綱の中で書きぶりが余りはっきりしないのですけれども、一定の要件未満の者の違反行為は、故意・重過失以外は、対象外にすることを考えることになっているわけであります。

ただ、こういうことは実際の運用の中で、実際にはやっていけることですので、わざわざこういうことを正面から議論をするというか、準則として立てるということは、かえって脱法の可能性であるとか、法の実効性を低下させる恐れがあるのではないかと考えられますので、これは回避すべきであろうと思われます。

具体的に言うと、何千件以下の情報という話があるわけですけれども、会社を幾つかに細分化してしまえば、容易にこの何千件というところの枠をクリアすることが可能になってしまいます。その意味では、そういう制度のつくり方はやめたほうがいいという趣旨であります。

第4番目は「継続的な検討課題」についてであります。

これには、2つほどあります。1つは「紛争処理体制」についてでして、新しい制度の運営当初から整備をしておくことが不可欠でして、この種の紛争は裁判所を通じて、権利の擁護を実現するということが困難でありますから、何らかの形で新しいADR等の制度を用意するということが必要であろうと考えられます。

ADRというのは裁判外の紛争解決手続でありますけれども、第三者機関自体が行政型のADRの制度を持つことも考えられますし、民間のADRと両方を併用しながら、これを進めていくこともよいのではないかと思います。

一番最後ですけれども「『いわゆる名簿屋』に関連する問題」がございます。

大綱では、犯罪行為や消費者被害の発生拡大防止のためにとり得る措置を継続して検討するという書きぶりになっております。「継続して検討する」というのは、今回はやらないということになりそうであります。けれども、御承知のように今般大量の情報の流出事故が起きまして、こういう実態を踏まえますと、実効性のある措置は新制度の創設と同時にこれを実施する必要がある。それだけ緊急の課題であろうと認識しているところであります。

前回、消費者委員会でヒアリングを行って、ある程度意見をまとめた後に今回の事件が明らかになったということもあって、もちろんその重要性については以前から語られていたわけでありますけれども、当初の意見には十分には盛り込んでおりませんで、緊急に委員間で意見交換をして最後の部分を書き込んだという経緯があります。

今後、内閣官房で法案化が予定されているようでありますけれども、この意見の最後の部分に書いたように、幾つかの留意していただきたい論点がございますので、この辺について、熟慮の上、パーソナルデータが利活用される際にも、消費者の個人情報が保護され、消費者の理解と安全・安心の確保がもたらされるということを期待したいと考えております。

もし必要であれば後で御質問で伺うことにいたしますが、一応大綱に関する意見の紹介は以上であります。

第2番目が、食品表示部会各調査会の審議結果の取りまとめについてでして、昨年6月に食品表示法が成立したことを受けて、12月から食品表示部会の下部に、栄養表示に関する調査会、生鮮食品・業務用食品の表示に関する調査会、加工食品の表示に関する調査会の3つの調査会を設けて、食品表示基準について詳細な検討を行ってきたところであります。

6月25日に開催された、第29回食品表示部会において、調査会から審議状況についての報告が提出されまして、その後、所要の調整を経て取りまとめが行われました。7月7日から8月10日まで消費者庁にて実施しているパブリックコメントが終了した後、消費者庁からまた諮問がされる予定と伺っており、パブコメの結果等を踏まえて、今後さらに、食品表示部会で議論を継続していくことになります。

3つ目。これは「消費者問題シンポジウム in 静岡」の結果についてであります。

資料2に情報が入っております。去る7月12日土曜日に静岡市内のALWFロッキーセンター、昔の勤労会館ですけれども、そこで消費者教育をテーマにシンポジウムを開催いたしました。参加者は、関係者を含めて120名ほどでして、大変熱心な議論をしていただけました。

消費者教育は、非常に息の長い活動でありまして、そう簡単に、一朝一夕にできるようなものではないと私なども思います。むしろ消費者教育に関心のある方が集まって、どういうことを、どういう対象に対してどの段階で教えていくかということを、みんなで協議をする。その協議のためのフォーラムを整備していくということが、行政としても非常に大事な役割であろうと思いまして、この点について、行政がイニシアチブをとっていくことが大事であるし、一定程度の経済的な支援なども必要になるだろうとお話させていただきました。

消費者庁としては、余り積極的に関与していくことには消極的意見もありますけれども、中身を押しつけるのではなくて、むしろフォーラムを用意するということについては、行政の仕事として頑張ってもらいたいと思いました。今回のシンポジウムに来られた方は、恐らく今後消費者教育の担い手として、この教育の輪を広げる担い手となっていただけるのではないかと期待しております。

シンポジウムの前日、静岡県庁と静岡市役所を訪問いたしまして、静岡県の高副知事、静岡市役所の秋山市民生活部長と懇談しました。また、静岡県の中部県民生活センターを訪問してまいりました。静岡県というのは横に長い県で、地域、地域で随分違うみたいなのです。ですから、地域の特性に配慮しつつ、丁寧に考えていかないといけない難しい問題があるようです。地域が分断されているようなところでは、消費者教育をやっていくといっても、一律の枠組みだけではうまくいかないだろうということを痛感いたしました。

次回は、11月に長野で消費者被害の回復(仮題)をテーマに開催する予定でありまして、詳細が決まりましたら、改めて御案内をさせていただこうと考えております。私からは、以上であります。

質疑応答

(事務局) それでは、質疑応答に移ります。

(問) 先ほどおっしゃったベネッセの関係ですけれども、率直に今回の大規模な情報流出について、どういった感想をお持ちでいらっしゃいましたでしょうか。

(答) 恐らく、国民全体が驚かれたと思います。

ちょうど我々は、ビッグデータの利活用ということについての意見を出そうとしていた矢先でもありましたけれども、ビッグデータを利活用する以前の問題として、個人の生情報をどういうふうにきちんと手順をとって収集するのか、そして、収集された個人情報をどういうふうに厳格に管理していくのか、共同利用の問題も含めて、どこまでその利用・管理がきちんとできるのかということがきっちりできた上で、さらにその情報を加工して、全体として利活用ができるようにするにはどうあるべきかと考えていくべきです。その意味では本当にインフラの部分でなかなか脆弱な部分があるということを、痛感させられた事件であったと思います。

(問) 低減データの件なのですけれども、ちょっとこれは実態がわからない、いわゆるグレーゾーンと言っているデータは本当に個人情報にならないのか、というあたりではある程度本人確認ができないものであっても、やはり個人情報の中に入るという専門家もいらっしゃって、その辺がちょっと素人にはわかりにくいのです。

検討会の中で、低減データとして出したのは例えば、日付とか何かはいいけれども、名前のところと住所を消すとか、住所の細部を消すとか、そういう加工をすればわからないだろうということのようなのですが、それは誰がどこで、どのような低減データにするのかということがほとんど素人にはわからないのです。

それと本当に低減されたのかというのを、誰が確認するのかというのもわからないし、本当にその低減データということがその後、例えば移動していったときにどうなっていくのかというのは本人にはわからない。

今この時代に、私は大綱を見た後で、個人情報保護法の法律を見合わせたときに、同じものをどうやって、これは変えるのだろうという非常に不思議な気持ちになったのですけれども、個人情報保護というのは、やはり人権に基づいて保護をしていくというのと、大綱というのはどれだけ企業が利用できるかという目線で書かれているものですから、非常に離れた感じがする。

やはり個人情報というのは基礎的なものなので、今のこの時代ならもっと守られなければならないものではないかというものが全然消えないのですけれども、例えば低減することで本当に個人の情報というのが守られていくのかというあたりは、委員の皆様はどんなふうに考えていらっしゃるのですか。

(答) まず、個人情報の問題と、個人情報の個人識別可能性を低減した情報というのはちょっと概念が違うので、そこはまず区別していただく必要があります。ただ、いずれにしても、個人の識別の可能性を低減したということによって、例えばどの程度まで再生の可能性が減るのか等は結構難しい問題で、技術ワーキングチームの報告書の中でも、そこには限界があるのだということを明確に書いておられます。

余り低減してしまうと、今度は個人情報としての利活用のための意味がなくなるということもございますし、クロスでいろいろな情報を集めていってしまうと、低減していた情報でも個人の識別がある程度可能になってくるということもあって、技術的には限界があるということが言われています。その意味では非常にセンシティブな情報とか、一定の性格・個人情報に関して、やはり、そもそも当初の目的外に動かすことは禁止するようなことも考えないといけないのかもしれません。

大綱では、今後どういうふうに個人情報を定義していくのかということ自体が具体的に書かれていないので、立法に向けて具体化していったところで、やはり言うべきことがあるとすれば、消費者委員会としても考えないといけないということで、おっしゃるような形での問題意識は委員会の中でも共有しております。

(問) まず、今回の意見の中でいろいろ、幾つか論点がありますけれども、この中で最も重視しているテーマ、注目しているテーマというとどれになりますか。

(答) もちろん、大綱自身の目玉になっているのが、恐らく第三者提供、目的外利用について、現在の本人同意の要件を緩和していこうというところかと思われます。

第三者提供と目的外利用に関しては、恐らく本人の同意に代わるだけの厳格な透明性を持っていて、場合によってはトレーサビリティーがあるとか、あるいは本人がその情報についてコントロール権を及ぼしたいと思ったときに、きちんと及ぼせるような体制がとれているかどうか、特に第三者機関が十分機能するような形で、そこにかんでいるかどうかというあたりがかなり大事なことで、その意味ではこの意見の2ページ目のところの、第2段落の「しかし、本人の同意を得ずに提供等されるデータについて」というところで、書いているところが重要でありまして、「本人同意の取得に代わるだけの十分な透明性を確保し、社会において適正性を監視できるようにすることが、再識別化の禁止等とともに、データの『適正な取扱い』の重要な内容でなければならない」という書き方になっております。

本人の同意にも限界がありますので、その意味ではセーフティネットを張っておく必要もあって、これくらいのことは、まずは前提となるでしょうということで歯止めをかけようとしているところです。

もう一つの目的外利用に関しても、本来は目的外利用というのは例外中の例外です。最初の段階で一定の目的のために、これを使いますということで集めた情報ですから、それを目的外に使うときに、そんなに簡単に認めるというわけにはいかない。

ですから、ある程度予想できる範囲の目的外利用であることが必要ですし、オプトアウトをするのであれば、例外的にやるのであれば、そのオプトアウトの権利を行使できるようなチャンスをちゃんと与えると理解をして、この場合にはオプトアウトになるのですということを知って、それでも結構ですという人が、その利用に対して同意を与えていると見られるわけです。したがって、そこの手順もしっかりわかりやすくやってほしいということを書いてあります。

ですから、大綱の核になる部分というか、眼目になる部分との対応で言えば、やはりこの部分が意見の中心部分にはなります。

ただ、他方で御承知のような事件が起きたということがございまして、その意味では一番最後の「いわゆる名簿屋」の部分にも注目していただければと思います。急いで委員の間で議論したところではあるわけですけれども、委員の間では活発な意見のやりとりがございまして、もっと踏み込んで書いたほうがいいのではないかとか、いろいろな意見がございました。ただ、現時点では余り十分な議論をしておりませんので、その意味では論点の頭出しをして、今後この点には注意して、立法に対して議論を進めてほしいということを述べるにとどめてあります。

(問) その名簿屋のことなのですけれども、その規制の対象となる名簿屋の範囲をどのように限定するのかとか、難しい論点があると思います。

あとは、そもそもその一括して消去させるというのが、現行の制度からすると大転換になるのかなという気もするのですが、そこら辺をいかに実効性のある規制ができるのかという部分、どのようにお考えでしょうか。

(答) いずれも難しい問題であると思います。

名簿屋と言ったって、看板を掲げて動いているわけではないので、事実上、名簿を大量に流通させている人間がいた場合に、名簿屋かどうかということにこだわって考えていくのは余り得策ではないような気はします。その具体的なところは、もう少し考えてみないといけないように思います。

もう一つは、その消去の範囲です。情報というのはどんどん、流れていくわけですよね。そうすると、2次、3次、4次とこういうふうに名簿が流れていったときに、ちゃんとそれをトレースできるかどうかということが非常に難しい。となると、個人としてそれを取り消せる、削除させられるかどうかも、それを一概に広げることが難しいのと同じくらい、どの範囲でその取り消しの削除の効果を及ぼすことができるかというあたりについても、かなりしっかり考えていかないといけないと思います。

後半の問題だけに関して言えば、恐らく、トレーサビリティーがはっきりしているということが大前提になります。今回も透明化ということが議論の対象になっていますが、個人情報がどういう形で加工されて、どういうふうに移動したかということについて、ある程度トレースできるような体制が考えられていくことは、対処の前提にはなると思います。

(問) 最後にもう一点で、ここの民間主導の自主規制ルールという話は、その議論の中では事業者側のほうから出てきたという、先週の委員会でIT戦略本部のほうから説明があったと思うのですけれども、その民間主導の自主規制ルールという枠組み自体は、委員会としては認めるということでいいのですか。

(答) 基本的に、民間でどういう形でこれを処理していくのがいいかということを、専門的知見や消費者の意見も含めて考えていくのはいいことだと思います。

お上がいろいろ規制をかけてやっても、そこはどんどん抜け道が考案されて逃げていくということがございますから、むしろ一番効果的な規制のあり方というものを、民間の知恵を出し合っていくということは良いことだろうと思います。ただ、民間に任せてしまうということになるとやはり問題ですので、第三者機関がその民間と協力してどういう形でやっていくのが適正かということを、言ってみれば監視するといいますか、そこは公私協調でやっていくということになるのではないかと思います。

(事務局) では、どうぞ。

(問) 「いわゆる名簿屋」の部分もそうですし、このパーソナルデータの利活用に関する制度改正に伴う法改正の作業もこれからになるわけで、決まっていない部分もたくさんあると思うのですが、今後もこのような意見とか、場合によっては建議等々の発出も考えられていらっしゃいますでしょうか。

(答) この意見の一番最初の第1ページの下のところに書いております。当委員会としても法案の具体化を注視して、引き続き必要な意見を述べる所存だと書いてあるとおりでありまして、今の段階で大綱が示しているものに対して、その限りで現時点の意見を述べたという性格のものだと理解していただければと思います。

(事務局) ほかに、よろしいでしょうか。では、どうぞ。

(問) 名簿屋さんのことなのですけれども、90年代のペーパーの名簿のときには、名簿屋さんというのが町にお店を出して、いろいろなものを集めたり、買ったり、捕まったりとかということが結構あったのですが、例えば、このベネッセの場合の名簿を販売した業者というのは、はっきりしたそういう看板を出しているとかということではないのかということが1つ。

あと、そういう名簿の売買とか、そういうものに関する苦情というのは、消費者庁のほうには聞こえてきているのかどうかです。

(答) 委員会としては、まず事実確認が十分できていない段階なので、今回のベネッセの事件に関してコメントすることは差し控えさせてください。

消費者庁のほうにどういう苦情がいっているかというのも、ちょっとわからないのですが、ただ、一般論として考えたときに、紙ベースでなく、電子情報となると、必ずしも組織的な名簿屋でなくてもこういう問題は起きるということは、むしろ明らかになっているのではないかという気はいたします。

(事務局) ほか、よろしいでしょうか。では、どうぞ。

(問) 関連で1点だけで、その名簿屋でなくてもというお話でしたけれども、この規制については名簿屋に限定したものと理解しているのですが、そうではなくて、もっと規制の範囲を広げるという話になると、不必要な規制強化になってしまうのではないかという気がするのですけれども、そこら辺はどのようにお考えですか。

(答) まさに、そこが悩ましいところで、ただ、ここから先は個人的な意見ですけれども、個人の情報管理権から出発して考えていくと、他人の情報を勝手に流すことというのはそれなりの制約を受けるべきものと思います。自分の情報というのは、自分が本来は管理する権利があるわけで、自分が同意していないところでそれが勝手に使われるというのは、原則として好ましいことではないように思います。これは介入以前の原則的ルールの問題です。

現在の法体系というのは、どちらかというと物中心でいろいろなものを考えて、自己所有物というのは「物」でしかないのですけれども、しかし、情報も本来は自分が管理すべき財産の一つなので、その部分について本人の処分意思がないのに、勝手に流通するということについてはやはり古物商の場合と同様一定の制約を考えても決しておかしくはないのではないかと個人的には思います。

(事務局) ほかは、よろしいですか。

それでは、よろしければ、これで終わりにしたいと思います。

(河上委員長) どうも御苦労さまでした。

(以上)