河上消費者委員会委員長 記者会見

2014年6月10日
消費者委員会

日時

2014年6月10日(火)14:35~14:49

場所

消費者庁記者会見室

冒頭発言

(事務局) それでは、ただいまから河上委員長の記者会見を始めます。
 委員長、お願いします。

(河上委員長) よろしくお願いいたします。
 報告事項が1件でございます。
 不当景品類及び不当表示防止法上の不当表示規制の実効性を確保するための課徴金制度の導入等の違反行為に対する措置のあり方にかかる答申について、です。
 先ほど、会議をごらんになっていた方はもう御承知のとおりでございますけれども、昨年秋に起こりましたホテルやレストラン等における、食品表示等の不正事案の発覚を受けまして、昨年12月6日に、内閣総理大臣から本件にかかる諮問がなされました。それを受けて、消費者委員会のもとに「景品表示法における不当表示に係る課徴金制度等に関する専門調査会」を設置し、原則本会議と合同会議という形で開催してまいりました。
 本日開催いたしました「第162回本会議・第13回景品表示法における不当表示に係る課徴金制度等に関する専門調査会 合同会議」で答申案をまとめ、その後、第163回本会議でこの答申を決定いたしました。答申の内容についてはお手元の資料にあるとおりでございます。概要版もつけさせていただいておりますので、そちらも御参照いただければと思います。
 主に中間整理以降、議論してきた点について簡単に御紹介させていただきます。

まず「課徴金の賦課要件」の対象事案のうち、対象行為について不実証広告をどうするかという問題がありました。
 「不実証広告規制に係る表示」は、事業者から一定期間内に合理的根拠資料の提出がなければ、賦課金を賦課することとした上で、被処分者がその後の訴訟で合理的根拠資料を提出して、不当表示ではないということを立証することで賦課処分について争うことができる、とする手続規定を設けるという形での結論に至りました。

第2番目に「主観的要素」に関してでありますが、これは積極的要件とはせず、不当表示がなされた場合には原則として課徴金を賦課することとし、違反行為者から不当表示を意図的に行ったものではなく、かつ、一定の注意義務を尽くしたということについて、合理的な反証がなされた場合を、例外的に対象外とすれば足りるという結論に至りました。

第3点目「被害回復の在り方」については、消費者の被害回復を促進する仕組みを導入すべきであって、違反行為者がとった消費者への返金等の自主的な対応を勘案して、課徴金から一定額を控除する制度を採用すべきであるといたしました。
 控除を認めるべき「自主的対応」というのは、これは対象商品・役務の購入等をした消費者への返金を原則とすべきものであります。また、実際上、消費者への返金が困難である場合も少なくないと考えられることから、寄附による控除の仕組みも認めるべきであるとしておりますが、これはあくまで消費者への返金を補完するものと位置づけ、その寄附先であるとか、寄附金の使途については控除制度が被害回復促進のための仕組みであること等を踏まえて限定的に定められるべきであるといたしました。
 このような内容で、本日答申を取りまとめることができたということであります。
 この結果に至るまでには、短期間にわたって13回に及ぶ審議に熱心に参加していただいた委員の方々、オブザーバーの皆様、とりわけ、毎回議事進行をしてくださった小早川座長に心からお礼を申し上げたいと思います。

また、審議に協力してくださった消費者庁やヒアリングに御出席いただいた各行政機関、経済団体、事業者団体にも厚くお礼を申し上げたいと思います。
 今後、消費者庁において、具体的な制度設計が行われていくことになろうかと思いますが、本答申を踏まえまして、消費者法としての景品表示法の目的に沿った実効的な制度となるように期待したいと思います。
 なお、本日16時50分に本答申を森大臣に手交することとしております。
 私からの御報告は以上でございます。

質疑応答

(事務局) それでは、御質問をお願いいたします。どうぞ。

(問) 課徴金の算定の部分なのですけれども、実際この何%というのは当然答申の中には入っていませんが、検討会の中でも委員長のほうから個人的な意見として、30%、50%でいいと思っているという発言がございましたけれども、実際は何%くらいが適当なのか、そこら辺の委員長のお考えをお聞かせください。

(答) 先ほど、申し上げた以上のことはないのですけれども、ただ、普通に著しく有利であるということとか、著しく優良であるということを前提として物を売って、そのことによって利益を上げたような場合、私は民法の専門ではありますけれども、民法でそのような著しさを議論するときにはやはり50%とか、100%以上のものを著しいと言うことが多いので、これまで議論の俎上に上った3%という額は、余りに小さいのではないかという気がいたしました。取消の原状回復なら100%の数値からスタートいたします。それで先ほど、3割、5割という数字が出ても、おかしくはないという言い方をさせていただいたものでございます。
 ただ、これは途中で委員のほうからも意見が出ましたけれども、やはり経営の実態をきちんと見てみて、実際にどういう形で利益率が考えられるのが通常か、ということをこれまでの違反事例などを見ながらきちんと検証した上で、数値を出していただくということが必要だろうと思います。

(事務局) ほかに、御質問はありますか。はい。

(問) 今のに関連してですが、ということであれば、何らかの今の算定率の話なのですが、委員会としての意見、参考意見としてでもいいのですけれども、出しておくべきではなかったのかなと思うのですが、その辺をもう少し。

(答) そのためには、あらかじめかなり実証的な調査が必要になることは確かでありまして、委員会としてやるというよりも実際に立法に携わる立案の担当の方々に、その点についてはきちんと調査をして、吟味していただくほうが効率的だろうと思いましたので、委員会としては特段固定的な数字を出すということは控えさせていただきました。

(問) 本日で、消費者委員会としての議論は一旦終結という形になったと思うのですけれども、今後消費者庁が制度設計をして、まとまった段階でまた報告を受ける場面というのはあり得るのでしょうか

(答) それは、むしろそうしたいと考えておりまして、消費者庁の検討状況については適宜把握してフォローすることとし、必要に応じてまた意見を申し上げたいと考えているところであります。

(問) そもそも、今回の制度導入の目的ですけれども、第1に不当表示の事前抑止というのを挙げられています。
 直接のきっかけは、昨年秋のホテルなどのいわゆる偽装表示だと思いますが、それ以前にもいわゆる不当表示の被害というのは、かなりふえているのがそもそもあってという流れだと思うのですけれども、今回の課徴金制度の導入でその不当表示の抑制という目的は、ある程度達成されるとお思いでしょうか。

(答) もちろん、それは実際に運用していかないとわかりませんけれども、少なくともこれまでと比べると、実効性はかなり高くなるのではないかと期待しております。
 これからの立法と運用に係ってくるところはございますけれども、できればそのような形で、不当な表示が事前に抑止されるインセンティブが与えられればとは考えています。

(事務局) ほかは、御質問ありませんか。

(問) 済みません、もう一つです。
 先ほど、議論もあった都道府県との関係なのですけれども、都道府県に措置命令ができたと、納付命令も打てるかどうかということについてちょっと曖昧で、そもそも議論ではなかったのでしょうが、もう法律ができるわけでその辺について、もう少し踏み込んでください。

(答) まず、先ほど座長からもこの部分については、議論の対象にしていなかったという御発言がありましたように、正面からは議論していないわけです。
 ここから先、立法政策的にどうするかというのは一つの問題ですけれども、仮に都道府県にも課徴金の制度を使う権限があるとしたとしても、表示の問題というのは恐らく、1都道府県にとどまるということはむしろないのではないかと思います。
 そうしますと、広域でそういう問題が起きたときにあちらとこちらで課徴金の中身が違うとか、いろいろな問題が起きてまいりますから、やはり消費者庁がそこのところはきちんと調整をしないといけないということになりますから、個人的にはやはり消費者庁にお任せしたほうがいいのかなという気がいたします。
 その上で、実態に関しての調査とか、資料の提供等については都道府県が協力をするという体制のほうが現実的ではないかとは思います。ただ、その辺はこれからの政策的な判断もございますから、立法の担当のほうで十分検討していただきたいと思っております。

(事務局) はい。

(問) 事業者からのヒアリングの中で、事業者側からの委員の参加がないということで意見があったかと思うのですけれども、今回の取りまとめを終えまして答申をすることになったと思うのですが、事業者の参加がなかったことや、ヒアリングでの参加にとどまったことについて、何か総括的な御意見、お考えを教えていただければと思います。

(答) 事業者の方の意見というのは、ヒアリングを複数回やることによってある程度伺ってまいりましたし、委員の意見の中にも聞いていておわかりのとおり、事業者の立場で考えて、いろいろな意見を言ってくれている委員もいましたので、今回事業者側を代表する委員がいなかったということによって、審議が事業者に不利な形に誘導されたということはないのではないかと、個人的には思います。

(事務局) ほかにありますか、よろしいですか。
では、これで記者会見を終わります。

(河上委員長) どうもありがとうございました。

(以上)