河上消費者委員会委員長 記者会見

2014年4月22日
消費者委員会

日時

2014年4月22日(火)18:32~18:50

場所

消費者庁記者会見室

冒頭発言

(事務局) それでは、予定の時間を過ぎましたので、消費者委員会委員長の記者会見を開始します。委員長、お願いいたします。

(河上委員長) それでは、始めさせていただきます。
 先ほど委員会がありましたので、ごらんになっていた方はおわかりのとおりでございますけれども、適格機関投資家等特例業務についての提言を取りまとめました。
 提言のポイントですけれども、適格機関投資家等特例業務、いわゆる「プロ向けファンド」と言われるものですが、このプロ向けファンドの業務を悪用した詐欺的な投資勧誘等と、これによる深刻な被害が後を絶たないという状況にございます。
 国民生活センターは、平成25年12月に金融庁に対する注意喚起と、証券取引等監視委員会への要望を行っておりまして、当委員会としても国民生活センターと連携しながら、この調査検討を行ってきたところであります。
 特例業務の悪用による被害の多発に対して、金融庁、証券取引等監視委員会も、ある程度まで対応を強化してくれたところではあるわけですけれども、それにもかかわらず、その後も被害が解消されたと言えるような状況にはなっておりません。
 こうした事態を受けまして、関係機関で投資家保護をめぐる制度のあり方というものが真摯に検討されているという状況にございます。
 そこでの検討結果が大いに期待されるところでありますけれども、4月18日には証券取引等監視委員会から建議が表明されました。ただ、建議を読まれた方はおわかりだと思いますが、余りにも漠とした形の表現でしかなくて、具体的な方策を含む本委員会からの提言が、この監視委員会からの建議と一体となることによって、制度のあり方の検討に資するのではないかと期待して本日、提言をまとめたということであります。
 そもそも適格機関投資家特例業務というのは、金融審議会において専ら特定投資家、つまりプロのみを対象とするファンドに関する議論を受けて創設されたものでありまして、金商法における特例業務というのは一般投資家に対する業務も含んでいる。そこで本提言においては、金融庁に対してまず第一に適格機関投資家等特例業務における投資者の範囲について、少なくとも億単位の余剰資金をもって、投資性の金融取引を年単位で継続して行っている投資家という要件を満たすことを要件とする見直しをしてほしいと求めています。
 第2番目に、悪質業者の排除のための現在の取り組みをそのまま進めて下さいという以上に、さらに徹底した取り組みをするようにということを求めたものであります。
 当委員会としては健全な金融市場の発展を期待してはおりますけれども、それと同時に知識とか経験あるいは耐性がない個人消費者の生活資金あるいは高齢者の老後資金が安易にこのような投資資金につぎ込まれて、その生活が破壊されることがないようにということを願って、このような形でのセーフティネットをお願いしたということでございます。
 きょうの提言についての説明は以上であります。

質疑応答

(事務局) それでは、質疑応答に移りたいと思います。マイクを使って所属、お名前をおっしゃっていただいた後に、御質問をお願いいたします。御質問はございませんでしょうか。
(問) 提言の内容で確認なのですけれども、個人の部分で言うと億単位以上で年単位で継続して行っている投資家ということなので、1億円以上の余剰資産を持っていて、1年以上の投資経験がある人に制限するということになりますか。

(答) それは具体的な数値を挙げなかったので、むしろ金融庁において1億円以上で、2億円でもいいですけれども、億単位で余剰資金を持っているというところの要件設定はしてほしい。

(問) ということは、つまり少なくとも1億円以上、1年以上の経験という意味なのかなと。

(答) 最低ラインはそういうことでしょうね。もし具体的な数値を出すとすれば、消費者委員会としてそれが適当であるということの説明をする必要があるのですが、それはむしろ金融庁がやるべきものなので、それでお願いしたい。むしろこの文章の前には、もとの3億円というのも参照しながらというふうに書いていますので、今のレベルを下げるのだったら下げて構いませんけれども、それなりの合理的な理由を示しつつ、やってほしい。その場合でも億単位という形での配慮は必要ですよという趣旨です。1億円とかいうふうにはっきり言ったほうがいいですか。

(問) ちょっと書きづらいなと思ったので。

(答) 工夫した表現なので、このとおり書いていただいてよいかと思うのですけれども。

(問) 先ほどの消費者委員会で金融庁の担当者から、向こうもばくっとした説明だったと思うのですけれども、アメリカの例を参考にして100万ドルということと、それが1億円ということなのかなと思うのですが、あと、法人の場合は資本金が5,000万円という数字をメルクマールにしてと言っていましたけれども、向こうが示したそのラインというのは、消費者委員会としてはどういうふうに評価なさるのでしょうか。

(答) 消費者委員会の中でも3億円は少しハードルが高いよねという感覚はあったのです。ですからそこから先、1億ぐらいだとしようがないかなという意見もありました。法人の場合は、実は消費者の問題とは違うかなということもあって、当初余り考えていなかったのですけれども、ただ、個人でも法人成りすることが非常に簡単な時代ですから、それを考えれば小さな額ではまずい。中小企業に関して一定の、5,000万でしたか、そういう数値があるということですので、そのあたりを1つの参考にすることはありでしょうねという程度の理解です。これでよしという話ではありません。

(事務局) ほかはよろしいですか。

(河上委員長) よろしいですか。

(問) ほかのことについてもよろしいでしょうか。

(答) はい。

(問) きょうの商品先物取引の不招請勧誘についての議論なのですが、これについて確認書面のところを向こうが出してきたのですが、まずこれについて、これは大臣が言っていた協議の場ということですか。

(答) 消費者委員会として大臣の意向で協議の場を提供したということではございません。消費者庁がどういう形で協議の場とかパイプをつくろうとされているのかということは、消費者庁に聞いていただいたほうがいいかなと思います。

(問) 消費者委員会独自に話を聞いたという扱いですか。

(答) しかし、消費者庁もぜひ来て話を聞き、自分の意見も言いたいというか、考え方も聞きたいということでしたので、お越しいただいた次第です。ですから、あるいはこれは協議の1つの要素と考えておられるのかもしれません。

(問) それと、きょう提出資料に出てきた理解度確認についても段階的なものを示されているのですが、ここのところは向こうとしては結構大きな根拠理由に持ってきているようなのですが、これについてはどのように見られていて、今後どのようなことをされていくのでしょうか。

(答) 具体的な中身と言っても余りはっきりしていなかったので、見せていただく必要はあります。けれども、途中で石戸谷代理もお話していますが、これまでの確認書に毛が生えたようなものだとすると、それはほとんど意味がないと思います。さらに、誰が確認して理解度があると判断をするのかというと、事業者がやるわけです。ですから悪意を持って接近した事業者であれば、理解度確認をとることはたやすいことだと思います。これがあることで大丈夫なんですということには決してならないのではないか。むしろ客観的な理解度確認が必要だったら、どこかの公的機関で運転免許証みたいに試験をしてもらったほうがいいかもしれないですね。

(問) 先ほどのお話で、プロ向けファンドの話で、個人向けでせめて億以上の資産がある方ということですけれども、金融庁のほうでも金商法の政令改正を考えていまして、そちらはたしか3億以上だったと思うのですが。

(答) 金融庁ですか。それと平仄を合わせているわけではありません。

(問) 3億以上とやってしまうと、より販売が難しくなって、そちらのほうがいいのかなと思うのですけれども、そこはどうなのでしょう。

(答) 実際に商品先物の取引の、経産省なんかが言う健全なプロ向けファンドの市場での取引の単位といいますか、需要のある方々の平均的な年収だとか、使えそうなお金というのは差があるみたいで、1億でも厳しい状況だという説明は受けました。

(答・石戸谷委員長代理) 3億は確認したほうがいいです。

(問) わかりました。

(河上委員長) よろしいですか。
 ほかにはいかがでしょうか。

(問) 商品先物取引のことで、4月8日の意見表明したときに最終的には建議も視野に入れているとおっしゃっていましたが、先ほど経産省の方にお聞きしたところ、きょうはチェックリスト、テスト形式になっているペーパーとかも示すことができず、そういったものを見ていただければお考えや印象がまた変わるかもしれないので、要請があればそういった機会を設けたいとおっしゃっていましたが、今後その建議をするのかどうか、受け手、スケジュール的なものはどのようにお考えですか。

(答) まだパブコメをとっている段階で、それで結果的にはこういう方向でいこうかと思うというようなことでの態度がある程度具体化した段階で連絡をくださいと申し上げております。そのとき必要と我々で判断した場合には、きちんとした形で対応することを考えないといけないと思います。内容によってはです。

(問) 今おっしゃったきちんとした形の中には、建議も含まれるという理解ですか。

(答) 当然です。

(事務局) ほかに何かありますか。

(問) きょうの提言でもそうなのですけれども、前回の招請勧誘の意見についてもそうなのですが、一番最後に政府の規制改革、規制緩和とは矛盾しないということを今回も書かれていらっしゃるのですけれども、前回もそうだったのですが、確認なのですけれども、金融イノベーションの阻害要因とか、そういうものに対して規制をできるだけかけないようにという意見は確かにあって、規制改革とか、それで顧客保護を重視しつつということが常に言われておりますけれども、これは消費者委員会としては今回の提言にいても、その枠、土俵の上では十分整合性が保てるものだと、規制改革会議の提案というふうに思われているということですね。

(答) そうですね。規制改革と言うけれども、改革は単純に規制を外すということを意味していなくて、むしろセーフティネットと制度の整備をいわばセットにして、改革を進めていかなければいけないものであろうと思います。恐らくその上でこそいろんな事業がうまく展開するという話だと思います。適切なルールのあるところに健全な競争が起きるという意味で、私は規制改革会議の発想と矛盾した議論をしているとは思っておりません。
 今度の金融庁にしても、経産省や農水省にしても、規制改革会議からあのような形で宿題を出されたと考えているようで、宿題をこなすために、何とかして不招請勧誘禁止のような制度を緩和する方向を模索できないかという形で出てきているのですけれども、適切な市場を構想することが重要で、別に緩和しなければ宿題が果たせなかったということにはならないと思います。

(事務局) ほかによろしいでしょうか。特になければこれで終わりにしたいと思います。

(河上委員長) よろしいですか。どうもありがとうございました。

(以上)