河上消費者委員会委員長 記者会見

2012年2月28日
消費者委員会

日時

2012年2月28日(火)18:00~18:34

場所

消費者庁6階記者会見室

冒頭発言

(事務局) それでは、時間がまいりましたので、始めさせていただきたいと思います。
 先ほどの消費者委員会で公共料金についての建議をとりまとめましたので、その内容について御紹介したいと思います。実は、もう昨日の段階で記者の方には事前レクを担当委員の方でしておりまして、その席にもかなり多くの方に来ていただきましたので、今日が初めての方もおられますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 資料として用意をいたしましたのが、記者会見と書かれたものの後ろに、先ほど出しました公共料金問題についての建議の概要、建議本体、参考資料の抜粋、消費者庁及び消費者委員会の設置法の抜粋、鉄道運賃・料金に係る関係法令について、消費者基本計画の施策番号108に公共料金のことが施策として取り上げられていますので、それも参考のための資料としてお付けをしています。
 それでは、簡単に委員長の方から、今日の建議の内容について御報告をした後、質問をお受けしたいと思います。

(河上委員長) どうも、こんばんは。
 それでは、先ほど成立しました建議について、簡単に御説明いたします。
 既に、事前に説明がなされたということで、御承知のことも多いかと思います。御承知のように公共料金というのは、我々の日常生活に非常に密着した料金でございますけれども、他方で、競争相手が余りいない、独占的な事業体がこれをやっているということもあって、付ける値段と言いますか料金に関しては、どういうプロセスを経てそれが策定されているのかということが非常にわかりにくい、ある種のブラックボックスの中で決まってきたということであります。
 公共料金の決定過程の透明性を高めるということは、消費者がその料金についてきちんと理解して、消費者の選択権というものを守るという意味では、大変重要なことであると委員会としては認識しておりまして、細川委員を初めとして、公共料金の問題に対して、皆さん非常に強い関心を持って取り組まれたものであります。
 今回の建議は、一面では、電気料金の値上げに関連して社会が随分関心をもって動いているということに触発されている部分もありますが、むしろ、電気料金にとどまらず、もっとほかにもいろいろなところで公共料金の問題があるわけで、それに対して、消費者委員会としては横ぐし的に公共料金の決定過程の透明化と、消費者参加の機会の確保という観点から、何かきちんとした建議をして、今後、いろいろな分野における公共料金について、更に具体に言うべきことがあれば、更に建議を積み重ねていく第一歩として、この建議を行わせていただいたというものであります。
 厳正な評価による価格決定ということを是非やっていただく必要があるということと、消費者が何か意見を言うにしても、その言う前提としてきちんとした資料を、それぞれ出していただく必要があると思います。
 公共料金に関しては、確かに、ものによってですけれども、一定の決定手続というのが法律で定められていたり、審議会や公聴会のような手続きがあって、消費者が意見を言えるという場面がなくはない。更に、それの認可の過程で監督官庁が公共料金に対して、これはどうだということで意見を言ったり、場合によっては改善の、改定の命令を出すこともできる仕組みがあるにもかかわらず、それがほとんど機能してこなかったという現実があります。
 特に、今はどちらかというとデフレで、本来であれば値が下がってもいいような場面が結構あるのですけれども、現実には、値下げに関する手続というのは余り厳格な形では行われていないわけでありますので、ここ10年近く問題にされることが少なかったということですので、この機会に、各種の公共料金に対するチェックを是非やっていきたいということで、このような形での建議をさせていただいたということであります。
 内容については、余りくどくどと申し上げることはないと思いますけれども、建議の2ページ目を見ていただきますと、建議事項のマル1ということで、消費者庁が、言ってみればいろいろな協議を受ける立場にありますので、その段階で各官庁との間で、なぜ、こういう決定に至ったのかということについての情報をきちんとつかんで、フォローアップをしていただくということをお願いしています。
 そして、審議会などがある場合でも、その審議会メンバーはどういう形で選ばれているのか、実際に消費者を代弁するような形で委員が選ばれているかどうかということも含めて、きちんと消費者参画のありようをチェックをしてもらいたいということが書かれています。
 建議事項のマル2は、鉄道運賃等に関して出されたものでございますけれども、これは別に国交省の鉄道運賃だけを狙い撃ちにしてどうこうしようというつもりではなくて、今回の建議を議論するのに最もいわばいい材料が鉄道運賃のところにあったということで、国交省の情報提供のガイドラインでありますとか、あるいは運輸審議会の公共料金に対するかかわり方などを例にして、ここにもこういう反省すべき点があるではないかということで、具体的に書かせていただいているというのが、建議事項のマル2であります。
 建議事項のマル3は、電気料金に関するものでして、最近も有識者会議で、いろいろな議論が行われておりますけれども、早晩、家庭の電気料金に関しても値上げするかもしれないということを東電は予告しているわけです。消費者委員会としては、いくらくらいが適正料金かという具体的な意見を出すわけではなく、そこにおいて、これまでの電気料金決定の仕方あるいは手続、そこでの消費者参加の機会というのがきちんと持たれているかどうかということを慎重に検討しながら判断をしていただきたいということで、場合によっては法令の見直しとか整備などを含めた検討を経産省にお願いしたいということが、建議事項のマル3という形で出てきております。
 総じて、公共事業体には、自らが提示する商品に対する料金の決定に関しては、国民に対して一定の情報提供なり説明義務があるのだということを、この際、肝に銘じていただきたいということが、その眼目であります。
 細かい話に関しては、担当した細川委員、小幡委員、山口委員も同席しておりますので、御質問なども受け付けたいと思います。
 よろしくお願いいたします。

質疑応答


(事務局) 昨日来られた記者の方もおられますので、昨日40分ぐらい質疑をさせていただいたのですが、また追加的な御質問とか、本日初めての方もおられますので、御質問ございましたらどうぞ、お受けしたいと思います。

(問) 消費者庁が立ち上げた公共料金に関する研究会の方と、こちらの建議とはどういうふうな連携になっているのでしょうか。

(答) もう既に説明がされているかもしれませんけれども、実は、消費者庁が立ち上げた研究会というのは、最近後藤副大臣の方から、電気料金を契機にして公共料金についての検討をしろという話が消費者庁にあったということを契機にしてでき上がったものです。
 消費者委員会の方は、実は、それより数か月前から検討を始めておりまして、資料も集めて建議に向けて動いていたわけです。そこで、後藤副大臣の方からは、せっかく消費者委員会も検討をしているようだから消費者庁と消費者委員会が連携して、この検討をやったらどうかという話があったと聞いております。、ただ、個々の料金に関して、今、具体的に検討するというよりも、むしろ我々しては、一般的な横ぐしを刺して、公共料金そのものについての検討の基本的な姿勢というか、スタンスを固める方が先だと考えたものですから、消費者庁での研究会とはやや問題意識も異なりますので、淡々と予定どおり建議を行わせていただいたということになります。
 その代わり、この建議の姿勢というのは、基本的には今回消費者庁が行っている研究会においても、是非、生かしていただきたいと考えておりまして、研究会にも今日横におられる3人の委員の方はオブザーバーという形で参加して、今後、建議の内容がきちんと生かされるように意見を述べていくということにしております。ですから、消費者庁とも連携しながら、公共料金について考えていこうという姿勢でおります。

(事務局) ほかにはいかがでしょうか。
 どうぞ。

(問) 個々の公共料金ではなくて横ぐしにということ、今、あえてとおっしゃったのですけれども、今、非常に関心を持たれているのは電気料金で、電気料金の家庭向けのも見直しというのが念頭に置かれている中で、どちらかというと電気料金の建議事項の方が短い感じなのですけれども、電気料金について強く言ってはいるのですが、そこら辺はどうなのでしょうか。

(答) というか、電気料金に関しては、既にそれに特化した形でその内容の吟味は、別の審議会で行われているところでもあります。ですから、消費者委員会の方で、「とにかく家庭用電気料金は上げるな」とかそういう話をしてもしようがないので、審議会のプロセスがきちんと行われるということを横から見ていて、必要があれば勿論、また意見を申し上げるということもあろうかと思いますけれども、とりあえずはそこでの議論においても、この基本姿勢は是非守ってほしいというメッセージを込めたつもりであります。
 家庭用電気料金に関して、早晩上がるのではないかということが東電から言われていて、経産省からもそれは可能性として示唆されているわけですが、しかし、これは様々なところにも波及する大きな問題ですから、少なくともそれがきちんとした説明が行われて、公正で合理的な積算と政策的配慮の下で、一般消費者の意見も十分に反映した形で決まるのでなければ、安易に認可していただきたくはない、ということになろうかと思います。
 具体的に電気料金に関して、今後どうなるかということを見守って、また必要な対応はしたいと思います。

(事務局) ほかは。
 どうぞ。

(答・山口委員長代理) 電気料金については、先ほど松原大臣とお話ししたときも大変強い関心を示していらっしゃいましたし、総括原価方式が今のままでいいのかということもおっしゃっていました。
 我々としても、今回、消費者庁、消費者委員会ができて、初めて大きな値上げの問題が起こっているわけです。ここで、消費者庁がどう対応するか、あるいは消費者庁の対応に対して消費者委員会としてどういうふうにかかわっていくのかということは、かなえの軽重といいますか、庁と委員会ができて初めての大きな問題ですから、我々自身も問われると思うのです。
 その意味では、最初、私、対岸の火ぐらいで消費者庁に対しては大変だねとか言って冷やかしていたのですが、あんたらも大変なんだよと言われて、それはそうだと思いましたけれども、本当にそういう問題だと思いますので、これからも注視していかなければいけないと思います。

(答) いかがでしょうか。
 昔は物価安定政策会議というのがあって、インフレ下での物価に関してはいろいろな議論をしていたわけですけれども、消費者庁が設置される段階で、この委員会というのは事実上消えてしまったわけです。その物価安定政策会議が果たすべき機能というのを、一体どこがどういう形で責任を持って果たすのかということについても、今後きちんと考えていかないといけない時期に入っているのだろうと思います。

(答・細川委員) ただ、非常に難しいと思うのは、公共料金というのは料金政策というか、物価政策だけではなく、それ自体の、例えば持続可能な社会に対してどうあるべきかとか、あるいは日ごろ我々は当然の品質というものに対しての認識というのはしないですね。例えば今日電車で来たけれども、事故もなく来てありがたかったなと、消費者の権利は守られているななどと思う人はいないわけですよ。安全が当たり前だと思っているし、安全が当たり前であるべきだからそう思うけれども、そこにはコストもかかっているし、いろいろな人の配慮があって安全が確保されているわけですよ。
 消費者の利益というのは、料金というか価格だけでない部分の安全性だとか、社会に対する影響がより少ないものかどうかとか、エネルギーがどうかというような問題がありますね。そうすると、今後、東京電力の電気料金の、例えば10%値上げで出てきたときに、ただ、その幅だけを議論するあるいは原価だけをチェックするのではなくて、いろいろな選択肢の中で選んだ結果こうだったというものが出てきたときに、選択肢を選んだことに対して、はっきり言えば原発を使うか使わないかとか、太陽光をどのぐらい使うかとかという、そういうものも含めて消費者の声を代弁するというのはなかなか難しいし、逆の言い方をすると、人によって意見が違いますね、考え方、生き方ですね。
 そうすると、今後、公共料金政策というよりも公共サービス政策とか、あるいは鉄道で言えば鉄道料金政策ではなくてまさに鉄道政策あるいは交通政策、そちらまで踏み込んでいかないと議論にはならないけれども、そちらまで踏み込んでしまうと、そもそも消費者の権利とか利益は何なのかという問題に突き当たってしまって、今回は料金というところで、料金決定システムというところでの透明性確保と消費者の参画というところでやりましたから、そこは余り議論しないで済んだけれども、今後、東電というものが出てきたときにどうでしょうね。非常にそのスタンスというか、判断基準というものは多種多様ではないかと、今日話すべき話ではないかもしれないけれども、そういうところも考えて多分報道しないと、料金だけの話ではないということになりますね。

(事務局) では、小幡委員。

(答・小幡委員) 今の話で言えば、電力の質ですね。今、日本は電気がちらちらしなくて、非常に良い電気の質なのですけれども、例えば半導体にはそれが必要だとか言われていますが、本当に必要か。企業が自分で何かしら自衛すればそこまで要らないのではないかという議論もあるようです。今の細川委員の話からすると、どこまで求めるか。非常に水準の高いサービスをするためにはよりコストが高くなって、結局、電気料金が高くなるのであれば、電気の質はそこまで要らないというかもしれません。それもやはり消費者の声は入れるべきだとは思うのです。
 消費者の声の入れ方というのが、例えば新しい第三者機関のようなものが必要なのか、あるいは消費者団体からの声という形で個々のところに入っていくというシステムでよいのか、今もそれが不徹底だということを建議にさせていただいたのですが、そこの辺り幅広に議論をしていくということが必要かと思っています。
 横ぐしの話と、今ある規制当局自身の問題というのも勿論あるので、そこも考えていただきたいし、あるいは更に消費者としての視点を、どこが第三者機関として、代弁する機関としてやっていくかというところではないでしょうか。

(事務局) ほかはよろしゅうございますか。
 どうぞ。

(問) 今日、大臣に初めて建議を渡されて、どんな話を一番訴えられて、大臣が何に反応されて、お互い意気投合というか、何に取り組んでいきましょうということでまとまったのか、明かせる範囲で教えてください。

(答) この建議に関しては、既に大臣はかなりしっかりと事前に内容を把握した上でお考えのようで、公共料金の決定過程に関しての消費者の目線というものをうんと大事にしたいとおっしゃいました。それで、公共料金に関しては、大臣も電気料金のことが随分気になっていらして、電気料金というのは本当にほかのものにも全部波及していく可能性のある重要なファクターなので、これについて、今回の建議の内容をきちんと踏まえて、自分としてもしっかり取り組んでいきたいとおっしゃってくれました。
 私の方からは、これは電気だけの問題ではないのですという話をいたしまして、公共料金全般について、ブラックボックスの中にあるようなことではいけない、むしろ、消費者が自ら電気料金の決定に対して一定の参画をして、情報を受けて納得をして、それを払うという仕組みをきちんと確立していただく必要があって、消費者庁が司令塔となって各関係官庁に対しても指導をしていただきたいということで、大臣も頑張るつもりだとおっしゃってくださいました。

(問) ありがとうございます。

(事務局) それでは、1つこちらを付けております。第2回の地方消費者委員会開催を松山で3月24日に予定しております。委員長からも後ほど御案内されますが。

(河上委員長) この黄色い紙ですけれども、前回、仙台で第1回の「地方消費者委員会」をやらせていただいて、そのときは高齢者問題を扱って、特に震災後の高齢者の被害に関しての基調講演をさせていただいた上で、ケーススタディとディスカッションをやったということなのですが、今度は、松山の愛媛大学で大学との協力の下、こういう形でシンポジウムを行いたいと思います。今回はどちらかと申しますと消費者の取引に関する法、契約法の改正に向けた議論が中心になるかと思います。現在の消費者契約法の置かれている問題点と、今後、これも改正に向けてやらないといけないということは前の建議でも第一次の委員会から出ているのですが、そういう改正に向けた問題について、私の方から基調講演をさせていただいて、あとはケーススタディをやっていこうということを考えております。
 中四国といっても、四国四県と岡山、広島辺りを含めたところで、皆さんに参加していただこうと考えているものです。関心がございましたら、是非、取り上げてください。

(事務局) また、それぞれの皆様も是非、地元に御案内をしていただけると大変助かります。

(河上委員長) どうもありがとうございました。

(以上)