河上消費者委員会委員長 記者会見

2011年11月11日
消費者委員会

日時

2011年11月11日(金)18:45~19:12

場所

消費者庁6階記者会見室

冒頭発言

(事務局) それでは、始めさせていただきたいと思います。
 6時半過ぎまで消費者委員会をやっておりましてお疲れさまでした。ちょうど前回の委員長記者会見から1か月経ったというところもございますので、今日のタイミングでお願いをいたしました。
 それでは、先ほど貴金属の訪問買取りについて委員会として提言を出しましたので、今日はこちらを中心にと思っております。
 簡単に説明をいたしまして、御質問などをお受けしたいと思います。

(河上委員長) 最初に、今日まとめました提言について、簡単に御報告いたします。
 これは消費者庁の方で、既に「貴金属等の訪問買取りに係るトラブルに対する法的措置について」ということで、(案)を公表して、最終的には法律改正に向けた取組みをされているということで、これは委員会の中でも随分説明をいただきましたし、それに対する委員からの質疑などもごらんになったとおりでございます。
 大阪弁護士会の方からのヒアリングのときにもありましたけれども、これで果たして十分な対応になっているのだろうかといういろんな方からの疑問があったところは事実であります。ただ、消費者委員会としては、少なくとも消費者庁が今現在やっているこういう形での対応については、全面的に支援したいということでございまして、1日も早く具体的な法的措置の内容を示していただいて、関係各省と協力して、実現を果たしていただきたいというのが第1点目の趣旨でございます。
 しかし、言うまでもないことですけれども、貴金属の買取りということに問題はとどまらないわけでございまして、その意味では、それ以外のさまざまな取引類型というものが出てくる可能性がある。現に外貨の交換など、買取りとは若干違った形のものが出てきているということになります。
 それ以外にも、権利の部分も現在の指定されている権利を超えた新しい権利について、例えば有料老人ホームの入居権のような権利が商品になって、いろいろな被害が出ているということもあります。
 ですから、将来的に考えてみると、もっとさまざまなタイプの商品、取引形態が生み出されて、消費者トラブルが出てくる可能性は容易に推測されるところでございます。
 こういうことを考えますと、今回の対応としては、その点についての法的措置を取ることは急務であるということは明らかですが、将来において、さまざまな商品、役務について多様な取引行為が出てきて、それが不意打ち的で強圧的な勧誘の目的とされた場合にも、隙間事案に陥って被害が多発しないように、迅速に対応できるような体制を整えておくことを要求したいということでございます。
 その意味では、特定商取引法や消費者安全法の見直しなどもしながら、従来の権利概念、あるいは販売や役務の提供といった概念にとらわれないで、迅速に対応できるような法的仕組みを整備していただきたいということでございます。
 これが提言の趣旨ということになります。

質疑応答

(事務局) この点について、何か御質問がございましたら、お受けしたいと思います。

(問) 貴金属の買取りや外国通貨の取引に関しては、消費者庁も既に来年度の通常国会に法律をそれぞれ変えて提案するということを打ち出しているわけですが、その状況の中で、更にこの提言を出すという意味はどういうところにあるのでしょうか。

(答) 現時点で消費者庁の方で考えられているさまざまな検討というのは、我々も存じておりまして、その部分については、むしろ歓迎しております。
 少しでも早くその法律が実現するようにということで、応援したいという気持ちなんですけれども、それ以外の取引類型というのは、今、立法事実がないから、それについては今のところは手を出さないという姿勢ではなくて、むしろ、積極的に可能性のある危険に対して対応できるような方向も模索していただきたいという趣旨です。
 これまで、特定商取引法などの場合でも、指定商品性をとっていた時期には、いたちごっこがよく起きたわけです。問題が起きて、被害が出て、そして政令、指定商品を追加していく。そういうやり方をこれまでとってきたけれども、今、指定商品がずらっと並んだ現在になって、初めてもう指定商品制はやめようと。そして、ネガティブリストに切り替えようとなりました。
 あの轍を踏まないように、むしろ将来的には、かなり包括的な形で将来の危険を見越した体制にしておいて、それを立法的な措置にも反映できるような措置を是非考えていただければありがたいという趣旨を含んでおります。

(答・山口委員長代理) 今の御質問の趣旨は、例えば温泉付きの老人ホームの利用権の販売とか、あるいはイラク・ディナール、スーダン・ポンドなどについて、消費者安全法の改正による行政的手法で対処できるような道を開くという審議もなされているわけですが、あの消安法の改正による措置というのは、あくまでも臨時的な措置ということでの位置付けなんですよ。
 つまり、特定商取引法の隙間がある場合に、それについてほかの措置がない場合には、消安法の改正法によって対処できるようにしましょうかという措置なんです。
 今、消費者委員会の方で考えているのは、そういう隙間措置ではなくて、本質的に、そもそも構想される隙間なんだから、そこは法的な措置で、特商法の改正で対応できるところもあるのではないかと。
 だから、緊急措置でやるのはやるでいいんだけれども、緊急措置でない部分で、特商法の改正で解消することができる部分もあるんだから、それはそれでまた別に考えられたらどうですかというところの趣旨なんです。

(問) では、特商法の改正に貴金属を付け加えるだけにとどまらず、もっとたくさん適用できるような法律体系にせよということを望まれているということですか。

(答) 可能性の1つとしては、そういうこともあるとは思います。
 例えば前回の委員会の中で私からも申し上げたのですけれども、外国の例でしたら、あれは訪問販売ではなくて、訪問取引としてしまって、そしてかなり広く訪問取引一般に対してクーリングオフ権を認めておいて、そして業者からの禁止行為については、細かく業法で決めているというやり方もあるわけです。
 ですから、可能性としては、今回の貴金属の買取りについても、場合によっては、特商法には一般的な表現で条文を立てておいて、政令でもって貴金属の買取りと書いておけば、そのほかは今、書かなくても、同じ目的は達成できるし、法改正をしなくても政令でもって追加指定ができるという方法もないではないというわけです。ですから、その辺は勿論いろいろ考えて、今まで研究会で成果を出されたことでしょうから、これでなくてはだめだというわけではないのですけれども、ただ、将来のリスクを考えたときに、特商法の範囲でもいろいろ考える余地はあるだろうと。
 消安法の規定自身が、必ずしも民事的な効果にまで及ぶかどうか明らかではなくて、行政的な改善命令とか、そういうものにとどまる可能性があるのですが、個人的な救済のときには、場合によっては民事効果も必要になりますので、その辺も含めると、やはり特商法の側でも見直すべき点はあるだろうということですし、消安法の今、検討中のものの検討の仕方についても、いろいろと更に進化させていただければありがたいと思います。
 何か特定のことを目指したという趣旨ではございません。

(問) では、特商法をもっと使い勝手よくして、どんどんほかのものにも適用できるようにしてほしいというところが、恐らく委員会としては、今の消費者庁の検討では足りない部分だなと思われているところなんですか。

(答) 足りないかどうかはともかくとして、少なくとも今回の提案の段階では、まだ見えてこなかったものですからね。

(問) わかりました。ありがとうございます。

(事務局) ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。

(問) 恐らく特商法の法改正というのが、国会のスケジュールとかもあったり、検討をある程度の時間かけてということで、来年の通常国会には、恐らく貴金属の訪問買取りしか間に合わないと思うんですけれども、そこら辺は、今日提言されている部分は、その次の法改正とか、そういうことなんですか。

(答) 恐らく、戦略的に考えれば、立法事実がはっきりしていて、そしてワンポイントできちんとした法律を用意する方がいいのだろうと思います。
 消費者庁さんは、そこを見すえて、あえてワンポイントの法律を用意されたということでしょうから、私はそれで推進されれば、一歩前進ですから良いと思います。それについて、今、全面的な見直しのためにもうちょっと考え直せということを言うつもりは全くございません。
 ただ、将来的に見直しをしていかないといけないことになりますので、可及的速やかに、それが終わったら、次の段階では、是非広い射程を持った議論をしていただければありがたいと思います。

(問) 続けてなんですけれども、先ほど例えば法律がないから何もできないとかいうことではなくて、可能性がある規制というか、特商法がだめなら何かないかとか、特商法の中でも何か解釈なりとかでできないかみたいな、そういう方向性も模索してほしいという趣旨もあるということですか。

(答) そこまでは含んでおりません。
 それは、むしろ今現在、皆さん現場で頑張っておられて、明確な法的根拠がないものですから、苦労されているというのは、今日もいろいろと話の中で出てきました。そのような解釈上の努力はしていただくことをお願いしたいと思いますが、今回の提言には、それは含まれておりません。

(問) ありがとうございます。

(事務局) ほかにはいかがでしょうか。

(問) これは大臣に直接渡されるんですか。担当省庁は、長官ですか。

(答・事務局) 長官あてです。

(答) あて先は、今は長官と経済産業省も考えていたと思います。

(答・事務局) 関係しているところは、経済産業省と警察庁です。
 それから、関係している他の省庁も、一応全部お送りいたします。

(問) 送るということですか。

(答・事務局) 関係省庁には、こういう提言を長官あてに出しましたということで送ります。

(問) そういうものは、前は大臣ではなかったですか。

(答・事務局) 提言の内容によりけりです。

(問) 内容ですか。

(答・事務局) 建議は勿論大臣ですね。提言は内容によります。

(問) そうでしたか。ずっと大臣ではなかったですか。
 では、これは長官ですか。

(答・事務局) これは長官あてに出します。
 ただ、出しましたということは、勿論大臣にもお伝えしますし、警察庁、経産省には同様の形で出して、ほかの省庁には参考情報として御連絡を入れるという形で送ります。

(答・山口委員長代理) 特定商取引法の指定役務制が廃止されて、大幅改正になったのは平成21年です。御存じのとおり、5年後見直しの付則規定があるんです。
 消費者庁は、貴金属の買取りで来年度は精いっぱいなんですが、その後の宿題として、当然全体的な見直しの中の1つの視点をこの消費者委員会の提言は提示しているという意味はあると思います。

(問) 提言は、答えが返ってくるんですか。

(答) 特に提言について答えが返ってくるわけではなくて、勿論、その実施状況についてこちらから聞くということはいたすかもしれません。

(答・事務局) 建議については期限を区切って、フォローアップして話を聞くということをしています。提言についても、できるだけ消費者基本計画に入れた形で、そこでフォローアップを図ってというのが今の状況です。

(問) 返事が来ないと、来年に提案される特商法の改正は、貴金属だけが変わって、あとは変わらなくて、今後みたいなことが現実的に予想されるんですけれども、それは間に合わなくてもよしとするんですか。

(答) 差し当たって、立法で今現在考えていらっしゃる貴金属の買取りについては、今、提言をやるために延期してしまうようなことになっては、これは予想していないというか、本来望んでいないことなので。

(問) それにとどまらず、将来も変えていってくれという長い目での提言ということですか。

(答) はい。

(事務局) どうぞ。

(問) 念のため確認です。提言は、委員会発足からこれで6件目ということでいいんでしたか。

(事務局) 提言ということですか。

(答・事務局) 意見も含めると多分7件目ですね。

(答・事務局) 正確には、あとでお答えします。

(答・山口委員長代理) 第2期としては初めてですね。

(答・事務局) そうですね。

(答) では、これに関しては、ほかに何かございますか。よろしいですか。
 私の方から、少しだけ委員会が考えているというか、検討しているようなことを若干お話したいと思います。
 1つは、地方消費者行政の活性化ということが前々から議論されておりまして、委員会としても、是非地方に出かけていって、地方の消費者相談員とか、さまざまな方と意見交換をしたり、勉強会をしたりするいろいろな機会を持ちたいということを個人的に思っておりまして、委員会としても、それをできるような準備作業を具体的に始めました。可能であれば、来年の1月ぐらいから、それができるようになるかと思います。
 もう一つは、民法の改正との関係で、消費者契約法の見直し作業というのがかなり大きな課題としてございまして、この消費者契約法の見直しを、現在は、消費者庁は集団訴訟の立法化のために、そこに全力を投入しておりますので、すぐにはなかなかできないという状況です。
 消費者委員会の方でワーキングチームをつくって、問題点の洗い出しと地ならしをやるということを考えておりまして、できましたら、12月にはワーキングチームを立ち上げて、検討作業を始めるという方向で準備を進めているところでございます。
 ほかにもいろいろ問題点はたくさんあって、この検証作業をしながら、更に必要なことを少しずつ宿題が大きくなってきているんですが、もう少し準備作業をしながら、今の消費者委員会として何ができるかということを考えていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 何かございますか。

(事務局) どうぞ。

(問) ワーキングチームを12月にということですけれども、消費者委員会の委員の方々が中心になってだれかということですか。外部からということでしょうか。

(答) 外部から委員の方をお願いして、ただ、チームそのものに関しては、私は必ず入りますし、委員の方でも関心のある方には入っていただくことになります。
 ただ、外部の専門家のチームを中心にして行うことになります。

(問) つまり、ここで消費者契約法の改正案みたいなものも。

(答) 具体的な案までいけるかどうかということですけれども、むしろ改正案自身は消費者庁が所管して、最終的な作業をされると思いますが、その作業に入るまでの間の言わば下準備をする。
 ただ、ワーキングチームですから、せっかくやっておりますので、できましたら改正に向けての指針のようなものを成果としてつくっていければとは思っております。

(事務局) また具体化しましたら、御案内したいと思います。
 ほかにはよろしゅうございますか。もう7時を回りましたので、今日はこれで終わりにさせていただければと思います。
 どうぞ。

(問) 今、国民生活センターと消費者庁の一元化をめぐる検証会議をやっている中で、せっかくの機会だから、消費者委員会も含めた3つの組織の在り方も同時に見直してはどうだという意見も出ていますけれども、それについて、例えば消費者委員会事務局の今の予算だとか、人が大幅に増えるということが見込めない中で仕事のどの部分が要るのか、要らないかだとか、そういう機能整理について、今、何か思っていらっしゃることがあれば教えてほしいです。

(答) これは宿題であることはたしかでございます。
 国センとの問題が今、佳境に入っておりますので、とりあえずはそちらの方の検証会議の検証の様子によって、消費者委員会として言うべきことが出てくれば言おうかなと思っております。
 消費者委員会の組織も含めた全体の見直しというのは必要なことなので、宿題としては認識しておりますが、今の段階では、まだ申し上げるだけのものがございません。申し訳ありません。

(事務局) どうぞ。

(問) 最初の会見でも、打ち合わせ会の議論の公表の仕方について工夫すべきだとおっしゃっていましたけれども、その後どうなりましたか。

(答) これはお気づきになっていただけなかったら残念ですけれども、工夫しているつもりでございまして、かなり内容の想像がつくような項目を具体的な形で示す方向で改善をしております。まだ足りないということかもしれませんがね。

(答・事務局) 前、タイトルと、それと同じ1行が書いてあると言われましたけれども、それは工夫をしようということで、具体的に3行、4行にはなっているというところですね。担当委員をだれにするというところまでは書き込んではいないですが、どんな話をしたかというのは、できるだけわかるようにしています。
 まだもうちょっとこういうところというのがありましたら、御提案いただけたらと思います。

(問) ありがとうございました。

(事務局) どうぞ。

(問) ついでと言ったら恐縮ですけれども、ここにも書いていますが、前から被害の情報がたくさんあって、でもなくならないという財産事案がたくさんある中で、消費者庁がほとんど手をこまねいているような事案があるわけです。このイラク・ディナールなどはそのとおりで、こういうものをもっと早くしろというプレッシャーを消費者委員会からかけることはできないんですか。
 だって、リビアがだめになったから、次、リビア・ディナールだみたいな話をしていて、1年半前からこういう問題が出ているといって、それで資料請求しても、そこに行ったらだれもいないとか、あの法律では太刀打ちできないなら、例えば警察に頼むとか、もっと消費者センターに上がってきた情報を基に有効的に消費者に還元するような制度ができていないような気がします。
 もう一つ、この前、国民生活センターが言った美容のアートメイクでしたかね。あれなども医師法違反だと明らかにわかっている情報が国民生活センターにいっぱい上がっているのに、その業者にやめろということを言う官庁がないわけですね。厚労省がやらないなら、厚労省にやれと言うべきだし、そこまでやっていないし、医師法違反とわかっているのならば、なぜ警察に摘発をせよというところまでやらないのか。今もその業者はそこで営業をしている。今日もやっている。今日もイラク・ディナールの被害が出ているというのをこんな長い間放置しているのは、私は行政の怠慢だと思うんですが、委員長どうでしょうか。

(答) 同感です。
 やはりそれぞれ全く手をこまねいているわけではなくて、消費者庁としてもいろいろな対策を考えていることは確かなのでしょうが。ただ、なかなかスピーディに対応が取れていないという印象は否めない。その点について、もし消費者委員会の方から、もっと尻を叩けということであれば、やらないといけないなと思います。
 ただ、今日も警察庁の方とか、いろいろな方がお見えになっていて、関係各省の間で相当緊密に連絡を取って、警察庁なども最近は随分積極的に取り組んでいらっしゃるということもございますので、もう少し見守りたいと思います。
 ですから、何が最も効果的なのかということも含めて、消費者委員会としても考えて、必要であれば、必要な提言をしていきたいと思いますので、またよろしくお願いしたいと思います。

(問) 安全法の改正が実際されるのは、もう1年、2年先の話ですから、それまで恐らく被害が続きますから、是非頑張ってください。

(答) はい。

(事務局) それでは、今日は委員会からだと大変な長時間、ありがとうございました。
 またどうぞよろしくお願いいたします。

(以上)