松本消費者委員会委員長 記者会見

2011年4月15日
消費者委員会

日時

2011年4月15日(金)17:00~17:34

場所

消費者庁6階記者会見室

冒頭発言

(事務局) 時間になりましたので、消費者事務局ですけれども、始めさせていただきたいと思います。今日の第51回消費者委員会で地方消費者行政専門調査会の報告書を受けて、消費者委員会として建議をとりまとめました。先ほど建議の内容については、委員会でも御報告を差し上げましたので、それについて委員長の記者会見を行いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

(松本委員長) 委員会としましては、専門調査会が多様な意見を集約する中で、このような報告書をまとめられたことを尊重いたしまして、ここに盛られている内容について、関係省庁としてきちんと対応していただきたい。とりわけ消費者庁としては消費者行政の司令塔として、この報告書に記載された政策を実施するための工程表をきちんとつくって、7月までに報告することを求めたいというのが一番大きな柱であります。
 その中で4点、早急な検討実施を求める事項として、1点目は、今まで地方消費者行政活性化基金とか光の交付金等が地方に交付されてきたわけですが、それによってどれくらい地方の消費者行政が活性化したのか。自治体の首長さん、あるいは議員の意識が変わったのか。また、住民の意識も変わったのかどうかといった辺りをきちんと検証していただきたいというのが第1点。
 2点目は、相談ネットワークの充実でして、小さな市町村の場合は全体としての予算規模が小さいことから、単独でさまざまな施策をすることは困難だということで、他の自治体と連携をする。あるいは都道府県と連携をする形で相談のネットワークを充実させていただきたい。そのために国としての支援策を早急にまとめていただきたいということが2点目。
 3点目は、PIO-NETの入力費用に対して、国に一定程度の負担をしていただく仕組みを早急に検討していただきたいという点。
 最後に地方における法執行、取り締まりの方ですね。先ほどの2点目、3点目は相談から出てくる話ですが、4点目は規制・取り締まりという観点で、国の法律を地方が執行しているというものがたくさんあるわけで、その執行体制を強化するための支援策を国としてももっと考えてほしい。更には、都道府県に執行権限がまだ十分に移っていない国の法律もあるわけで、そういうものについても都道府県が執行可能なようにするための検討をする。あるいは、国の省庁の地方支分部局あるいは公取委の地方事務所と都道府県との連携の仕方等についての検討作業を至急進めていただきたい。
 こういった4点について、消費者委員会として早急な検討と実施をお願いしたいということで建議を今回まとめた次第でございます。
 以上が概要でありますが、どうぞ御質問をお出しください。

質疑応答

(問) 地方における法執行体制の強化についてなんですけれども、建議の中ではこういうふうに書かれておるのですが、報告書の中のところでの関連で大体29から30ページの間です。ここでは地方の強化ということで、特商法については1つの自治体がやった行政処分が全国に効果を及ぼすような、と書かれていて、それに対して国としても技術的な支援等を検討する必要があると書いてあります。景表法の場合は法制上の見直しと書いてあるのですけれども、特商法の場合は、つまりこれは技術的支援というのはどういうことなのか。

(答) これは法律的な意味の効果が及ぶような法改正をするというよりは、技術的支援だから現行法を基にしての話ですね。

(答・事務局) 広域になりますので、結構相手も争ってくる可能性がございます。そういった訴訟に耐えられるような証拠収集等に係るノウハウ等を伝えるという意味での技術支援も行う必要があるという趣旨です。

(問) 特商法の場合は、例えばある一つの都道府県が行政処分をした場合、例えば消費者庁が同じような行政法にした場合は、その一つの自治体ではなくて、全国に効果が及ぶと。だから、ある意味ではそういうふうな国の執行法の強化ということと、もう一つがこれは多分東京都もいろいろ要求されてきたと思うのですけれども、例えば東京都でやった処分が全国に効果を及ぼすような制度的な体制といいますか、そういうことも含まれているのではないかと思ったのですが、考えとしてはそれでよろしいでしょうか。そういう場合、法改正ということではなくて、今おっしゃったようなことなのでしょうか。

(答) 現行法の枠内でどこまでやれるかという話と、現行の法律の仕組みを変えればどうか。あるいは変えることが適切かどうかというのは議論を分ける必要があると思いますが、現行法の枠組みでやろうと思うと、都道府県の処分だけだと他府県での行為に対しては、直接は及ばないということになりますから、そこをカバーするために国と共同で処分をするとか、あるいは早い段階で連携をして、複数の都道府県で処分を続けてやるとか、あるいは複数が一緒に行動するとか、幾つか方法はあり得ると思います。そういった点について、どういうやり方が一番適切かつ効果的で無理がないかとかいう点を検討する必要があるだろうということです。

(問) 結局、法改正は明確に求めるのですね。緩やかな工程表の中で言っていたように、特商法の都道府県処分のものを全国に及ぼすというところと、景表法の措置命令権限を都道府県に与えろというところは、明確に求めていくということですね。

(答) そういう方向できちんと検討してくださいということです。

(問) 景表法の地方事務所の問題のところの修文がすごくわかりにくかったのです。景表法は法律上、もともと措置命令権と調査権の2つしかないと私は思っています。あの書き方は一体何を意図したのですか。

(答・事務局) あの書き方とは、どういう書き方ですか。

(問) 調査権限以外の法執行の権限の一端を担えるように行う。

(答・事務局) 不実証広告規制がございましたね。いわゆる効能効果がないのに、根拠を持っているかどうかを求めて、もし持っていなければ、不当表示と認定できるという規制ですが、そこで求めることができるという規定、それは権限というかどうかわかりませんけれども、それを求めることができるのはありますから、要は調査権限以外のところもすべて含むという趣旨です。

(答) 例えば消費者委員会は、国の行政機関に対しては一定の調査権限を持っています。しかし、措置命令権は何もありません。建議権とかはありますが、措置命令して要求するという権限は何もないのです。民間に対して調査をする権限、立入調査権とかもないですが、特商法などを見れば、さまざまな権限が行政機関に与えられているわけで、その中の調査権限のみが景表法に関しては公正取引委員会の地方事務所に現在委任によって与えられているけれども、それ以外の権限も地方事務所が担えるようにするための法制上、それがどういうふうにすれば可能か等を検討していただきたいということです。

(問) 現実的に報告徴収もやっているし、注意もやっているし、警告もやっていると。

(答) やっていません。

(問) 近畿事務所はやっています。

(答・事務局) それは消費者庁がやることです。

(答) 公正取引委員会の名前ではできないです。

(問) すみません。いいです。あと申し訳ないのですが、この単独の市町村を県が支援する場合も広域連携とすると。この県が支援等をするという書き方は何を意図しているか。どこまで、どういうことをしたら県との連携になるという意味なのでしょうか。

(答) それは消費者委員会が決める話ではなくて、そういう枠組みも含めて、消費者庁の方で地方の広域連携支援のための具体的な仕組みとか施策づくりを、工程表をつくってやってくださいということです。我々が細かいところまで制度設計をして、このとおりという趣旨ではなくて、そういう単独の市町村が県と何らかの形で一緒にやるという場合を除外しない形の制度設計を消費者庁に求めているということです。では、どれくらい連携をしていれば一定の支援の対象になるのかどうかは、少し幅のあるところかと思いますから、そこは消費者庁の方でより具体的な詰めをやっていただきたい。

(問) ひな形にしても、相談員のところの指針にしても、この報告書からはどこまで何を書かすのかが全く読めないのですけれども、今後、消費者委員会の方が具体的に何か提言をしたり、アプローチをしていくような考えはあるのですか。

(答) 我々の仕事は、我々が施策をつくって実施するわけではないのです。第二消費者庁ではないのです。あくまで監視機関に過ぎないわけですから、そのスタンスから消費者庁に対して、こういう方向で施策をまとめてくださいということを建議をしているわけで、それを受けて消費者庁の側が具体的な施策をまとめてくる、工程表をまとめてくる。それに対して我々がまた意見を言うということです。消費者庁の代わりにこれをやりますということを決めて、我々がやるわけではないです。あるいは消費者庁に対して、このとおりにやれと命令するような権限もありません。

(問) 先ほどの関連ですけれども、景表法のことですが、建議の中では都道府県の執行権限は、今は指示だけですね。それが措置命令も行えるようにすると。これはわかります。先ほど事務局がおっしゃった効果性能表示についても、都道府県の措置命令ができるようにすると読んでいいのでしょうか。

(答・事務局) 当然そうです。

(問) そうすると、地方事務所においても同じようにできるようにということですね。

(答) 話は2つを分けないとだめです。現在、都道府県固有の景表法に基づく権限として持っている部分をもう少し広げて、消費者庁本体が持っているのと同じような権限を与えましょうというのが1つの話です。
もう1つは、消費者庁の持っている権限の中の調査権のみを公正取引委員会の地方事務所に委任していることについて、もう少し広げて、消費者庁本体の持っている処分権といいましょうか、調査権を上回る措置命令を出せる権限を地方事務所にも委任しましょうという話しです。2つの話は分けて整理をしてください。

(問) 4人の委員がああいう形で意見を出すというのは異例のことではないかと思うのですが、これについては消費者委員会からは何らコメントが出ていないのですが、これについてはどのようにお考えなのでしょうか。

(答) 4人の意見が付いていますが、報告書本体について反対であるという趣旨ではなく、付加的な意見として付けられているということですから、全員が一致したといいましょうか。報告書本体の部分については一応このとおりにやってくれという点では、異論はなかったのだと我々は評価しまして、少なくともそれに基づいて政府として施策を進めてくれるようにということで建議をまとめたわけです。

(問) 私はそうは読めなくて、これはミッションを遂行されていないと。本来なら結論はこうあるべきであったと書いていて、報告書に納得が行っているような意見書には読めませんでした。

(答) 読み方は人によっていろいろあるかもしれないけれども、4人の方はこの報告書に反対だという立場を取っておられないわけです。しかし、もう一歩こういう方向へやってほしいという御意見だろうと思います。それは消費者委員の中にもそういう考え方をお持ちの方もいらっしゃるわけです。

(問) そこについて、消費者委員会として触れることはできなかったということですね。消費者委員会の委員の中にもそういう方がいらっしゃるけれども、記述とかそういう表現に関することに踏み込むことは、消費者委員会としてはしなかったと。

(答) そうです。これはそもそも専門調査会の中ですごい議論をして、こういう文書にまとめられたというわけですから、いろいろな考え方があるというのを前提として、専門調査会委員として一致できる文書として書かれたのだと理解をしています。したがって、消費者委員会の委員の中にもさまざまな意見を持っている人がいるのだけれども、専門調査会のまとめたこの部分については、それはそれで支持できるという点では一致しているということです。

(問) 関係各大臣というのは、消費者庁は総務大臣以外にどこでしょうか。

(答) あとは消費者政策会議というのが主要な大臣をメンバーにしてございますから、そこに属しておられる省庁にも、この文書をお送りするということになっております。

(問) ほとんどですね。

(答) ほとんどです。生活に関係のある省庁はほとんど入っていると思います。

(問) 別件なのですが、被災地の支援策について重要な課題であると余り踏み込んでいないのですが、被災地を実は回っていくと、必要な情報とか消費生活相談をやっていますというような張り紙は、1か月の段階でどこにも張られていませんでした。そういう日々必要な情報は、職員さんとかまだそこまで手が回っていないような状態で、現地の相談員さんたちの現地にいるからこそできる相談、現地だからこそ強く斡旋しているみたいな状況があって、国費か何かが相談員を現地に持ってくる。または国費で共通した必要な情報を提供するようなことが必要なのではないかと思ったのですが、消費者委員会として具体的にもう少し何か提言をされるようなことはないのでしょうか。

(答) 被災者が求めている情報あるいは物質はさまざまなものがあると思います。生きていくために必要なものという点では、広い意味ではすべて消費者問題になるわけですが、防災すべて、あるいは原子力関係すべてが消費者問題かというと、そうではないわけです。被災者の方が相談したいこと、知りたいことというのは、この報告書で議論しているところの消費者相談的なものというよりは、どこに行けば物資がありますかというレベルの話とかであって、従来の消費生活センターの相談員の人が一般的に対応しているものよりは、もっと生の生活の部分だと思います。そこの部分については総務省がかなり熱心にいろいろな相談を受け付けますというサービスをしているとことを新聞報道でも確認しております。国民はすべて消費者なのだから、国民の声をすべて消費生活センターの相談員が聞くという必要はなくて、今、何が必要なのかということを国として、きちんとやっていただければいいんだろうと整理をすれば、消費者生活センターの役割はもう少し限られたものだろうし、本当の緊急時に現地においては、そういうものでない部分の相談が圧倒的に多いんだろうと。少し落ち着いてきた段階から、悪質商法が現地に入り込んでくる。
今、出ている震災まがいの悪質商法というのは、一番の被災地ではないところで消費者をだますようなたぐいのものだろうと思います。ですから、被災地において必要なのは、消費者行政、消費者相談だけを再建するのではなくて、自治体自身がもう行政機能がなくなってしまっているのをどういうふうに再建していくか。そういう中で消費者行政の部分についてもどう再建するかということになってくるので、重要性の順序から行くと、先ず消費者行政ということにはならないだろうと思います。

(問) おっしゃることはわかるのですが、何となく生活相談そのものが求められていて、消費者庁も判断に迷っているのかもしれないのですが、多重債務を昔と違って消費者の現場で多重債務を扱ってきていると。まさに生活そのもので困っている人たちばかりなわけですね。その辺を広く今後とらえていく必要がある。住宅ローンの問題をどうするかとか、その辺は金融庁任せ、経産省任せでいいのかというような気がすごくしていて、その辺を本当に切り捨てて、消費生活相談ではありませんと言っていいのでしょうかという気はしています。

(答) これから再建の過程の中で、そういう問題は増えてくるだろうと思います。生活再建の過程において、従来のローンを返済できなくなる。あるいは新たに生活するために資金を借り入れざるを得なくなる。貸してくれるところがない、どうしてくれるのだ。あるいは高利貸ししか貸してくれない。借りたところ、取り立てが厳しくなって、生活が一層破綻する。そういう問題はこれからどんどん出てくるだろうと思いますから、当然一定の対応はしていかなければならないだろうと思います。ただ、すべての住民の悩みを消費生活センターで賄えるのかというと、それはなかなか難しいだろう。もっと自治体全体が住民の生活再建のためにどういうことができるのだろうという観点からアプローチしていかなければならない。消費者行政だけがカバーできる問題ではないと思います。

(問) 確認です。先ほど消費者委員会の一番最後で委員長がまとめられた、今回の大震災に対しての消費者委員会としてのこれからの在り方。これは委員の方々からいろいろと御意見が出て、個人的な思いもすごくあると。消費者委員会としての在り方としてどうするかということを、今後のアクションも含めた中でどうするかということを話し合っていくとおっしゃったと思いますが、そういうまとめ方でいいでしょうか。

(答) 話し合いということの意味は、我々はみんな生活者だから意見があるわけです。今回の災害と原子力被害に対してはみんなそれぞれ意見があるわけです。それを話し合うことはいいのですが、それを話し合うことと消費者委員会として何をやるかということは、多分別の問題だろうと思います。消費者委員会の与えられたミッションとして、こういう事態において何をする権限があり、何をするのが求められているのかということであって、有識者として何か意見を言えという次元の話ではないと思います。消費者問題について、意識の高い人が集まって何かを言うのは自由です。ただ、今回の大災害は消費者問題の枠を外れているという部分がかなりあります。地震は消費者問題とは別のものだと。放射能災害そのものも消費者問題とは別のものと整理されています。ただ、食品の放射能汚染等になってくれば消費者問題です。

(問) その後、原事務局長の方から委員会の打ち合わせの概要として資料が付いているということで、我々は最初にこれを見たときに、当面の消費者委員会の運営についてだけしか書いていないもので、一体全体、何を打ち合わせされていたのかということが当初わらなかったのです。大震災のことについて委員会の中でも意見交換をし合ったということで、これは大震災のことと言っているわけではないのですが、つまりここで意見として出てきていたことは、消費者委員会に対して、どんな意見がまず外部からいろいろ来ているのか。その項目だけでも公表してほしいとか、委員会打合せについて、開いたということだけではなくて、一方ではいろいろと書いてあるところもありますので、そういうことをもう少し公開されたらいいのではないかと思います。

(答) まさに消費者委員会として何をやりましょうかという議論をしていたんです。つまり来週委員会をやってもいいのでしょうかという議論です。委員会をいつ開催しましょうか。どういうテーマを取り上げましょうかという議論を毎回していたわけです。結果として、1か月くらい間が開いたということです。どの時期に委員会を開催するのが適切かと。そして、大震災あるいは放射能被害について、国民がいろいろな不安を持っている。それについて消費者委員会として、どういう形でそれを取り上げることが適切か。可能か。消費者委員会としてはどういうアクションを起こすことができるのかといったことを議論していたということです。ただ、事態は刻々と毎日のように変わっていったということもあります。あるときは問題だと言われたものが、翌日はもう状況が変わっているということもありました。
ほかにございませんか。

(問) 国民生活センターの組織としての見直しについては、もう少し踏み込んだ提言みたいなものはしないのでしょうか。

(答) この建議は地方公共団体の行う地方消費者行政の話ですから、国民生活センターの在り方自体は今回のテーマではございません。それは今、消費者庁の方がタスクフォースをつくって議論をしておりますから、その議論について、消費者委員会としても意見をいずれ述べていくということになります。

(問) それはどういう場で述べていくのでしょうか。

(答) 消費者委員会の場です。

(問) 専門の調査会みたいのは特別に設けなくてもいいと。

(答) 専門調査会をつくろうという議論は、今のところはございません。

(問) ありがとうございました。

(事務局) ほかにはよろしいですか。これから蓮舫大臣のところに手渡しに参りますので、なければ今日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

(以上)