松本消費者委員会委員長 記者会見

2009年9月1日
消費者委員会

日時

2009年9月1日(火)16:00~16:45

場所

消費者庁記者会見室

質疑応答

(問)委員長になられてのご抱負を教えていただきたい。また、今後どのような委員会にしていきたいのか。

(答)どちらの質問も同じことだと思うが、この消費者委員会のような性質の行政機関は他にはない。モデルのない状況でやっていかねばならない。そのため、どのように委員会を運営していくのが一番いいのかということを、委員会で議論しながら作っていくことになる。自分たちで自分たちがどうしていくべきかを議論していくのが消費者委員会だと思っている。任期は2年だが、この2年の間に委員会の運営の仕方等を議論しながら作っていきたいと思う。
 しかし、委員会があって中身がなくていいというわけではない。設置法の附則、消費者安全法の附則の中に、2年あるいは3年以内にやるべき宿題が政府に課されている。これらについては消費者委員会でも検討しなければならない。その宿題の中で、私個人としては、特に地方の消費者行政を活性化するための支援の在り方が重要だと思っている。また、不当に得た収益を収奪するための仕組み等の検討も積極的に進めていきたいと思っている。さらに、消費者委員会に与えられた大きな役割として、消費者庁や各省庁が行っている消費者行政を監視することがあるが、これと消費者の声を取り上げて行政につなぐ役割を一体のものと捉えて、やっていく必要がある。

(問)委員の任期は2年とあるが、委員長の任期はどうなるのか。

(答)普通は、委員の任期の間は委員長を続け、任期が切れて委員が改選されたときに、改めて委員長を決めることになる。

(問)規定はないのか。

(答)設けられていない。もちろん委員会が委員長を決める以上、委員会がこの者は委員長に不適切として解任し、別の者を委員長にすることはできる。

(問)さきほどの委員会の中で、事業者とウィン=ウィンの関係を目指すとあったが、そう上手くはいかないように思うが。

(答)確かに、「言うは易いが、そう上手くいくのか」というご意見はあると思うが、悪いことをした人間がもうかるというのはあまりに不公正。平成20年度版国民生活白書では、平成19年度1年間で消費者被害の総額を3兆4千億円と推計している。これは見方を変えれば、3兆円のマーケットが真面目な事業者から真面目でない事業者に奪われているということでもある。これを是正すれば、真面目な事業者の売り上げが伸びて、消費者も安心して消費生活を送れるようになる。こういうことを実現していかないと、悪い方向に流れていきかねない。
 ただ、言うだけでは実現しないので、そのような真面目な事業者が得をするようななんらかの手立てを考えていかねばならない。1つは、法律をきちんと整備して、違法な事業者を取り締まること、それから被害をこうむった消費者がその被害を回復できる仕組みを作ることによって、真面目に商売をしないと儲かるどころか損をするように仕向ける。他方で、消費者に対していろいろな情報を発信して、その事業者がルールを守っている真面目な事業者だということがわかる信頼性のある仕組みを作っていくような事業者側の取り組みを支援することも必要。

(問)消費者庁、消費者委員会ともに、まだ準備段階が整っていないのではないかという指摘がなされているが、その点についてどのように考えておられるか。また、消費者委員会の権限の割には、それを支えていく事務局が貧弱ではないかという指摘もなされているが、これについてどのように考えておられるか。

(答)準備不足であるという点については、私も一部当たっていると思う。典型的には、消費者ホットラインという、全国どこにいてもある電話番号にかければ地元の消費生活センターの相談窓口につながるという仕組みを導入しようとしているが、準備不足のため9月1日にはスタートできないことに加えて、全ての都道府県で一斉にスタートすることもできない状況。
 消費者委員会のスタッフ体制については原事務局長からご説明願いたい。

(答・原事務局長)事務局体制が脆弱ではないかという報道は拝見し、存じ上げている。もともと政府案では、消費者委員会は消費者政策委員会として消費者庁の中に置かれるという位置づけであったため、実際には2名の人員枠しか持っていなかった。それが8月の時点で6名の専従スタッフとなり、本日9月1日で私も含め16名で仕事をすることになった。そういう意味では、人数はかなり揃ってきているところであるが、まだまだ足りない部分については、業務を行う中で必要な人材を加えていくような工夫をしていきたい。

(問)部会を置くか、専門調査会を置くかという議論は次の17日では遅いのではないか。各省庁にある審議会は現在ストップしている状況。今後どのようにつめていくのか。
 また、民主党政権に変わったときに、修正協議で不十分であった部分など、変えてほしいという部分があれば発言をお願いしたい。

(答)2つ目の質問については、新政権の担当大臣が決まり次第、消費者委員会として懇談する場を設けていただいて、大臣の考え方・各委員の考え方を出し合って、委員会をどう運営していくか、改正すべき点があればどういう点なのかという議論をしたいと思う。この場でお答えするのは適切ではない。
 下部組織については、参与会は何かを決める場ではなかったので、各参与が言いたいことを言っていたが、委員会では下部組織のあり方を正式に決めないといけないので、次回の審議事項としている。参与会の段階では、専門調査会形式が良いのではないか、つまり部会形式にすると部会が中心となり委員会が形骸化するおそれがあるという指摘が何人かの参与からなされたが、それら多数の意見を反映したものになるとすれば、専門調査会形式になるのではないか。また、各省庁から審議会機能が移行されてくるということについてはそのとおりだと思うが、ルーティンワーク的に常時動いていないといけない下部組織は、今のところそんなに多くは無いのではないかと考えている。常設的に動かなければならないものとしては、健康増進法に基づく特定保健用食品の関係がある。これは消費者庁が許可をする際に従来厚生労働省の審議会の中の下部組織が担っていた機能を消費者委員会が受け継ぐということになったようだ。このことは消費者行政推進会議では全く議論が無かった内容で、私も知って驚いたが、許認可的な部分が消費者庁に移ってくると、いつまでも許可するかどうかを決定しないわけにいかないので、これは常設的にすぐにでも作業をする必要があると思う。ただ、消費者委員会としてやるのか、別の審議体をもつのかということについては、健康増進法には消費者委員会に諮問をして許可を決めるとは書いていないので、かなり自由な設計ができるのではないかと思うが、いずれにせよ早急に合議体を作らないといけないのは事実。
(答・原事務局長)補足すると、各省庁の審議会の状況については連絡を取っており、10月・11月で大きく動く必要のある審議会は今のところない。特保の関係をどうするかということだけが急いでいる。

(問)消費者委員会は消費者庁をチェックする役割を負っているが、立派なオフィスビルに消費者庁が入り、何億という家賃が発生するということについて、理解が得られると考えておられるのか。

(答)答えにくい質問だが、他に200人のスタッフを収容し、会議室スペースもたくさん確保できるような政府所有の建物があるのであれば、それで十分であろうと思うが、それがないから民間のビルを借りることになったのだと思う。民間の中でこのビルが高すぎるのか安すぎるのかということについては、私では判断しかねる。
(答・原事務局長)このビルに決定するまでの経緯や決定については知らないが、決めるにあたってはまず霞ヶ関にスペースがないかどうかを検討し、民間であってもできるだけ家賃の安いところというのは当然考えられたと思う。あとは霞ヶ関からできるだけ離れすぎない、特に官邸から離れすぎないところに位置したいということがひとつあり、もうひとつは、消費者庁はかなり情報を集めるが、セキュリティをかける必要のある情報が集まるので、そのような情報管理ができるような仕組みを作れるようなビルという探し方もしたと聞いている。

(答)官庁の建物の建て直しの優先順位があるらしく、次は財務省になるのか内閣府本府になるのかということだが、今の内閣府本府の貧弱な建物を立派に建て替えれば、消費者庁・消費者委員会はそこに引越しすることになるのではないか。また、財務省が立派な建物を建てれば、一部そこに間借りすることもあるかもしれない。いずれにせよ、そのあたりは政治の判断。

(問)現時点では許容しているということか。

(答)とにかく仕事を始めないといけないので、政府側がここでやれというのであれば、ここで業務をさせていただく。他に適切な建物があって、そちらに移れということであれば移る。

(問)年間家賃がいくらかかったとしても、それに見合う仕事をすればよいと思うが、消費者委員会として、消費者庁の仕事ぶりがその家賃をどの程度ペイしたのかについても公表してはどうか。

(答)ひとつの検討課題になるだろうと思うが、消費者行政の行政評価をどのように行えばよいのかという手法は、必ずしもはっきりしていない。とりわけそれを金銭に換算して評価するというところまではいっていない。これは、予算要求するときに説得力に欠けるということにもつながるが、行政評価の一環として消費者行政に特化してパフォーマンスを評価する指標をどのように作っていくのかというのはひとつの課題。たとえば、消費者相談の件数が増えれば消費者行政が機能しているのかといえば、そうとも言えるし、逆に機能していないから相談が増えるという面もあり、難しい。さらにそれを金銭に換算して、家賃という経費と消費者行政推進による金銭的効果をうまく比較できるのかどうか。もしそれが可能であれば、客観的なパフォーマンスの評価につながると思ので、経済学的な観点からそのような指標を開発するための委託調査を、消費者庁のほうから行っていただくのもよいのではないか。

(問)消費者庁が委託調査すると、消費者庁の意向に沿った結果が出かねない。第三者的な委員会であれば客観的な評価もできるのではないか。

(答)消費者委員会のほうに調査委託の予算が十分計上されているのであれば、委員会から調査することも考えられるし、ないのであれば消費者庁の予算を使ってやってもらう。私は消費者行政評価の指標を開発する必要があることは、何年も前から他の審議会でも言っている。
(答・原事務局長)直接金銭的な指標にはならないかもしれないが、消費者基本計画の中で、消費者行政の評価・検証という作業を消費者委員会で行うので、これまでよりもっと明確に消費者行政や政策が機能しているかということについて、消費者委員会としても評価・検証を国民の皆様に見せていきたいと考えている。

(問)現在の準備状況や事務局体制を委員長がどう評価しているのか伺いたい。

(答)9月1日に発足するというのは政治判断。それについて評価を述べるのは難しい。準備不足は客観的に明らかだが、それでも発足させることを政府が決めた以上、すこしづつその不足を埋めて、本来予定されているパフォーマンスを発揮するところまでやっていかなければならない。

(問)組織が立ち上がった以上、消費者は抱えている問題が解決するのではないかという期待を持っていると思うが、それに対してどのように答えていくのか。もう少し待つよう説明するのか、あるいは消費者庁を急かすのか。

(答)両方だと思っている。消費庁ができたことによって、従来より良くならなければできた意味が無い。消費者委員会としては消費者庁がそのような方向性になるように働きかけ監視をしていく。しかし、準備期間が短いということもあるが、たとえ準備期間が半年あったとしても、スタート当初から100%のパフォーマンスを発揮することは難しい。スタートしてからパフォーマンスを上げていくための期間をできるだけ短くするよう努力するように消費者庁に促す。

(問)発足の前日に委員の1人が辞退されたが、委員の方々はこれをどのように受け止めておられるのか。

(答)それぞれの委員が委員として選ばれた理由は、政治判断。政府が任命しているわけだから、政府として一定の考えのもとに委員予定者を考えられたのだと思う。その予定者の1人の方が、総選挙の翌日に突然辞意を表明されたということだが、政府とその委員の方との関係であって、それ以外の委員としては、理由も分らずなんとも言いようがないとしか申し上げられない。

(問)住田さんの声明の中では、他の委員の方と人間関係が上手くいかなかったとのことだが。

(答)そういう声明はいただいていないので、なんとも申し上げようがない。委員からはそのような理由は何も告げられていない。

(問)まもなく民主党に政権が移り、落ち着かない状況でスタートすることになるが、これについて率直なご感想をお聞かせいただきたい。

(答)先ほど申し上げたとおり、新政権の担当大臣が決まり次第、早急にお会いをして話し合いたい。

(問)今回、消費者庁に移管してきた組織ないし法律について、業者の育成的な部分もあるが、これまで業界育成と消費者利益が対立した場合に、前者をとるという局面も散見されるが、そのような過去の各省庁の姿勢についてどのように評価しているか。
 また、今後、消費者委員会としてそのような状況をどのように変えていけると考えているか。

(答)消費者庁を設置する大きな狙いの一つは行政改革。従来は業を所管する各省庁が、その業の保護・振興を行い、同時にそれに関わる消費者の保護も行うという縦割りで全て行っていた。その結果、消費者利益と業の利益が対立するときに、消費者利益が軽んじられたケースがあった。少しずつ是正されている面もあるが、消費者庁ができるにあたっては、業を保護し振興する業務は各省庁に任せておいて、消費者の保護やそのためのマーケットの整備に関わる部分だけを消費者庁に移した。そのため、業の保護・振興の部門と消費者保護の部門を、役所のレベルで分けることになる。許認可的な業務が消費者庁にほとんど無い理由はここからきている。業法は基本的には各省庁に残っており、いくつかの業法のごく一部の部分に消費者庁が関与することになる。ただ、先ほど申し上げたとおり、健康増進法だけは表示の許可も消費者庁にきてしまっている。

(問)日本でこれまでに例のない消費者委員会が本日発足したという意義を、わかりやすくご説明いただきたい。

(答)委員会の意義は一言では申し上げにくい。もともとの政府案では、消費者政策委員会という名前で、昔の国民生活審議会と他省庁から移行する審議会をそこに全部収容するというコンセプトだったが、審議会と名乗らずに委員会と名乗ったところに、政府の一定の意気込みはあった。他方、民主党の消費者権利院法案では、消費者権利官という非常にステータスの高い役職をトップにした5人の委員からなる消費者権利委員会があり、政府から独立していろいろなことを判断して、政府の消費者行政担当者に対して勧告をする。このようにもともと両者には相当な違いがあったが、国会審議の中で、参考人の多くが消費者庁は早く作り、かつ監視機能を持つ組織も必要だということで、両方のコンセプトを合体して消費者委員会がつくられた。両方の要素が入っているのでなかなか簡単に説明するのは難しいが、それこそが画期的といえる。
 そのような新しい組織がきちんと機能するかどうか、委員として機能するように努力しなければならない。これが最初に申し上げた、発足後最初になすべきこと、2年間の間になすべきことは何かということ、つまり委員会が国会で議論された要望をきっちりと履行できるように、運営方法を考えながら行っていくということにつながる。

(答・原事務局長)やはり消費者の声や意見で動く組織にしていきたいと思っており、消費者が応援してくれるような組織にしなければならないと思っている。応援してくれる力があれば、機能するし、霞ヶ関を動かすことができると思う。報道の皆様は消費者との接点におられる方々なので、ぜひ橋渡しをお願いしたい。

(問)こんにゃくゼリーなどの製品事故等の被害者の方には、率直にどういう思いをお持ちか。また、食品偽装や事故に対する国の対応については、これまでどのように思っておられたのか。

(答)本来そのような事故で亡くなるべきでなかった方がお亡くなりになられたのは、本当に悲しいことだと思う。とりわけ家族の身になってみれば、どこに怒りをぶつければいいかわからないものだろうと思う。そういう問題が他にもたくさんあると思う。政府のやるべきことは、一つは国民の安全を守ること、もう一つは国民を豊かにすることだと思うが、安全安心を守るという点で、今の食品による事故等を政府として防止するために、やるべきことでまだまだやれていないことがあると思われるので、消費者庁・消費者委員会としては、そのような部分に少しでも手をだして、国民の命がむざむざと奪われることのないようにがんばらねばならないと思っている。

(答・原事務局長)こんにゃくゼリーは発売当初死亡事故が6人くらい続いたときに、私自身農林水産省にかけあったりしたので、非常に心を痛めている。また、ガス湯沸かし器とエレベーターの事故についても、ご遺族の方とご一緒にいままで裁判の傍聴に入っている。
行政はどうしても対応が遅く、また消費者寄りではなかった。だからこそ消費者庁、消費者委員会ができたと考えている。

(以上)