第45回 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ 議事録
日時
2023年3月28日(火)13:00~14:26
場所
消費者委員会会議室及びテレビ会議
出席者
- (構成員)
- 【会議室】
- 後藤座長
- 黒木座長代理
- 木村委員
- (オブザーバー)
- 【会議室】
- 大石委員
- 中川丈久 神戸大学大学院法学研究科教授
- 板谷伸彦 特定非営利活動法人消費者機構日本専務理事
- 【テレビ会議】
- 丸山絵美子 慶應義塾大学法学部教授
- 川出敏裕 東京大学大学院法学政治学研究科教授
- 山本和彦 一橋大学法学部教授
- (参考人)
- 【会議室】
- 中川丈久 神戸大学大学院法学研究科教授
- (事務局)
- 小林事務局長、岡本審議官、友行参事官
議事次第
- 開会
- 違法収益はく奪制度についてのヒアリング
- 閉会
配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)
≪1.開会≫
○友行参事官 大変お待たせいたしました。それでは、ワーキング・グループを開始したいと思います。
皆様、お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。ただいまから、消費者委員会第45回「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」を開催いたします。
本日は、後藤座長、黒木座長代理、木村委員、大石委員、中川委員、板谷委員は会議室にて御出席、その他の皆様はテレビ会議システムにて御参加でございます。
配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第に配付資料を記載してございます。もし不足などがございましたら、お知らせいただきますようお願いいたします。
報道関係者を除く一般傍聴者の皆様には、オンラインにて傍聴していただいております。議事録については後日公開いたします。
ウェブ会議の御留意事項でございます。ハウリング防止のため、御発言いただく際以外はマイクをミュートの状態にしていただきますようお願いいたします。御発言の際には、あらかじめチャットでお知らせください。座長に御確認いただき、発言者を指名していただきます。指名された方はマイクのミュートを解除して、冒頭でお名前をおっしゃっていただき、御発言をお願いいたします。御発言の際、配付資料を参照する場合は、該当ページの番号も併せてお知らせください。御発言の際には、可能であれば映像をオンにしていただけましたら、どなたがお話しになっているか分かりますので、御協力のほど、お願いいたします。音声が聞き取りづらい場合には、チャットで聞こえないなどというようにお知らせいただくようお願いいたします。
会場にいらっしゃる皆様におかれましては、挙手などにて御発言をお願いいたします。
それでは、後藤座長、以降の議事進行をよろしくお願いいたします。
≪2.違法収益はく奪制度についてのヒアリング≫
○後藤座長 座長を務めております後藤です。本日もよろしくお願いいたします。
それでは、本日の議題に入らせていただきます。本ワーキング・グループにおいて、これまでいわゆる破綻必至商法を対処が必要な事案と捉え、精緻化を図るとともに、これに対する必要な制度的手当として考えられるものとして、法人格の消滅を伴う行政による破産申立制度や行政による解散命令制度等について検討してきたところです。
さらに、多数の消費者に被害を生じさせた者の不当な収益を剥奪し、被害者を救済するための制度について検討し、必要な措置を講ずる対応も重要であると考えられます。
関連する法制度として、景品表示法の課徴金制度や消費者裁判手続特例法の被害回復制度は導入されましたけれども、行政主導の不当な収益を剥奪し、被害を回復する制度は導入されていない状況にあります。
そこで、本日は、消費者被害回復のための違法収益剥奪制度についての論文等を御執筆なさっています、当ワーキング・グループのオブザーバーでもあります中川教授にヒアリングをさせていただきます。
それでは、早速、議題に入りたいと思います。
本日は、当ワーキング・グループのオブザーバーである神戸大学大学院法学研究科、中川丈久教授に参考人として御出席いただいております。
本日は、大変お忙しい中ありがとうございます。
それでは、20分程度で御説明をお願いいたします。
○中川教授 神戸大学の中川でございます。本日は遅くなって、大変申し訳ございませんでした。
お手元に資料をお配りしております。レジュメという形でお配りしております。
それの「1.財産剥奪の法制度」というところからお話を始めさせていただきます。これははじめにという趣旨でございますが、これまでこのワーキングでは行政申立てによる破産手続、あるいは法務大臣による会社解散命令の裁判といった制度を扱ってまいりました。これが大きい数字の財産剥奪の法制度の(1)と(2)に書いてございます。この2つ、破産と会社解散命令は共通した部分がございまして、どちらも当該法人の全ての財産を清算してしまうというところに共通なところがございます。破産はもちろん再建もございますが、今回は取りあえず清算だけ考えております。
今日お話しするのは(3)でございまして、法人の財産全てではなくて、差し当たり個別の財産、法人としては存続はするかもしれないけれども、そのうちの一部について、違法な収益であって剥奪するという制度が考えられないかというテーマであると理解いたしまして、(3)についてお話をしたいと思います。
(3)については個別財産、先ほどの(1)、(2)が包括的な財産を剥奪する、そのために保全をするといった仕組みでございますが、(3)のほうは、その人が持っている一部の財産、その法人が持っている一部の財産について、その法人に正当性がないという理由で、これを違法収益という形で剥奪するという仕組みを考えてみたいというわけです。
これにつきましては、民事、刑事、行政、3種類のやり方がありまして、民事については当然不当利得であると。ただ、今回テーマになっているような破綻必至商法の場合、なかなか被害者が被害に気づかないということで、あるいは民事裁判だと証拠の開示というのはなかなかうまくいかないということで、なかなかやりづらいという問題が従来より指摘されてきたところです。
刑事法については没収というのがございまして、とりわけ組織的犯罪処罰法については非常に包括的といいますか、効果的と私には見える没収の手続、それから、保全の手続、そして、還付という手続がございまして、そこに書いてある犯罪類型あるいは構成要件に該当するのであれば、これも使う余地はあるのだろうと思いますけれども、破綻必至がどこまで犯罪かというのはかなりケース・バイ・ケースだと思いますので、これも使えることもあるだろうということで、それ以外に行政法的な仕組みによる剥奪ができないかということが今日のテーマとなります。
1ページの下半分の囲み部分です。ここは今日のお話の全体像、全体像というよりはもう少し簡単なものですけれども、これからお話しすることの基本的な考え方の説明になります。
行政法による剥奪というのは2種類考えられまして、一つは措置命令です。措置命令というのは、何らかのこれこれの措置を採りなさいと相手方に命ずるもの全般を措置命令という形で呼びます。普通はこれからこういうことはしないようにいろいろ注意しなさいと将来的な違反抑止に向けての措置を命ずるのですけれども、過去に違反したことについて、それを是正しなさい、原状回復ですね。原状回復の措置を採るということもこの措置命令の一つです。原状回復の結果、被害者の被害を補填するということになるならば、それは今回のテーマである違法収益の剥奪であり、かつ被害回復にもなる。措置命令の一つの対応として、被害者の被害を補填する。ただし、これは行政が命じますので、公益のためにという理屈は必ず必要なのですけれども、公益のために過去の違反を是正しなさい、原状に戻しなさい。その結果として被害が補填される。このようなパターンの措置命令が一つあり、もう一つ、プラスと書いてあるのが、違反抑止のための加算金と書いてございます。これは国税であれば加算税、地方税であれば加算金ですけれども、あれをイメージした言葉を使っております。例えば違法収益の20パーセントと。つまり、被害を補填する、すなわち本来自分が持ってはいけない違法収益を剥奪するだけであれば、言わば元に戻っただけ、本来自分が持てないはずのものを返すだけなのですけれども、プラスして、例えば20パーセント、10パーセント、30パーセント、そこは幾らでもいいのですが、更に損をさせるということによって、将来的な繰り返しを抑止する。こういう2つの組合せ、つまり、違法収益の剥奪と、それから、プラスアルファで加算して制裁を加えるという組合せが行政法での一つの考え方です。
その立法例なのですけれども、この2つ、被害の剥奪と、補填までするかどうかは場合によりますが、少なくとも剥奪をまずして、それから場合によっては補填するのですが、まず剥奪をするという部分と加算金を組み合わせたのが1の立法例の2行目でありまして、独占禁止法や景品表示法、いわゆる課徴金です。課徴金は違法収益プラス、加算金的なプラスアルファで20パーセント、10パーセント、あるいは景品表示法は3パーセントですけれども、加えて課徴金として、一体的にこれは国庫に入りますので、違法収益部分は被害者に基本的には返らないのですけれども、そういうものです。
それから、税法は、先ほど少し言い掛けましたけれども、いわゆる増額更正処分という形で、これは措置命令の一つの変形、一つの応用例でありまして、あなたが払っていない税金を払いなさいという形で違法収益を取り上げる。違法収益といいますか、払うべきものを払っていなかったというところで、それを取り上げて、被害者である国に補填させる。そして、加算税ないしは加算金としてプラス何パーセントかのお金を取り上げる。これによって、次回以降、税金をごまかさないような抑止力とするという形で立法されております。
2番目、被害者は誰かということなのですけれども、先ほど税金でお話ししましたが、国家が被害者の場合には、これはなかなかきちんと必ず立法されているわけです。その下に税法、先ほど言いました増額更正処分ですが、生活保護法は不正受給者に対する返還命令、これは140パーセントという規定があります。
補助金適正化法、補助金を違法に利用したという場合には、補助金の返還命令、そして、加算金。例えば補助金もどういう場合に違法かというのはいろいろあるのですけれども、例えば不正に取得したというのがここの場合に違法収益というので一番ぴったりくると思いますけれども、うそ八百を書いて申請書を出して、そして、本来自分がもらえないはずの補助金をもらった。それの返還命令です。プラス19条で加算金という形の返還をさせる。返還命令で国家は自らの被害を補填し、そして、加算金で抑止する、繰り返しを防ぐ。
景品表示法ですけれども、これは先ほど申しましたように課徴金納付命令で、被害額の剥奪及び補填、それから、加算金をまとめて国庫に入れるのですけれども、課徴金納付命令の名宛人が自主返金した分は課徴金を少し減額するということで、実質的には被害補填と加算金の部分を分離することもあり得るという仕組みです。
それから、特定商取引法の措置命令の規定、これは課徴金の話ではなくて、加算金の規定はないと1ページの一番下に網掛けで書いてございますけれども、ですから、これは被害補填だけなのですが、被害補填に使い得る規定があるという例であります。下線部のところですけれども、取引の公正のほか、購入者又は役務の提供を受ける者の利益、つまり、消費者の利益が害されるおそれがあるときには、当該違反又は当該行為の是正のための措置、そして、その下、当該消費者の利益の保護を図るための措置という形で、読みようによれば被害補填の措置を命ずることができるようになっている規定がございます。
これを基に、どのように仕組んでいくかというのが次のページからの記載でございます。
では、2ページに移っていただきたいと思います。
今までは行政法の一般論でありますが、2ページの2からは破綻必至商法、このワーキング・グループでのテーマ、差し当たりこの名前で呼んでおきますけれども、それについての違法収益の剥奪・還付の制度設計がどのようなものと考えられるかという説明でございます。
政策目的、政策手段、そして、手段が施策とその実効性確保、こういう形で私はしばしば法制度の説明をしますので、その説明の仕方を本日も使わせていただきたいと思います。
まず(1)政策目的、これが明確でなくてはいけないと。これは破綻必至商法の防止ということなのだろうと思います。これを破綻必至商法というのは非常に欺罔的である。だから、不当の取引類型であって、これは何らかの意味で防止しなくてはいけないという目的、ここは異論のないところなのだろうと思います。
マル1でありますが、では、その破綻必至商法とは何かと。この定義がどの程度できるかというのが、この法制度設計の最重要ポイントであろうと思われます。これについては今まで幾つか定義の要素が議論されてきたところであります。
そこで、参考として預託法の預託等取引というところを挙げております。広めにかけて、コア部分を禁止するということを書いてございますが、破綻必至商法という絶対にこれはけしからんという破綻必至商法そのもののコアの部分をどう定義するか。これはこれでなかなか難しいのですけれども、これを定義すると同時に、預託等取引のように分かりやすい指標でより広めの概念も作る。2つの概念を作って、預託等取引という明確な指標の定義の中の一部が本当に悪いところなのだという形で、本当に悪いところで実質的な議論といいますか、実質的な判断といいますか、なかなか明快な指標では判定しづらいとは思うのですけれども、他方で、注意すべき取引類型という形で広めの、かつそれは分かりやすい。こういう部分があればその対象だと定義する。こういうちょうど二重の同心円といいますか、そういう形で、本来禁止すべきものと、それから、そのために注意しておく範囲の取引の類型という二重の定義の仕方をすることで、この破綻必至商法の定義の難しさというのをあるいは少しでも緩和できるかもしれません。これは、その後の(2)のところで(A)と(B)という話につながっていきます。
(1)に戻りますと、定義が最重要ポイントの次です。今までの話でもあったように、複数の類型があるのではないかという気がいたします。これは取りあえず私の思い付きで分けたものですけれども、最初から破綻しかしないはずのもの、破綻しかしないだろうというか、全然実態がないというものです。単なる詐欺ですね。それから、自転車操業です。一応いろいろやったのだけれども、途中からやはり破綻したと。やはりというのは、後から考えるともともと無理な投資スキームですよね、こんなものはうまくいくはずがないと。本人はうまくいくと信じているわけで、一生懸命やっていたのだけれども、途中からと。混合というのも、例えば最初は無理かもしれないけれども、投資スキームでそれなりにやっていたのだけれども、途中から無理ということが分かって、そして、やめてしまった。つまり、途中から実態がなくなったというようなこともあるのかもしれません。
このように幾つか類型があり得ると思いますので、破綻必至のコアの部分を定義するに当たって、このどこまでを取り上げるのか。これを全て取り上げるのか、それとも取りあえずこれだけとしていくのか、その辺りも工夫のしどころだろうと思います。
それから、マル2でございますが、破綻必至商法と支払不能というところ、あるいは解散命令、今まで議論になってきた破産とか、あるいは会社解散命令の事由ですね。支払不能であるとか公益違反であるという解散命令事由と破綻必至商法をしているということの関係です。破綻必至商法を続ければ、そのうち支払不能になるであろうとか、あるいは破綻必至商法がそれ自体が公益違反なのだということになれば、これはほぼイコールということになろうかと思いますけれども、必ずしもそうでもないのだろうと考えると、マル2の2行目ですが、破綻必至商法だけれども、包括的に法人を破産させたり、あるいは解散させたりということまでいかない、取りあえず個別財産だけを取り上げて被害回復をする。そして、そのために保全をする。こういった個別財産の保全、分配といった制度も考えておこう。つまり、これが冒頭に申しましたように、法人そのものは存続するけれども、財産の一部を取り上げるという仕組みも考えておく必要があるのだろうということであります。
逆に言うと、既に破産とか会社解散命令のどちらでもいける。多分破綻必至商法はほぼいくのではないかと思いますけれども、ただ、必ずしもそうとも限りませんので、比較的小規模の場合にはこの行政手法でやっていく。そのうち、これはどうにもならんとなったら、破産とか会社解散命令と移行していく。そういうふうな全体像で考えるといいのではないかと思いました。
(2)です。破綻といいますか、破産とかあるいは解散までしない。そういう個別財産の取り上げと剥奪というものをどのように考えるかということなのですが、施策、破綻必至商法についてどういうスタンスを取るか。まず政策の一番出発点であるどういう施策を作るのかということなのですけれども、(A)のみでいくか、(A)+(B)でいくか。これが先ほど同心円の構造で定義ができないかといったことにつながってくる話です。
まず(A)、これは必ず一緒だと思うのですけれども、何人も破綻必至商法をしてはならない。要するに、禁止するのだということはどこかできちんと法律で定義する必要がある。先ほど言いましたように、欺罔的であるから不当である、許容する余地がないということで、このコアをどう定義するかということ。ここは抽象的といいますか、ケース・バイ・ケースで判断するしかないということでも構わないのだろうと思います。
他方、後からも述べますように、それだけでは実効性確保もなかなか難しいので、それを補充する形で(B)という施策、例えば高配当・高利率をうたう取引については届出義務を課す。これは非常に簡単に、単純に考えております。実際はどこが所管するのか、多分行政の中で誰がやるのかという辺りは、そこでかなり難しい問題であろうと思いますけれども、そういうところは置いておいて、高利率・高配当をうたって、そのうち一部は破産必至商法になる可能性が高い。そうであれば、高利率・高配当というのは非常に明快な事象ですので、これについては届出義務を課す。届け出ればいいだけであるという仕組みを(A)と併せて作っておくといいのではないかと考えました。これは(B)の2行目に書いてありますように、届け出ることもできないということは怪しいのでしょうと。そうすると、高利息・高配当・高利率をうたう正当なビジネスをする人、あるいはそれをするつもりである人は届け出ればよくて、逆に届け出ることによって自分たちが真っ当な事業者であるということを宣伝できますよと。あなたたちを守っているのです、つまり、高利・高配当の正当なビジネスをする人は守る。その代わり、無届けに対して行政が対処することによって、正当なビジネスを守っているのだという説明をすれば、むやみな規制強化というわけでもないのではないかと思います。
(B)の4行目です。しかし、届出者には定期報告義務はしていただきたいと。高利・高配当はどのぐらい実績があるのか、それについて自己点検していただいて、それを報告するという形です。それを見ながら、これは例えば報告が出てこないとか、あるいは報告が何を言っているか分からないというようなことになると、それが一つの指標となって、調査ということになってくるというわけでございます。
あと、(B)の一番最後の※ですが、これはここのワーキング・グループのテーマではございませんが、マネーロンダリングという観点からも、この届出というのは重要性はあるのかもしれません。
(3)にまいります。実効性確保という話でございますが、施策A/Bそれぞれで実効性確保を考えなくてはいけないのですが、まとめて考えていきます。
まずはア)です。違反が発覚した、それを是正するということでありますけれども、A&Bであれば、これは(A)の破綻必至商法に該当するということがいろいろなことで分かった。例えば先ほどの届出義務があって、そして、報告内容を見ると、これはおかしいということが分かったということであれば、当該事業を止めようという停止命令ということにまずはなります。その下に、2ページの下から2行目、新規取引・広告の停止とか既存の顧客に対する支払停止といったことになります。それから、(B)の届出義務を作った場合には、無届者に対する業務停止、業務中止といった命令をかけるという制度も必要となってきます。
3ページにお移りください。
施策A、つまり、破綻必至商法の禁止だけだと、これは非常に行政のほうに調査に負担がかかってきます。やはり外形からはなかなか分からない。これまで私、このワーキングでしばしば、景品表示法7条2項の不実証広告規制みたいなものが使えるのではないかということを申し上げました。景品表示法でもこれが入っているのは優良誤認だけであって、有利誤認には入っていません。有利誤認は取引条件が書いてありますから、これはそれが有利誤認かどうかだけを見ればいいので、判定は外部からもできる。ただ、優良誤認は商品の中身の分析をしなくてはいけなくて、これはなかなかできない、お金もかかるということで、外部からそもそも分かりにくい優良誤認については、あなたが説明しなさいということで不実証広告規制という条文が入ったわけでございます。
それとこの破綻必至商法は外部からよく分からないというのと似ているかなと思いまして、施策Aのみでやると不実証広告規制を導入するということになるだろうと思います。ただ、これは考えてみると、不実証広告規制というのは資料提出を求めるわけなのですが、その時点でターゲットになったことが分かりますので、行方をくらますといいますか、お金を仮想通貨にしてしまうとか、逃亡を図ると思いますので、これは逆に使いにくいのかもしれません。なので、やはりBとペアであったほうがいいなと考えているわけでございます。
施策Bの実効性のポイントというのが2つ目の※でありますが、これは届出報告義務によって状況を監視するということだけではなくて、やはり無届者の摘発、業務停止とかです。無免許とかも無届者に対する業務停止命令と見られる立法例も今は幾つかございます。
旅館業法にあるというのは最近知ったのですけれども、それから、税理士法がいわゆる偽税理士の相談業務の停止命令というのを現在の法改正でやっているそうです。それから、金融商品取引法には前から緊急停止命令というのがあって、これは発動例もございます。
ということで、立法例はないわけではないので、施策Bを使う場合は、状況監視も重要ですが、やはり無届者をいかに摘発して業務停止をしていくか。そして、緊急停止命令の後の強制執行をどうするかという辺りが立法論としては重要なところかと思います。これは業務停止です。
次のひし形が過去の違反事態の除去ということで、違法収益の剥奪、それから、それの分配ということであります。これを措置命令でするというのが先ほどの冒頭でお話ししたところでありますけれども、これは収益の返金契約の措置を命ずるということです。でも、措置命令というのは相手がやってくれなければ話になりません。措置をするよう命ずるわけですので、破綻必至商法の事業者の場合はやらないことが多いだろうということで、そうすると、言わばこれは刑事没収の行政バージョンという行政型没収というのを考える必要があるのではないかと。何かしなさいと命令するのではなくて、こちらで直ちに財産を取り上げてしまうというパターンです。有体物であれば即時強制という言葉が行政法でございますけれども、命令するのではなくていきなり財産権の制限をしてしまう。それから、銀行の口座について、例えば銀行債権を取得してしまうという処分が考えられます。これは土地収用法での土地の権利取得裁決、裁決によって、一定の条件が必要なのですけれども、保証金を払うという条件が必要なのですが、権利が移転してしまう。こういった形で国に権利が移転するというような形、あるいは移転させる先は財団でも基金でもいいのですけれども、そのような命令ないしは有体物のごとく没収できるのかもしれません。そこら辺は、刑事の没収の話も是非伺ってみたいところであります。組織的犯罪処罰法では債権を没収できるとなっておりますので、これも有体物と同じように考えるのかというところ、この後は私はよく分かりませんので、またお伺いしたいと思います。
この点、幾つか論点がございます。論点マル1は飛ばしまして、論点マル2であります。措置命令は書いておいてもいいとは思うのですが、実際はあまり使うことはないのではないかという気はいたします。最初から没収するというのでもいいですし、あるいは措置命令をしたけれども、例えば非常に短い1週間ぐらいの命令をして、駄目だったらすぐに没収するというような考え方もあり得ると思います。出入国管理法では、出国命令を出して、その違反であれば退去強制、実力行使と即時強制ですね。どういうふうなパターンもございますので、そういうふうにするのもあるかもしれませんし、しかし、措置命令をした段階で逃げられてしまうと考えるのであれば、直ちに没収と。これは出入国管理法もそうですけれども、最初から退去強制ができますので、それと同じような、2段階踏んでもいいし、最初から没収とやってもよいという規定ぶりというのが考えられると思います。
論点マル3は没収額の計算です。これも先ほど類型と申しましたが、実態なし類型なのか、自転車商業類型かでこれは変わってくるかもしれません。自転車操業はいつから違法となるのかはなかなか難しいと思いますし、それから、既に支払いを受けた顧客はどうするのかと。本当はその人からも取り上げてプールしなくてはいけないのではないかという気もしますけれども、この辺りが難しい。考え方を整理しなくてはいけないという気がいたします。
論点マル4は仮です。保全です。没収額の確定前に概算で没収をするという制度を作らないと、これは逃げられてしまうだろうと。2行目ですけれども、見込みはまず証拠で、ここまでは確実。だけれどもっとあるはずだと。経験的拡張という言葉を私は使っておりますけれども、大体こういうパターンはこのぐらいまでいくはずだというのをかなり緩やかに認めないと、保全は十分できないだろうと思われます。こんなに緩やかではありませんけれども、Cfのところ、国税徴収法の159条で納税額の確定前に、確定見込額について財産保全ができるという規定はございますので、ただ、これはかなり限定した使い方になっておりますが、これをもう少し広げる形で仮没収の権限というのも作る必要があるだろうと思います。
論点マル5と論点マル6は、正に破産、それから、会社解散命令との使い分けでございまして、仮没収額を計算すると、結局全部ではないかと。あるいは全然足りないということになると、これは破産申立てのほうに行くべきだというルートもあると思います。あるいは論点マル4、没収額は小さくとも、やはり破綻必至商法だけを目的とする会社であれば、これは会社解散命令ではないかという形で、そちらに移行するといったことも十分考えるべきであろうと思います。
最後、イ)でありますが、違反抑止であります。課徴金の加算金部分、違法収益の20パーセント部分と言いましたけれども、破綻必至商法で違法収益を剥奪すると、恐らくそれは存続しないので、あまり繰り返し抑止をする意味もあるのかなという気もいたしますが、これはお仕置きでかけるというのもあるかもしれません。だから、ここは絶対に国が取り上げるというよりは、分配するときにはかなり劣後した債権にしておかないと、あまり意味がないかなと思います。
ちょっと長くなって申し訳ございません。では、最後の4ページでございますが、ウ)まとめです。このように考えていきますと、まず行政処分といたしまして、営業停止命令、それから、措置命令ですね。返金計画を立てなさいという措置、ないしはいきなり行政型没収をする。それから、必要に応じて加算金ということも考えられますけれども、こういうふうな制度を作るということがまずは考えられます。同時に、その途中から、やはり仮没収額が大きいので、破産しかないなとか、あるいはあまりにも悪質なので会社解散命令に行くなという展開は当然に考えられるという整理をしておく必要があるのだろうと思います。その場合は、つまり、破産とか会社解散命令のほうのルートに行くのであれば、営業停止命令はかけ続ける必要があると思いますけれども、それ以外、違反是正とか没収とか加算金というのは職権で効力停止をし、最終的には撤回する。その処分としてはなくす、取り消すということになるのだろうと思います。
その次の黒ポツですが、その際に、営業停止命令や違反是正、没収、加算金のための調査で得た情報の流用はかなりできるのではないか、あるいは認めるべきであろうと思います。破産申立てであれば裁判所が資料提供を求めますので、その提供に応えるという形で、それから、解散命令の場合は法務大臣への資料提供をしますが、その資料提供としてこれは当然使えるのだろうと考えております。
それから、3番目の黒ポツです。上記各処分について、行政手続法の適用があるものがほとんどであろうと思います。いわゆる不利益処分なので、弁明機会付与とか聴聞の対象になり得るわけですけれども、行政手続法の中でも緊急の場合には省略してよいという規定は既にございますので、これは緊急性があるのだという説明もありますが、むしろ事前の弁明機会付与はやめて、事後の弁明機会付与だという規定をすれば十分であろうと思います。
これが本当の最後、(4)です。調査手続でございますけれども、ア)とイ)に分けております。これは先ほどのア)とイ)とは全然関係なくて、単なる時間の流れでありますけれども、最初に端緒情報を得る。これは怪しいのではないかといった場合です。例えばBの施策で報告を求めている。報告内容がどうもうそっぽい、おかしいなといった場合、本人にもちろん聞くということもあるのですけれども、本人に聞くとまたいろいろ気配を察せられて逃げられてしまうかもしれない。恐らく最も重要なのは第三者、銀行とかですね。第三者への報告命令、あるいは質問検査権であろうと思います。
そして、嫌疑が固まって、イ)です。最終的な調査権限の正式の行使としては、証拠固めとして踏み込む。顧客リストであるとか隠し銀行口座、関係者あるいは誰が黒幕なのかと。こういった内偵ではなかなか得られない情報、ア)が内偵ですけれども、イ)が最終的に証拠固めで入っていく。これは通常、質問検査権という拒否されたら刑罰しかない、つまり、拒否されたらすごすごと帰るしかないという質問検査権では駄目だろうと思いますので、令状に基づく踏み込み、刑事捜査的な規定を置く必要があろうかと思います。
現在、こういった臨検・捜索・押収を行政機関がやるというのは、刑事処罰の場合に限られているのですけれども、行政がやる場合でも刑事罰につながるような場合に限られているのですけれども、これを行政処分につながる場合でも拡大して立法することは、別に憲法違反ではないと思います。令状主義があればよいと思いますので、そういった立法も必要になろうかと思います。
その下に※で書いてありますのは、先ほどのア)の第三者への報告命令/質問検査権の立法例を幾つか書いてございます。4ページの下は税金であるいわゆる反面調査です。取引先を調査する。それから、5ページの上に書いてあるのは、暗号資産交換業者やデジタルプラットフォーム提供者などに対して報告を求めるというこれも国税通則法の調査権限の規定例でございます。こういうふうに既に例はあるということであります。
長くなって申し訳ございません。以上が私からの報告でございます。ありがとうございました。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、これより20分程度、質疑応答の時間とさせていただきます。
ただいまの御説明及び御報告を踏まえまして、御質問、御意見等のある方は御発言をお願いいたします。
御発言をされる際にはチャット欄に御投稿ください。よろしくお願いいたします。
板谷委員、よろしくお願いします。
○板谷委員 ありがとうございました。
私のほうから2点お尋ねをしたいと思います。
1点目は分配の仕組みをどうするかということです。御報告にはない論点ということになるのですけれども、広めに網をかけてコア部分を禁止するという二重の定義のもとに、今回のレジュメで言うところの政策手段(A)+(B)でいくとして、そこから更にもう一歩進めて(B)の届出義務、定期報告義務を手掛かりにして、前回のワーキング・グループで御報告いただいたような投資者保護基金のような団体、機構を業界に組織してもらい、保険料などで運営してもらって、そこに分配の業務みたいなことを担っていただくということがあり得るのではないかなと思いました。仮に「高利取引市場」とでも呼ぶとして、その業界の企業が市場全体を健全に保つという目的のために、結果として破綻してしまった会社や、あるいは機構のアウトサイダーにいるものも含めて、それらの被害回復関係業務を担うということがあり得るのではないかとイメージしたのですけれども、これについてどう思われるかということが1点目です。
もう一点なのですけれども、やはり今日の御報告にはなかったのですが、高利の業者に網をかけるとしたときに、それが何パーセントなのかという線を引く必要があるわけですが、その線をどこで決定するかということです。例えば景品表示法では、業界ごとの事情を踏まえて公正取引協議会に細かなルールを作ってもらうようにしていますけれども、この「高利取引」業界についても利率何パーセント以上はこういう規制が必要なのだという線引きをそこで決めてもらうようなこともあり得るのかなと思ったりするのですが、そこの辺りのところについてコメントをいただければと思います。
○中川教授 御質問ありがとうございます。
先に2番目からお答えしたいと思いますが、まず高利といっても、利率をどのぐらいにするのか、あるいは高配当は何から高配当なのかについては、先ほど口頭では省略しましたが、2ページの(B)の3行目ですかね。差し当たり政省令と、政令なのか省令なのかは分かりませんけれども、行政が決める。つまり、法律に書くのではない、随時変わっていく。そして、これが何パーセント以上なのかというのは、関係者の普通はこんな利率は取れないよという経験値で決めていくのだろうと思うのです。これは広めに取る。つまり、ここから以上はあり得ないと、そんなぎちぎちした議論をする必要はないという意味でこの(B)を考えておりますので、普通そう簡単にこんな利率は取れないよというところを何パーセントとしていく。これは、例えば日本国内では普通にやっていれば全然利息などはないのですけれども、海外では高いといった場合でも関係ない。日本の通常の利率からすると、何パーセント以上は非常に魅力的、現在は多分1パーセントでも魅力的かもしれませんけれども、だから、場合によっては1パーセント以上ということもあり得るわけなのですよね。また、経済状況が変わると5パーセント以上になるかもしれませんし、ですので、随時変わっていくようなものとして、これは関係者が決めるというよりは、やはり行政が決めるべきものではないかなと考えております。これは2点目に対する私の考えです。
1点目でありますけれども、今日は分配の仕組みはお話をしませんでした。それはまた別の更に長い話になるかなと思ってやめたのですけれども、分配の仕組みとして、先ほど板谷委員がおっしゃった保護基金的なものを届出業者に対して作らせることはできないかというアイデアであると思います。理屈から言えば作ることはできると思います。書いてしまえばいいわけですので、届出義務を課して届け出た者については保険料を出して、それで機構を作れということになろうかと思います。
ただ、法律論ではなくて現実問題として実際にそれができるかとなると、現在ある様々な投資の関係する金融関係の保護基金というのは、やはり業界団体ができている。非常に厳しい許認可制度の中で、許認可制度を取られることに非常にメリットがあり、かつ守られながらやっている。そして、お互いに分かっているし、数も少ない。移動もそんなに多いわけではない。証券会社はそうでもないかもしれませんが、保険とか銀行であれば非常に数は限定といいますか、人的な動きが少ない。そういうところであれば業界団体は成立するわけですけれども、この高利取引市場のようなものは多分業界団体は成立しない。お互いに戦い合うといいますか、およそ一緒にやっていきましょう感のない人たちだと思いますので、だから、実際はなかなか成立しないのではないかと思いますので、もちろんそういう有志の人が出てきてくればあり得ると思うのですけれども、そう簡単に業界団体はできないのではないかなと思いまして、現実に運用がなかなかうまくいかないのではないかという意味で、私は悲観的に感じております。
なので、ここは普通に分配、収益剥奪をして、例えば没収をした場合、その没収を国庫に持っていくのでもいいのですが、場合によっては基金という形で、例えば消費者団体が手数料込みで管理してくださいというふうな、そこに移転する命令と、口座の債権を当該基金に移転するという形であとはやってくださいというようなことが現実的かなと考えているところです。
以上です。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、山本委員、よろしくお願いいたします。
○山本委員 私が伺いたかったのは正に今の点ですので、半分以上お答えはいただいたのではないかと思うのですけれども、その先の問題として、一つあり得るのは、没収ですかね。課徴金というか、それを取って、その業者は危なそうだと思ったら破産申立てをして、破産に移行して、破産で配当する。これは一つあるのかなと思っていたのですが、そうではない場合に、今は消費者団体と基金を設けてとおっしゃいましたけれども、その分配をする手続というのは、当然、債権者がいて、まずそもそもその消費者団体がどういう権限で、第三者弁済をするのか、どういう資格で弁済を行うのかということが私法上問題になると思いますけれども、手続として、やはり何らかの債権届出とか、それで争いがあった場合に、本当は被害者ではないのではないかといったときにどうするのかとか、そういう手続を考えると、結局第二破産手続みたいなものを作らざるを得なくなっていくのかなと。それを裁判所が関与しないところで、行政上の手続でも、あるいはそういう基金が私的な手続で行うにしても、やはり最後の判断は裁判所がせざるを得ず、一種の第二倒産手続的なものにだんだんそうやって詰めていくと近づいていかざるを得ないのかなという感じがしているということで、もちろん組織的犯罪処罰法的なものというのはあり得ると思うのですが、しかし、あれは法律構成としては犯罪被害者に対する給付金、要するに国に対する債権を国が配るという仕組みなのだろうと私は理解しているのですけれども、これは私人に対する私人間債権について、それをどう配るかという話で、それは本来倒産手続とか執行手続というところが今までカバーしてきた話なので、そこを組み替えるとなると、かなり大きな作業になるのかなという印象を持って、今までも課徴金を取ったときにそれを被害者に配るという議論はあったかと思うのですけれども、詰めていくとなかなか難しい議論になるのかなという印象は持っているのですが、中川教授の先ほどのお話で、これは話し出すとものすごく長くなるということなので、話していただくと長くなってしまうのかもしれませんが、そこの見通しみたいなものがあるのかどうかだけ、もし可能であれば教えていただければと思います。
○中川教授 ありがとうございます。
正に山本委員がおっしゃったとおりの話で、長くなるのはそういうことなのですけれども、つまり、今の組織的犯罪処罰法で使っているような、国庫に入れて、そして、国に対する債権を設定して、それを返していくのだという仕組みにするというのが一つあり、それから、破産法に近い形で、この場合の債権届出というのは帳簿にある破綻事業者が持っている帳簿で取引をした履歴のある人に限定して、届出というよりも恐らくそれはその帳簿に基づいて、ただ、帳簿が取れなかったらどうするか。そうなると債権届出になりますので、またそこも考えなくてはいけないというので、非常に複雑な話になるのですけれども、まずは帳簿があるならば、顧客であった人に対して払ったものを返す。あるいは何分の1か2に限定して返すという形、これが基金型といいますか、破産に近いパターンですよね。国に対する債権で国が返すという組織的犯罪処罰法方式と破産方式と、どちらがどういうメリットがあるのかというところを考えていく必要があって、かつ第3の方式として、こんなことを言うと法律の学者ではないと言われるかもしれませんが、もっとざっくりできないのかなというのが正直なところでありまして、そんなに破産手続のようにきちんと漏れなくやる必要があるのかと。いついつまでに言わなかったら失権という形で、これは私の理解では、あれがそうですね。何でしたっけ。ど忘れしてしまった。銀行の口座を凍結するものですね。何詐欺でしたっけ。オレオレ詐欺ではないや。
○黒木座長代理 振り込め詐欺ではないですか。
○中川教授 振り込め詐欺です。振り込め詐欺の救済法です。あれの配分の方式は比較的簡潔に作られていると思います。あのパターンが第3の道としてあるかなと考えているのですけれども、いずれも私の専門からはかなり遠いので、考えて考えていろいろ混乱しながら、書いたものをお見せするのは今日はやめておこうということで、今日はお話をしなかったのですけれども、今のところ、差し当たりそういった3つの方式が考えられるかなと思っているところです。
私からは以上であります。
○山本委員 ありがとうございます。イメージはよく分かりました。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、川出委員、よろしくお願いいたします。
○川出委員 どうもありがとうございます。
今日の御報告と直接に関わる質問ではないのですけれども、御報告の中で、過去の違反事態の除去の手段の一つとして行政型没収についてのお話がありました。これは、行政庁が行政処分として全てを行うというものだと思います。中川教授は、御論文で、日本では行政庁が裁判所を使って行政目的を達成するという手段があまりないということを書かれていました。没収についても、刑事の場合は、最終的な没収はもちろん、その前段階である保全命令も裁判所が関与する仕組みになっています。これに対して、行政法の世界で、裁判所を使って行政目的を達成するという仕組みが作られてこなかったのはなぜなのでしょうか。そのような仕組みは、行政法の体系に反するということなのか、それとも、必ずしもそうではなく、これからそういう手法を作っていくことは十分可能なのか、その点についての御意見をお聞かせいただけますでしょうか。
○中川教授 ありがとうございます。
結論から言うと、立法は可能のはずであるけれども、誰も考えたことがなかったというだけの問題だと思います。行政と司法というのは全く別なものであるという戦前の考え方があまりにも強烈に残っていて、行政が訴訟を提起するということ自体が想像していなかったというのが正直なところだと思います。
それに近いことが起きたのが有名な宝塚市パチンコ条例事件というもので、宝塚市が条例を作って、パチンコについては規制をする。届出なしに勝手にパチンコ屋を作ってはいけないという条例を作ったのです。ところが、それを無視した事業者が出てきたので、中止命令を出した。中止命令も聞かなかったので、中止命令により発生した中止義務を履行せよ、中止せよという訴えを提起したところ、最高裁で法律に規定がない限りは駄目だと言われたわけなのです。ということは、逆に言うと、行政が提起する訴えというのは、法律に規定があればいいのだということではあるのです。
行政処分というのは、これは英米ではそうですし、それから、実はドイツも歴史的にはその時期があったと言われている文献があるのですけれども、本来は行政が提訴をして、判決によって命令をする。つまり、言わば行政処分というのは民事でいう形成判決の手続を簡単にしたもの、行政だけで簡略にやるものだというのが英米的な発想なのです。ドイツもそれは一時あったらしい。ところが、日本は明治の1900年からそれが全然入ってこなかったのです。なので、単純に誰も想像したことがなかったということなのです。
ただ、考えてみれば刑事訴訟は正にこの方式なのですよね。行政が起訴をして、そして、有罪判決という言わば形成判決によって刑事責任を惹起させるわけですよね。ですので、それを行政処分という形で、有罪判決以外、つまり、刑事処罰以外に、一般的に例えば業務停止の判決を行政が求めるということはあって何も悪いことはないし、むしろ手続保障としては、現在の行政手続法に基づく行政処分よりはずっと憲法的理念というか適正手続に合っているのですよね。だから、これが禁止される理由は全くないはずなのです。だから、大いに活用すればいいのではないかと。
その際に恐らく気になることは、司法手続を絡めると遅くなるのではないかということなのですが、これもよくアメリカで議論があるのですが、アメリカで聞くと、いやいや、逆だと。アメリカの行政処分は非常に手続が厳重ですので、かえって遅くなる。裁判をすると、まず仮処分をやるのです。要するに、先に仮の手続があって、それでほぼ9割方和解、ほとんど判決まで行くことがない。だから、極めて早いという利用の仕方をしているわけなのです。だから、そういう意味で、実質的なデメリットもないと思われますので、非常に大いに使えるのではないかと。ということは、行政型没収も、行政が正に自らやる没収だけではなくて、行政が裁判所に提起する訴訟というのも当然考えていいと思いますし、むしろそのほうが望ましいかもしれないと考えております。
○川出委員 ありがとうございました。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、丸山委員、よろしくお願いいたします。
○丸山委員 中川教授、ありがとうございました。
実現するとすばらしい提言がされていると思いましたが、2点ほど確認をさせてください。
まず、政策手段の(A)と(B)という提言がされているのですけれども、(B)のところで提言されている、高利率・高配当をうたっている場合については届出をしてもらうという提言なのですけれども、これが今までの検討でいうと破綻必至商法の第一要件のようなところにフォーカスをしていると捉えたのですが、高配当・高利率の射程というのを考えた場合に、高配当の株式など結構射程が広がりそうな感じがしました。また御指摘のように、監督官庁が金融庁とか消費者庁などがまたがって問題となりそうかなと思ったのですが、制度構築をしていく際にうまくいくかという点、困難になりそうな点があったら、それを克服するアイデアも含めて何かお考えがあれば聞かせてほしいというのが第1点でございます。
第2点としましては、先ほどからも議論されております違法な収益を剥奪して被害者に分配するという方向での制度構築に関してなのですが、景品表示法の場合は課徴金についても選択的になっていると思うのですけれども、被害者に分配するルートに絞るという制度構築をする場合に、行政的な手法の場合は公益という観点を正当化根拠として出していく必要があると言及されていたようにも思うのですけれども、これは被害者分配ルートを1つにするということも公益の観点から説明していくことは可能という理解でよいのか教えていただければと思いました。
以上です。
○中川教授 ありがとうございました。
先に、これまた2番目からお答えさせていただきます。被害者の回復というのは、公益のためにというので私は十分説明できると思います。つまり、これも、先ほど原状回復という言葉を申し上げましたけれども、違反行為をした場合に、今後やりませんということだけではなくて、過去にやったものも是正しなさいと言って何でいけないのだと。つまり、過去にやったものを是正することによって、今後の被害の拡大を防止することができる。公益というのは、ぶっちゃけた言い方をしますと、将来あるいは誰か分からないいろいろな人と言ってしまえば直ちに公益になりますので、今後の違反行為の抑止のためには、ただ単にこれからちゃんとやりますだけではなくて、過去に起こしたことの原状も回復しなさい。それによって、それは必ずコストがかかりますので、先ほどの加算金あるいは課徴金と同じ発想なのですけれども、コストがかかる。違反することによって、もうかっただけではなくて、もうかったものを返さないでいいのだったら、これは違反すればいいわけですよね。違反してもうかった、返さなくていい、これから気をつければいいのだというだけであれば、違反をしたほうが合理的な行動ということになります。違反することが合理的なことでなくするためには、違反したことによって損をしなくてはいけない。それは課徴金の発想、いわゆる加算金のプラス20パーセントの部分なのです。その損の仕方として、過去をやり直す。例えばきちんと建物を造らなかったから壊れてしまった。これは当然建て直しをしなくてはいけない。これは過去の違法の原状回復なのです。それと同じことでありまして、過去の違法行為、取引行為を言わば全部引き戻す、なかったことにする。それをなかったことにして、といっても、これは契約も無効だと。それで不当利得だと構成すると、非常にまた面倒なことになるのですけれども、そうではなくて、なかったことにする方法として、今これだけお金がないのだから、一律20パーセントお返ししますとか、そういうふうな形で対応することを認める。そういうケース・バイ・ケースで柔軟にやっていくというのがこの措置命令の考え方になります。不当利得返還請求とそこまで柔軟にできないと思いますけれども、全体でなるべく公益のために、今後被害の拡大を防止するために過去の行為を改めなさいと。そのような措置を採らせるという意味で公益のためのものと説明できると思います。
それから、最初のほうの(B)の制度作りで難航するのではないかと。これは正におっしゃるとおりで、私が(所管省庁は?)と書いたのが、ここが一番のネックだろうなと。既存のこういう金融関係の規制法との整理をしなくてはいけなくて、これは私の手に負えないので、ここで投げた形になっております。消費者庁もあるでしょうし、それから、多分経済産業省も関わってくると思いますし、場合によっては農林水産省も関わってくると思いますので、その辺りで省庁横断的なチームを作って、この破綻必至商法に対して撲滅しなくてはいけないという意識、これはかなり政治的なサポートが必要ではないかと思いますけれども、省庁横断的なチームが作れれば、そうすると、あとはお互いにどのように分担していこうかという話になりますので、つまり、既存の農林水産、経済産業、それぞれ持っているような業界に近いところはそれぞれが持って、金融庁もそうですね。そして、それ以外は消費者庁というキャッチオールでやっていくといういつものパターンになるのかもしれませんし、逆に全部消費者庁でいいよということになるかもしれませんけれども、そこら辺の見通しは私は全くございませんで、まずは他の関係する省庁から横やりが入らないようにする。少なくとも共同歩調をとってもらうというところのしつらえといいますか、そこをどのようにやっていくか。これはお役所の人しか分からない。私には分かりませんので、ただ、それが困難であろうということは予想がつくというところでございます。
私からは以上です。
○後藤座長 どうもありがとうございました。
他にございませんでしょうか。
黒木座長代理、よろしくお願いします。
○黒木座長代理 今日は大変すばらしい御発言をいただきました。ありがとうございました。
その観点で、一番最初におっしゃったのだと思いますけれども、今回の御発表は結局今まで議論していたものとは補完関係にある、デュアルエンフォースメントであるというような理解でよいのかということがまず第1点。これは確認です。
それから、調査のところの話です。いただいているものでも、結局は国が債権者である国税とか生活保護とか、国の債権が問題となっているものに関して調査権が第三者にも及ぶという立て付けだと思っています。今回の教授のお考えだとすると、この場合は必ずしも国が債権者になるわけではありませんが、そのような場合に、第三者、つまり、金融機関とか対象者の債権者や債務者に対して調査権限が及ぶというような立法例が他にあるのかということを、私も知らないので、教えていただければと思います。
仮にそのような調査権を制定するのはなかなか厳しいとなったときに、その反対論をブレークスルーするには公益保護である、というような形だけでできるのか。つまり、第三者調査権が広く、例えば消費者庁に認められてしまうと、対象事業者からすると丸裸になるのですよね。そういった辺りのところをどう考えていけばいいのかということを教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○中川教授 ありがとうございました。
1点目、補完関係かということですが、正に補完関係でございます。そして、むしろ破産とか会社解散命令のほうへほとんどそちらにいくのではないかなと実は思っております。ただ、まれにそこまでいかない、ないしは最初の一撃として行政処分、特に没収、保全というところで、少しでも取っておくというような使い方をすることになるのかなと感じております。あと、もし(B)のような制度が作れれば、これは非常に予防という意味でもいいのかなと思います。
2点目の調査権限でありますけれども、確かに今日挙げたのは全て国が債権者ということですけれども、ただ、国が債権者だから第三者にも調査をしてよいという理屈は多分ないと思います。調査は必要に応じて誰に対してでもするものでありますので、普通調査対象はそもそも限定されていないのです。必要なときに必要な人に対して調査するものですので、ですから、第三者だからできないというのは、つまり、被疑者といいますか、違反したおそれがある人しかできないというわけではない。そういう行政法理論があるわけではないと思います。調査というのは情報収集が目的ですので、情報を持っている人に行くというだけです。
ですから、その意味では、どういう場合であれ、第三者に対する調査権限の規定ができないはずはないと思っております。これが税金の場合、特に書いてあるのは税金ですけれども、やはり毎年毎年大量にありますので、その条文に書いて、言わば条文にあるのだから言うことを聞いてという任意調査でいくための言わばお墨付きといいますか、実際に権限を行使するための権限があるのだから、任意で応じてくださいという効率的な調査をするためにこういうことを明確化しているのではないかなと想像しますけれども、書いていないからできないというわけではないと思います。
それから、結局は国が債権者であろうが、あるいは被害者が債権者であろうが、つまり、違反事業者から被害者に返すという債権関係しかないという場合であろうが、先ほど丸山委員の御質問にありましたように、被害回復はやはり公益のためなので、それは被害拡大や没収という公益のために被害回復をさせる。あるいは公益を回復させると、結果的に被害回復をさせている。公益が目的なのだから、当然、調査も公益目的なので、誰に対してもできるということだと思います。
○後藤座長 よろしいでしょうか。
他にございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。
本日は、中川教授より、消費者被害回復のための違法収益剥奪制度について、その前提として必要となる行政調査の内容、違法収益剥奪の行政処分の具体的な内容、実際に違法収益を剥奪する際の執行方法、行政庁による破産申立てとの関係等について、有益な御意見をいただきました。
委員の方々から各種の御質問や御意見が出ておりまして、本日の中川教授の御報告では正面からは触れておられないわけですけれども、分配に関する御質問というのがまず第一にありまして、これについて議論がなされました。これまでの制度にも分配についての仕組みをもっているものがありまして、組織的犯罪処罰法に近いやり方、破産法に近いやり方、破産手続ほどには厳格でないより簡易な、例えば振り込め詐欺救済法で取られているようなやり方、そういった方法がありますが、どういう方法がよろしいのかということで議論がなされました。
それから、行政庁が裁判所を使って行政目的を達するという手法は、従来あまり考えられていないし、日本では発展していないわけでありますけれども、活用すべきであるという御指摘がありました。
さらに、破綻必至商法についての二重の定義ということで大変興味深く拝聴したわけでありますが、破綻必至商法について、先ほどの資料1の2ページになりますけれども、(A)の部分と(B)の部分で、(B)の部分というのは高利率をうたう取引の届出義務ということでありますけれども、これに関しても幾つか質問が出ておりまして、そもそも高利ということについてどういう場合に高利と言えるのか、線引きの仕方によっては適用範囲が広がり過ぎるのではないか。それから、所管官庁ということで、中川教授のレジュメにもクエスチョンマークが付いているということでありますけれども、ここについても質疑応答がありまして、省庁横断的な仕組みが必要になる可能性もあるという御説明がありました。
それから、今まで私たちはこのワーキング・グループで、行政による破産手続の申立てや、あるいは会社解散命令というところに重点を置いて議論してきたわけでありますけれども、中川教授の本日の御報告は、それを補完するものであるという御説明がありました。
本日のご報告は、これまで私たちが考えていなかった論点、そういうものを豊富に出していただきまして、非常に資するところがあったと思います。これをまた一つの足掛かりとして、報告書への歩みにしたいと思っております。
本日は貴重な御報告をいただきまして、どうもありがとうございました。
≪3.閉会≫
○後藤座長 それでは、最後に事務局から事務連絡をお願いいたします。
○友行参事官 次回の会合につきましては、確定次第、御連絡させていただきます。
以上です。
○後藤座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。
お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございました。
(以上)